佐賀のがばいばあちゃん  新作レビュー

見た日/6月某日 ★★★★

 「チルソクの夏」や「カーテンコール」もそうだが、こういう地方発信の日本映画は、うれしい。「海猿」のようなメジャー系配給会社とテレビ局がタッグを組んで作る娯楽大作映画が日本に生まれることも大切だが、その対極とも言うべき、こういう地方発信で地味ながら良心的な日本映画がどんどん作られることも大切だ。

 最近はフィルム・コミッションが各地に生まれ、映画が地方活性化の一翼を担っている面もあり、大変に好ましい。「海猿」も鹿児島や広島のFCが全面協力している。シネコンがたくさんでき、ハリウッドがちょっと元気がなく、良質で多面的なソフトが日本映画に求められるようになってきた。その点ではここ最近の日本映画界は元気もあるし、多彩なソフトがどんどん生まれ始めた。つまりは日本映画も「棲み分け」ができてきたのだろう。娯楽系、芸術系、アクション系…日本映画にいろんな選択肢があるのは、観客にとっても、映画界の活性化にとっても、とってもいいことだと思う。

 ただ、地元に経済的負担を強いる地方発信映画はどうかな、とも思う。エキストラやロケ地探し、チケット販売などで地元が協力するのはいいことだが、あくまで個人的意見ながら、製作費まで地元の企業が出資するのはかえって負担になるのでは…と思う。理想はプロダクションや配給会社が「熱い想い」からその土地にこだわった地方ロケをし、その「想い」に応えた地元の人々が見返りを求めずに協力する…。そこに、本当の地方発の映画の理想があると思う。

 そういう意味では、佐々部監督の「チルソクの夏」「カーテンコール」はその「理想」が形になった作品だった。

 話がそれたが、この映画もその「理想」の形の作品であったことは、十分スクリーンから伝わってきた。演出、脚本もオーソドックスだが、どんな困難や辛いことも、全て前向きにとらえるばあちゃんの至言の数々、役者たちの役柄に対する想いがスクリーンからしっかりと感じられる。

 一部セットもあるようだが、古い家屋や町並みなど、ロケ地の景観は見事。地元・佐賀の人々の献身的な協力もあったのだろう。スタッフのロケハンも大変だったと思うが、その努力が報われている。教室や運動会のシーンを見れば、地元の人たちの熱い「想い」もしっかり伝わってくる。

 構成もしっかりしているが、こういう映画を見ると、映画にとって脚本(ホン)とキャスティングがどれだけ大切か分かる。製作費はそんなにかかってないのだろうが、昭和30年代の雰囲気を、「ALWAYS」のように大金はかけなくても、しっかりした構成と役者の演技、美術スタッフの努力があればきちんと作れる、ということだろう。

 これは昨年のマイベストワン「カーテンコール」でもそうだった。

 あと、興味深かったのは、監督さんがテレビ制作会社の社長さん、という点と、配給が東映系のシネコンのTジョイということ。多分、映画完成まで、かなりの関係者の努力の道程があったのだろうな、と思った。

 そうそう、ちょっぴりだけ出てくる緒形拳、この人はやはり存在感がある。

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