スーパーマン リターンズ  新作レビュー

見た日/8月某日 ★★★

 いろんな意味で、9・11以降に作られたヒーロー物だなあ、と実感した。
 
 病んでいるアメリカには、やはり人々を救う「超絶な力」が必要なのだ。あるいは必要、とみんなが感じているのだ。しかし、その「力」を使う者も超人ではあるが、やはり人であり、人である以上、傷つき、自分の力に悩み、苦しむ。

 この辺りはイエス・キリストを彷彿とさせるが、この映画はしっかりと「スーパーマン」と「神」を対比させながら、神々しいものに対する人類の理想と希望を、ヒーロー物の形を借りてしっかりと描いている。

 単純に「スーパーマン」映画としても、1978年版に限りない愛情を持って作られており、はっきり言って78年版と翌年の2を見てないと意味不明なシーンも多い。逆にあのテーマ音楽、オープニングしかりで、少年時代にクリストファー・リーブの「スーパーマン」にはまった人なら、正に感涙物の作品に仕上がっている。

 最後のエンドタイトルで「クリストファー・リーブ夫妻に捧ぐ」とクレジットされるが、5年ぶりに帰ってきた悩めるスーパーマンが、恋人や周辺の変化に戸惑いながら、それでも人を助けることを選択するのは、宗教的な使命感に加え、半身不随になってなお、生きる意欲を失わず、チャリティ事業に生涯を捧げたクリストファー・リーブそのものを喚起させる。

 そうだ、これは、役者こそ違うが、正に「クリストファー・リーブ」の映画であり、パート1を見て感激し、励まされたというブライアン・シンガーが、彼に送った恩返しの映画でもあるのだろう。全編に優しさが満ちた、いいヒーロー映画である。

 ケビン・スペイシーのレックス・ルーサーも、秘書の姉ちゃんも、ロイス・レインも、気弱なカメラマンも、全然違う役者さんなのに、なぜか前作とだぶって違和感がないのはさすがだ。

 
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長州ファイブ  新作レビュー

見た日/8月某日 ★★★

 試写会で拝見しました。

 「長州ファイブ」とは、国禁を犯して藩からイギリスに留学した伊藤博文、山尾庸三、井上勝、遠藤勤助、井上馨という長州藩の若者たちのこと。イギリスの人がこう呼んだことに由来するのだが、この5人の若者たちはそれぞれ帰国してから自分たちが学んだことを国づくりに生かし、明治期における近代国家建設の礎となっている。

 伊藤は日本最初の内閣総理大臣を務め、山尾は今の東京大学工学部の工部大学校を設立するなど、日本工学の父と称され、井上勝は鉄道開設に尽力した。また遠藤は造幣局長として貨幣の整備を手がけ、井上馨は日本最初の外務大臣として明治外交の道を開くなど、5人はそれぞれ日本の近代化に大きな足跡を残している。

 5人の中でもっとも有名なのは伊藤博文だろうが、この映画は山尾に焦点を当てており、伊藤と井上馨が馬関戦争勃発で帰国してからは、実は聾唖教育のパイオニアでもある山尾のロンドンでのロマンチックなエピソードが中心となる。

 伊藤、井上は帰国後、高杉晋作らとともに幕府と戦うのだが、この辺りの活劇描写は一切なく、五十嵐監督は幕末に翻弄された青春群像よりは、国の礎になろうと留学した若者たちが、様々な境遇に遭遇しながら、やがてそれぞれの道に進んでいく姿を淡々と描いている。

 後半のポイントとなる、山尾と聴覚障害者の娘、エミリとのエピソードは、山尾が貧富の差という先進国の光と影を実感する重要な部分でもあるが、五十嵐監督はロマンチックさもほどほどに出しながら、ドラマチックになるのを抑えて演出していて、好感が持てた。

 活劇にせず、ファイブの心の動きを丁寧に撮っていることに様々な意見はあろう。事前にいろいろな評判は聞いていたが、実際に観るとなかなか面白い作品に仕上がっていて、やはり映画は観ないと何も言えないな、と実感した。

 志士たちの「高い志」そのものより、「志の微妙な変化」に重点を置いている点が微笑ましくもあるが、もどかしくもある。これはキャスティングにもよるのかもしれないし、演出なのかもしれないが、5人の役者から肝心の熱さが今1つ伝わらないのは、よく動くカメラとともに、この作品がやや不安定になっている原因かもしれない。ただし、それは長所と受け取る観客もいると思う。
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轟轟戦隊ボウケンジャー THE MOVIE 最強のプレシャス  新作レビュー

見た日/8月某日 ★★★

 戦隊シリーズも30作目。このシリーズはハリウッドや子供たちのその時折の流行を敏感に取り入れながら、ファンタジーや時代劇、ホラーなど、さまざまなジャンルに挑戦しながら進化してきた、稀有な幼児対象のヒーロー物だ。そのよい意味での蓄積が、この劇場版最新作にも現れていて、なかなか楽しめる作品に仕上がっていた。
 
 まず、最近の戦隊物が映画独自のドラマ性にこだわり過ぎ、最初に主題歌とタイトルバックを見せなかったのに対し、今回は短いオープニングに続いて、短めではあるが、ちゃんと主題歌を聞かせ、ヒーローたちをタイトルバックで見せてくれた。これは子供たちも劇場で主題歌も歌えるし、ワクワクもする。やっぱり戦隊物の最初はこれでしょう。

 物語の展開も早く、アクションもさりげなくもの凄いことをやって見せたりと、戦隊シリーズの長所をこれでもか、と見せてくれる。6人のヒーローたちも好演で、好感が持てる。

 惜しむらくはせっかくアジアのアクションスター・倉田保昭をゲストに迎えて映画ならではのスケール感を出そうとしながら、肝心の倉田のアクションが少々控え目なことと、物語はテレビシリーズを踏襲したために、かえってドラマ全体は新鮮味に少々欠けるものになってしまったことか。
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仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE  新作レビュー

見た日/8月某日 ★★

 「仮面ライダー生誕35周年記念作品」と肩に力が入っているのか、ストーリーも強引で、1時間ちょっとの中に詰め込みすぎて、消化不良の出来になったのは惜しい。

 このシリーズは結構みんな面白くて、ハリウッド製のヒーロー物に劣ってないなかなかの高レベル。とくに善と悪、仮面ライダーも怪人も、すべて正義と悪にもなり得るというテーマと、1万人のエキストラを集め、CGを駆使した巨大な怪物とのバトルをラストにして盛り上げた「仮面ライダー555パラダイス・ロスト」は最高傑作だと思う。

 テレビシリーズは今1つだったが、新旧ライダーの対立という構図で面白く見せた「仮面ライダー剣MISSING ACE」も捨て難い。今回のカブト映画版はそれとは逆で、テレビシリーズはなかなかの評判のようだが、この映画版はアナザーストーリーという点ではこれまでの作品と共通しているものの、脚本の矛盾点、荒らが多すぎる。そこそこ楽しめる仕上がりなのに、今1つ乗れないのが残念だ。

 それは主人公のキャラクターつくりにも由来している。役者の好感度は別として、この物語の主人公は行動や性格が破綻していて、感情移入できない。こういう映画を見ると、映画やドラマづくりにキャラクターの設定がどれだけ大切か、本当に実感させられる。ハリウッドの「スパイダーマン」も「スーパーマン」も、キャラクター物だからこそ、キャラクターの存在意義をしっかりと設定し、描きこむことで傑作になっているのだ。

 そういう意味では、このシリーズは「ウルトラマン」とともに、ハリウッドに対抗できる、日本の貴重なコンテンツだけに、次回に期待したい。
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上半期総括  マイベスト

 今年の1月から7月末まで、劇場で見た新作映画は29本!

 うーむ、例年に比べて少ない。通常なら、上半期でベストテンを組みたいところですが、見逃した佳作が多すぎるので(「花よりもなほ」や「ブロークバック・マウンテン」や「ジャーヘッド」や…あリ過ぎて書けまへん…)ので、見た映画全てを総括し、よかった順、印象に残った順に、点数とひとことコメントをつけて並べてみました!点数は100点満点で、()内の数字が点数です。

 見終わった直後に★の数が多くても、今、冷静に考えると結構しょーもなかったり、逆の作品もあります。皆さんの印象に残った上半期の作品は何ですか?下半期は頑張って、全盛期の半分以下ではありますが、100本制覇を目指して頑張ります!!(もち、DVD除く)

クラッシュ(92)=群像劇の真骨頂。マット・ディロン久し振り▽嫌われ松子の一生(88)=音楽、セリフ、映像、演出のミスマッチ&ベストマッチ▽ミュンヘン(85)=ドキュメンタリーをエンタテイメイントで描けるのはもって生まれた才能かな▽寝ずの番(80)=粋の勝利。木村何とかさんは変な刑事ドラマよりこの線で!▽SPIRIT(79)=カンフー映画の遺伝子は僕にも残っている▽インサイド・マン(75)=変化球の娯楽アクション▽単騎、千里を走る(75)=誰が何と言おうとナチュラル健さんを支持▽佐賀のがばいばあちゃん(70)=原作生かした脚本の勝利▽スタンド・アップ(68)=演出が丁寧▽クレヨンしんちゃん〜伝説を呼ぶ!踊れアミーゴ!〜(65)=アニメでしかできない表現は確かにある▽博士の愛した数式(63)=ルリ子姉さん以外役者は完璧、原作の弱さが脚本にも出たか▽間宮兄弟(62)=モリタイズムも遠くなった…と思いつつ、エリカ&景子姉妹の可愛さに興奮!▽小さき勇者たち〜ガメラ〜(60)=怪獣映画の新機軸。でもヒットしなかったので続かないのだろうな…▽ドラえもん〜のび太の恐竜2006〜(58)=いい意味でのリメイク▽デスノート(前編)(55)=日本映画の長所も出たベテラン監督渾身の娯楽作▽THE LIMIT OF LOVE〜海猿〜(53)=突っ込み所満載だが、ハリウッドへスタイルの志を買おう!でも、大事なドレスなら着て避難しよう!▽明日の記憶(50)=お話に救いようがないけど秀作。大滝秀治ってすごいよう、怖いよう▽シリアナ(49)=現代的なお話だがつながりが分かりにくい。ジョージ・クルーニー、いつ大統領選に出るの?▽プルーフ・オブ・マイライフ(45)=頭のいい人は大変なのね、という話。僕は算数できません▽日本沈没(44)=沈没シーンとラブシーン。並べても、同じ映画とは思えんのだな、これが▽Mi3(43)=面白かったけど、もう忘れました▽北斗の拳〜ラオウ伝殉愛の章〜(40)=好きだが絵がビデブ▽フライトプラン(39)=アラブの人に敬意を!▽Vフォー・ベンデッダ(38)=仮面と坊主しか覚えてない▽ 燃ゆるとき(35)=中井君の演説が麺を延ばしちゃったかな▽the有頂天ホテル(33)=ハリウッドへのオマージュも、伝わらなきゃ何の意味もないのでは、と…▽バルトの楽園(29)=どうやっても感動的にならないし、ブルーノ・ガンツの扱いが将軍様より格下じゃあね…▽ダ・ヴィンチコード(30)=ヒロインがアメリと気付いたのが最大の謎解きだったりして▽県庁の星(28)=こんな公務員とはお友達になりたくない。それにしても柴崎コウ、頑張るねえ。どんなときでもサラサラヘア▽シャークボーイ&マグマガール3−D(15)=子供の夢を題材に作った、はいいけど、SFXマンも監督の子煩悩に嫌気がさしながら仕上げしたんだろーなー、と思っちゃった 
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追悼 井上雪彦アナ  映画つれづれ

  KRYの井上雪彦アナウンサーが亡くなりました。本当に突然の訃報で、ただただ、驚くばかりです。葬儀にも参列させていただきましたが、いまだに信じられません。

 月曜に放送された「熱血テレビ」の追悼特番では、井上アナと佐々部映画との関わりについて触れてなかったので、ぜひ紹介したいと思ってここで筆を取りました。井上さんは、番組にもたびたび出演している歌手の山本譲二さんが映画初出演ということで「チルソクの夏」を取材。その縁で佐々部監督とも親交を深めるようになり、「チルソク」では街をギターを抱えて歩く譲二さんの背後で歩く黄色いシャツの酔っ払い、という絶妙な役で映画初出演も果たされています。

 そして、「カーテンコール」では藤井隆扮する幕間芸人の修平が映画の斜陽から映画館を追われ、キャバレーでの芸人になるものの、客から冷や水を浴びせられ、やがて失意のまま韓国に渡る…という重要な場面で、修平に冷たい言葉をかける、中小企業の社長役として出演!今度はきちんとセリフまであります。

 井上さんは「いやあ、単なるエキストラですよ」と言いながら「時代が変化し、修平が不幸な道を歩むきっかけとなるのが僕のセリフです。こんな重要なポイントで使っていただいた佐々部さんにただただ感謝です」と言われてました。

 そして、本当に佐々部監督のことを、心を込めて「佐々部さん」と呼ばれ、敬愛されていました。とくに「チルソク」と「カーテンコール」の話になると、作品に思い入れも強く、もう止まりません。いつも「作品に込められた家族への愛。本当に深いものがあるよね」と言われていました。

 昨年、おたっきーが企画した「カーテンコール」の作曲家、藤原いくろうさんを招いたライブでは司会も務めていただきましたが、このとき「家族や人間同士の絆を描いた映画が最近少ない。佐々部監督の作品はどれも生きる素晴らしさ、人が人を想う大切さを描いたものばかり。ぜひたくさんの方に見ていただきたい」と訴えておられたのも印象的でした。「佐々部映画のためなら、ギャラなんかいらないよ」とも言われていました。

 県内と北九州を回った「カーテンコール」の舞台挨拶では井上尭之さんの「いつでも夢を」の生歌に涙を流され、「司会者として失格ですが、私は本当に感動しました」と素直に心情を述べられる雪彦さんの姿に、こちらもまた熱い熱い感動をいただきました。

 おたっきーが最後に井上さんと出会ったのは、奇しくも「出口のない海」の試写会場でした。映画上映後、映画の感想を「1つ1つの場面、セリフに、佐々部さんが込められた、深い意味がある映画だね。たくさんの若い人に見てもらいたいね」。これがおたっきーと井上さんとの最後の会話です。

 おたっきーも仕事でKRYと長く関わりがありましたが、不思議と井上さんとは「映画」を通しての関わりが深く、井上さんの姪御さんでもある二胡奏者のMikiさんとの出会いも、佐々部映画とのご縁でした。

 仕事で知り合ったMikiさんに、佐々部監督を囲む集いでのアトラクション演奏をお願いし、「チルソクの約束」を弾いていただいたところ、そこで井上さんと親類ということが分かり、お互いにビックリ。Mikiさんも伯父さんが「チルソクの夏」に出演されていることをその場で知り、その後、監督の作品も見られて佐々部ファンになって行きました。

 映画との関わりが深いということで、このブログで追悼させていただきました。井上さんのご冥福を心からお祈りするとともに、佐々部監督の作品を心から愛し、応援した井上さんのことを知っていただきたく、紹介しました。

 本当に残念です。
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出口のない海  新作レビュー

見た日/8月某日 ★★★★★

 公開前ではありますが、ついに見ました!「出口のない海」。
 
 周南市で開かれた撮影に協力した方々や地元商工業者らをお招きしての完成披露特別試写会で、見させていただきました。

 はっきり言いましょう。ついに、戦争映画の新たな地平がここに誕生しました!!!公開前なので、物語の詳細は述べませんが、国全体が戦争に突入し、特攻思想を持つのが当たり前、という状況下で、特攻に志願する若者の心情を、ていねいに、かつ繊細にとらえた大傑作に仕上がっています。

 恐らく、当時の若者たちは大義に燃えに燃えていても、多少戦争に疑問を持っていたとしても、結局は自らを奮い立たせ、自分を納得させたうえで戦い、散って行ったのだと思います。正に原作者の横山秀夫さんが小説でも描いてきたテーマ、社会性と個人のあり方、という問題がここでも鮮やかに浮かびあがります。

 しかし現代社会と違い、戦争当時の社会状況、とくにこの映画で描かれている戦争末期の時代は全ての「生」が「死」へと向かっている社会です。その中で「お国のために死ぬことは当然」とされる若い兵士がどう生き、どう死ぬ意味を見つけたのか。そこにこそ、人間は自分が生きる社会、例えば思想が統制されるような社会に置かれたときは「自由に生きられない」「自分を犠牲にしなければならない」という「悲劇」があるのだと、この映画は教えてくれます。

 そして、その「悲劇」的な状況にあろうとも、人はささやかでも夢を持ち、「生きる」希望を持ち、人を思いやることができるのだ、と教えてくれます。どんなに社会がゆがもうと、人は人によってでしか癒されない。家族、恋人、友人、そういった愛する人たちがいるからこそ、自分を酷い状況に追い込むことも、苦しむこともできる。そこに、「国家」や「社会」は関係ない。

 その状況は、かつてのイラクも、今のパレスチナもある意味では同じなのかもしれません。そんな切ない作品ですが、映画自体は最後までベタになりません。大げさな演出は控えているので、ある意味「寸止め地獄」でもあります。でも、深い、静かな感動が見たあとに襲ってきます。昨年末の「男たちの大和」とは対極にある映画と言ってもいいかもしれませんが、こういう映画こそ、今の時代に必要と思うのは、僕だけではないと思います。
 
 公開まであと一カ月ちょっと。ぜひ皆さん、この思いを、劇場で共有しましょう!!
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