紅茶をいただいた。
さっそく夜中にひとり、
いつものティーパックじゃない
上質な紅茶を飲みつつ、
買ったばかりのレコードを聴きながら
プチ贅沢な気分を味わってると、
ふと、紅茶にまつわる印象深い方を思い出した。
眼光鋭い年配の方だった。
自分はまだ学生で、
ほとんどカフェバイトで生計を立てていた頃、
その方は週に一度かニ度、
夜も更けた22時ごろカフェにいらっしゃった。
確かいつも決まって注文するのはダージリンティー。
まるで映画のゴッドファーザーを思わせるような、
シックでクールなスーツでキメていて、
何だかただ者ではない雰囲気を醸し出してはいたけれど、
とても気さくな方で
よく挨拶を交わすようになった。
ある時、
その方が紅茶の葉っぱを小分けにしてくださった。
聞けば紅茶のオークションで競り落とし、
自分で調合したものだという。
どうやら、とても貴重なモノらしい。
袋には、自分が名付けたオリジナルの名前が、
金色のペンでなぐり書きされていた。
喜び勇んでウチに帰りさっそく飲んでみた。
これがまた、とてつもなくウマイ!
後日お礼を言うと、こんなことを言われた、
「1回で飲むなんてもったいないな〜
あれは3回に分けて飲むもんなんだよ。」
早速ウチに戻ってやってみる。
なんと、3回とも味が変わるのだ。
そしてどれも、やっぱり激しくウマイ。
やがて大学の卒業も間近に控え
ほぼバイトの最終日が近付いた頃、
初めてその方と席に座ってお話をする機会があった。
短い時間だけどしばしの談笑中、
ふと、愛用のステッキの先端をクルクルと回し
中から液体が入った小瓶を取り出して
おもむろに紅茶のポットに混ぜた。
どうやらその液体は、ブランデーらしい。
「コレね、いーもんだからキミは一生飲めないかもよ。」
ニヤっと笑ってそう言いった。
その方がいつもダージリンティーばかりを
注文する理由が、初めて分った。
ひとクチだけいただいたその時の紅茶の味は、
残念ながらあまりよく覚えてません(笑)。
そういえば!と思い立って
キッチンをガサゴソあさってみると、
ナントその時いただいた紅茶の袋を発見!
そん時の味はサスガにもうしないだろうけど、
せっかくだから後生大事に取っておこう。
なんとなくそー思った。

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