幸福の黄色いハンカチ  名作・傑作を語ろう!

 「出口のない海」で脚本を担当している、山田洋次監督の傑作。山田監督と言うと、どうしても「男はつらいよ」シリーズが一般的だが、それ以外にも傑作は数多い。

 最近の時代劇「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」も秀作だが、松竹大船調を正統に受け継いだ作風に加え、ユーモアあふれるコメディタッチの中にも細やかな人情を描き込んだ作品こそ、山田監督の真骨頂だと思う。

 個性あるキャラクターを活かし、多彩な山田ワールドが展開される寅さんももちろん素晴らしいが、役者さんの個性が100%以上に生かされ、ユーモアを交えながら物語が感動的に進むこの作品は、日本映画が描いてきた人間ドラマの到達点の一つと言っていいと思う。

 まず、健さんが素晴らしい。過去がありながら、妻への思いを引きずっている不器用な性格が、一つ一つのセリフ、たたずまいから痛いほど伝わる。これと対照的な武田鉄矢、桃井かおりの不器用な若いカップルも、今の芸達者ぶりとは全然違う、振る舞いやセリフを言うときの自然さが素晴らしい。

 不器用だけど心優しい男と若いカップルが、大自然豊かな北海道で出会い、お互いに刺激しあいながら旅をし、最後は分かり合って感動のラストーと向かう。ロードムービーとしても秀逸だが、この3人のやり取りがいい。

 さりげないシーンだが、健さんが桃井かおりに「姉ちゃん、何の仕事してんの?」と尋ね、列車の車内販売をしている、あれも結構大変だ、と受け答えをする場面が印象的だ。3人の心が微妙に近づいていることが何気ないセリフから分かる。公開当時、僕は中学生だったが、このシーンに「山田監督ってすごいなー」と思ったことがある。(ませたガキだ)

 あと、佐藤勝の音楽が印象的だ。佐藤勝のスコアはメロディアスではないし、どの作品も同じような音使いなのだが、最近の映画音楽のように、やたら起伏のあるメロディーで映像世界を邪魔することは絶対にしない。

 それでいて、映像の効果を高める情感ある音楽を付ける「映画音楽の作曲家」としてはプロ中のプロだが、この作品でもラストのハンカチがはためく場面などで、佐藤勝の実力が発揮されている。

 そうそう、この映画、「チルソクの夏」でも上野樹里扮する真理とボーイフレンドの宅島先輩がデートする映画として登場します。
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仁義なき戦い  名作・傑作を語ろう!

 このカテゴリでは、僕が大好きな名作・傑作を取り上げたいと思います。皆さんのその作品に対する思い出や意見もどしどし聞かせてくたざいね。

 で、第1回は深作欣二監督作「仁義なき戦い」!

 津島利章作曲のテーマ曲は、布袋さんにアレンジされ、クラブでもかかっているぐらいメジャーになっちゃった。あの甲高いトランペットのチープなメロディーに、原爆雲の画像、そして小池朝雄のナレーションが流れてきただけで、背中がゾクゾクする、バイオレンス映画の最高傑作だと思う。

 このシリーズ、ものすごくたくさんある。ちなみに深作監督作品は最初の「仁義なき戦い」以降、「仁義なき戦い 広島死闘篇」「仁義なき戦い 代理戦争」「仁義なき戦い 頂上作戦」「仁義なき戦い 完結篇」「新仁義なき戦い」「新仁義なき戦い 組長の首」「新仁義なき戦い 組長最後の日」と8本で、他に工藤栄一監督作もあるし、阪本順治監督のリメイク作もある。

 でも、こずるい金子信雄扮する親分の山守組の成立、分裂、抗争を描く本来の“仁義なき戦い”は第1作から広島死闘篇、代理戦争、頂上作戦を経て、完結篇に到るまでの5本で、「新仁義なき戦い」は山守組が舞台ではあるが主人公の菅原文太アニイの名前がそれまでの広能できなく、世界観がちょっぴり違う。あとは出ている人は同じでも、舞台や設定は全然別のものだ。

 ファンの間では「広島死闘篇」の人気が高いが、シリーズ第1作はやはり、インパクトがあった。腕でも何でもぶった切る容赦ないヤクザの世界。手持ちカメラを駆使した、荒く、揺れる画面に展開するど迫力のアクションシーン。戦後間もない闇市の雰囲気、菅原文太や梅宮辰夫ら主役陣から脇役まで、役者たち全員のギラギラした顔、演技。そして子分でなくてもイライラする山守親分のズルさと脳髄に入ってくるようなイヤーな甲高い声…。

 とくに手持ちカメラを使ったアクションシーンは画期的。画面が安定しているとか何とかは関係なしに、画面が揺れまくるのだが、これが闇市のセットとも相乗効果をあげ、ドキュメンタリーのような様相を見せる。この手法はのちのちのジョン・ウー監督やタランティーノ監督に大きな影響を与えた。

 深作監督が描く「暴力」は、生前、監督を取材させていただいた時、少年時代に経験した戦争によって痛感した国家への無力感や、暴力は暴力しか生まないことへの怒りがベースになっている、と感じたことがある。

 この作品も凄まじいまでの男たちのエネルギーが描かれるが、殺伐とした時代に、平気で上も下も裏切る親分に対して「仁義もクソもあるかい」と切れまくり、暴力に走る広能たちを、深作監督は徹底して描いている。

 人間は優しいだけでなく、時折、底知れぬ暴力性を見せるものだ。実は誰もが持っている「人間の暴力性」を、リアルに描いているからこそ、この映画は傑作なのであり、時代を経ても色あせない魅力を持っているのだと思う。
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ガンバレ!『出口』@/音楽  ガンバレ!「出口のない海」

 いよいよ9月、佐々部監督の最新作「出口のない海」が公開されます。
 この映画は第二次世界大戦末期、日本軍が起死回生の特攻兵器として開発した、人間魚雷「回天」搭乗を志願しながら、恋やスポーツへの夢をあきらめなかった若者を描いています。

 おたっきーは、この「回天」の発射訓練基地があった光市、周南市(旧徳山市)に挟まれた下松市に住んでいますが、記者時代から「回天」は何度も取材し、思い入れもあります。そして何より敬愛する佐々部監督が、このテーマに取り組んだ、ということで、このブログでも「出口のない海」を応援し、たくさんの皆様に見ていただきたく、思ったこと、感じたことをどんどん書いて行きたいと思います!

 第1回はまず、音楽について、です。「出口のない海」の公式HPがリニューアルされましたが、ページを開くと、素敵な画像とともに、非常に切ない、素敵なピアノの調べが聴こえてきます。

 今回の音楽担当は作曲家・ピアニストの、加羽沢美濃さん。加羽沢さんは「チルソクの夏」「四日間の奇蹟」に続き、3作目の佐々部作品になり、佐々部組の常連スタッフです。

 他のスコアをまだ聞いてないので全体的な感想はまだ言えませんが、このHPでのテーマ曲を聴く限り、見事に今回の「出口のない海」という作品世界を現わした、名曲だと思います。

 「チルソク」は青春の切なさと躍動感あふれるメロディー、「四日間」はしっとりとした癒しを感じるメロディーが印象的でしたが、今度の曲はメジャー音階が主流だった前2作のメロディーと違い、マイナー調を基調としながら、起伏のある、実に美しいメロディーが展開されます。

 まず、最初のピアノのイントロが素晴らしい!単音で、高音域を使った、切ないフレーズが泣かせます。そして、ゆっくりと、主題のメロディーがピアノソロで奏でられます。そして…重厚なストリングスがもう一度主題を奏で、ダイナミックな展開部のメロディーと続きます。この部分は、名曲「チルソクの約束」の展開部を思わせながらも、さらに感動的な音使いで感動させてくれます。

 もう、文字で書いても訳が分からないと思うので、ぜひ、「出口のない海」公式HPにアクセスし、美しい画像とともに、その素晴らしさを味わってみてください!!このブログのリンク集からもアクセスできます!!!

 監督の公式HPによると、音楽録音は北京でされたということなので、他の曲では、多分雄大なオーケストレーションももっと聞けるはず。早くサントラが聞きたいよう!!!
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アニメ映画マイベスト  マイベスト

アニメ映画のフェイバリットフィルム10本をあげてみました。最近はほとんどアニメを見てないので、どうしても最近の作品は少ないですな。

@ルパン三世カリオストロの城
 中学3年のとき、1日3回、毎週日曜日に通って、公開時だけで10回は見た。アホですなー。宮崎駿監督第1作にしてこれが最高傑作だと思う。「ナウシカ」以降、作品に思想性が出てからも宮崎アニメはよいが、素直にこれが一番好き。ストーリー展開、技術、音楽、セリフ、すべて完璧。

A映画「クレヨンしんちゃん〜モーレツ!オトナ帝国の逆襲」
 詳細はこのブログで何度も論じているので省略。オトナも子供も楽しめるが、楽しめるツボが大人と子供とでは違うのがミソ。でも何度見ても泣ける。

B銀河鉄道999
 1978年度の東映動画作品だが、作画の質は当時の最高レベルではないだろうか。松本零士の魅力的な作品世界に加え、丁寧な作画、りんたろうのダイナミックな演出、青木望のウエルメイドな音楽、野沢雅子、池田昌子の熱演、どれも最高。当時は原作に描かれてなかったラストのナゾがわかる、というのが売りだったが、少年が成長する1本の物語としてもよく練られている。

C機動戦士ガンダム〜逆襲のシャア
 中学時代、テレビで出会った「ガンダム」は衝撃的だった。劇場用ファーストガンダム3部作から今のZまで、全て思い入れはあるが、戦争における生と死、人間の新たな覚醒という富野監督が追求したテーマ性ではこの作品が一番感動した。ラスト、無数の魂の火が現れるシーンは圧巻。TMネットワークの主題歌も、映画のテーマを捉えていて好ましい。

Dエースをねらえ!
 あれだけ大ヒットしたテレビアニメの映画化にしては、当時あまり話題にならなかったが、今やハム太郎劇場版ぐらいでしか目にしない出崎統監督のこの劇場版は、青春映画の大傑作!テニスをやめようとする岡ひろみを説得するマキの姿や、電話をキーポイントにした物語運び、原作より強調された宗方コーチと母親の関係など、一種哲学的な原作を深く掘り下げながら、味わいのある青春群像劇としてよく出来ている。線が多い劇画調のストップモーションなど、「宝島」や「家なき子」でもおなじみの、出崎監督、杉野昭夫作画監督名コンビの技が光る。あと、主題歌を歌っていたグループがどうしようもなく下手だったのが印象深い。

E火垂るの墓
 これも泣ける映画のところで詳細に述べているので省略。この間、テレビドラマ版を見たが、ヘボヘボなCGにがっかり。

F王立宇宙軍〜オネアミスの翼
 「エヴァンゲリオン」のガイナックス第1作にして、庵野秀明監督や岡田斗司夫さんら、そうそうたるメンバーがスタッフに加わっている作品。架空の地球で、初の有人宇宙飛行に臨む男たちを描いた群像劇。その作り込んだ独特な世界観とキャラクター設定は実に魅力的。坂本龍一の音楽もよかった。

G天空の城ラピュタ
 「ナウシカ」以降の宮崎アニメだと、何がいいかな、と考えたら、やっぱりラピュタかな、と。「トトロ」も好きだが…。ただ、ラピュタもラスト近く、主人公とヒロインが自分を犠牲にしようとするところは公開当時、理解ができなかった。ナウシカも自己犠牲がテーマだったし、ちょっと考え込んでしまった。

Hアイアン・ジャイアント
 外国映画唯一のランクイン。ピクサー社の諸作品もよかったが、これは一番泣けた、ということで…。

I宇宙戦艦ヤマト
 中学1年のとき、ヤマトが映画になる!ともうアニメファンは大騒ぎ。期待して映画館に駆けつけたものです。作画の乱れ、はしょった展開、そんなものはどうでもいい。ヤマトが映画になった、それだけで満足していたあのころ…。ああ、何もかもみな懐かしい…。
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バルトの楽園  新作レビュー

見た日/6月某日 ★★★

 東映が、「八高田山」「砂の器」「かあちゃん」などを製作したシナノ企画と組んで作った大作。第一次世界大戦当時、徳島県に実在したドイツ兵の捕虜収容所を舞台に、軍部に反発し、信念に基づいて捕虜たちを優遇した所長を描く。捕虜たちが収容所を去るときに感謝を込めてベートーベンの第九を演奏し、これが日本での第九初演だった、というエピソードを映画化したもの。

 最後の第九シーンは捕虜たちの演奏、合唱にしては上手過ぎるものの、なかなか感動的なのだが、出目昌信監督の演出は淡々としていて、最後のクライマックスに向けてなかなか盛り上がらない。かと言って一つ一つのエピソードは感動的にとようという意図も見えるので、ちょっと中途半端になってしまった。

 松平健はなかなかの好演で、この人はあばれん坊将軍以来、どうも役柄に恵まれなかったが、やっと活路を見出した、という感じ。そのほかの俳優陣については、配役はなかなか豪華なのだが、平田満ら達者な俳優を揃えていながらその魅力を生かしきれてない。


 いろいろ書いたが、最後の第九とエンドタイトルのカラヤン指揮、ベルリンフィルの第九がよかったので★はちょっと辛目の三つ。どうも、僕は東映作品には甘い。
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インサイド・マン  新作レビュー

見た日/6月某日 ★★★

いい意味で、期待を裏切ってくれた、上質な娯楽サスペンスだった。「マルコムX」などの社会派、スパイク・リーが切れ味のいい変化球を投げた、という感じ。

 いわゆる銀行強盗物なのだが、犯人たちはフツーの強盗ではなく、目的がはっきりしないまま、不思議な緊張感とスパイク・リーならではの人種偏見をネタにした適度なユーモアが続く。デンゼル・ワシントン扮する刑事が対応に追われる中、そこに強盗に入られた銀行の会長と、その会長に事件への対応を依頼されたクセ者の弁護士の話が絡み、話は意外な方向へと向いていく。

 読めない物語が切れ味のいい映像のリズムに乗って展開していく。弁護士がジョディ・フォスターというのが配役の妙で、出番は少ないものの、快作「フライト・プラン」よりはこっちの方がジョディを生かしているような気がする。

 後半、お話がひと段落してからの展開のテンポが緩くなって気になるのと、オチの展開と犯人たちの目的の一貫性に?なところがあるので★は三つにしたが、近年のハリウッドのクライム・ムービーでは久し振りに面白い作品を見た。

 
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佐賀のがばいばあちゃん  新作レビュー

見た日/6月某日 ★★★★

 「チルソクの夏」や「カーテンコール」もそうだが、こういう地方発信の日本映画は、うれしい。「海猿」のようなメジャー系配給会社とテレビ局がタッグを組んで作る娯楽大作映画が日本に生まれることも大切だが、その対極とも言うべき、こういう地方発信で地味ながら良心的な日本映画がどんどん作られることも大切だ。

 最近はフィルム・コミッションが各地に生まれ、映画が地方活性化の一翼を担っている面もあり、大変に好ましい。「海猿」も鹿児島や広島のFCが全面協力している。シネコンがたくさんでき、ハリウッドがちょっと元気がなく、良質で多面的なソフトが日本映画に求められるようになってきた。その点ではここ最近の日本映画界は元気もあるし、多彩なソフトがどんどん生まれ始めた。つまりは日本映画も「棲み分け」ができてきたのだろう。娯楽系、芸術系、アクション系…日本映画にいろんな選択肢があるのは、観客にとっても、映画界の活性化にとっても、とってもいいことだと思う。

 ただ、地元に経済的負担を強いる地方発信映画はどうかな、とも思う。エキストラやロケ地探し、チケット販売などで地元が協力するのはいいことだが、あくまで個人的意見ながら、製作費まで地元の企業が出資するのはかえって負担になるのでは…と思う。理想はプロダクションや配給会社が「熱い想い」からその土地にこだわった地方ロケをし、その「想い」に応えた地元の人々が見返りを求めずに協力する…。そこに、本当の地方発の映画の理想があると思う。

 そういう意味では、佐々部監督の「チルソクの夏」「カーテンコール」はその「理想」が形になった作品だった。

 話がそれたが、この映画もその「理想」の形の作品であったことは、十分スクリーンから伝わってきた。演出、脚本もオーソドックスだが、どんな困難や辛いことも、全て前向きにとらえるばあちゃんの至言の数々、役者たちの役柄に対する想いがスクリーンからしっかりと感じられる。

 一部セットもあるようだが、古い家屋や町並みなど、ロケ地の景観は見事。地元・佐賀の人々の献身的な協力もあったのだろう。スタッフのロケハンも大変だったと思うが、その努力が報われている。教室や運動会のシーンを見れば、地元の人たちの熱い「想い」もしっかり伝わってくる。

 構成もしっかりしているが、こういう映画を見ると、映画にとって脚本(ホン)とキャスティングがどれだけ大切か分かる。製作費はそんなにかかってないのだろうが、昭和30年代の雰囲気を、「ALWAYS」のように大金はかけなくても、しっかりした構成と役者の演技、美術スタッフの努力があればきちんと作れる、ということだろう。

 これは昨年のマイベストワン「カーテンコール」でもそうだった。

 あと、興味深かったのは、監督さんがテレビ制作会社の社長さん、という点と、配給が東映系のシネコンのTジョイということ。多分、映画完成まで、かなりの関係者の努力の道程があったのだろうな、と思った。

 そうそう、ちょっぴりだけ出てくる緒形拳、この人はやはり存在感がある。

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魔法戦隊マジレンジャーVSデカレンジャー  DVD・ビデオレビュー

見た日/最近 ★★★

 めでたいことで、東映のスーパー戦隊シリーズが今の「轟轟戦隊ボウケンジャー」で30作目を迎えた。このシリーズは、時代劇〜アクションと続く東映の歴史を踏まえた子供向けのヒーロー番組であり、研究すると、実に面白い面がある。その辺りは、このブログで新たに設けた「トクサツ魂!!」のカテゴリでいずれ詳しく論じたい。

 さて、このシリーズでは、シリーズ終了直後、Vシネマで現役戦隊と前戦隊の共演物をリリースする、というのが定番になっている。この「魔法戦隊マジレンジャーVSデカレンジャー」は現時点でのこのシリーズの最新作だ。

 「デカレンジャー」も「マジレンジャー」もテレビシリーズはかなり面白かったものの、劇場版は両作品とも出来が今一つだったのでこの「VS版」は心配したが、特にデカレンジャーのファンだった人にはたまらない内容になっていて、非常に面白い仕上がりになっている。

 これも脚本が「デカレンジャー」メイン作家だった荒川稔久だった点が大きいだろう。物語は現役のマジレンジャーよりデカレンジャーの方が中心で、家族戦隊であるマジレンの世界観を借りて、デカレンの刑事たちが、それぞれ「自分にとって家族とは何か?」を問い、結論を出す、という展開は秀逸だ。

 スーパー戦隊シリーズは政府など公共組織よりは民間の戦隊が多く、敵が出ているのにどうして軍隊も警察も出てこないの?てな調子なのだが、デカレンジャーはヒーローたちを「警察官」と位置付けたため、このシリーズでは珍しく、ある程度リアルな物語が描けた。

 また「太陽にほえろ!」「特捜最前線」などの設定、物語をインスパイアし、上手く昇華させたこともドラマをふくらませた要因だろう。犯罪者VS警察というドラマは物語も作りやすかったのか、キャラクターの性格付けも明確で、テレビシリーズはどの回も傑作が多かった。

 マジレンジャーも家族が一致団結する後半は面白かったが、ここ10年の中ではやはり圧倒的にデカレンジャーの完成度は高かった。だからこのVS版でも現職よりデカレンジャーに物語のシフトが行くのは仕方ないだろう。

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TAKESHI,S  DVD・ビデオレビュー

見た日/5月某日 ★★

北野武監督の世界観は嫌いではない。

デビュー作「その男、凶暴につき」は衝撃的だったし、「あの夏いちばん静かな海」は大好きだし「ソナチネ」も好き。「HANABI」もよかった。でも、この映画はちょっと辛かった。

「難解」「斬新」という評価もあったが、感覚としては「3−4x10月」と「HANABI」の間を行くような、おなじみの北野監督の世界。暴力と笑い、微妙な間がストーリーとは言えない世界の中で散文詩のように散らばっている。

決して映画の間は退屈しないし、ハッとする部分もあるが、北野監督の感性が映画の中で一人歩きしているのか、見ているこちらの感情の波が動かない。ポルノでもSFでも、芸術系でも、ストーリーがあってもなくても、やはり映画は「人間」を描いてなんぼのものだろう。どんな映画でも、観客の感情が動かないと、やっぱり辛い。

ただ、岸本加世子と、松村・内山コンビの存在感は印象に残る。
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ダヴィンチコード  新作レビュー

見た日/6月某日 ★★

 うーむ…。ロン・ハワードは好きな監督さんだが…。原作本はハードカバー上巻の途中で挫折したので、原作云々は言えないが、多分、監督、脚本家も、原作にこだわり過ぎ、振り回されたのではないだろうか。

 推測だが、「亡国のイージス」で寺尾聡扮する艦長が、恐らく原作では詳細に描かれ、説得力があったはずであろうクーデターを起こす理由が映画ではさっぱり分からなかったのと同じく、この映画ではトム・ハンクスの学者も、ヒロインの「アメリ」の女性学者も、ナゾの暗殺者も、ジャン・レノの警部も、多分原作では人間像が深いはずなのに、この映画では物語を描くのが精一杯なのでキャラクターが中途半端になっちゃった。

 「絵画に隠された歴史のナゾを解く」物語なのだから、ナゾ解きの部分が弱いと、どうしようもない。活字で読めばワクワクするのだろうが、映画ではその辺りが早口での説明になってしまった。

 この映画で語られる歴史のナゾが、キリスト教圏に生きる人と我々東洋人とでは受けるインパクトも興味も違うから無理もないが、サスペンスとしても今ひとつ、という感じだった。

 ただ、後半のサスペンスの盛り上げ方とルーブル美術館やヨーロッパの風景など、ところどころ見応えはあり、ロン・ハワード監督も力量を見せる。

 そう言えば、僕の好きなロン・ハワード監督作品は何だろう?トップは「シンデレラマン」か「バックドラフト」、次に「アポロ13」かな。
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嫌われ松子の一生  新作レビュー

見た日/5月某日 ★★★★

 こういう作品に出会うと、映画を見続けてきてよかったと思う。

 昭和から平成にかけて、今の日本の風俗や世相を描写しながら、教師からソープ嬢、殺人犯、引きこもりと転落していった不幸な女性の一生を、50年代風ハリウッド映画の雰囲気と、本格ミュージカルで彩った、驚天動地、不思議で新しい感覚の「映画」である。

 映画館の映像サイズ、音響施設でないと、この作品は見る価値は半減してしまう。やはりDVDやテレビサイズでは、作り手の野心的な意図は味わえないだろう。

 感心したのは、松子が不幸になっていくディティールや、どんな悲惨な状況にあってもささやかな幸せをつかもうとする、松子の「揺れ」や愛情、周囲の人物の想いなど、いわゆる「人間」がミュージカル仕立て、ファンタジーな様相にも関わらず、きちんと描きこまれていて、感情が観客に伝わってきたことだ。

 むしろ奇抜なミュージカルシーンや物語を彩るCGが、単なる飾りではなく、松子をはじめ、登場人物たちの感情を伝えるパフォーマンスの1つとして、物語からも浮かず、ちゃんと機能しているのには驚いた。

 とくに刑務所での生活を表現するダンスシーン、不倫での幸せを60年代のアメリカン・コメディの雰囲気で踊り、歌う「ハッピー・ウエンズデイ」は楽曲の良さ、振り付けに加え、そのシーンの「表現」という意味でも秀逸。「ハッピーウエンズデイ!」とさわやかに、幸せそうに歌いながら、そこかしら不幸な匂いがする、微妙な味付けがいい。

 ポップ感ばかりであまり感心しなかった中島哲也監督の前作「下妻物語」よりは、天と地ほどの差がある。俳優さんたちにきちんと演技をさせなかった前作と違い、きちんと役作りをし、松子という人物の自分のものにしている中谷美紀の想いや表現力が強くて優れているからこそ、ミュージカルやCGが浮きすぎず、邪魔にもならず、1つの効果になっていたのかもしれない。

 後半、松子の悲惨さが際立ってからのテンポの緩慢さがちょっと気になったものの、今年見た日本映画の中では最も印象的な1本になった。
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