ありがとう  新作レビュー

見た日/11月某日 ★★★

  阪神大震災から10年以上経って、「映像にして風化させるな」という動きが映画の世界にも出てくるだろうとは思っていたが、この映画は、実話をもとにしてドキュメンタリータッチにしながらも、スポーツ根性物と浪速の人情物をうまく組み合わせ、震災の悲劇を描きながら「復興」と「希望」を描いた、いい作品に仕上がっている。
 
 神戸市の商店街でカメラ店を営む古市忠夫は、阪神大震災に被災。妻と娘2人は無事だったが街は瓦礫の山に。外は炎が吹き上がり、店にも迫りそうな勢いだ。忠生たちは家から脱出するが、自治会長で消防団のリーダーでもある忠夫は、何も考えず炎の中に飛び込み、同じ青年団の仲間たちと人命救助に打ち込む。やがて、町の復興に全力を傾ける忠夫だったが、壮絶な火事の中で残ったゴルフバックを見つけたことから、夢だったプロゴルファーに挑戦を決意する…。

 原作は、阪神大震災被災被災をバネにして、還暦直前にゴルフのプロテストを受験、合格した古市忠夫氏に取材したノンフィクション。原作者が脚本も担当している。

 リアリティある震災の様子を描きながらも、復興による「希望」を大きなテーマにしているのは好ましい。これは神戸出身で、震災直前まで実家にいて、前日に東京に帰って後悔した経験があり、以来ずっと震災をテーマにした映画を作りたかったというプロデューサーの
思いによるところが大きいだろう。

 「リアルな震災なら誰でも描ける。しかし、被災した人たちの復興にかける思いを描かなければ意味がない」そんな作り手たちの声や熱い思いは、確かにスクリーンの向こうから感じられる。 

 監督は密室宇宙SFの傑作「宇宙貨物船レムナント5」と同じ人と聞いてビックリ。このプロデューサーが手がけてきた時代の先端を行く作品群ともまったく異質な作品で、ある意味「ベタな感動作」だ。だからこそ、これまで「ベタな感動作」とは無縁だったスタッフたちがあえてこの作品を作ったところに、熱意とメッセージ性を感じる。

 巨大なオープンセットを使った前半の震災シーンは迫力満点で、かなりのリアリティがあった。実は僕は、この映画の舞台になった商店街を、震災直後に訪れている。当時、山口県内の医療ボランティア団体の役員をしていて、お医者さんや看護師さんたちのボランティアチームの運転手兼手伝いとして神戸を訪れた。

 わずか二日間のボランティア活動だったが、その経験は僕の人生観を変えた。「人のために尽くす」ことは理屈じゃない、と思ったことは、今でも覚えている。かなりの被災地を回ったが、この舞台になった商店街とその周辺はかなり悲惨な状況だった。火災でほとんどの家屋は焼き尽くされ、焼けて朽ちたアーケードの骨組みだけが、そこが商店街だったことを物語っていた。

 周辺の住宅街には消息を知らせる看板が立ち並び、焼け残った白い病院だけがポツンと立っていて、妙に印象的だった。「ここが今の日本なのか」と驚愕し、道端には普通に花が添えられていて、そこで「人が亡くなった」ことを思うと、いたたまれない気持ちになった。

 たったの一瞬だけ訪れた僕が映画の前半は恐怖感を感じ、手に汗を握り、涙が出っ放しだっだったのだから、実際に被災された方が見られたら、相当のリアルさを感じられたのでは、と思う。でもこういう映画はリアルさがあるからこそ、後半の希望の部分が生きてくるわけで、リアルさを出して、震災を風化させまいとする作り手の姿勢にも共鳴できた。

 残念なのは前半と後半のつながりが今ひとつな部分。いろいろなレビューで指摘されているプロゴルフに挑戦する動機と震災との関連性は無難に描けていたと思うが、後半、プロゴルファーに挑戦する主人公と応援する街の人たちとの関係性をもっと深く描けば、もっと前半の震災シーンが生きてきてよかったのに、と感じるし、プロゴルファーになった古市さんんが、今もあの商店街で自治会長や消防団のリーダーとして街に溶け込み、頑張っているという事実も強調してほしかった。

 WOWOWという新しい映像分野を通し、常に映画界の先端で活躍してきたプロデューサーの人脈を感じさせる、仲村トオルや永瀬正敏のカメオ出演もご愛嬌だった。妻を奪われ、絶叫する豊川悦司に、出演シーンは短いものの、涙。この人、うまいなあ。

★イラスト近く添付します!

 
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時をかける少女  新作レビュー

見た日/11月某日 ★★★★

「♪とーきーをー、かけーるしょうじょー♪」

 今も耳をすませば、原田知世のあどけない歌声が聞こえてくることがあるが(病気だ)、それほど高校時代、大林宣彦監督の「時をかける少女」、と言うより原田知世に、なのだが、映画版「時かけ」に感動し、入れ込んでいた時期がある。

 …なので、「時かけ」をアニメでリメイクと聞いたときには、「大丈夫かいな」と思ったのだが、細田守監督をはじめ、今の日本アニメ界を代表するクリエイターたちが結集しただけあって、アニメというより、最近の日本映画全体を見渡しても、見応えのある良質な青春映画に仕上がっていた。

 主人公も時代設定も現代的にしているので、全く新しいアプローチかと思いきや、確かに物語や雰囲気は現代風ではあるが、上手に原作小説が持つ思春期の少女の想いや、大林版へのオマージュを取り入れ、原作や前作のファンも納得ができる「時をかける少女」になっていたことに驚いた。

 主人公の真琴はタイムリープを覚え、自由に過去を変えることで自分に都合がいいように状況を変えて行くが、親友で同級生の男子、千秋の自分への想いに気づいたとき、何度タイムリープしても、状況が上手く行かなくなってしまい…。

 時をかけることで、恋する気持ちと出会い、本当の自分に気づく、というテーマは大林版と同じ。時間というアイテムの扱い方、伏線の張り方が見事で、映画は自分勝手で無鉄砲なヒロインが、自分の気持ちに気づいたとき、どう、その「能力」を使うのか、ということになっていくのだが、この展開が実に上手い。

 青春が持つ切なさや輝きを、アニメという表現で描き切った秀作である。クリックすると元のサイズで表示します
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トゥモロー・ワールド  新作レビュー

見た日/11月某日 ★★★

 これは拾い物。意外な収穫ということでは、今年一番かもしれない。

 日本版タイトル、ポスターイメージからして、「ブレードランナー」のようなガチガチの近未来SFかと思いきや、中身は全然違った。確かに近未来物なのだが、監督が描いている世界は、ハードな戦争アクションで、長回しを多用したシーンは本当にビックリ。映画を長年見てきて、これには本当に驚天動地で、このワンカットを見るだけでも、この映画は必見の価値がある。

 そういう意味では、普通のSF物として売ろうとした日本の配給会社にはがっかり。全くこの作品がもつ魅力を売ろうとしてないし、邦題も悪い。原題は「人類の子供たち」で、いくら何でも「トゥモロー・ワールド」はないだろう。

 西暦2027年。人類に子どもが生まれなくなって18年が経過し、世界は暴力が各地で起きて崩壊。唯一、強力な軍事力と統率力を持つ英国だけがテロとの戦いに明け暮れながらも、何とか治安を維持していた。

 そんな時、国の官僚で、かつて革命運動の活動家だったセオは、今は反乱組織のリーダーとなっている元妻・ジュリアンに拉致される。彼女は、18年ぶりに妊娠した女性を保護し、謎の人権団体・ヒューマンプロジェクトに送り届けようとしていて、セオにその協力を申し出たのだ。一度はその依頼を拒むセオだったが…。

 物語的には、?な点も多い。無子化した原因は環境問題や細菌など、いろいろ推察されるも不明とはしているが、物語の重要な要素だけにもうちょっと説明がほしいし、物語の核になっていいはずのヒューマン・プロジェクトが全く何が何だかわからないため、妊娠した女性の保護に命を賭けるセオの行動にどうも感情移入できなかったりと、まあ欠点はいろいろある。

 が、しかし、それを吹き飛ばすほど素晴らしいのが、近未来のビジュアルと、長回しの戦闘シーンである。20年後の未来だが、服装や車や街並みも、現代とそう変わらない。だがよーく見ると、車はカーナビなど細かいところでハイテク化がさらに進み、街並みも屋外広告が動画になっていたりと、「わずかな発展」が物凄いリアル感を出している。

 またテロの恐怖にさらされ、常に暴徒があふれている街の様子も、臨場感がある。近未来SFではあるが、ビジュアルを十分に想像できる世界に留めている点に、この映画のスタッフが物語に込めたメッセージを、観客により現実的に感じてもらおうとしていることが分かる。

 で、驚愕の長回し。カットをかけず、1つのシーンを1つのカットで撮りきる事をワンシーンワンカットと言うが、古くは溝口健二、最近は相米慎二監督のお得意で、ビデオと違い、フィルムの尺に限界がある映画では物凄く高度な手法だ。

 演劇と違い、多用な空間で撮影をする映画では、ワンカットで長いシーンを撮影することは難しい。カメラは光の具合によって映り具合が違うし、場面が変われば移動するカメラに合わせて状況を変化させないといけないし、何より役者さんたちも失敗が許されないだけに、物凄い集中力を必要とする。

 最近はカットを積み重ねることでシーンを構築することが普通なので、なかなか印象的な長回しのワンカットにはお目にかかれない。最近の映画で印象的だったのは「出口のない海」の冒頭、爆撃を受けている潜水艦の中を、カメラが隅すら隅まで、這うように乗組員たちを追うシーンぐらいである。

 この映画でやっていることは、狂気の沙汰というか、本当に凄い!まず物語の中盤。主人公たちが乗った車が暴漢に襲われるシーン。ここも数分間、カットをかけず、カメラは車内にハンディ(手持ち)で置き、凄まじい数の暴漢が襲撃する迫力のシーンをワンカットで撮影している。

 圧巻はラスト近く、主人公が反乱軍と政府軍の戦闘真っ只中、戦車や兵士たちの銃撃、砲撃の網をくぐって街を走り、ビルの中に入っていくシーンである。ここは、兵士や逃げ惑う群集、襲う戦車など、大掛かりなアクションにも関わらず、画面は一台のハンディカメラでひたすら走る主人公を追う。その時間、何と8分以上である!

 8分もカットをかけず、ワンカットでこの戦闘シーンを撮り切った監督、スタッフの努力、技術の凄さ、俳優たちの集中力に、もう一映画ファンとして拍手、拍手、拍手である!

 また照明器具を使わず、自然光だけで撮ったという画面の優しさ、ビートルズなどの音楽と、殺伐とした内容とのマッチングもなかなか。監督はメキシコ人というが、映画はイギリス製で、配給は大メジャーのユニバーサルというから驚く。

 正直、ストーリーに乗れなかったので星は3つだが、恐らく映画史の伝説になるだろう長回しを見るだけでも必見の作品。公開しているうちに、必ず映画館でどうぞ。

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手紙  新作レビュー

見た日/11月某日 ★★★

 ラスト近くは、感動して涙があふれ出た。

 これも兄弟の話である。今年は「間宮兄弟」「ゆれる」と男兄弟の話が多い。僕も2人兄弟で、42年も生きてりゃ、兄貴ともこれまでいろいろなことがあっただけに、こういう話
はちと辛いのだが、最後まで感情移入して見ることができた。

 途中、作りや演出を見ていて「何だかテレビドラマを見ているようだなあ」と感じたのだが、それは監督さんがテレビドラマのベテラン演出家だからなのだろう。映画とテレビドラマの演出法は根本的に違う。

 映画雑誌を見ると、この作品の監督は最初、「この題材では映画的ダイナミズムが出せない」と躊躇したらしいが、逆にドラマ的な演出をすることで、この映画は成功したように思う。その分、特に前半の兄が事件を起こすシーンなどでちょっとテレビドラマ的なチープさを感じてしまったが、脚本がしっかりしていて、要所要所にベテランの俳優さんを配置している効果もあるのか、しっかり作劇を見せてくれる。

 天涯孤独ながら、励ましあって生きている兄と弟。弟は優秀な高校生で、兄は弟を大学に進学させることを生きがいに、運送会社で働いている。しかし、兄は殺人事件を起こしてしまう。理由は、弟の学費を稼ぐため。無理をして体調を崩し、働けなくなった兄は、民家に押し入り、老婆に見つかって殺してしまったのだ。服役した兄は弟に手紙を送り続けるが、弟は進学をあきらめ、働くものの、行くところで兄のことが知られ、差別される。だが、弟の夢であったお笑い芸人になる道が開けて…。

 「手紙」を上手く小道具にして、物語的にもぐいぐい引っ張る。この辺りはたぐいまれなストーリーテリングを持つ東野圭吾の原作に起因しているのだろうが、兄のことで配置転換され、腐っている弟を訪ねる杉浦直樹扮する会社の会長の励ましの言葉が素晴らしい。人生上、こんな感じで励まされたら、本当に頑張ろう、と思うだろう。

 複雑で、行きにくい現代社会。誰だって悩みがあるし、嫌なことはあるだろう。そんな現代人にとって、「どんな辛いことがあっても、逃げずに頑張ろうよ」と励ましてくれる、人生の応援歌のような映画だった。

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結婚しようよ  佐々部監督の世界

 佐々部監督待望の新作「結婚しようよ」がクランク・インしたようです。

 映画全編に吉田拓郎さんのフォークソングが流れる画期的な作品で、お話は現代を舞台にした団塊の世代の「家族」を描いたコメディ色もある、人情劇のようです。

 製作はシネムーブ、配給は松竹で、公開は来年のようですが、家族を全面に出した佐々部映画と言うと、「チルソクの夏」「カーテンコール」が思い出されますが、どの作品でも常に「家族の絆」を描いてきた監督が、正面から父親を主人公にした「家族」を描くということで、どんな仕上がりになるのか、本当に楽しみです。

 主演は三宅裕司さん。三宅さんは「サラリーマン専科」シリーズで映画主演作がありますが、「壬生義士伝」では見事な演技を見せていましたし、最近では「佐賀のがばいばあちゃん」でもゲストではありましたが、見事な存在感を見せていました。もともと軽演劇の方で、三宅さんの軽妙ながら深さのある演技の味が初めて映画で生かせるのではないか、と今から期待大です。

 来年は恐らく日本映画史上に残る傑作になるであろう「夕凪の街 桜の国」に続き、佐々部監督のまた違った作風の作品が楽しめるであろう、佐々部映画ファンにとっては至福の年になりそうです。



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『転校生』リメイク!  映画つれづれ

 驚きました!大林宣彦監督の名作「転校生」が、大林監督自らの手で、24年ぶりに
リメイクされるそうです。

 尾道3部作の第1作として知られる「転校生」ですが、報道などによると、今度は長野県が舞台となり、長野の人たちから「50年後に長野の子供たちが感動できる映画を撮ってほしい」と言われて感動した監督が、セルフリメイクを決意した、ということです。

 ヒロインの実家が老舗のそばやになるなど「長野」らしさも満載で、前作とは設定やストーリーも変えるということで、大林監督も「転校生パート2になるかも」「25年後にまた転校生をリメイクし、それを最後の作品にしたい」との発言もあるようです。

 うーむ…。「転校生」は「さびしんぼう」「ふたり」と並んで大好きな大林作品だけに、セルフリメイクのニュースはちょっとショック。不安であり、楽しみでもありますが、最近の大林監督の作品を観ると、正直、不安の方が大きいのが率直な気持ちです。今回の主演は15歳の新人2人ということですが、作品の最大の魅力だったあの瑞々しさが出せるのか。とにもかくにも、完成品はぜひ見てみたい、と思います。

 そして、リメイクと言えば、森田芳光監督、織田裕二主演の「椿三十郎」の製作発表の記者会見のニュースが!それによると、何と脚本は45年前と同じ脚本とか!こりゃまた大胆というか、森田監督の挑戦というか挑発ですが、こちらも心配ながら、そこそこの作品にはなるのだろうけれども…。やはり心配です。

 12月には究極のセルフリメイクとも言うべき市川昆監督の「犬神家の一族」が控えていますが、こちらは見る前から何となく内容も映像も浮かびます。でも、映画は見てなんぼのもんなので感想は見てからしたいと思います。しかし、リメイクも、マンガ原作もいいけど、何かこう、もっとガツンと来る企画が欲しいなあ、と勝手ながら思ってしまいます。
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妄想=マンガ映画化!  映画つれづれ

最近、マンガの映画化が本当に多い!!「どろろ」の妻夫木君のキャストにびっくりですが、どろろが成人した娘で柴崎コウ、というのもいかにも大衆狙いで驚きです。昔からよく「このマンガをキャスト、スタッフで映画化できかなあ」と妄想していたものです。ちょっとお遊びで考えてみました。

★北斗の拳/ケンシロウを須藤元気で。監督は三池崇史か石井聡互で。この前の劇場版アニメ、ケンシロウは阿部寛、ラオウは宇梶剛士と聞いたときにゃ、一瞬実写かと思いました。前に一度、東映さんがハリウッドと提携してつまんない実写版を作ってますが…。

★うる星やつら/ラムちゃんをほしのあき、あたるを森山未来、チェリーを伊武雅刀で。監督は「デスノート」の金子修介かな…。「めぞん一刻」テレビ版は伊東美咲が響子さんらしいが、四谷は誰なんだろう?

★ルパン三世/昔から実写映画化の噂絶えず。その昔、ジャン・ポール・ベルモンドでやる、という話はどこへ?割と最近はジム・キャリーの噂もあったし…。ルパン=大泉洋、次元=小林薫、不二子=小池栄子で。監督は、うーむ…石井克人当たりで…。

★妖怪人間ベム/好きだなあ、ペム。オリジナルアニメで最近リメイクされてましたが、誰か実写版作ってくれんかな。ヨーロッパオールロケで…。昔、ベラは五輪真弓しかいない、と思っていましたが…。今は誰がいいかな?ハリウッドリメイクならベラはベット・ミドラーかキャシー・ベイツで。

★天才バカボン/赤塚アニメは絶対誰か実写化してほしい!配給は松竹で、釣りバカや寅さんのノリで作れば面白いのでは…。バカボンのパパは三宅裕司、バカボンは山田花子、ママは鶴田真由で。監督は…誰がいいでしょうか?目玉つながりのおまわりさんはCGを駆使した特殊メイクでやってほしい。
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映画の本  映画つれづれ

 映画に関する本を2冊購入しました。

 1つは、文芸春秋社から2003年に出された、立松和平さんによる「映画主義者 深作欣二」。もう1冊は、朝日文庫(朝日新聞社刊)から出ている筑紫政昭氏著「黒澤明と『七人の侍』」です。

 「映画主義者…」は「バトルロワイアルU」公開前に出版されたもののようで、古本屋で購入しました。前半は「仁義なき戦い」を中心に、深作監督をめぐるエピソードを周辺の人たちの証言を交えて紹介。後半は「バトルロワイアル」を中心に監督の闘病生活なども綴られて行くのですが、面白いのは、証言の文体がとっても読みやすく興味深いことと、映画の感想や封切り当時の世相など、作者自身の思いで文章が綴られて行くことです。

 これは個性的な作品と思想性で人気がある作家・立松氏が書いているからでしょうが、深作監督の評伝はあるけれども、きちんと立松氏の作品にもなっている好著でした。監督協会の総会の2次会で行った中華料理店に長谷川和彦監督がたまたま居合わせて、そこで大ゲンカになって深作監督が止めに入って血まみれになった、など、抱腹絶倒で映画ファンならニヤリ必至のエピソードも満載です。

 「黒澤明と…」は「七人の侍」という作品がどれだけ凄いのか、製作の過程から始まって演出、セリフ面からの検証、各キャラクターの魅力、製作時のエピソードなどを、分かりやすく書いてあって、読んでいて「もう一度見たいなあ」と思わせる、これも好著でした。「百姓を侍が守る」という発想は、脚本家の橋本忍が思いついたことや、作品のベースにはトルストイの「戦争と平和」があったことなど、なかなか興味深かったです。

 さてさて、昨日「手紙」を見ました。今夜は業務試写会でいち早く「武士の一分」を拝見させていただけることになっています。また近く新作レビューで感想を書きます!!僕は「ネタバレなしで、みんなが見たくなるようなレビュー」を目指しているつもりなのですが、なかなか難しいな、と実感しています。でも頑張ります!
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ゆれる  新作レビュー

見た日/11月某日 ★★★★★

 いやあ…。こりゃあ、凄い!! 

 演出、脚本、音楽、キャスティング、全てが絡み合い、絶妙で至高の作劇を「映画」という空間で創り出している。

 ようやく見れた「ゆれる」は評判に違わない、秀作だった。

 写真家として、東京で成功している弟。母親の一周忌で故郷に帰る。兄は年老いた父と一緒に、家業のガソリンスタンドを継いでいる。実直で慕われるが、女性にはもてない兄と、自由に人生を生き抜いている弟。その弟は、兄が思いを寄せるガソリンスタンドの店員で、かつての彼女だった女性と寝てしまう。ところがその翌日、3人で出かけた渓谷の釣り橋で、兄ともみ合った女性が転落して…。

 兄弟を軸に、2人の感情が正に「ゆれる」。2人の思いは常に行き交い、観客にさまざまな憶測と感情を与えながら、物語は秀逸な裁判シーンともマッチしながら進んで行く。観客の思いも、あるときは兄、あるときは弟に向かい、まさに観客の感情も「ゆれる」のだ。

 女性の死の真相は?というサスペンスも軸にあって、最後までそのナゾを引っ張っていくが、秀逸なのはその脚本で、事件の真相をなかなか明らかにせず、様々な展開を喚起させるという表現は、黒澤明の「羅生門」なのだが、この「ゆれる」の見せ方もなかなか巧妙で、唸らせてくれる。

 また兄を演じる香川照之の存在感の凄さと、弟を演じるオダギリジョーの演技の上手さには驚いた。香川照之の兄は本当に見事としかいいようがなく、この俳優さんはどの映画の演技も素晴らしく、本当に才能があると思うが、ガソリンスタンドで何気なくトラックにバックオーライ、と呼びかけるシーンだけで、この店長さんが背負った人生を感じさせるような演技ができる人は、恐らく他にはいなのではないか、と思わせる。何か、演技力というより、質感の重さ、のようなものを感じる。

 また、自由に生きようと現代的なセンスのある仕事を選びながら、どこか「家」から離れられず、兄に悪いと思っている弟の佇まいは、正にオダギリジョーそのもので、この映画は彼のベストアクトではないか、とも思う。この兄弟がクライマックス近く、刑務所の面会室で激しくぶつかり合うシーンで、正に画面が「ゆれる」のだが、この映画的緊張感が、たまらなく気持ちよかった。

 兄弟という一番遠い存在でありながら、実は切っても切れない、どうしようもない宿業のような血縁関係を描いている様は実に日本的なのだが、こういう日本的なテーマを、複雑な感情表現をきちんと映像とセリフで描き切った西川監督のセンスと力量はすごい。これが30代前半の女性で、脚本も監督のオリジナルというから、将来がとっても楽しみである。

 僕は2人兄弟で、弟の方だ。僕も「兄との確執→和解」という出来事が家全体はもちろん親戚、周囲の社会をも巻き込んだ騒動になった、という経験を持っている。もちろん状況は全く違うが、だからこの映画は他人事ではなく、半端ではないほどの緊張感に包まれながら見た。しかし、ラストカットの香川さんの演技は本当に素晴らしく、ここで自分も、僕の兄も、何だか救われたような気がして、じわーっと涙が出てしまった。

 この映画を見るには、想像力と見るエネルギーが必要だが、客席に座りながら、さまざまな感情を喚起される…。これこそが、映画を見る楽しみだと思わせてくれた。今年、2本目の満点五つ★映画である。クリックすると元のサイズで表示します
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デスノート[後編]the last name  新作レビュー

見た日/11月某日 ★★★

 金子修介という監督さんは、好きな監督さんの1人だ。

 この監督さんは、少々あざといセリフや演技を撮っていても、確信犯的に、それがどうつながれば、一般の観客は面白く感じるか、よーく知っている人なのだと思う。

 自分の趣味にこだわった名作「1999年の夏休み」や平成「ガメラ」シリーズももちろんよかったが、ハリウッド風な恋愛コメディを目指した「F」や、斉藤由貴のコメディアンヌとしての魅力を発揮させたアクション・コメディ「香港パラダイス」、当時のアイドル総出演ながら、ストーリーのセンスの良さが光る「どっちにするの。」など、大衆受けしながらも、日活の助監督出身らしく、職人的な「映画」の仕事もキチントこなしている、良質な娯楽作品を撮り続けている。

 で、この「デスノート」シリーズも、そんな金子監督の才能がいかんなく発揮されていると思うし、久々に監督も乗っているな、という感じだ。

 原作の漫画は未見だが、とにかくストーリーが面白い。死神が持つデスノート。それを拾った人間がノートに名前を書くと、書かれた人物は必ず死ぬ。大学生ライトは、自らの「正義」を執行するため、法では裁けぬ悪人たちの処刑を断行。やがて彼の父親が指揮する警察の捜査チームは、天才探偵、Lに捜査の指揮を委ね、ライトとLの壮絶な頭脳戦が始まる。ライトは、Lの追撃をかわすため、恋人まで手にかけるが…。

 これが前編のストーリー。後編の直前にテレビで前編を放送する、という掟破りの展開(これはこれで凄い。DVD・ビデオになる前に地上波で本編放送は前代未聞だろう)で、ついに後編が公開された。

 ライトとLの頭脳戦は、後編のクライマックスで激化し、かなりテンションも高く、面白い展開になる。魔法少女物「ミンキーモモ」の脚本も担当していた金子監督の美少女趣味とチラリズムのエロティシズムや適度なユーモアも交えながら、きっちりと物語の落とし前を着けてくれる。

 正直、設定の斬新さに驚いた前作ほどのインパクトはなかった。ストーリーを詰め込みすぎて展開の速さに戸惑ったのと、漫画が原作だから仕方ないが、ちょっとデスノートの設定と死神の存在に頼りすぎた展開が荒唐無稽だったものの、なかなかの力技で見せてくれる、堂々とした「娯楽映画」だった。

 連日、中高生たちが劇場に駆けつけているらしいが、若者に人気の映画が、日活の助監督出身のベテラン監督が撮っている、という事実が、日本映画を長年愛してきた身としては、とてつもなく嬉しい。

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地下鉄(メトロ)に乗って  新作レビュー

見た日/10月某日 ★★★

 いい映画。

 主人公は、経済界の大物の息子だが、今は縁を切り、母親側の姓を名乗って小さな衣料品販売会社の営業マンをしていて、同じ会社の事務員とは不倫の関係にある。彼はある日、地下鉄で中学時代の恩師と出会う。その帰り、地下鉄のホームから街に出ると、そこは昭和39年の東京だった。彼の前に、事故死した兄が、当時のままで現われる…。やがて彼は時空を何度も行き来し、冷酷で対立していた父親の本当の思いを知る…。
 
 いい話で、血縁で結ばれた家族の意味というものを考えさせられる。でも、感情が突き抜けないのは何故だろう?時勢があちこちに飛ぶから?いいや、やっぱり脚本の出来なのだろうか…。キャスティング(とくにヒロイン)にも、ちょっぴり問題があるような気がした。

 だが、それを吹き飛ばしているのは、父親役の大沢たかおの気持ちの入った演技と、CGに頼らず、戦後の闇市など、当時の雰囲気をきっちりしたセットとエキストラで作り込んでいるから。ラスト近く、物凄い展開を見せる酒場のシーンも、大沢たかおの演技で見せてくれる。堤真一も今回は受けの演技に徹していて、好感が持てる。

 隠しテーマである「罪と罰」がいささか弱いのも残念だが、「映画」は監督の指揮・演出のもと、役者さんの演技と演じる舞台がきちんとしていたら、脚本の弱点もカバーできる、という見本のような映画だったと思う。
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父親たちの星条旗  新作レビュー

見た日/11月某日 ★★★★

 映画館に入るとき、前回を見て出てきたおばちゃん2人組みが「訳分かんない!」と言っていたので不安になったが、2時間半後、その不安は硫黄島の彼方まで吹き飛んだ。

 新聞記者をやっていたころ、よく「ぜひ、記事を書いてほしい」という依頼があった。書いてほしい人は「こういう意図で書いてほしい」と言ってくるが、実際に取材すると、その人の主張と事実とかなり違っていて、記事にならなかったりすることがよくあった。

 恐いのは、記事や写真というのは、載せる人たちの意図次第で、どういう風にも伝わる、ということだ。だから、ある意図を持った記事を、載せる側が持ってしまったら、その意図に沿ってしまったら、それは「公平な報道」ではなくなってしまう。

 こういうことは戦争などの非常時になると、国家をあげて行なわれる。戦時下の日本も、大本営発表ということで、事実とは違う報道がされた。

 この映画は、「戦争映画」の体勢を取りながら、この「民衆の宣揚」に利用された名もない兵士たちの悲劇を克明に描く。戦争という「国家をあげての殺し合い」がもたらす、戦場での凄惨な悲劇をしっかりと描きながら、そこで起こるものとはまた違う悲劇こそ、この映画の本質として描いている。

 第二次世界大戦時、激戦となった硫黄島で、有名な星条旗を掲げる6人の兵士たちの写真が撮られる。米国民はこの写真に沸くが、実際はこの星条旗は2回目に掲げられたものであり、多くの国民が想像した状況で立てられたものではなかった。硫黄島での戦闘は過酷を極め、6人のうち3人は戦死。だが残った3人は帰国させられ、「英雄」として、長引く戦争に嫌気がさした国民たちに戦争国債を買わせるためのPRに担ぎ出される…。

 3人が戦死した戦友たちに悪いと思いながら、苦々しい思いで「英雄」を演じるパートと、無残に死んで行く戦友、味方の攻撃によって死ぬ戦友、敵のリンチで死んだ戦友らの姿が、鮮明にフラッシュバックされて描かれて行く。

 やがて3人のうちの1人は自滅への道を歩んで行くのだが、いかに戦争が無益なのか。映画は物凄く凄惨でリアルな戦場を描きながらも、淡々と進み、悲惨な戦場以上に、国家に利用され、未来を閉ざされた若者たちがいかに不幸か、観客に静かに、強く訴える。

 この映画には敵の日本兵はほとんど見えない。「敵の姿を見たことがあるか」というセリフが出てくるが、同じようなセリフが「出口のない海」にもある。予算規模も、物語的にも全く違うが「出口」と共通したテーマ性を感じて驚いた。

 ラストまで、押し殺したような雰囲気で見ていたのだが、素晴らしいラストカットに、心が震えた。かつて、タカ派と呼ばれたイーストウッドだが、いつの間にか、アメリカ映画の良心のような、「映画の父」になってしまった。

 自国のニュースしか見ない、英語の映画しか見ない、今も自国が正義と思っているアメリカ人が圧倒的多数だろうに、こんな映画を作ってヒットさせてしまうイーストウッドは本当に凄い。ボクシング映画のフリをして生命の尊厳を描いた「ミリオンダラー・ベイビー」は個人的にイマイチだったが、戦争映画のフリをして国家の病巣を描いたこの映画には参った。

 例によって時勢グチャグチャのポール・ハギスの脚本は理解できぬところもあるが、これは傑作である。日本側から描いた「硫黄島からの手紙」が、予告編を見る限りはちょっと出来が心配だが、映画の父、イーストウッド様なら、きっと奥深い一品になっていることであろう。

 ポール・ハギスは「007 カジノ・ロワイアル」の脚本を担当しているらしい。娯楽アクションと結びつかないのだが、どーなんだろう!! 

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ザ・センチネル〜星条旗の陰謀  新作レビュー

見た日/10月某日 ★★

 マイケル・ダグラスは老けた、というのが第一印象。

 この主人公、レーガン大統領を暗殺から救った伝説のシークレット・サービスで、今もバリバリ現役なのだが、警備対象の大統領夫人とデキている。

 そんでもって、かつて同僚の奥さんとねんごろになったこともあるらしく、その同僚から敬遠されている。

 そんな彼が、大統領暗殺を計画している内偵の疑惑をかけられる。状況証拠がそろい、彼をよく思わない同僚から追われる身になった彼は、味方に追われながら、自ら内部の敵を突き止めていく…。

 と、ストーリーはかなり面白いのだが、あちらこちらにB級アクションの臭いが漂い、キーファー・サザーランドが出ていることで、彼の主演人気ドラマ「24」の雰囲気を無理に出そうとしていたりして、ちょっとお金のかけた、テレビドラマのサスペンス・アクション、という感じだ。

 マイケル・ダグラスは老けてもセックス臭バリバリで、今になっても「氷の微笑」の役柄まんまなのが笑える。「ブラック・レイン」遠くになりにけり…である。

 星条旗の陰謀とは言っても、そんなに大した陰謀でもないし、お話のどんでん返しも唐突で、あら、そう、と言った感じだが、2時間肩を凝らずに楽しめる作品ではある。

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忙しい!  映画つれづれ

 仕事が忙しく、なかなか更新できません!!

 映画は仕事の合間にちょくちょく見ているのですが…。

 近く「ザ・センチネル」「地下鉄(メトロ)に乗って」「父親たちの星条旗」更新します!実は、新作レビューはイラスト付きにしようかな…と思っているのですが、そう思っていたら日々がどんどん過ぎて行く…。新作なのに、「ザ・センチネル」は近所のシネコンMOVIX周南では公開終わっているし…。

 その、MOVIX周南ではいよいよ今週から期待の「ゆれる」が始まりました。MOVIX周南は毎年、秋に内外の秀作を集めた企画上映「シネマ・トリップ」をやっていて、「ゆれる」もその一環です。おたっきーも、この企画には協力させてもらっていて、チラシ等にはおたっきーの個人事務所名もクレジットされています。お近くの方、ぜひ見にきてね!

 さて「ブラック・ダリア」「手紙」「デスノート後編」と見たい映画がどんどんたまっていますが、来週以降はMOVIXでシネマ・トリップの企画として期待大の「カポーティ」「時をかける少女」も始まります。

 ああ、時間がほしい!!  
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