2006/7/17 | 投稿者: クロちゃん

 遠方から友来る。
海の日の3連休の初日の早朝、ブラザースがやって来た。約束の柳小屋への道を辿る。

「水分が不足すると攣れやすくなるよ。」と、何度も休憩をして水分補給をこまめにする。赤沢谷出会いに到着が行程1時間30分。あれ?久しぶりのスローペースだな。でも、このくらいのペースが今の時期には良いんだよな。水分補給、水分補給……。

柳小屋までの行程は延べ5時間5分。
これは、過去の最長時間を更新か……。でも、おかげで疲労感は少なく釣りに費やす体力温存が出来た訳だ。

「どうします?小屋周辺に竿を出しても良いし、千丈の滝上という選択肢もありますが……。」
「いやー、僕らはどこでも良いですよ。」
遠慮がちに、そう言うブラザースの目は確実に千丈の滝上を見据えていた。
「神の領域、岩魚の聖域」と触れ回っていた地に、一度は足を踏み入れて見たいという顔だった。

「釣る時間は短いですよ。岩魚の聖地の空気に浸るだけですよ。」
私は、半分連れて行きたい気持ちと、其処へ到達する労力から、ちょっと躊躇していた。
しかし、ブラザースの憧れへの強い思いを感じ取り、千丈の滝上へのルートを選択した。果たして、その地はブラザースの思いを受け入れてくれるのだろうか。その日の状況によって満足度は大きく左右される。

柳小屋から急坂を登ること40分。そこから更に千丈の滝へは荒れたトラバース気味の道を50分かかった。「1時間半の行程です。」と告げたコースタイム通りに到着。
「やっぱり、神の領域は簡単には到達できませんね。」
ブラザースの偽(いつわ)ざる感想だ。

その地は、前回訪れた時より水量が少なかった。これは苦戦するかもしれないと思った。
「この前来た時、そのポイントから次々飛び出したんですよ。」
私は、今日のやや貧相と化したポイントを指差した。

そのポイントに素直に竿を出したのがトンちゃんだった。そして、最初の1尾を釣り上げる。綺麗な、立派な体型の秩父岩魚だ。
「私、もう満足です。」
嬉しそうに笑顔が浮かんだ。

水量少ないポイントで、大型岩魚がユラユラ遊んでいるのを確認した。
「トンちゃん、でかいの居るよ。竿出して。」
「いや、僕はもう釣ったから、どうぞやってください。」
この地の満足感を味わったトンちゃんは遠慮深い。
そうだ、幸四郎に釣らせようと手招きして呼び寄せる。幸四郎は慎重に近付いて、竿を出す。傍で見ていた私たちの前で「掛かった!」と思った瞬間、仕掛けは虚しく空を切り、神の申し子の良型岩魚は白泡の中へ消えていった。
残念がる幸四郎は執拗に竿を出すが、再び喰いつくことはなかった。

キイくんにいたっては、良型を釣り上げると竿をたたんでしまった。
「オイラ、もう釣りはしなくていいや。」
その顔は、この地に辿り着いた満足感にひたっていた。
30分も竿を出していなかったな。

幸四郎も、1尾釣り上げて感動している。「もう、満足です。」という顔だ。

遅れて、私も竿を出した。幾つかのポイントは魚信がなかったが、それでもしっかり岩魚を1尾釣った。
皆、「もう、満足です。これ以上望みません。」と竿をたたんだ。
それは、この場の雰囲気がそうさせたのかも知れない。無用な殺生や、岩魚を傷つける行為は慎むべき地なのだ。そのことを皆察知していた。

6時間半歩いて、釣りは僅か2時間足らず。しかも、友の釣る姿を見ている時間がほとんどだった。これが、深山幽谷の山釣りの真骨頂だと感じた。


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