プロジェクトBB  新作レビュー

見た日/5月某日 ★★★★

 僕が心から尊敬する、ジャッキー・チェン先生待望の新作。

 本来なら4月初旬公開作なのだが、僕が住むまちのシネコン(MOVIX周南)では全国公開より一ヶ月遅くの公開。でも、御大ジャッキーの作品でも、ハリウッドメジャーでない香港作品は全国の拡大公開にはなかなかならない。最初のラインナップに乗ってないと、あとから公開するのは難しい。とくにいろいろな映画が出てくるGWは大変だ。

 なのに、ここのシネコンは遅れてもきちんとかけてくれた。前作「香港国際警察」もそうだったのだが、これは正に、ここのスタッフの映画への愛の賜物。そのうえ、公開前にはロビーで過去のすべてのジャッキー映画のチラシを展示する企画展示までやってくれた。これは、ファンには涙物である。この姿勢は他の作品に現れていて、デンマークの話題の人形劇映画「ストリングス」も、全国公開よりやや遅れはしたが、かけてくれた。昨年も春の「ゆれる」を秋にかけてくれ、感動した。「面白い作品はできるだけかけたい」という、スタッフの皆さんの姿勢に感謝。

 さて、この「プロジェクトBB」。満足な肉体アクションができないハリウッドから前作「香港国際警察」で香港映画界にカムバックし、自身の傑作「ポリスストーリー」のセリフリメイク&バージョンアップに挑んだジャッキーだが、今作では「大福星」など、往年の香港映画が醸していた雰囲気を復活させ、軽快なアクション&コメディに、今どきのハートフルな話をミックスした、なかなかの佳作になっている。

 少年時代からジャッキーの親友(兄弟以上と本人も語っている)ユン・ピョウに、「MrBOO!」のマイケル・ホイという、かつての香港映画を支えてきた大スターとの共演もうれしい。相変わらず冴えわたるアクションも、新しいものに挑戦する、というより、かつてのジャッキー映画のアクションを踏襲、グレードアップさせる、という趣向のようで、室内でのアクションは「ポリス・ストーリー」的な作りで、前作で遣り残したことをやろうとしているようにも見える。

 アクションに限って言うと、ずっとジャッキー映画を見てきたファンにとっては物足りないところも少々あるが、初めて「香港の」ジャッキーを見る人にとっては新鮮であり、その過激さは新鮮だろう。とくに赤ちゃんを使ったシークエンスの数々はハラハラドキドキものだ。カーアクションのグレードは過去のジャッキー映画と比べても最高レベルだろう。ハリウッドでは不可能な、CGは一切使わない、肉体を極限まで駆使したアクションの数々。この醍醐味はやはりスクリーンで味わいたい。

 ストーリーは赤ちゃんを誘拐して起こるドタバタコメディと、ダメダメな人生を送る泥棒たちが赤ちゃんを通して自分を省みるハートフルな部分とのバランスがよく、香港映画らしいベタベタでテンション高めの連続展開ではあるが、2時間ちょっと、という長さを全く感じさせない。

 監督に前作と同様、若手のベニー・チャンを起用し、ジャッキーはアクション監督と自身の演技に集中しているのも成功の要因だろう。前作では部下を殺された上司役のジャッキーが、若い警官と一緒に犯人を追い詰める役柄だったが、今作でもジャッキーは若い泥棒のフリーパスとコンビを組む。年齢を重ね、昔ほどのアクションの切れがなくなったジャッキーが、後進を鍛えながら、あるていど見せ場を若手に委ねているのも前作からの傾向だが、これで最近、少々作品の質が落ちていたジャッキー映画の質が復活した。

 このあとは、ハリウッドに戻って「ラッシュアワー3」などに出演するらしいが、やはりジャッキーは過激でコメディフルな香港映画と、香港の雑多な町並みがよく似合う。

 この映画では「親子の絆」がひとつのテーマになっていて、ジャッキーはギャンブルに熱中しすぎて父親を悲しませる、という設定が出てくるが、聞けばジャッキー自身も若いころ、同じように賭け事に熱中し、実父に迷惑をかけた経験があるという。

 そんなジャッキー自身の思いが投影された作品でもあるのだろう。コメディ仕立てだが、おなじみのラストのNG集を見ていると、相変わらず命がけの撮影だったことがわかる。
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