2006年総括・1  マイベスト

2006年もいよいよ終わり。今年見た映画を、よかった順から一気に並べ、おたっきーの独断と偏見で点数をつけ、一言コメントをつけました。時間が経ち、レビュー時と評価が変化した作品もあります。長いけど、一気に行きます!!

[90点代]出口のない海(98)=冒頭から長回しで引き込む潜水艦アクションと、主人公の青春の象徴として描かれる野球、そのメカニズムが複雑怪奇であることがこの映画で明らかになった特攻兵器「回天」との組み合わせが見事。「見えない敵」というセリフに象徴される、戦闘シーンがない戦争映画という視点も新しい。賛否両論の主人公の最後は、その感情の行く先としては当然。「泣ける」ことを意識した戦争映画とは一線を画す秀作▽ゆれる(98)=人間の感情の「揺れ」を、兄弟の確執という形で重層的に表現。固定カメラでしっかりと俳優の演技を撮りながら、極度の緊張感がピークに達する場面では画面が「ゆれる」映画的な緊張感は見事。俳優陣たちによる演技の「間」が、何とも言えない緊張感を生む。オダギリジョー、香川照之の演技はしっかりとした実在としてスクリーン内に存在する▽父親たちの星条旗(95)=これもまた「見えない敵」を描いた傑作。凄惨な戦争シーンと英雄に祭りたてられた兵士たちの苦悩を交互に描く手法が見事で、彼らの戸惑い、苦悩をまるで追体験しているよう。これもまた、映画的緊張感にあふれる▽ブロークバック・マウンテン(94)=カウボーイ同士の、狂おしいまでの純粋な愛と美しい自然の景観、そして身近な偏見…。2人の切なさが、観客にも静かな「痛み」を感じさせてくれる▽007カジノ・ロワイヤル(93)=壮絶なアクションも、魅力的なキャストも、豪華な衣装やセットも、すべては面白い物語があって成り立つ、ということを証明▽クラッシュ(92)=人生に「アクシデント」は必ず起こる。そして人生に影響を与え、さまざまな感情を呼び起こす。

[80点代]ユナイテッド93(89)=悲劇を「伝える」という映画的な意義が問われる。前半の管制塔でのやり取り、軍部内の様子は必見▽硫黄島からの手紙(88)=アメリカ人が描いた日本人とか何とかいう前に、クリント・イーストウッドは「人間」を描ける監督だな、と改めて納得。壮絶な戦いの中で様々な感情や思いを見せる日本兵の描写に、戦争には敵も味方もない、というメッセージが鮮やかに浮かび上がる▽嫌われ松子の一生(87)=ミュージカルという手法とファンタジックな映像だからこそ、人間の心情がより伝わるという稀有な映画▽ホテル・ルワンダ(86)=なぜ人は人を殺すのか。なぜ悲劇は繰り返されるのか。憤りを感じるとともに、家族を、そして人間を守ろうとする主人公の姿に心が打ち震える▽ミュンヘン(85)=国家に翻弄される個人を描き、政治的なテーマを描きながらエンタテイメント性を失わない演出に感心▽寝ずの番(80)=エロは面白い。その本質を、日本的な粋で描いた▽フラガール(80)=笑って泣けるエンタテイメントだが、社会的な背景もきちんと描いている点が物語に深みを与える

[70点代]▽時をかける少女(79)=原作、前作のテイストを踏まえながら、等身大の高校生の思いを描いた秀作。普遍のテーマである青春の切なさを、「時間」というアイテムを使って上手に浮かび上がらせた▽ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟(78)=子供向けにしっかりしたメッセージを送る作りに加え、お父さんも意識して、現代のヒーローと過去のヒーローを共演させるエンタテイメント性が見事。かつてのヒーローたちを演じた俳優さんたちの貫禄ぶりと変わらぬ勇姿に涙、涙▽▽SPIRIT(76)=カンフー映画の遺伝子は僕にも残っている、と心が熱くなった一編。こういう映画、まだまだ見たい▽スーパーマンリターンズ(76)=ヒーローが登場しにくい現代、ヒーローもまた悩み、苦しみながら人を救っているが、スーパーマンを神格化している点が新しい▽インサイド・マン(75)=先が読めない変化球の娯楽アクション。クライマックスに向かって変に高揚しないのだが、きちんと楽しめる▽単騎、千里を走る(75)=誰が何と言おうとナチュラル健さんを支持。中国の素人俳優たちの素朴さと、健さんの純朴さに感動。日本部分の演出はわざとらしいけど▽手紙(72)=演出、キャスティングともテレビドラマっぽいが、人の業や救いという現代的で深いテーマを、良質の脚本で仕上げた▽佐賀のがばいばあちゃん(70)=原作を生かした脚本の勝利。ばあちゃんの伝説的な名言を、地味ながらきちんと観客に伝えてくれる、素直な演出が○▽武士の一分(70)=スターが主演の舞台劇を見ているよう。シンプルイズベストで、演出、脚本、役者の演技というアンサンブルの上手さが楽しめる▽花よりもなほ(70)=丁寧に作られた良作。貧乏くさい長屋の人物が本当に貧乏臭くてよい▽力道山(70)=プロレスシーンに拍手!▽長州ファィブ(70)=娯楽性には欠けるが、真摯な姿勢が伝わる。豪気な男たちがイギリスで貧富の差に触れ、変わり行く姿がいい▽デスノート前編(70)=意外な展開の面白さに、娯楽映画のベテラン監督の切れ味を見たり。一般客は支持、評論家筋には悪評、というのも娯楽映画の王道ぽくて気持ちいい▽雪に願うこと(70)=根岸監督が描く質の高いドラマ性は健在

[60点代・50点代]
▽スタンド・アップ(68)=演出が丁寧。冒頭の空撮が、「山」が持つ閉鎖性を現わし印象的。全く違うが、炭鉱が舞台という点である意味「フラガール」と共通性▽クレヨンしんちゃん〜伝説を呼ぶ!踊れアミーゴ!〜(65)=アニメでしかできない表現は確かにある。幼児向けアニメながら、ホラーに挑戦した心意気がよい▽トゥモロー・ワールド(64)=迫力の戦闘シーンを8分のワンカットで表現した技術力と心意気にはもう土下座!▽テニスの王子様(63)=日本製「少林サッカー」!▽博士の愛した数式(63)=浅丘ルリ子姉さん以外、役者は完璧なのだが▽間宮兄弟(62)=登場人物たちは魅力的だが、お話に魅力が乏しいかな。でもエリカ&景子姉妹はぶち可愛い▽小さき勇者たち〜ガメラ〜(60)=怪獣映画の新機軸。でもヒットしなかったので続かないのだろうな…▽ドラえもん〜のび太の恐竜2006〜(58)=復活ドラえもん、演出も絵も丁寧。テーマ曲もいい▽THE LIMIT OF LOVE〜海猿〜(57)=突っ込み所満載だが、ハリウッドスタイルの志を買おう!でも、大事なドレスなら着て避難しよう!▽ありがとう(55)=阪神大震災をきちんと描いたいい映画。前半と後半のつながりが悪いけど▽明日の記憶(50)=お話に救いようがない。大滝秀治ってすごいよう、怖いよう▽スケバン刑事(50)=結構好き▽イルマーレ(50)=無茶な話だけど、ロマンチック▽犬神家の一族=リメイクの意義が問われるが、結構面白い。話はかなり無理があるが。

[40点代・30点代]
大奥(49)=豪華絢爛だけど、テレビで十分かな▽轟轟戦隊ボウケンジャーTHEMOVIE〜最強のプレシャス(49)=倉田保明にもっとアクションしてほしかったかな▽地下鉄(メトロ)に乗って(48)=切なさが伝わらないと、ちょっと辛い▽ワールド・トレード・センター(47)=忘れてはならない事件だが、事件の本質とは違ったところらドラマを持っていったのは返ってどうだろう▽シリアナ(46)=現代的なお話だがつながりが分かりにくい。ジョージ・クルーニー、いつ大統領選に出るの?▽プルーフ・オブ・マイライフ(45)=頭のいい人は大変、という話。僕は算数できません▽おいら女蛮(45)=井口昇監督はすごい。チープさが最高▽日本沈没(44)=沈没シーンとラブシーン。並べても、同じ映画とは思えん▽Mi3(43)=面白かったけど、もう忘れました▽X−MENザ・ファイナルエディション(42)=こっちが断然派手だが、1と2の方が好き▽北斗の拳〜ラオウ伝殉愛の章〜(40)=好きだが絵がビデブ▽フライトプラン(39)=ジョディは「インサイド・マン」の方が魅力的だったぞ。アラブの人に敬意を!▽Vフォー・ベンデッダ(38)=仮面と坊主しか覚えてない▽燃ゆるとき(35)=中井貴一の演説が麺を延ばしちゃった▽仮面ライダーカブトGOD SPEED LOVE(34)=お話の展開にかなり無理が…。仮面ライダー劇場版はこの数年傑作続きだったのに残念▽最終兵器彼女(34)▽ミラーマンREFLEX(33)=ウルトラマンメビウスと同じ監督なのに、これは…▽陽気なギャングが地球を回す(33)=はじけそうで、はじけない▽the有頂天ホテル(33)=ハリウッドへのオマージュも、伝わらなきゃ何の意味もない

[20点代・10点代]バルトの楽園(29)=「ヒットラー」ブルーノ・ガンツの扱いが将軍様より格下じゃあ…▽ダ・ヴィンチコード(29)=ヒロインがアメリと気付いたのが最大の謎解きだったりして▽ザ・センチネル(29)=マイケル・ダグラスは老けてもセックス・シンボル▽県庁の星(28)=こんな公務員とはお友達になりたくない▽ライアンを探せ!(25)=ディズニー印なのにねえ▽シャークボーイ&マグマガール3−D(15)=すみません、内容を覚えていません。

★で、それぞれを上位から日本映画、外国映画で分けてベスト10にしてみました。

[日本映画]
1,出口のない海
2,ゆれる
3,嫌われ松子の一生
4,寝ずの番
5,フラガール
6,時をかける少女
7,ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟
8,佐賀のがばいばあちゃん
9,武士の一分
10,デスノート前編

[外国映画]
1,父親たちの星条旗
2,ブロークバック・マウンテン
3,007 カジノ・ロワイヤル
4,クラッシュ
5,ユナイテッド93
6,硫黄島からの手紙
7,ホテル・ルワンダ
8,ミュンヘン
9,SPIRIT
10,スーパーマンリターンズ
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大奥  新作レビュー

見た日/12月某日 ★★★

 東映京都撮影所作品である!

 昨年の「男たちの大和」に続き、東映京都、2年連続で正月映画を当てるとは、さすが、「新幹線大爆破」「鉄道員」「半落ち」などで知られる名プロデューサー・坂上順所長の面目役所だろう。東宝と組むことが多かったフジテレビが、時代劇で東映と組んで正月映画を作った、という点にも注目だ。

 僕は昔「ホタル」のキャンペーンで山口県を訪れた坂上さんを取材したとき、「『新幹線大爆破』でテレビを通じて犯人に涙ながらに爆弾の取り外し方を連絡するよう呼びかける宇津井健のモノマネ」をやって爆笑された、という経験を持つのだが、スクリーンで坂上さんの名前を拝見するたびに「なんてバカなことをやったのだろう」と後悔してしまう。

 聞くと東映京都は閉鎖の話もあったというが、坂上さんが赴任してから生き返ったのだろう。特に今回は正月になると、物語的には多少大味でも、有名な俳優がチョコチョコ出るオールスターキャストで「忠臣蔵」を作っていた往時の東映を彷彿とさせる作品だった。

 テレビシリーズに出演してきた大物俳優たちをちょこちょこと使いながら、主役はシリーズ初となる仲間由紀絵を客演として迎え、豪華絢爛な衣装やセット、実際の文化遺産であるロケ地を駆使。カメラもクレーン撮影をこれでもか、と多様して見せる見せる。

 物語的にはちょっと浅いかな、という感じもするし、主人公の行動も「そんなヤツのために命賭けるの?」という感じなのだが、有名でお芝居にもなっている「絵島生島事件」を上手にアレンジし、見事にテレビシリーズの「大奥」の世界に仕上げていたのは脚本の手腕だろう。今年の正月映画は東宝が「犬神家の一族」、東映が「大奥」、松竹が「武士の一分」と、みーんなスター映画なのは邦画活況の印かな。
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犬神家の一族  新作レビュー

見た日/12月某日 ★★★

 前作は確か、中学生のときに映画館で見た。確かそれが初めての「市川崑」体験で、独特な明朝体のタイトル、印象的なストップモーション、陰影くっきりの照明など、実に映像的に新鮮だったことを覚えている。スケキヨがマスクを脱ぐシーンなどはかなり恐かった。

 で、30年ぶりのリメイクだが、脚本もカット割りも前作とほとんど同じ、というのであまり期待せずに見たのだが、これがなかなか面白かった。数年前の「八つ墓村」よりかなり面白く、ここ数年の市川監督作品は個人的には今ひとつだっただけに、かなり楽しめた。

 まず、30年前に見て以来だったし、原作小説も確か中学生時代に読んだのだが、お話の細部はほとんど忘れていて、犯人も「誰だったっけ?」という感じだったので、謎解きの場面も興味深く見られた。石坂浩二はやっぱりはまり役で、年齢を重ねたお陰で、「天から降ってきたような」金田一像に、さらに深みを与えていたと思う。

 まあいかにも作り物、という死体や松嶋奈々子の意味不明な行動、一歩間違えば爆笑物の使用人・猿蔵、連続殺人を全く防ぐことができない金田一さんなど、まあ原作がそうだから仕方ないが、突っ込みどころ満載なのもご愛嬌。萬田久子、松坂慶子も思いっきり芝居がかった大げさな演技なのだが、そこも「味」なのだろう。
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ユナイテッド93  DVD・ビデオレビュー

見た日/12月某日 ★★★★

 公開時、地元の映画館ではかかってなくて、ようやくDVDで鑑賞できた。

 「ホテル・ルワンダ」とは次元が違うかもしれないが、この映画も、作り手が「伝える」という意識を持って作った作品だろう。

 娯楽性は一切なく(同じ事件を扱った「ワールド・トレードセンター」は娯楽映画的な観点はまだあったように思う)、ただひたすらに、9・11のテロ発生時、ハイジャックされた飛行機のうち、唯一目的地に到着せずに墜落したユナイテッド93の機内で起こったことを推論し、リアルに再現しようと試みた映画である。

 管制塔のシーンなどは本人が演じているというし、事件発生時、携帯電話で乗客たちと直接話したという遺族へのきめ細やかな取材から物語を起こし、俳優にも乗客たちをリサーチさせてから撮影したというが、そのリアルさは確かに徹底している。

 驚いたのは、ユナイテッド93の機内で事件が発生するのは映画の中盤を過ぎたあたりで、それまでは全米各地でハイジャックが頻発し、軍が混乱したり、各地の管制塔が騒然とする様子をかなり克明に描いている点。ここはかなりリアルで、こちらは事件の実際を知っているはずなのに、どうなるのだろう?と手に汗を握ってしまう。

 機内で事件が発生してからは、乗客が犯人たちを捕らえ、何とか危機を回避しようとする姿が描かれる。結末はもうわかっているので切ないが、勇気を持って立ち向かう乗客たちの描写はある面想像の部分でもあるし、作り手の良心も感じた。

 「5年で映画化は早い」という声もあったようだが、だからこそ事件を美化せず、リアルにこだわったこの映画が作られたのだろう。

 映画館では鑑賞できず残念だったが、DVDはレンタル版にも特典映像がついていて、遺族本人たちへのインタビューや役者と遺族との対面、試写を見た遺族の感想などがあるのだが、その中である遺族に「ビン・ラディンを殺したいか」という質問をしたところ「そう思わない。そう思えば彼らと一緒になってしまう」と答えていたのが実に印象的だった。

 憎しみは憎しみしか生まない。9・11があったからこそ、今のイラクの悲劇もある。何が正しく、何がいけなかったのか。そもそもなぜ、9・11の悲劇は起こったのか。この映画を見て、いろいろなことを考えさせられた。
 
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ライアンを探せ!  新作レビュー

見た日/12月某日 ★★

 見たい!という息子にせがまれ、映画館へ。ウオルト・ディズニーブランドだが、ILMの元クリエイターたちで作った新しいプロダクションの第1作らしい。

 最近のディズニーは、「トイストーリー」のピクサー社をはじめ、フルCGを得意とするスタジオと組むことが多いが、これもそういう作品の1つだろう。

 上手く鳴けないライオンの子供、ライアンはかつて野生時代はその勇ましい鳴き声でヌーたちを震え上がらせていたという父親とニューヨークの動物園で暮らしている。父親に反発したライアンは、それに乗れば自然に帰れるという緑の箱に乗ってしまうが、そのまま車に乗って連れ去られる。父親や親友のキリン、コアラたちはライアンを追って船に乗り、無人島に到着するが、そこは彼らにとっても未経験な「野生」の世界だった。

 正直、ストーリー的には目新しさもなく、技術的にも目を見張るものもない。ヌーたちのミュージカルシーンや動物園を抜け出すあたりのサスペンス、アクションは面白いし、父親が威厳を取り戻す、というテーマも感動的なのだが、いまいち感動も伝わらない。

 上映時間もほどよく、そこそこは楽しめるのだが、同じディズニーブランドのピクサー社の作品に、ほぼ同じテーマで筋書きの傑作「ファイディング・ニモ」がある以上、これはちょっと不利だろう。そういう意味では可哀想。原題はテーマをそのままタイトルにした「THE WILD」だが、日本語タイトルの方がしっくりくる。
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硫黄島からの手紙  新作レビュー

見た日/12月某日 ★★★

  戦争に敵も味方もなく、殺し合いの正当化は時に人を残虐にし、時に人を恐怖に陥れ、時に人を英雄にする。

 そんなクリント・イーストウッドの静かではあるが力強い主張が、硫黄島の一作目「父親たちの星条旗」に続く、この「硫黄島からの手紙」でより鮮明となった。史実でもあるひとつの戦場での戦いを、戦った両国それぞれの視点で描くというのは画期的で、2作合わせて映画史に残る作品になったと思う。

 今までのハリウッド映画は「英語でない映画」を敬遠する嫌いがあり、例えばロシア人であろうが日本人であろうが、必ず英語を喋っていたのだが、この作品の主要キャストは日本の有名俳優で、きちんとした日本語でセリフを話していたのも、実に画期的だった。

 渡辺謙扮する栗林中将が主役ではあるが、嵐の二宮君扮する若い兵の視点から、さまざまな「戦争の現実」がリアルに描かれる。最近のイーストウッド作品で多かった時勢のカットバックもほとんどなく、栗林の硫黄島赴任から陥落までをじっくり描く。

 ストレートな映画ではあったが、個人的には主役級以外の俳優の仕草や面構えなど、些細な不自然さに目が行ったこともあって、現場の戦争の悲劇と、銃後に英雄扱いされた兵士たちの悲劇をカットバックして鮮烈だった「父親たちの星条旗」の方が正直、感銘を受けた。
日本での世評は今作の方が高いようだが、まあ、これは個人的な感性の問題だろうし、個人的に「父親」の脚本家・ポール・ハギス(今作では脚色協力・原案らしい)の手法が好き、ということもあるだろう。

★近くイラスト添付します!
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ホテル・ルワンダ  DVD・ビデオレビュー

見た日/12月某日 ★★★★

 いやあ、こりゃあ驚いた。この映画は、演出などの技法より、監督の「真実を伝えたい」という“想い”の方が強いのだろう。残念ながらスクリーンではなく小さなテレビサイズではあったが、その想いがキャストにも伝わっていて、残虐な真実と、その痛みが十分伝わってきた力作であり、秀作だった。

 民族紛争で少数民族の大量虐殺が始まり、主人公のホテル支配人は多数派の民族ではあるが、妻は少数民族。彼は家族を守ろうとするが、国連軍の警備があるホテルには続々と難民が集う。彼はあらゆる手を使い、難民たちを守ろうとする。

 愛する家族に銃が突きつけられる。街中で昼間、平気で人がゴキブリ呼ばわれされ簡単に、それも大量に殺される。大人も、子供も関係なく。彼のホテルも決して安全ではない。従業員には裏切り者もいる。国連軍も、海外のマスコミも、同情はしてくれるが、傍観しかできず、正直何の役にも立たない。 

 そんな中で、主人公がどう難民たちや家族を守っていくのか。この映画はドキュメンタリー的な側面を持ちながらも、究極の危機的状況の中で苦悩しながら活躍する主人公を描く、一級のサスペンスにもなっていて、物語としてもすこぶる魅力的な作品になっている。

 かつてあった事件を「映画」で描き、真実を告発するという手法は最近よく見られるが、あえてその映画にエンタテイメント性を持たせることで、より多くの人がその事件に注目する、ということにはなると思う。

 その点、この映画の監督さんはそこを意識しているように思った。真実を伝え、実際にあった事件を忠実に描きながらも、どんな展開になれば観客がドキドキし、胸を奮わせるか、きちんと知ったうえで作っていると感じた。聞けばこの監督さん、北アイルランド紛争の経験者とか。だからこそ、並々ならぬ思いでこの映画を作ったのだろう。

 主演のドン・チードルが好演。チョイ役ではあるが、ホアキン・フェニックスやジャン・レノ、ニック・ノルティらハリウッドの大物たちが出演しているのは、この映画に賛同してのことだろう。

 アメリカでヒットしながら日本公開の目処が立たず、署名運動まで起きて製作から二年経ってようやく今年、日本で公開されたということだが、これだけシネコンが増えて映画産業が盛んになり、ソフト不足が叫ばれる中でこういう映画がすぐに配給できないなんて、ちょっとおかしい、と思う。
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見た日/12月某日 ★★★

 この題材で、こういう映画を作ったところに、今の韓国映画界の底力と勢いを感じる。この作品は日韓合作ということだが、スタッフはほとんどが韓国側。今年は「単騎、千里を走る」「太陽」「硫黄島からの手紙」と、日本の題材、俳優を活用した秀作が続いたが、この映画も同様だと思う。

 藤竜也や萩原聖人、中谷美紀ら日本人俳優たちの佇まいが自然で、彼らの良さを引き出している。武藤敬司や今は亡き橋本真也らの現役プロレスラー、プロレス・格闘技から俳優になった船木誠勝らも大熱演で、プロレスシーンは一時、すべての生活をプロレスに捧げていたことがある僕が見てもリアルで、迫力もあった。

 まずその時代感にビックリ。主演のソル・ギョングは実際の力道山よりスマートで男前だが、プロレス会場の雰囲気などは正に昭和のあの時代で、この点ではCGで作り込みがあざとかった「ALWAYS〜三丁目の夕日」よりは自然だったかもしれない。

 テーマは重い。戦後日本復活の象徴でもあり、アメリカ人レスラーをやっつけることで「復興した日本人の代表」だった力道山が実は朝鮮人であり、彼自身、朝鮮人でもなく、日本人でもなく、死ぬまで孤独で、最強のヒーロー「力道山」であろうとし、生きがいを求めたという、この映画で語られる人生は実に切なく、胸に響く。

 ソル・ギョングは涙ぐましいほどの日本語の特訓とプロレスの練習をしたことが画面から十分伝わってくるが、日本語の発音もクセはあるものの、物語の味にもなっていて好感が持てた。圧巻は力道山&木村(映画では井村)対シャープ兄弟の死闘の再現。もう一度プロレスを見に行ってみようかな、と思わせてくれた。

 それにしても、この映画でいい動きを見せてくれた橋本真也選手がもうこの世にいないことが残念でならない。
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