今村昌平監督逝去  映画つれづれ

 今村昌平監督が亡くなられた…。

 日本映画界、いや、世界の映画界にとって、大きな損失だろう。今村監督の凄さは、晩年になっても尚、否、晩年になればなるほど、それまでの作品群を凌駕するエネルギッシュな作品を生み続けていたことだと思う。

 黒澤明でさえ、晩年は作品が放つエネルギーがなくなっていったのに、今村監督の作品は最後の最後まで作品に「人間が生きるエネルギー」に満ち溢れていた。とくに「うなぎ」「赤い橋の下のぬるい水」などは、人間が生きる根源の1つである「性」を追求していて、その表現力には驚いた。

 「にっぽん昆虫記」も「復讐するは我にあり」も「女衒ZEGEN」も「カンゾー先生」も「ええじゃないか」も、全て人間の生と性を描き、「生きる」という根本を描いていた。今村監督の映画を見ると、なぜだか元気になるのだ。どの作品にも漂う優れたユーモア感覚も作品の特徴だった。姥捨て山を描いた「楢山節考」も、寂しい映画ではなかった。

 遺作は短編だったらしいが、「うなぎ」「カンゾー先生」「赤い橋の…」でまた新しい境地を見出していただけに、また、猥雑で人の生と性が満ち満ちた長編作品が見たかった、と思うのは僕だけじゃないだろう。

 今村監督のご冥福を心から祈りたい。
 
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サヨナラCOLOR  DVD・ビデオレビュー

見た日/5月某日 ★★★

 これ、見逃していて、ぜひ見たかった1本。

 居酒屋の女将を愛人に持ち、女子高校生と援助交際をするような医者だが、ピュアな面を持つ主人公の竹中直人が務める病院に、高校時代の同級生で今も想い続けている初恋の人、原田知世が入院してくる。彼女は重い子宮ガンで、竹中扮する医師は全力で治療に当たるが…。

 「難病」「恋愛」というベタベタな要素をベタにせず、ゆるゆるなテンポとほんわかしたユーモアに包みながらも、それでいて人を愛し、想い続ける大切さをきちんと描き切るのはさすがに竹中監督。

 監督デビュー作「無能の人」にも通じる、冷めたユーモア感覚に見え隠れするヒューマニズムが「照れ」のように写り、見ていて心地よい。大人になっても少女の可憐さを持つ原田知世のキャスティングがはまっている。この映画の原田知世は、「時をかける少女」の芳山和子がそのまま成長したような透明感がある。

 多分、竹中監督自身の青春時代への想いを具現化した部分も多いのだろう。これまでの竹中監督の作品群と比べても私小説的な感じがとくに強い作品で、決してテンポはよくないし、豪華なキャスティングもはまってない部分があるものの、実にさわやかで後味のいいラブストーリーになっている。

 
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佐々部映画の『家族』  佐々部監督の世界

佐々部監督作品を紐解くキーワードの1つに、「家族」がある。

 監督自身、講演やインタビューなどで「僕にとって一番大切なのは家族。2番目が映画」と発言されているが、監督が作る作品には、確かに「家族」という存在がどの作品にも必ず大きなキーワードになっている。

 例えばデビュー作の「陽はまた昇る」。この作品は、新型ホームビデオデッキ機の開発に賭ける、企業戦士たちの話である。主人公やその部下、上司たちとの対立、会社内外での駆け引きが様々なエピソードとなって鮮やかに描かれるが、佐々部監督は主人公、加賀谷を支えながらも病気になってしまう妻、息子との対立を挿入することで、作品そのものを重層にした。

 決して長いエピソードではないが、さりげなく家族の描写を入れることで、なぜ加賀谷がいろいろなものを犠牲にしてまで新機種開発に取り組むのか、という理由が浮かび上がる。自分の家族を守り、従業員の家族を守るために絶対に譲れない、という主人公の意志と想いが観客に伝わり、感動が幾重にも重なる。

 佐々部映画の「家族」は決して幸せばかりではない。「カーテンコール」の安川家には、不幸の連続が襲いかかる。最後はお母さんが亡くなり、父と娘は離れ離れになる。「チルソクの夏」の遠藤家も裕福ではない。流しの父親は、カラオケの台頭で、仕事がなくなりつつある。「半落ち」の梶家は、長男が白血病で亡くなり、妻はアルツハイマーに犯され、夫は妻を手にかけてしまう…。

 こうやって文章に書くと正に不幸のオンパレードだが、どの家族も、どんなどん底にあっても、お互いを信じ、肩を寄せ合いながら、懸命にもがいて生きようとする。そして、佐々部映画の家族は、必ずラストには何らかの希望を見出し、「笑顔」で生きることを選択する。

 妻を殺した「半落ち」の梶でも、最後はある意味「家族」である骨髄提供者の少年の言葉によって救われ、生きる決意をするではないか。この少年の「言葉」は原作小説にはなく、佐々部監督の脚本によるものなので、正に佐々部テイストと言っていいと思う。

 私たちの現実の「家族」も、死に別れや確執など、辛いことはたくさんある。でも、「家族」だからこそ、お互いを信じ、乗り越えられる絆があるものだ。佐々部映画は、そんな「家族」の大切さを、とてもリアルに感じさせてくれる。そしてリアルだからこそ、そこに「希望」を感じることが出来るのだ。
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寝ずの番  新作レビュー

見た日/5月某日 ★★★

この映画を見て、学生時代のサークルの飲み会を思い出した。そのサークルは女人禁制で(と言うより女性が近づかなかっただけだが…)オトコばかりの飲み会になるとそれはもうスゴイ騒ぎになったものだ。

 大学1年のとき、その飲み会で初めて「春歌」を聞いた。チ○ポやマ○コと言った言葉が、日本調の調べに乗って、軽やかに歌われる。

 「これ、誰が考えたんですか?」先輩に聞くと、「知らねえよ。代々、伝わっているものなんだ」と言う。後で知ったことだが、元になっている歌ともその歌はちょっと違った。長い伝聞で、独特な進化をしたのだろう。

 僕は4年生になると、その春歌群の唯一の伝承者になっていて、後輩たちにはいくら教えても覚えてくれなかった。最近の学生たちは春歌なんて知らないだろう、多分。

 で、この映画である。楽しくて、面白い。「艶」と「粋」にこだわり、大人のエロ話満載で、「テレビでは絶対放映できない『映画』を作ろう」という作り手の意気込みも感じる。そう、テレビでは表現できない規制をぶっ飛ばす、これも映画の醍醐味の1つだ。

 ちょっとだけ出てくる高岡早紀が色っぽいが、前半は落語家たちの爆笑エピソード、後半は春歌の大合戦になる。後半のテンポがちょっぴり気になるが、キャスティングもよく、最後まで飽きさせない。

 「日本の大衆文化はエロにあり」とエロを愛する大人の1人として誇らしくも感じた。春歌は日本の大衆のエネルギーの1つだったはず。こういう猥雑さが実は社会には必要で、こういう裏文化がないと表の文化は絶対に育たないし、栄えない。

 そういう意味ではこの映画が今の時代に作られた意味は大きい。伊丹十三監督のテイストも感じるのは、マキノ雅彦監督が伊丹作品の常連だからこそだろう。
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佐々部映画の『自然体』  佐々部監督の世界

 佐々部監督作品の魅力の1つは、「役者さんが持つ魅力を引き出す」演出力にある、と前回書いたが、その最もな代表的なものは、「チルソクの夏」の陸上シーンだろう。

 監督自身、「本物の陸上競技を見せたい」と、主役4人の女子高生たちのキャスティングは、演技より陸上競技ができるかどうかにこだわった、という。それほどに見事な陸上シーンで、少女たちの肉体の躍動美には、とてつもない清々しさが画面からビンビン伝わってくる。

 この陸上シーンがリアルだからこそ、映画全体の高校生たちがうそ臭くないし、青春時代の誰もが持つ、キラキラした輝きがスクリーンを彩るのだろう。主演の水谷妃里は決してセリフ回しは上手くないが、普通の山口県の女子高生の会話になっていて、実に存在そのものが自然体でいい。

 「カーテンコール」に到っては、役者だけでなく、映画館自体が自然体だったが、役者のもならず、あんな昔ながらの映画館を探し出してロケすること自体、佐々部マジックというしかない。

俳優・香川照之さんはエッセイで天空(『映画の神様』)をも見方にする佐々部監督を「美味しい冷奴」に例えていたが、素材のよさを生かし、旨味を出す辺りは、極上のみりんのような監督さん、と言ってもいいだろう。

 

 
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佐々部映画の『笑顔』  佐々部監督の世界

敬愛する佐々部監督作品もどんどん論じていきたい。

 佐々部監督作品の魅力の1つに、俳優さんたちの「自然体」がある。佐々部監督の作品は、「役柄に役者を近づける」というより、「役者が持つ魅力に役柄を近づけている」という感じがする。

 例えば「半落ち」の梶。寺尾聡という役者が本来持つ聡明さと誠実さが佐々部演出によってにじみ出ているからこそ、梶が犯罪者ながらも、その犯罪の動機に神々しささえ覚えるのだ。

 また、他の映画では肩に力が入った演技ばかり目立っていた鶴田真由が「半落ち」で初めてナチュラルな等身大の女性を演じ、「カーテンコール」に到っては、実に自然な演技を見せていたのは、特筆すべきことだと思う。

 そして、佐々部監督作品のキーワードは、ご本人も時折指摘されているが、「笑顔」だ。映画の中で見せる登場人物たちの笑顔の、何と素敵なことか。

 人は辛いときも、我慢するために「笑顔」を見せる。楽しいときも、もちろん「笑顔」を見せる。つまりどんなときでも、「笑顔」は人生そのものを表わしているのだ。佐々部映画には、そんな「笑顔」がいっぱい描かれる。

 「チルソクの夏」で、安君と港で別れる郁子。「安くーん!」絶叫したあと、郁子は泣きながら、笑顔になる。それは、悲しいけれど、また会えるよね、という未来がいっぱいある、思春期の少女の「希望の笑顔」だ。

 また同じ「チルソクの夏」で、成長した郁子が見せる、安君と再会したときの笑顔。少女時代の笑顔を受けた、大人になって、様々な悲しみを越えて来たからこその、とびきりの「笑顔」だ。

 「カーテンコール」にも素敵な笑顔がたくさんある。数十年ぶりの舞台で、心からの「ありがとう」を魂から叫ぶ、修平の「笑顔」。演じる井上尭之さんの人生の年輪とも重なる。これも、「役者が持つ魅力」に、役柄がはまった瞬間だ。

 本当に佐々部監督は、キャスティングが上手い。今度の「出口のない海」では、どんな「笑顔」が見られるのだろうか。戦争映画だからこそ、ぜひ素敵な「笑顔」が出てくる、感動的な作品を期待したい。
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バトル・ロワイアルと深作欣二監督  映画つれづれ

深作欣二監督は、心から大好きな監督の1人だ。

 「仁義なき戦い」など、一連のバイオレンス傑作群から「宇宙からのメッセージ」などのトホホ大作群まで、嫌いな作品はない、と言っていい。

 そんな深作監督と生前、お会いする機会があった。「バトル・ロワイアル」のキャンペーンで山口県に来られたとき、地元の映画興業会社から高校生に試写を見せて監督と懇談会を開き、その模様を地元ケーブルテレビで放送したいので司会をやってくれ、という。

 もちろん、2つ返事でOKしたが、テレビ放映されたにもかかわらず、僕が司会なのでかなりマニアックな懇談会になってしまった。が、しかし、当時、この映画はR15指定になって、国会でも議論になっていたのに、高校生試写会をやった、我らが地元の毎日興業という会社はすごいと思ったし、協力した2つの高校の先生が快諾した、というのも拍手喝采だった。

 このとき、ある女子高校生が、映画の感想を求められ、「キタノ先生が可哀相」と言った。この映画のキタノ先生は随分ひどい先生なのだが、映画に込められた暴力の裏にある虚無感や無意味をこの女子高生は1度映画を見ただけで見抜いた訳で、この感性に深作監督は大感激。このあと、あちこちのキャンペーンでこの話をしていたそうだ。

 「ヘンな大人は暴力シーンがあるだけで誤解するけどね。子供たちにはちゃんと届いている」。このときの監督の言葉に感動した。

 キャンペーン後、空港までの車中で監督、ご子息の深作健太監督と交わした映画談義は一生忘れられない思い出だ。とくに「復活の日」のときの外国人俳優のエピソードは楽しかった。その内容はいずれこのブログで記したい…。

 深作健太監督のその後の大活躍を見ると懐かしいが、早く「スケバン刑事」が見たいなあ、と思うきょうこのごろだ。
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長澤まさみさんのこと  映画つれづれ

長澤まさみさんの活躍が目覚しい。

昨年の「タッチ」に続いて今年は「ラフ」で主演するらしいが、テレビドラマにも出ているものの、あくまで「映画」中心なのが、とてもいい。東宝芸能さん、このまま「映画女優」として彼女を成長させてくださいな!お願いしまっせ!

実は彼女、山口県徳山市(現周南市ね)を舞台にした「ロボコン」のとき、お目にかかっている。

僕はそのとき、「ロボコン」市民応援団の事務局で、ロケやキャンペーンの
お手伝いをさせていただいた。

キャンペーンでは、僕が当時司会をやっていた地元CATVの番組にゲストで出演してもらい、舞台となった高専では、彼女が映画と同じ制服姿で登場。役名の「葉沢里美」として、ロボット部の全国大会の壮行会、という設定にして、クイズ大会などをやったが、このときの司会役も務めさせていただいた。

今考えれば夢のようなお話だが、当時はこんなにブレイクするとは、僕も思わなかった。

当時、長澤さんは中学3年生の15歳。「画面で見るより背が高くて細いなー」が第一印象。今年、高校を卒業したというから3年前、ということになるが、普段はとてもシャイな感じなのに、カメラの前ではまぶしいほどキラキラしていたのが印象的で、オーラも抜群だった。

最近の彼女のプロフィールを見ると、「ロボコン」の「ロ」の字も出てこないが、今だにインタビューなどで「『ロボコン』で初めて映画、演技の楽しさを知った」というようなことを言っていて、とても微笑ましい。

キャンペーンのとき、長澤さんと映画の話をしたら、彼女、実に映画に詳しい。とくに日本映画をよく見ていて、「私、日本映画で頑張っていくので、なるべく日本映画を見るようにしています」とのこと。「最近、何見たの?」と聞くと「さよなら、クロ」を見たとかで、実にその評論眼も的確だった。

「この女優さんはすごいや。絶対伸びるゾ」と思ったが、案の定だった。これからの活躍を期待したい。
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大停電の夜に  DVD・ビデオレビュー

見た日/5月某日 ★★
 クリスマス・イブの夜、大停電になった東京で起きる、さまざまな人間模様を描く群像劇。いいプロットだとは思うし、絵もきれい。キャストも魅力的だが、どうも脚本に欠陥があるのか、一つ一つのエピソードが盛り上がらない。それぞれの物語に出てくる人物が全て表面的で薄く、いわゆる「人間が描かれてない」ため、感情移入できない。オシャレな映画を作る、という志はそれで立派だと思うが、やはり人を描く以上、そこに流れる感情はきちんと描かないと、観客は感動してくれない、という典型的な作品になってしまった。原田知世はいくつになっても魅力的なのに、勿体ない。
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こんなパクリ映画があったら…  映画つれづれ

  古くは「カサブランカ」が「夜霧よ今夜はありがとう」に似ていたように、かつて、日本映画には、洋画のパクリというか、偶然(!)よく似たお話の映画があったものです。今も、韓国映画界や日本のテレビドラマなどで洋画に似たものをよく見かけますが、今回は、「この洋画を日本でパクるときは、こんな映画ができるといいな!」というテーマ(なんじゃそりゃ!)です。

★「マルコヴィッチの穴」…個性派俳優・ジョン・マルコヴィッチの穴に入れば、誰もがマルコヴィッチになれるという、奇天烈な大傑作映画。これを日本で作るとしたら…マルコヴィッチは……。やはり、本田博太郎氏しかいないでしょう。どんな普通の役も、徹底的に役作りをする、あの姿勢!!北京原人に成り切った、あの演技!!みんなで、本田博太郎になろう!!

★「フィールド・オブ・ドリームス」…日本に、真の野球文化が根づいてないことを考えると…。日本で作るなら、やっぱり「相撲」でしょう。死んだ父親が、学生相撲チャンピオンで、自分も高砂部屋に入ることを夢見ながら、ただの平凡なちゃんこ鍋屋の親父が、ある日「それを作れば彼が来る」と神の啓示を受け、自宅の小さな庭に土俵を作ると、双葉山が現れて…。主演は松村君か内山君で。

★「禁じられた遊び」…清水健太郎主演、共演勝新太郎。製作は角川春樹で…。

★「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」/最新技術のCGを駆使し、鶴田浩二、大河内伝次郎、萬屋錦之助、若山富三郎ら、往年の東映スターたちが、特殊メイクで若返った健さんとともに、東宝に殴りこみをかける…。面白くないか。

  …失礼しました。
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マンガの映画化マイベスト/トホホ編  マイベスト

  日本のマンガは世界に誇れるコンテンツだと思うが、時々何を勘違いしたのか、原作のテイストをまるで無視、大人の論理と無理解だけで映画化した、トンデモマンガ映画化作品が存在する!!!今回は、そんなトンデモマンガ映画化作品のマイベストを紹介しよう。次回(いつになるやら…)、マトモ編も期待してね!
 @デビルマン/問答無用!!!原作の壮大な世界観を、一ショッピングセンター内の争いに集約した、神、いや、悪魔もビビっておしっこをちびってしまう、恐るべき作品。いろいろすごいが、突然、時代錯誤の赤いブルマー姿のヒロインがハンドボール(!)を投げつけられていじめられたり、世界の破滅が迫り来る時、突然、ヒーローが稲刈り(!)をして「あ゛ー!!!」とすっとんきょうな奇声をあげたり、本田“北京原人”博太郎が内臓グシャグシャになって快楽の境地に到ったり…。とにかくヘン!ヘン!!ヘン!!!これを大真面目に作った映画会社の境地に感動!故・那須監督の本編遺作にして大異色作。

 Aドーベルマン刑事/御大・深作欣二監督作なのだが、原作がマグナムぶっ飛ばすワイルド刑事なのに、映画版は、何と、子豚をペットにして、街中を練り歩く、ちょっとイッちゃってる田舎上がりの刑事!!演じているのが千葉“サニ”真一なのだが、これならわざわざマンガ原作にする必要は何もないぞ!!タイトルが同じで、原作者がクレジットされているだけ、という快作。

 Bドカベン/これもスゴイ!!!殿間が川谷拓三だぞ!!当時、30歳は越えていると思うが…。これで中学生というから、びっくりたまげる。あと、山田太郎役と岩鬼役は、どう見ても、どこから見ても、本物の素人。超脱力系のセリフ回しに降参だ!!そして極めつけは、徳川監督役が何と、原作者の水島新司先生!!原作者自ら、自分の作り上げた世界観をぶち壊した、世界でも稀有な映画。水島先生のセリフ回しも……。選手役の永島敏行が唯一の救い。

 C野球狂の詩/同じく、水島先生の名作野球マンガを爆笑映画化したにっかつ作品。何しろ、ロマンポルノ体制だったにっかつが、満を持して製作した一般映画だけに、その気合は半端じゃない!!何せ、野村克也・現楽天監督も本人役で出演している!!もちろん脱力系演技&セリフ回しで!!しかし、スゴイのは野球シーン。どう見ても、草野球レベルで、プロ野球に見えない。小池朝雄の鉄五郎は、目の隈メイクが濃すぎて、ほとんど新春かくし芸大会状態だが、本人大真面目。そして、水原勇気役の木ノ内みどり(横浜いれぶんは名曲!)が華奢すぎて、またまた野球選手に見えず、フォームもメチャクチャ。これもスゴイが、「ドカベン」よりは、映画になっている。

 Dサイボーグ009超銀河伝説/これ、アニメブームの最中に作られた、名作マンガの劇場映画化作。実はこれ、原作の熱心なファンから見ると、ちょっとヘン。まず、原作ではシャイで繊細な009が、妙に威圧的で、他のサイボーグ戦士を叱ってリーダーぶるのだが、これには違和感があった。決定的なのは、戦いで全身武器の004が死んでしまうのだが、戦い終わると、何と、宇宙の神秘な力によって、生き返ってしまう!!それも、生身の身体で!!で、004は、ギルモア博士に「もう一度、改造してくれ!」と頼むのだ!!サイボーグ009という作品の魅力は「サイボーグに改造された人間の悲しみ」なのだが、せっかく人間に戻ったハインリッヒが何の疑問もなく、周りの仲間も反対せず、再改造を望むのは、どう考えてもおかしい!!実はこの映画、「スター・ウォーズ」の自称脚本チームの一員、という怪し〜いアメリカ人脚本家が脚本づくりに深く関わっている、イワクつきの作品。この人が関わると、映画がメチャクチャにるという…。「スター・ウォーズ」の大看板に、素直で何も知らない日本人がコロッと騙された、トホホアニメの決定版!!

 D位まで書いたら、疲れたのでこの辺りでやめるが、「8マン」やら「サーキットの狼」やら「瞳の中の訪問者」(ブラック・ジャックの実写映画化!)やら、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(両さんがせんだみつお!!)やら「みんなあげちゃう」やら、またいつか、語りましょう。
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海猿 THE RIMIT OF LOVE  新作レビュー

見た日/5月某日 ★★★★

 東宝とフジテレビがこれまで取り組んできた、マーケティングを徹底し、今の観客のニーズに応える商品づくりとしての「映画」として、ある面、最高の作品だと思う。ともすれば、そういう取り組みと、作品の面白さや評価は一致しないものだが、この映画は「面白い」ということでも徹底していて、そういう面の先輩のハリウッド大作映画が最近元気がないことを考えると、こういう映画が日本映画で出てきた意義は大きい。そういう意味で星4つ。

 後半の山場を何度も持ってくるベタベタな展開、鳴り止まない、ブラス主体で意識を高揚させる音楽、劇的な場面でのスローモーションの多用などなど、確かにあざといのだが、週末、「何か面白い映画を見ようよ」と映画館に駆けつけたカップルを感動させ、「あの映画よかったねー」「感動した」と言わせるには十分であり、満足すぎるぐらいだろう。

 もちろん単純に泣かせるばかりの映画だけじゃ困るが、日本映画全体の発展を考えると、大ヒットを狙い、観客が「面白くて感動できる」ために計算し、努力する映画は絶対必要だし、この作品はそこプラス、スタッフの苦労やキャストの気合も感じられ、見応えもあった。

 前作が「愛と青春の旅立ち」で、今回は「ポセイドンアドベンチャー」だったが、大規模なCGや特撮が使えない分、本物のフェリーと海上保安庁の全面協力による本物のヘリ、巡視艇の姿がかつてないスケール感も出している。全体をラブストーリー仕立てにしているのもいい感じ。

 ちなみに、このシリーズの脚本を担当しているのは山口県出身の福田靖さん!!「HERO」「救急病棟24時」などで注目された気鋭の脚本家だ。それも、僕の住んでいる街のとなりまち出身である。そのキャラクターの表現ではこの人は絶妙なダイアローグ力を持つが、今回も吹越満、大塚寧々演じる乗客の描写に、福田脚本の真骨頂を見た気がする。

 福田さんにはぜひ、山口を舞台にした本編の脚本を書いてほしい。

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明日の記憶  新作レビュー

見た日/5月某日 ★★★

 渡辺謙は病気を突然抱えた人の不安や焦りの表現が上手い。重病を克服した経験が演技に反映されていると思う。本来なら映画主演第1作になるはずだった「天と地と」を病気で無念の降板をした彼が、ハリウッドで大成功というキャリアを経て、初主演にして製作までした主演第1作の日本映画にこの「病気」というテーマを選んだ点に、渡辺謙の想いの深さと意気込みを感じる。

 それにしても、この映画の一番の圧巻は、ものすごい存在感で怪演を見せる、大滝秀治!!!うーむ、「砂の器」の加藤嘉を彷彿とさせる、怪演中の怪演!「パダライス」(分からない人は映画を見てネ)には大爆笑!!

 この映画が成功しているのは、やはり人のリアルな感情の揺れ動きをきちんと時勢に沿って描いているからだと思う。

 突然、重い病気になったら自分は、まず何を考えるのか、医者に対してどんな感情を抱くのか、どう悩むのか、家族はどう対処するのか?そのリアクションがとてもリアルで、よく描き込まれている。「認知症」がテーマだが、この辺りはどんな重病にも当てはまるので、この映画を見て身につまされた人は多いだろう。

 妻も「私がずっと支えます」と言いながらも、不安で仕方なく、時には爆発もするし、不満も漏らす。夫婦で家族と言ってももとは他人同士。感情の行き違いはもちろんある。信頼も、愛情も、憎しみも、実は紙一重。だからこそ、長年一緒に暮らせば愛憎を超越した慈しみがお互いに沸き起こる。

  僕も病気で母親を亡くしているし、自分自身も持病を抱えていて、入院経験もあり、結婚もしているので、主人公たちと苦しみのレベルは違うけれども、見ていて胸が苦しくなった。

  登場人物たちが「家族」というつながりの中で苦しみながらも、結局、「家族」という絆の中で癒される姿は切なく、温かい。ラスト近くの夫婦のシーンは秀逸で、風景の美しさとともに渡辺謙、樋口可南子の演技が胸を打つ。

  それともう一つ。糸井重里氏も指摘しているが、この映画で描かれている、広告代理店はとってもリアルだと思う。僕もメディアの仕事はしてはいるものの、こんな大きな代理店と仕事をしたことはないが、この映画に出てくるクリエイターさんや営業の人は「こういう人、いるよなー」という感じでした。
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