墨攻  新作レビュー

見た日/2月某日 ★★★★

原作のコミックや小説も未読で、何の予備知識もなしに鑑賞。いやあ、これは面白い!!

物語の筋立てがしっかりしていて、知略物としてもよく出来ている。二時間ちょっと、上映時間を一気に見せてくれた。

中国の歴史物で興奮したのは「HERO」以来か。あれは中国独特の歴史観や観念をエンタテイメントにした稀有な作品で、アクションは様式美のようである意味日本の黒澤映画を意識したものだったが、この「墨攻」は生身のアクションを大切にしていて、登場人物たちの痛みと現実感を伴う「戦い」がリアルであり、共感もできた。

ネットのレビューなどを見ると原作のテイストである墨家の思想の描き方が今ひとつで深みが足らない、という意見も多いようで、確かに細かい点の消化不足感はあるものの、ラストまでしっかりとした展開で見せてくれる。原作を日本の小説・コミックに求め、撮影、照明、音楽が日本人スタッフで、監督・主演は香港映画界、敵役は韓国映画界から招くという、アジアの映画人が結集し、なかなか見事な仕事を作り上げた、と思う。

とくに撮影監督を務められた阪本善尚さんのカメラワークがいい。古くは「転校生」などの大林映画で知られ、最近はデジタルカメラの開発にも意欲的な阪本カメラマンだが、ここでも意欲的な仕事をされていて、大勢の軍勢を俯瞰でとらえるカットや、敵の軍勢が押し寄せ、城の門の頂上からアンディ・ラウが転げ落ちるカットは実に見事。

10万の軍勢に狙われ、風前の灯火である小さな城、梁の国に、墨家からたった一人で助っ人の男がやって来る。彼は優れた知略で10万の軍勢に立ち向かう・・・。もう、こういうストーリー自体が古代中国の知略物としてワクワクするが、その「知略」もなかなか興味深く、意外な展開を見せる後半は感動的なエピソードが胸を打つ。

この数年来、中国・韓国と日本との間で政治的な感情の行き違いも見られたが、こういう作品が作られ、各国でヒットすることで、お互いの国民の間にいい感情が生まれれば素敵だと思う。過去にもこの三つの国の映画人たちが力を合わせたいい「映画」はいくつかあるが、またまたここにアジア産の傑作がひとつ生まれた、と思う。
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