最近は殆ど聞かなくなったが、昔、ジムカーナでライセンス取得を申し込む理由に「F1ドライバーになりたい」というのが結構多い時期があった。今は、18才で免許を取得してライセンスを取り、F1を目指すのはとても無理だと、みんなが思っているのかも知れない。夢が無くなったのは、彼らなのか現実なのか。少し詰まらない。
まぁF1はともかく。
18歳で免許を取って、さてレースを始めようと思ったらどうするか。無難なのはナンバー付きのワンメイクレースだが、ステップアップを考えるなら、フォーミュラ入門カテゴリーのFJ1600だろう。あるいは昨年からFJ1600と同じ地方選手権として始まったSFJか。
地方選手権のFJ1600は2009年で選手権から外れるることになっている。今年を含めてあと2年、その後はSFJだけになる。ステップアップを考えているならFJ1600でのデビューは今年が最後かもしれない。
その後は、FJ1600なら一年分の費用とも云える、新車で300万を越えるSFJを購入して、サーキットでしか走れないレースをすることになる。後ろ盾もない18才のレーサー志望の少年には大変な話だ。
いま時カートの経験がなかったら、上のカテゴリーには進めない、というのが常識になりつつある。
カーター達は、もの心つかないうちから時速100kmを超えるような世界で、ゴリゴリとカウルを当てながらトップ争いを5年10年続けてくる。そんな18才と、教習所で初めてクルマの動かし方を覚える18才とでは、やはり雲泥の差がある。
幼い頃からカートをするには親の意思もある訳で、親だけではなくメカニックやコーチや先輩、時には名を成した有名ドライバーの指導もあるかもしれない。成績がよければ何かしらの引き揚げがあったりする。少なくとも、大人社会の付き合いを間近で経験しながら成長することは、少年たちがそれなりな心構えと処生術を身に付ける最良の場所ともいえる。
だけでなく、カートの全日本選手権シリーズで成績を出せば16才から四輪レースに出場可能な限定Aライセンスの取得が可能になる。その程度の実力があれば、メーカーが黙っている訳もなく、育成だのスカラシップだのという将来に向けた囲い込みがあるのは当然だ。だが、そんな環境で育つのは恵まれたごく一部だ。
今年からカートの選手権規定に見直しがあって、地方戦でも限定Aライセンスの取得が可能になったらしい。十代半ばからのカートデビューもステップアップの道の一つになるのだろうか。
さて、そんなこんな情況のなかで、18才免許取り立てから始めるレース人生、というのは、ふた昔前ならいざしらず、今はかなりなハンデかもしれない。そこから始めて上を目指そうというなら、並大抵の努力では追い付かないだろう。
しかし、F1は無理かもしれないが、レーサーになるには色んな道筋があって良いと思う。GTドライバーが目標でもいい、海外のシリーズ参戦でもいい、単に、誰にも前を走らせない!(ちょっと古い?)だっていい。走ることの楽しみ、競うことの喜びを、感じ続けたいなら、今居る場所から、走る場所と環境を確保するために頑張るしかない。
恵まれた環境のなかで機会を与えられ、自然に洗脳され、成るべくしてレーサーを選択するのではなく、自分の意思で選び取る未来だから、大切なのだと思いたい。
甘くはない。それでも、そこから始めようとする少年達がいるから、そんな彼らを応援したい、と思う。

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