出口のない海  新作レビュー

見た日/8月某日 ★★★★★

 公開前ではありますが、ついに見ました!「出口のない海」。
 
 周南市で開かれた撮影に協力した方々や地元商工業者らをお招きしての完成披露特別試写会で、見させていただきました。

 はっきり言いましょう。ついに、戦争映画の新たな地平がここに誕生しました!!!公開前なので、物語の詳細は述べませんが、国全体が戦争に突入し、特攻思想を持つのが当たり前、という状況下で、特攻に志願する若者の心情を、ていねいに、かつ繊細にとらえた大傑作に仕上がっています。

 恐らく、当時の若者たちは大義に燃えに燃えていても、多少戦争に疑問を持っていたとしても、結局は自らを奮い立たせ、自分を納得させたうえで戦い、散って行ったのだと思います。正に原作者の横山秀夫さんが小説でも描いてきたテーマ、社会性と個人のあり方、という問題がここでも鮮やかに浮かびあがります。

 しかし現代社会と違い、戦争当時の社会状況、とくにこの映画で描かれている戦争末期の時代は全ての「生」が「死」へと向かっている社会です。その中で「お国のために死ぬことは当然」とされる若い兵士がどう生き、どう死ぬ意味を見つけたのか。そこにこそ、人間は自分が生きる社会、例えば思想が統制されるような社会に置かれたときは「自由に生きられない」「自分を犠牲にしなければならない」という「悲劇」があるのだと、この映画は教えてくれます。

 そして、その「悲劇」的な状況にあろうとも、人はささやかでも夢を持ち、「生きる」希望を持ち、人を思いやることができるのだ、と教えてくれます。どんなに社会がゆがもうと、人は人によってでしか癒されない。家族、恋人、友人、そういった愛する人たちがいるからこそ、自分を酷い状況に追い込むことも、苦しむこともできる。そこに、「国家」や「社会」は関係ない。

 その状況は、かつてのイラクも、今のパレスチナもある意味では同じなのかもしれません。そんな切ない作品ですが、映画自体は最後までベタになりません。大げさな演出は控えているので、ある意味「寸止め地獄」でもあります。でも、深い、静かな感動が見たあとに襲ってきます。昨年末の「男たちの大和」とは対極にある映画と言ってもいいかもしれませんが、こういう映画こそ、今の時代に必要と思うのは、僕だけではないと思います。
 
 公開まであと一カ月ちょっと。ぜひ皆さん、この思いを、劇場で共有しましょう!!
0




AutoPage最新お知らせ