スパイダーマン3  新作レビュー

見た日/5月某日 ★★★

シリーズ3作目にして、テンションも下がらず、面白さをキープしている。

1作目から問いかけてきた「正義とは何か」というテーマが、より深く掘り下げられながら、テンポもアクションも特撮もレベルは最上級。原作コミックに出てくる悪役たちがどんどん出てくるが、映画で大切にしてきたピーターやMJ、ハリーら登場人物たちの感情もていねいに描かれる。

 酷評もあったので、ちょっと不安もあったが、そんなもの、ぶっ飛ばすぐらいの勢いが映画にあった。作品のまとまり的は「2」の方がよかったと思うが、現代の世相を反映したヒーロー物として、大変によくできている。

 このシリーズの成功は、監督にサム・ライミを起用したことが大きい。サム・ライミと言えば、自主映画のノリで撮った「死霊のはらわた」でデビュー以来、スピード感ある独特な映像で人々を魅了したきたが、最近はその映像美に加え、人間の心の「闇」をエンタテイメントで描くことではかなりの才を見せている。

 とくに単純な強盗計画がそれぞれの思惑の違いからあらぬ方向に展開していく「シンプル・プラン」や、人の心が見えるばかりに犯罪に巻き込まれていく女性を描いた「ギフト」などは秀作だ。中でもサム・ライミが描いてきた心の「闇」とアクション、ヒーロー物をミックスさせた「ダークマン」は大傑作だと思う。

 スパイダーマンシリーズの「1」は、「ダークマン」が大好きな身としては少々物足りなかったが、それでも特殊な力を手にした等身大の高校生、ピーターの戸惑いがよく表現されていたし、死んだ叔父の遺言「大きな力を手にしたものには、大きな責任が伴う」は、このシリーズを貫くキイワードにもなるのだが、この辺りはサム・ライミの味がよく出ている。

 続く「2」はサム・ライミテイスト爆発で、ヒーローと現実の厳しい生活との間で悩み、揺れるピーターの描写が秀逸だった。敵役たちとの対比もピーターの苦悩を浮かび上がらせ、アクション、特撮のバランスも非常によかった。

 今作は今や「スパイダーマン」がヒーローとして認知され、恋人との仲も順調なピーターが天狗になっちゃって、謎の生命体に取り付かれ、ブラックスパイダーマンとなって心の闇に支配される、という展開になるのだが、「2」で見せた「ヒーローとしての苦悩」を掘り下げながら、「1」で提示した「大きな力を手にしたものには大きな責任が伴う」というシリーズの根本ともいうべきテーマを扱い、一応、物語も完結させている。

 劇中、星条旗の前でカッコよくポーズを決めるスパイダーマンが出てくる。そしてこの映画のスパイダーマンは、ヒーローではあるが、本人の意思とは関係なく、実は災いの原因にもなっていたりする。この辺りに、サム・ライミのアメリカに対する、大きな力を手にしながら、その使い方を誤ってないか?という問いかけにも思える。

 このシリーズ、1作目公開直前に9・11が勃発し、一部、映像の変更を余儀なくされた、という経緯がある。スパイダーマンはアメリカ全体でも世界でもなく、あくまでニューヨークという街を守るローカル・ヒーローであり、そのことは映画でも強調されている。どちらかと言えば明るい「1」に比べ、「2」「3」はどこか暗さも漂う。劇中のピーター・パーカー=スパイダーマンが悩み、苦しみ、成長し、傷つきながらも正義を守ろうとする姿は、9・11という現実とリンクしているだろうし、スパイダーマンが事件後のニューヨーク市民を励ましているようにも見える。
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