バブルへGO!! タイムマシンはドラム式  新作レビュー

見た日/2月某日 ★★★

トレンディ・ドラマという呼び方はあるが、トレンディ・ムービーなんてのは言わない。

俳優の髪型や服装、ロケ地の街並みなど、その時代その時代の風俗が映画に写りこんでいるのは当然だが、一つの映画が若者の風俗や好みを作り出した、というのは、数十年前の「太陽の季節」などいろいろあるのだが、ここ10年ではあまり記憶にない。

多くの人が視聴し、情報発信という側面もあるテレビドラマの場合、流行に敏感なことがひとつの特徴ではあるので、流行の先端を行く若者をターゲットにする結果、そういう「時代のトレンド」を生み出してきた、ということは言えるかもしれない。「東京ラブ・ストーリー」以来のフジテレビ「月9」はその典型だろう。

ハリウッドでは「サタデー・ナイト・フィーバー」がディスコブームを作り出したように、映画が流行を作ってきた例は多い。しかし、日本映画の場合、多くの映画人たちは時代のトレンドとは一線を画しているところで勝負してきた面もあったからなのか、トレンドに敏感な映画は意外と少ない。

逆に「なんとなく、クリスタル」や「湾岸道路」のように、80年代から90年代にかけ、映画にトレンドを取り入れようとした結果、作り手の「ダサさ」が露呈してしまい、目を覆うばかりの作品になったケースが多い。(中には「スローなブギにしてくれ」などの例外もある)これは、この時期に作られたマンガの映画化作品にも言えることだ。

それが、数年前からちょっと傾向が変わってきた。テレビ局の映画製作への参入が充実・定着してきたこともあるのだろうが、特に東宝の配給作品を中心に、時代の傾向を読むような、若者の嗜好を刺激いるような映画が増え始めた。マンガの映画化も、かつてのダサさは影を潜め、「タッチ」や「NANA」「海猿」のように、若者をターゲットにした映画で、受け手市場のマーケティングもしっかり調べながら、原作の雰囲気を生かしつつ、今の時代にもマッチし、物語としても力がある作品も出てきた。ちなみに、これらは全部、東宝配給だ。

前置きが長くなったが、80年代以降、映画でトレンドを作ろうとしたのは、ホイチョイ・プロダクションズの「私をスキーにつれてって」が最初ではないか、と思う。若者が好むファッションやアフターファイブの楽しみ方を「映画」の「物語」で表現し、それがヒットすることでまた新たな仕掛けを生む。その手法を「映画」でやってのけたことは、ある意味、画期的なことだと思う。

コミックや広告宣伝の分野で活躍していた企画集団・ホイチョイ・プロダクションズは、聞けば小学時代の仲間で結成し、馬場康夫監督は「私を・・・」以前はホイチョイをやりながら、実は日立製作所の会社員だったというから驚く。要は、彼らが「遊び心」でやっていることを、上手に映画で表現した、ということなのだろう。「遊び心」ではあるが、決してそれはふざけていてはなく、そのあとの「彼女が水着にきがえたら」も「波の数だけだきしめて」も、なかなか娯楽作としても優れた作品だった。

で、この映画だ。まず、自らバブル時の流行を作り出した、というか仕掛けたホイチョイ・プロ自体がこの映画を作っていること自体が、セルフパロディのようで楽しい。良質なライトコメディは日本映画にも増えつつはあるが、まだまだないだけに、馬場監督が久々にこういう映画を手がけたことはうれしい。

映画はかなりお馬鹿だが、馬場監督は「バック・トゥ・ザ・フィーチャー」を目指した部分も見て取れ、テンポもよく、時代のギャップを感じさせる小粋なギャグも面白い。1990年ってもう17年前の話なのね、と思わず回顧してしまったが、この時代の主役だった今の30代、40代は今も社会の一線で活躍中だし、この年代をターゲットに娯楽作を作ったホイチョイ・プロの思惑も正しいと思う。

ちなみに1990年3月、僕は新聞社入社3年目。初の担当地区に燃えていたころだが、毎日朝から深夜まで、土日も関係なく働いて、びっくりするような薄給に苦しみながら「今年の就職戦線は開学初の売り手市場」なんで大学の就職記事を「信じられねー」と叫んで書いていたころだ。僕にとっては全然生活とバブルは関係なく、彼女もおらず、夜な夜な飲みに出てはワンレンボディコンのお姉ちゃんをチラチラ見てはため息をつく日々だった。

さてさて、こういうSF的な要素を取り入れたコメディはハリウッドに傑作が多い(「バック・・・」シリーズをはじめ、「インナー・スペース」などいろいろ)が、この手の映画は将にアイデア勝負なので、バブル時にタイムスリップ、という秀逸なアイデアの勝利だろう。これまでのホイチョイムービーと違い、娘の母親探しという、わずかではあるが、人情物の側面を入れた点に、今までのトレンド・ムービーとはいい意味でも違った成長も感じた。


広末涼子のコメディエンヌぶりもいいし、阿部寛は最近の好調さがこの映画でも爆発している。後半のドタバタぶりと落ちのつけ方にもうちょっと工夫してほしいが、なかなか楽しめるコメディである。
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「幸福の黄色いハンカチ」リメイク!  映画つれづれ

ちょっとビックリのリメイク情報が入ってきた。

山田洋次監督の名作「幸福の黄色いハンカチ」がハリウッドでリメイクされることになり、山田監督も同席して製作発表が行われた。日本公開は2009年春で、高倉健が演じた刑務所を出所した男(確か、勇次でしたな)は「蜘蛛女のキス」などの名優、ウィリアム・ハートが演じるという。

もともと、この映画は、アメリカの新聞に作家のピート・ハミルが書いたコラムが元になっている。刑務所を出所した男がバスに乗り、妻に今も待っているなら黄色いリボンを家の外に結んでいてほしい、と手紙を送った。男は黄色いリボンがなければそのままバスで立ち去るつもりでバスに乗るが、そのバスは段々と自宅に近づく・・・という話だ。

このコラムはポップスの歌詞にもなり、日本でも大ヒットした。そう言えば僕も高校時代、ブラスバンドで演奏したことがある。歌詞の内容とはまた印象が違う、明るくてノリがいい優しいメロディーが素敵な名曲である。

この話を山田監督がイメージをふくらませ、雄大な北海道を舞台に、誤まって罪を犯し、刑務所を出所した寡黙な男が若い男女と行動を共にしながら、妻の待つ家までを旅する見事なロード・ムービーに仕上げた。高倉健の存在感にしびれたし、武田鉄矢と桃井かおりのカップルも笑わせてくれ、この2人が段々成長していく姿にも感動した。

この傑作がどんな風に料理されるのか。タイトルはズバリ「イエロー・ハンカチーフ」らしいが、楽しみであり、不安ではある。まあ原作に忠実な映画にはなるのだろうけど、舞台がアメリカになれば、原作映画の持つ雰囲気を出すのは難しいだろう。

ハリウッドのソフト不足が指摘されているが、今後、日本映画のリメイクはどんどん増えていくだろう。「デスノート」シリーズもハリウッドから多数のオファーが来ているらしい。

アメリカの一般観客は英語字幕の映画を嫌う傾向があるので、リメイク作品の出来が悪かった場合、オリジナルも知らずにけなされるのはたまらん、という思いがあるが、「硫黄島からの手紙」以降、そういう傾向が修正され、リメイク作品が増えることで、日本映画そのものにも関心が集まればいいな、とは思う。
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日本映画は好調?  映画つれづれ

先日、何気なくテレビでTBS系の「サンデーモーニング」を見ていたら、昨年、日本映画の興行収入が21年ぶりに外国映画の興行収入を超えたことを特集していた。

映画は普通、興行収入が10億円を上回ると大ヒット、とされるらしい。キネマ旬報2月上旬決算号によると、興行収入50億円を超えた昨年の日本映画は「ゲド戦記」(76億5千万円)、「LIMIT OF LOVE 海猿」(71億円)、「the有頂天ホテル」(60億8千万円)、「デスノートthe Last name」(55億円)「日本沈没」(53億4千万円)「男たちの大和/YAMATO」(51億円)と6本もあった。ちなみに一昨年、50億円を越えた映画は「ハウルの動く城」(196億円)1本だったという。

以上の6本はすべてテレビ局が製作委員会に入った東宝、東映などのメジャー配給だったが、インディペンデント系配給会社の作品も、「フラガール」が14億円を記録したり、かなり好調だったようだ。

「サンデーモーニング」の特集は、整理するとこういうことだ。こうした日本映画の好調は、@減り続けていた映画館人口がシネコンの登場で回復し、中高年世代を中心に再び映画が人気になっていること、A日本映画の内容が充実し、良質な作品が作られてきたこと、Bその一方でハリウッドで利益最優先の製作体制にほころびが出始め、ソフトを日本などアジアの作品に求めるなど、作品の質が落ちてきたこと−などを挙げ、最後は世界におけるアメリカ優先主義自体に陰りが出ている、というアメリカ経済そのものの問題に言及していた。

まあ、おおむねその通りだろう。この数年、シネコンが急増し、観客動員は増える傾向にある中、劇場の現場ではソフトを求める傾向が強まり、日本映画の製作本数が増えているのではないだろうか。もちろんハリウッドの衰退傾向も原因のひとつだろうが、製作本数はそんなに減っている訳でもない。ビデオ屋さんに行けば、やたら劇場未公開の洋画の新作がたくさん出る状態にもなっている。

日本人が見る映画なのだから、日本の俳優による日本語の映画で面白いものが出れば、そこに観客が集まるのはしごく当然のことだと思う。経済の原則ではあるが、需要が高まった結果、そこに、売れる商品としてヒットする映画が出てきた、ということだろう。

でも、ここにも問題はある。その結果、日本映画は年間400本以上に及ぶという。劇場公開を待って公開されない映画もたくさんあるらしい。東京の単館映画館のレイトショーで1週間だけ公開し、わずかの期間でDVDになるときに「劇場公開作品」と銘打ってレンタルされる、あこぎな作品も結構多い。

興行収入が50億円を超えた映画の中にも、まるでテレビドラマのような説明過多な、わかりやすい映画が多いことも気になる。映画とは劇場でじっくり鑑賞し、作り手のメッセージや思いを受け手がさまざまな感性で受け取るものである、と僕は思う。テロップやナレーションで全てを説明するのはテレビドラマで十分だし、映画というものは、基本的に映像で表現するものだと思う。

僕が敬愛する佐々部監督は「作り手の志は必ずスクリーンに映る」と言われた。そういう意味では、「志」が感じられない作品が大ヒットしている現状は、手放しで喜んでいいものではないだろう。もちろん、映画そのものが好調なのは喜ばしいし、そういう娯楽作品ももちろん必要だ。「LIMIT OF LOVE海猿」などはベタベタではあるが、ハリウッド映画のような構図を目指した作品として僕は好感を持った。

だからこそ、作品が雑にならないよう、良質でじっくり見られる作品もどんどん作られるようにならないと、日本映画は数年後にはダメになってしまい、映画界そのものもダメになって、また映画館に閑古鳥が生まれることにならないか、と危惧するのだ。ハリウッドに期待が持てない今、日本の映画人の方々には是非、がんばってほしい。
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キネ旬ベストテン発表!  映画つれづれ

毎年、楽しみにしている「キネマ旬報」2月下旬決算特別号を購入した。

キネ旬は、中学時代から定期購読している唯一の映画雑誌。毎年発表される評論家による「ベストテン」もだが、読者の「ベストテン」が楽しみで、僕も投票している。

佐々部監督も公式HPで触れていたが、残念なのは、僕が応援し、昨年の日本映画ベストに推した「出口のない海」が読者ベストテン30位圏内に入ってなかったことだ。

監督は公式HPで「<伝える映画>を撮ろうとして、自分なりにベストを尽くした作品でしたが、観客の皆さんに思ったようには伝わらなかった」と言われ「反省すべき点は反省もして、次作への糧にしたい」と謙虚なコメントをされている。

僕が言うのも何だが、この映画は本当に秀作だと思うし、十分<伝わる>映画だと思う。僕にとっては本当に心から感動した作品だった。一昨年から昨年にかけ、派手な戦闘シーンを織り込んだ分かりやすい大作戦争映画が和洋問わず続いた中で、そうした作品群とは一線を画したものであったことが、全国的な大ヒットにならなかった要因の一つのように思う。

でも、この作品は山口県では大ヒットした。とくに僕の住む周南地域では連日大入りで、僕も何度か劇場に通ったが、多くの方が素直に感動されていました。確かにこの土地は「回天」の地元ということもある、地元放送局が心を込めて宣伝してくれたこともあるが、それだけで映画はヒットするものではない。後半は口コミで広がっていたし、客足がなかなか落ちなかったのは、ソフトがいいから、ということに尽きると思う。

そういう意味で、2月23日に待望のDVDが発売されるが、ぜひ、この作品がDVD化で多くの方に見てもらい、再評価されることを祈りたい。ただ、キネ旬の評論家による「ベストテン」では、日本映画学校校長で映画評論家の佐藤忠男氏、映画評論家の林冬子氏、日本映画復興会議代表委員で映画評論家の山田和夫氏がそれぞれベストテン内に選び、全体では41位。年間300本に及ぶ日本映画が公開される中での41位だから立派だと思う。

ちなみに、キネ旬における佐々部監督の過去作は「チルソクの夏」がベストテン9位、読者ベストテン10位、「半落ち」が読者ベストテン9位、「カーテンコール」が読者ベストテン8位で、如何に佐々部監督が質の高い作品づくりをしてきたかが分かると思う。それだけに今回の評価は続けて秀作を発表しているだけに残念なのだが、今年は期待作「夕凪の街 桜の国」が控えているし、賞レースにも期待したい。まあ、賞に入る映画がいい映画とは限らないが、好きな監督の作品が評価されるのはファンとしては素直にうれしい。

「夕凪・・・」は知り合いの某映画会社の宣伝部の方によると、「他社の作品ながら極上の出来」ということなので、本当に楽しみである。

ところで前出の評論家諸氏の「出口のない海」の評価だが、林氏は「博士の愛した数式」「明日の記憶」「武士の一分」と並べて「内容・時代設定が全く異なりながら、男性たちの生きざまをみごとに描いた作品」と評し、山田氏は戦後61年の今、「紙屋悦子の青春」などの作品とともに特攻で殺された青年たちを追悼する作品が登場したことを特記したい、と評している。

さて、今年のキネ旬ベストテンだが、読者も評論家も1位は「フラガール」なのには驚いた。読者ならともかく、評論家が「ゆれる」を抑えて1位だったのは意外。邦画が好調で、エンタテイメント作品に目が行くのはいいことだとは思うが、個人的には「フラガール」より「ゆれる」の方を買う。






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墨攻  新作レビュー

見た日/2月某日 ★★★★

原作のコミックや小説も未読で、何の予備知識もなしに鑑賞。いやあ、これは面白い!!

物語の筋立てがしっかりしていて、知略物としてもよく出来ている。二時間ちょっと、上映時間を一気に見せてくれた。

中国の歴史物で興奮したのは「HERO」以来か。あれは中国独特の歴史観や観念をエンタテイメントにした稀有な作品で、アクションは様式美のようである意味日本の黒澤映画を意識したものだったが、この「墨攻」は生身のアクションを大切にしていて、登場人物たちの痛みと現実感を伴う「戦い」がリアルであり、共感もできた。

ネットのレビューなどを見ると原作のテイストである墨家の思想の描き方が今ひとつで深みが足らない、という意見も多いようで、確かに細かい点の消化不足感はあるものの、ラストまでしっかりとした展開で見せてくれる。原作を日本の小説・コミックに求め、撮影、照明、音楽が日本人スタッフで、監督・主演は香港映画界、敵役は韓国映画界から招くという、アジアの映画人が結集し、なかなか見事な仕事を作り上げた、と思う。

とくに撮影監督を務められた阪本善尚さんのカメラワークがいい。古くは「転校生」などの大林映画で知られ、最近はデジタルカメラの開発にも意欲的な阪本カメラマンだが、ここでも意欲的な仕事をされていて、大勢の軍勢を俯瞰でとらえるカットや、敵の軍勢が押し寄せ、城の門の頂上からアンディ・ラウが転げ落ちるカットは実に見事。

10万の軍勢に狙われ、風前の灯火である小さな城、梁の国に、墨家からたった一人で助っ人の男がやって来る。彼は優れた知略で10万の軍勢に立ち向かう・・・。もう、こういうストーリー自体が古代中国の知略物としてワクワクするが、その「知略」もなかなか興味深く、意外な展開を見せる後半は感動的なエピソードが胸を打つ。

この数年来、中国・韓国と日本との間で政治的な感情の行き違いも見られたが、こういう作品が作られ、各国でヒットすることで、お互いの国民の間にいい感情が生まれれば素敵だと思う。過去にもこの三つの国の映画人たちが力を合わせたいい「映画」はいくつかあるが、またまたここにアジア産の傑作がひとつ生まれた、と思う。
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ディパーテッド  新作レビュー

見た日/1月某日 ★★★

この映画の元になった香港映画「インファナル・アフェア」はとっても面白い映画で、傑作だと思うが、このリメイク作は、原作よりも乾いた感じで、またまた違った感じがするヒリリと痛いサスペンス・アクションに仕上がっている。

マフィアに潜入する刑事、警察に潜入するマフィア。この2人の葛藤や苦しみを描く、という点では原作と一緒。ただ、こちらの方のマフィアはアイルランド系アメリカ人の組織で、移民国家・アメリカの闇が描かれ、2人の葛藤を同じ精神科医の女性が受け入れ、そのヒロインが2人との愛に苦しむ様子も描かれるなど、精神性というか、テーマも原作とはちょっと異なる。

だから、見た感覚は原作とはかなり違う。タイトルのディパーテッドは「死者」という意味らしいが、この題名が利いてくるラスト近くの展開は原作映画のU、Vの要素を取り入れているものの、オリジナリティもあり、結構衝撃的だ。

乾いた感じのギャング映画、というテイストは正にマーティン・スコセッシ印。名作「タクシードライバー」「レイジング・ブル」をはじめ、この監督さんの作品には大きな影響を受けてきたが、最近の「ギャング・オブ・ニューヨーク」「アビエイター」は劇場で見る気がせず、DVDで斜め見ていどだったのに、この作品は久しぶりに映画館に足を向かう気にさせてくれた。そういう意味ではスコセッシ監督の近作の中では最も面白かった。

ジャック・ニコルソンの演技が「怪演」と話題になっているが、日本で言えば往年の丹波哲郎や三國連太郎、今なら本田博太郎か、という感じか。映画館のシーンで○○○の○○○○を出したお下品さには爆笑&拍手喝采で、終始「フ○ラ」と言っているのもスゴイ。「バットマン」のジョーカー役以来の爆発ぶりだ。

正にエロエロ&バイオレンスなのだが、これだけ暴れてもお話から浮かず、大物の存在感を出しているのはさすが。お年を召してもこれほどのエネルギーを出せるなら、是非「シャイニング」のセルフリメイクでもしてもらいたい。
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グエムル 漢江の怪物  DVD・ビデオレビュー

見た日/1月某日 ★★★★

いやあ、こんな映画に出会えるとは、怪獣映画が好きで本当によかった、と思う。

聞くところによると、肝心の怪獣のCGは全てハリウッドにおまかせだったらしいが、その姿勢も潔い。普通、こういう映画を作る場合、作り手は怪獣のスペクタルシーンに命を賭けるのだが、ポン・ジュノ監督は、怪獣そのものより怪獣出現によって起こる人間側のドラマに関心があるようで、そのドラマ部分が特撮部分の秀逸な部分も際立たせていて、実にすばらしい作品に仕上がっている。

この映画でスゴイのは、怪獣退治をするのが一般の、市井の人々、という点だ。冒頭で怪獣に娘をさらわれたことからその家族が立ち上がるのだが、とくに父親が本当にダメダメでだらしなく、ソン・ガンホが好演している。主人公たちはいわゆる低所得の底辺にいる層なのだが、その父親が娘を愛するあまり、軍隊や国家権力をものともせず、猪突猛進でつき進む様が実におかしく、そして感動を生む。

中盤のダラダラ感、辛らつな米軍の描き方、そして後半になっていい意味で予想を裏切る展開は実にサスペンスフル。バカだが憎めない主人公、説教臭く、家族想いだがどこか抜けている祖父、学生運動家だった主人公の弟、アーチェリー銅メダルの主人公の妹と、個性的なキャラクターが生き生きと描かれ、それぞれの得意技を駆使して怪獣に立ち向かっていくクライマックスは興奮する。

特撮も、前半で真昼間に怪獣が河川敷で大暴れし、人々をガンガン食いまくるシーンは特撮的に実に秀逸で、特撮映画史上に残る名シーンだと思う。

ユーモアがあって社会的、というのがポン・ジュノ監督の作品の特徴だが、前作の大傑作「殺人の追憶」とも共通点が多い。実際の殺人事件を元に描いた問題作の次が怪獣映画、というのも意表をついて面白いが、その内容が「怪獣映画でありながら社会的でユーモアたっぷり」という点は、前作の「実際の猟奇殺人事件を描いた映画ながらユーモアたっぷり」というところと同じで、ここに強い作家性を感じる。

ポン・ジュノ監督は今村昌平監督をこよなく敬愛しているらしく、今村作品の影響が強いということだが、聞くところによると、日本の取材陣から「今村監督が怪獣映画を撮ったらこういう作品になるでしょうね」と言われ、とっても嬉しかったそうだ。

キネマ旬報の2006年のベストテンでは、「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」に続いて外国映画の3位に輝いたというから、堂々としたものである。外国映画とは言え、怪獣映画が玄人筋から評価されたことは嬉しい。これはかつて「風の谷のナウシカ」と平成「ガメラ」第一作がベストテンに入ったとき以来の快挙だと思う。

ということで、昨年の公開時、地元で公開されなかったとはいえ、劇場で見たかったなあ、と心から後悔したのでした。
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どろろ  新作レビュー

見た日/1月某日 ★★★

うーむ・・・。正直、乗れなかった。面白いのは面白いのだけど。

百鬼丸にとって、失った身体を魔物から取り戻すことは、自分を取り戻すことであるはずだと思うのだが、その「成長」や「痛み」が今ひとつ、映画から伝わらない。

CGもアクションも頑張ってはいるが、どこか綺麗で、現実感がない。手塚治虫の原作世界を現代的にアレンジし、CGたっぷりのエンタテイメントにする、というアイデアは秀逸とは思うのに・・・。

オーストラリアでのロケも、自然の雄大さに比べ、作り物のセットの稚拙さや日本的な世界観とのギャップがやけに気になる。

・・・と思いながら映画は終盤に差し掛かったのだが、醍醐の城下に百鬼丸とどろろが辿り着いた辺りから、父と子の宿業、人が生きる意味など、多分作り手が伝えたいであろうメッセージが明確になって映画がグッと締まってきたように思う。

ここらへんが「カナリア」という秀作を生み、「黄泉がえり」「この胸いっぱいの愛を」などでも生者と死者との関わりを通し、スクリーンで一貫して生きる意味を問い掛けてきた塩田監督の真骨頂だろう。

そういう意味では全体を通して感じられた「今ひとつ感」が残念。もともと僕は、こういう空想エンタテイメント映画が死ぬほど大好きなはずなのに、なぜか昨年の「日本沈没」もこの「どろろ」も今ひとつだったのはなぜだろう。その昔、世評では最悪だった「さよならジュピター」も「惑星大戦争」も「ガンヘッド」もこよなく愛しているのに。

だが、その答えは、次にレビューを書くはずの「グエムル 漢江の怪物」を見てはっきりした。空想映画は、どんなに特撮がチャチであろうと、やはりドラマ、というか人間がしっかり描けてないと、感情移入できないのだ。

と書くと、「惑星大戦争」や「さよならジュピター」は人間をしっかり描いてないじゃないか、と言われそうだが、これらの作品群は、作り手の真面目さが、妙な味というか、不思議なヘタウマ的な魅力になっていた。そういう意味では、この「どろろ」などは妙な味を出すほどチャチではないし、かと言って深いドラマづくりにも少々失敗していて、結局、中途半端になっている。

アクションやCGはもちろん監督も関与して最終的にはOKしているのだろうが、全編を通して見ると、監督が描こうとしている世界観と乖離しているように見えるのだ。

とは言っても、こういう作品は日本の映画界にとって必要だ。エンタテイメントの宝庫とも言える手塚作品にチャレンジしたことも評価したい。個人的にはこれをきっかけに、他の手塚作品や、石ノ森章太郎ら、往年の作家の名作SFマンガの実写化をぜひ実現してほしい。

(そういえば、ハリウッドの映画会社が「サイボーグ009」など、石の森氏の作品映画化権を獲得した、というニュースをずいぶん前に見たが、どうなったのでしょう?)

あと、柴崎コウがとってもチャーミングで、原作の少女を大人にしたのは、柴崎コウの演技を見ると正解だった。ということで、本来なら星2つというところだが、プラス要素を入れて星3つ。
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