海猿 THE RIMIT OF LOVE  新作レビュー

見た日/5月某日 ★★★★

 東宝とフジテレビがこれまで取り組んできた、マーケティングを徹底し、今の観客のニーズに応える商品づくりとしての「映画」として、ある面、最高の作品だと思う。ともすれば、そういう取り組みと、作品の面白さや評価は一致しないものだが、この映画は「面白い」ということでも徹底していて、そういう面の先輩のハリウッド大作映画が最近元気がないことを考えると、こういう映画が日本映画で出てきた意義は大きい。そういう意味で星4つ。

 後半の山場を何度も持ってくるベタベタな展開、鳴り止まない、ブラス主体で意識を高揚させる音楽、劇的な場面でのスローモーションの多用などなど、確かにあざといのだが、週末、「何か面白い映画を見ようよ」と映画館に駆けつけたカップルを感動させ、「あの映画よかったねー」「感動した」と言わせるには十分であり、満足すぎるぐらいだろう。

 もちろん単純に泣かせるばかりの映画だけじゃ困るが、日本映画全体の発展を考えると、大ヒットを狙い、観客が「面白くて感動できる」ために計算し、努力する映画は絶対必要だし、この作品はそこプラス、スタッフの苦労やキャストの気合も感じられ、見応えもあった。

 前作が「愛と青春の旅立ち」で、今回は「ポセイドンアドベンチャー」だったが、大規模なCGや特撮が使えない分、本物のフェリーと海上保安庁の全面協力による本物のヘリ、巡視艇の姿がかつてないスケール感も出している。全体をラブストーリー仕立てにしているのもいい感じ。

 ちなみに、このシリーズの脚本を担当しているのは山口県出身の福田靖さん!!「HERO」「救急病棟24時」などで注目された気鋭の脚本家だ。それも、僕の住んでいる街のとなりまち出身である。そのキャラクターの表現ではこの人は絶妙なダイアローグ力を持つが、今回も吹越満、大塚寧々演じる乗客の描写に、福田脚本の真骨頂を見た気がする。

 福田さんにはぜひ、山口を舞台にした本編の脚本を書いてほしい。

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明日の記憶  新作レビュー

見た日/5月某日 ★★★

 渡辺謙は病気を突然抱えた人の不安や焦りの表現が上手い。重病を克服した経験が演技に反映されていると思う。本来なら映画主演第1作になるはずだった「天と地と」を病気で無念の降板をした彼が、ハリウッドで大成功というキャリアを経て、初主演にして製作までした主演第1作の日本映画にこの「病気」というテーマを選んだ点に、渡辺謙の想いの深さと意気込みを感じる。

 それにしても、この映画の一番の圧巻は、ものすごい存在感で怪演を見せる、大滝秀治!!!うーむ、「砂の器」の加藤嘉を彷彿とさせる、怪演中の怪演!「パダライス」(分からない人は映画を見てネ)には大爆笑!!

 この映画が成功しているのは、やはり人のリアルな感情の揺れ動きをきちんと時勢に沿って描いているからだと思う。

 突然、重い病気になったら自分は、まず何を考えるのか、医者に対してどんな感情を抱くのか、どう悩むのか、家族はどう対処するのか?そのリアクションがとてもリアルで、よく描き込まれている。「認知症」がテーマだが、この辺りはどんな重病にも当てはまるので、この映画を見て身につまされた人は多いだろう。

 妻も「私がずっと支えます」と言いながらも、不安で仕方なく、時には爆発もするし、不満も漏らす。夫婦で家族と言ってももとは他人同士。感情の行き違いはもちろんある。信頼も、愛情も、憎しみも、実は紙一重。だからこそ、長年一緒に暮らせば愛憎を超越した慈しみがお互いに沸き起こる。

  僕も病気で母親を亡くしているし、自分自身も持病を抱えていて、入院経験もあり、結婚もしているので、主人公たちと苦しみのレベルは違うけれども、見ていて胸が苦しくなった。

  登場人物たちが「家族」というつながりの中で苦しみながらも、結局、「家族」という絆の中で癒される姿は切なく、温かい。ラスト近くの夫婦のシーンは秀逸で、風景の美しさとともに渡辺謙、樋口可南子の演技が胸を打つ。

  それともう一つ。糸井重里氏も指摘しているが、この映画で描かれている、広告代理店はとってもリアルだと思う。僕もメディアの仕事はしてはいるものの、こんな大きな代理店と仕事をしたことはないが、この映画に出てくるクリエイターさんや営業の人は「こういう人、いるよなー」という感じでした。
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