包帯クラブ  新作レビュー

見た日/9月某日 ★★★★

拾い物、と言うと、堤幸彦監督に失礼だろう。

仕事の合間で、観るかどうか本当に悩んだのだが、正直、観てよかった。

今年観た映画の中で、結構底辺辺りになる「大帝の剣」と、同じ監督とは思えないが、僕にとっては堤監督の作品ではベスト。この2、3年に観た青春映画でもベストの粋に達する。高校生たちの物語で、映画館の中で思わず涙したのは「チルソクの夏」以来ではないだろうか?

傷つきやすく、内にこもりやすい高校生たち。登場する人物は、みんな何らかの傷を負っている。彼らは「メールで依頼を受け、依頼者が傷ついた場所に包帯を巻き、写真を撮って送る」という「包帯クラブ」を結成する・・・。

現代社会は、普通に生きていても、傷つく。とくに感受性が鋭い10代ならなおさらだ。僕はこの映画を観ていて、「いじめ」に苦しんだ小学校、中学校時代を思い出した。

「自分はどうやって傷を癒し、ここまで辿ってきたのだろう?」そんなことを考えながら映画を観ていて思った。

人は人によってしか傷つかない。テレビのニュースや情報に傷つくこともあるが、それもまた、人の行為によるものだ。しかし、皮肉なことではあるが、人が癒され、その傷が修復されるのも、また人による。「人は人によってしか癒されない」のだ。

この映画は、脚本がいい。脚本の森下佳子さんはこれが映画デビュー。プロフィールを見ると丁寧な感情表現が評判だったテレビ版「世界の中心で、愛をさけぶ」を担当していたということで納得。等身大の高校生たちが背伸びをせず、リアルに苦しみ、やがて他人の痛みを自分の痛みとして分かるようになる姿が、さわやかに描かれている。

広角レンズを多用した画面、多いカット数、カットの間に挟まれる情景描写など、堤監督独特の演出手法は健在。どちらかと言うと、フィックスの固定画面でしっかり撮っていた「明日の記憶」の方が変化球だろう。「TRICK」シリーズのような奇をてらった演出ではないが、こちらの方が堤監督の個性が鮮やかだと思う。

細やかな感情描写がされている脚本と、ちょっと乾いた冷静なカメラワークが妙にピッタリ来ていて、子どもたちが直面する問題を描いた「現代」の切り取り方や、インターネットや携帯ネットのような現代的なツールを描いた部分と、オーソドックスで普遍的な成長物語がしっくり融合している。

主演の柳楽優弥もいい。彼はついに「誰も知らない」以降、自分を表現できる役にめぐりあえたのではないか。10代特有のいらつきを上手く表現しながら、安定感を物語に与える石原さとみも魅力的だ。大人の俳優はほとんど出ないし、ほとんど物語にも絡んでこないが、実は原田美枝子、風吹ジュンという2人の名優の存在感と演技が、出番は少ないものの、この映画を奥の深いものにしている。

ロケ地に高崎市を選んだのも正解。昔の風景と現代的なビルが共存する地方の小都市の独特な雰囲気は、古くて新しい雰囲気が漂うこの物語の世界観にピッタリで、映画的な効果を上げている。

さらに秀逸なのは音楽。全編、「ハンバートハンバート」という男女デュオがギターに乗せて歌うスキャットが流れるのだが、このメロディー、リズムが素晴らしい。映画全体を通して透明感が感じられるのは、恐らくこの音楽の効果だと思う。

この映画が、どちらかと言うと時代の空気を読む、という点では苦手な東映配給というからビックリ。お客の入りはあまり良くないようだが、同時期公開で大ヒット中のライバル東宝の「HERO」なんかに負けず、頑張ってほしい。

正直言って、こちらの方がずうっといい映画なんだから、胸を張りましょう、胸を!何なら、東映本社に包帯巻きに行きましょうか?
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