バブルへGO!! タイムマシンはドラム式  新作レビュー

見た日/2月某日 ★★★

トレンディ・ドラマという呼び方はあるが、トレンディ・ムービーなんてのは言わない。

俳優の髪型や服装、ロケ地の街並みなど、その時代その時代の風俗が映画に写りこんでいるのは当然だが、一つの映画が若者の風俗や好みを作り出した、というのは、数十年前の「太陽の季節」などいろいろあるのだが、ここ10年ではあまり記憶にない。

多くの人が視聴し、情報発信という側面もあるテレビドラマの場合、流行に敏感なことがひとつの特徴ではあるので、流行の先端を行く若者をターゲットにする結果、そういう「時代のトレンド」を生み出してきた、ということは言えるかもしれない。「東京ラブ・ストーリー」以来のフジテレビ「月9」はその典型だろう。

ハリウッドでは「サタデー・ナイト・フィーバー」がディスコブームを作り出したように、映画が流行を作ってきた例は多い。しかし、日本映画の場合、多くの映画人たちは時代のトレンドとは一線を画しているところで勝負してきた面もあったからなのか、トレンドに敏感な映画は意外と少ない。

逆に「なんとなく、クリスタル」や「湾岸道路」のように、80年代から90年代にかけ、映画にトレンドを取り入れようとした結果、作り手の「ダサさ」が露呈してしまい、目を覆うばかりの作品になったケースが多い。(中には「スローなブギにしてくれ」などの例外もある)これは、この時期に作られたマンガの映画化作品にも言えることだ。

それが、数年前からちょっと傾向が変わってきた。テレビ局の映画製作への参入が充実・定着してきたこともあるのだろうが、特に東宝の配給作品を中心に、時代の傾向を読むような、若者の嗜好を刺激いるような映画が増え始めた。マンガの映画化も、かつてのダサさは影を潜め、「タッチ」や「NANA」「海猿」のように、若者をターゲットにした映画で、受け手市場のマーケティングもしっかり調べながら、原作の雰囲気を生かしつつ、今の時代にもマッチし、物語としても力がある作品も出てきた。ちなみに、これらは全部、東宝配給だ。

前置きが長くなったが、80年代以降、映画でトレンドを作ろうとしたのは、ホイチョイ・プロダクションズの「私をスキーにつれてって」が最初ではないか、と思う。若者が好むファッションやアフターファイブの楽しみ方を「映画」の「物語」で表現し、それがヒットすることでまた新たな仕掛けを生む。その手法を「映画」でやってのけたことは、ある意味、画期的なことだと思う。

コミックや広告宣伝の分野で活躍していた企画集団・ホイチョイ・プロダクションズは、聞けば小学時代の仲間で結成し、馬場康夫監督は「私を・・・」以前はホイチョイをやりながら、実は日立製作所の会社員だったというから驚く。要は、彼らが「遊び心」でやっていることを、上手に映画で表現した、ということなのだろう。「遊び心」ではあるが、決してそれはふざけていてはなく、そのあとの「彼女が水着にきがえたら」も「波の数だけだきしめて」も、なかなか娯楽作としても優れた作品だった。

で、この映画だ。まず、自らバブル時の流行を作り出した、というか仕掛けたホイチョイ・プロ自体がこの映画を作っていること自体が、セルフパロディのようで楽しい。良質なライトコメディは日本映画にも増えつつはあるが、まだまだないだけに、馬場監督が久々にこういう映画を手がけたことはうれしい。

映画はかなりお馬鹿だが、馬場監督は「バック・トゥ・ザ・フィーチャー」を目指した部分も見て取れ、テンポもよく、時代のギャップを感じさせる小粋なギャグも面白い。1990年ってもう17年前の話なのね、と思わず回顧してしまったが、この時代の主役だった今の30代、40代は今も社会の一線で活躍中だし、この年代をターゲットに娯楽作を作ったホイチョイ・プロの思惑も正しいと思う。

ちなみに1990年3月、僕は新聞社入社3年目。初の担当地区に燃えていたころだが、毎日朝から深夜まで、土日も関係なく働いて、びっくりするような薄給に苦しみながら「今年の就職戦線は開学初の売り手市場」なんで大学の就職記事を「信じられねー」と叫んで書いていたころだ。僕にとっては全然生活とバブルは関係なく、彼女もおらず、夜な夜な飲みに出てはワンレンボディコンのお姉ちゃんをチラチラ見てはため息をつく日々だった。

さてさて、こういうSF的な要素を取り入れたコメディはハリウッドに傑作が多い(「バック・・・」シリーズをはじめ、「インナー・スペース」などいろいろ)が、この手の映画は将にアイデア勝負なので、バブル時にタイムスリップ、という秀逸なアイデアの勝利だろう。これまでのホイチョイムービーと違い、娘の母親探しという、わずかではあるが、人情物の側面を入れた点に、今までのトレンド・ムービーとはいい意味でも違った成長も感じた。


広末涼子のコメディエンヌぶりもいいし、阿部寛は最近の好調さがこの映画でも爆発している。後半のドタバタぶりと落ちのつけ方にもうちょっと工夫してほしいが、なかなか楽しめるコメディである。
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「幸福の黄色いハンカチ」リメイク!  映画つれづれ

ちょっとビックリのリメイク情報が入ってきた。

山田洋次監督の名作「幸福の黄色いハンカチ」がハリウッドでリメイクされることになり、山田監督も同席して製作発表が行われた。日本公開は2009年春で、高倉健が演じた刑務所を出所した男(確か、勇次でしたな)は「蜘蛛女のキス」などの名優、ウィリアム・ハートが演じるという。

もともと、この映画は、アメリカの新聞に作家のピート・ハミルが書いたコラムが元になっている。刑務所を出所した男がバスに乗り、妻に今も待っているなら黄色いリボンを家の外に結んでいてほしい、と手紙を送った。男は黄色いリボンがなければそのままバスで立ち去るつもりでバスに乗るが、そのバスは段々と自宅に近づく・・・という話だ。

このコラムはポップスの歌詞にもなり、日本でも大ヒットした。そう言えば僕も高校時代、ブラスバンドで演奏したことがある。歌詞の内容とはまた印象が違う、明るくてノリがいい優しいメロディーが素敵な名曲である。

この話を山田監督がイメージをふくらませ、雄大な北海道を舞台に、誤まって罪を犯し、刑務所を出所した寡黙な男が若い男女と行動を共にしながら、妻の待つ家までを旅する見事なロード・ムービーに仕上げた。高倉健の存在感にしびれたし、武田鉄矢と桃井かおりのカップルも笑わせてくれ、この2人が段々成長していく姿にも感動した。

この傑作がどんな風に料理されるのか。タイトルはズバリ「イエロー・ハンカチーフ」らしいが、楽しみであり、不安ではある。まあ原作に忠実な映画にはなるのだろうけど、舞台がアメリカになれば、原作映画の持つ雰囲気を出すのは難しいだろう。

ハリウッドのソフト不足が指摘されているが、今後、日本映画のリメイクはどんどん増えていくだろう。「デスノート」シリーズもハリウッドから多数のオファーが来ているらしい。

アメリカの一般観客は英語字幕の映画を嫌う傾向があるので、リメイク作品の出来が悪かった場合、オリジナルも知らずにけなされるのはたまらん、という思いがあるが、「硫黄島からの手紙」以降、そういう傾向が修正され、リメイク作品が増えることで、日本映画そのものにも関心が集まればいいな、とは思う。
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