2007年総括T・訂正版  マイベスト

さあ、2007年もいよいよ終わり。今年のマイベストテンです。ごく最近見た「サイドカーに犬」「天然コケッコー」を入れたかったのですが、DVD鑑賞だったので外しました。

日本映画で言うと、やっぱり「夕凪の街 桜の国」に尽きるでしょう。

この映画、もちろんテーマや描いていることの素晴らしさはありますが、いくつかの伏線が複雑に絡みながらもきちんと観客に分かりやすく提示され、やがてひとつの話として結実し、それが最終的には一人の女性の成長物語として描かれている点は、正にかつての日本映画が持っていた物語展開の醍醐味を久々に感じさせてくれた作品でもありました。

詳しい総括は、また来年早々にでもしたいと思います。

それでは皆様、よいお年を!


1,夕凪の街 桜の国
2,包帯クラブ
3,キサラギ
4,しゃべれども しゃべれども
5,それでもボクはやってない
6,スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ
7,自虐の詩
8,ALWAYS続・三丁目の夕日
9,キャプテン
10,XXエクスクロス~魔境伝説

1,ヘアスプレー
2,ロッキー・ザ・ファイナル
3,墨攻
4,プラネットテラーinグラインドハウス
5,ディパーテッド

※お断りとお詫び※
記事をアップしてかなり経つのですが、日本映画は例年と同じぐらいの充実した本数を見ることができたので選出作品に悔いはないものの、外国映画に関しては、2007年は「これは見るべき」と感じた作品を10本以上も見られていません。正直、6位以下に選んだ作品は、自分の評価基準と照らし合わせ、例年のマイベストテン作品の基準に達してない作品もあるため、「ベスト」とは言えないと判断し、5位までの選出とさせていただきます。申し訳ありません。2008年は外国映画もしっかり劇場で見て、年末に邦洋合わせて10本ずつ、きちっと選びたいと思います。
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茶々-天涯の貴妃  新作レビュー

見た日/★★★

「男たちの大和」「大奥」に続く、東映京都撮影所による、東映が贈る、3年連続のお正月映画。

数々の時代劇映画を生み出し、一時は存続も危ぶまれていた京都撮影所が見事に復活したのはスゴイと思うし、幼少のころから東映△マークで育った身としては本当に嬉しい。

しかし、この作品、スケール感もひときわ大きくて大宣伝をした「大和」、テレビ局と上手にタイアップできた「大奥」とはちょっぴり趣が違い、テレビ局も製作委員会の中におらず、早急に発表して作っちゃった、感がして心配だった。

で、公開されるとやっぱり興行的にはちょっと厳しいようで、主演女優へのミスキャトのようなレビューも色々目にしていたので不安半々に見た。

が、しかし、正直言って、これ、普通に面白い!

なかなかの堂々とした娯楽作品になっている。昨年の「大奥」よりははるかにこちらの方が面白い。

確かに、とくに前半、ヒロインはかなり苦しい。周囲が芸達者ばかりなのせいもあるが、セリフ回しや立ち振る舞いなど、ギクシャクしていなるのが気になる。

しかし、後半、甲冑姿になると、さすがに宝塚の元男役トップスター。今までのヘナチョコぶりが嘘のようなオーラを放つ。そうか、これがやりたかったのか!後半、淀君が覚悟を決める辺りからは安心して見ていられた。

でも、あれだけお姫様姿が似合わないなら、最初から男装の令嬢にして、男格好のまま、秀吉の側室になればいいのに・・・って、それじゃあ、歴史事実を曲げちゃうか。でも後半、甲冑姿になったらそのままラストまで突き進んでほしかったかも。


まあその点のもろもろの問題点はかなりあるものの、「復活の日」「鬼龍院花子の生涯」のベテラン高田宏治氏の脚本がよい。男たちの野望渦巻く戦国絵巻を女性の視点からきちっと捉え、結末は分かっているのにクライマックスに向けてハラハラドキドキさせてくれる、なかなかのエンターテイメントに仕上がっていた。

大阪城崩壊のシーンは特撮がとってもよくできている。ミニチュアと実景、CGの組み合わせが絶妙で、違和感がない。戦隊シリーズから仮面ライダーはもとより、「男たちの大和」でも素晴らしい映像を編み出した佛田洋特撮監督!素晴らしい!

僕は明日の日本の特撮映画界を背負う方は、佛田監督と「ALWAYS」の山崎貴監督、そして樋口真嗣監督だと、僕は思う。

とくに佛田監督は限られた予算、日数の中でイマジネーションを発揮し、工夫した映像を撮ることにかけては世界レベルだと思う。山崎監督、樋口監督はすでに本編を撮っているので、佛田監督も、戦隊シリーズは全体の監督作品はあるものの、ぜひ、SF超大作の本編・特撮兼任の監督をしてほしい。
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天然コケッコー  DVD・ビデオレビュー

見た日/12月某日 ★★★★

非常に評価が高い作品だったので期待して見た。

「サイドカーに犬」のあとにすぐ見たので、余計そう思ったのかもしれないが、両作品とも同じように普通の人々の日常を淡々と描きながら、非常に対照的だな、と思った。

「サイドカーに犬」は、ドラマとして安心して見られた、という感じだったのだが、この「天然コケッコー」は、上手く表現するのは難しいが・・・何と言うか、作り手が出演者の中学生たちと、同じ皮膚感覚で撮影しているような感じがして、ある意味ドキュメンタリーのようなドキドキ感が最初から最後まで貫かれた感じの作品だった。

でもカメラは冷静で、いつも引き絵が多く、アップが少ない。山下敦弘監督の作品は他もそうだが、どこか冷めていて、映画そのものを客観視している感がある。

それなのに物語で展開されるひとつひとつのエピソードは登場人物たちの感情もきちんと伝わってくるから、これはこの監督さんの大きな特徴であり、真骨頂だろう。

この映画も、ヒロインの夏帆が演技力、存在感とも抜群で、まさに「天然」の世界をグイグイと引っ張っていく。

独特のテンポ感は嫌いではないが、正直、多少自分の生理と合わないな、と思う部分もあった。しかしそれをカバーするだけのヒロイン以外の少年少女たち、その家族たちの自然な存在感と雰囲気は特筆すべきものがある。

あと、この監督さん、季節や自然の描写が上手い。環境が登場人物たちに与える影響もまたこの映画のひとつのポイントだが、その点でも成功していると思う。残念ながら劇場では見れなかったが、是非、映画館で見たい一本だった。

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サイドカーに犬  DVD・ビデオレビュー

見た日/12月某日 ★★★★

根岸吉太郎監督と聞いて、僕の最初の出会いは、高校生のとき、18歳以上と偽って成人向け映画館に入って見た日活ロマンポルノの「キャバレー日記」だ。

ポルノなのだが、軍隊式キャバレーで働く青年の情けない日常が淡々と綴られる、物悲しくも笑える傑作だった。僕はすっかり興奮するのも忘れ、その映画世界に魅入られ、主演の竹井みどりの大ファンになってしまった。

以来、竹井さんのグラビアが出ている週刊誌は買いまくり、出演映画も細かくチェックしていた。だから「チルソクの夏」で竹井さんが出ていた時は嬉しかった。

さて、この「サイドカーに犬」も、昨年の「雪に願うこと」とはまた違い、根岸監督初期の「キャバレー日記」や「遠雷」の匂いが漂う。全編をユーモアで彩り、普通の人々の日常を淡々と描きながら、その感情を鮮やかに、かつ巧みに表現していく。同じ根岸監督のこれまた傑作「ウホッホ体験隊」とも通じるものがある。

母親が家出し、残された小学生の娘からの視点でドラマは進むが、その娘とひと夏を過ごす父親の愛人を演じる竹内結子が素晴らしい。今までの清純キャラを捨てて、奔放で快活な中にも憂いを秘めた役を自然体で表現していて、いい。

面白かったのは古田新太扮する父親。このお父さんは、子どもと同じくらい、ゲームやおもちゃが好きで、自分の「好き」を子どもに強要する。そのくせ商売が下手で、いい加減なのだが、妙に優しいところもある。

そんなお父さんを、奥さんは許せないが、愛人のヨーコは愛おしいと思っている。無邪気なお父さんと、小四にもなって自転車が乗れない娘。実はこの2人、似てないようでよく似ている。いずれも生きることに不器用なのだ。

そんな2人をヨーコさんが変えていく。とくに娘の方は鮮やかに成長していくのだが、実はその2人によってヨーコさんの気持ちもまた動いてく後半がまたいい。静かで大きな揺り幅はないが、しみじみとした印象を見たあとに与えてくれる。

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『夕凪の街 桜の国』毎日映画コンクール大賞候補に!  映画つれづれ

第62回毎日映画コンクールの大賞候補5作品が発表され「夕凪の街 桜の国」が選ばれた。

http://www.japan-movie.net/news/article01.html#122501

ちなみに、他の作品は「しゃべれども しゃべれども」「天然コケッコー」「サッド・ヴァケイション」「それでもボクはやってない」である。

嬉しいけど、候補に留まらず、是非、大賞を獲得してほしい。

残念ながら日本アカデミー賞の候補には漏れたようだ。

こちらは以前このブログでも書いたように、ちょっと選考が偏っているので、仕方ないとは思うものの、最もメジャー(と一般の方が思っている)な映画賞なので、きちんと作品本位で選べば必ず「夕凪〜」は入るとは思うだけに、ちょっぴり残念だ。

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マリと子犬の物語  新作レビュー

見た日/12月某日 ★★★

動物と子供で泣かせる、というのはある意味映画としてはちょっと卑怯だな、と思う。人は誰しも動物や子供を可愛い、という感情はある。

だから、そこを強調されるドラマを作られると、多数の支持は当然得られる訳で、その分、ヒットを狙う作り手のいやらしさのようなものが垣間見える作品も多く、それが作品としての弱さになっている作品は少なくない。

しかし、この映画は、動物と子供に加え、新潟県中越地震という実際の出来事を描いているため、作り手も慎重になっていて、観る前に危惧していた、そんなあざとさのようなものは感じられなかった。

むしろ過剰になりがちな子役の演技や、オーバーになりがちなクライマックスの演出を抑え、全体のバランスを良くしようとしている工夫が感じられた。

その辺りは監督の力量なのだろうが、実際の地震発生の際、多くの方々にとって希望ともなった実話を描くに辺り、シンボルとしてのフィクションと、リアルさの間で苦心した成果が感じられる。

そういう意味では、子供と動物を扱いながら、この映画は素直に泣ける。「大切なものを守る」という一貫したテーマも分かりやすく、しっかり観客に伝わってくる。主演の船越英一郎氏もテレビドラマとは違った自然な演技で好ましい。

物語としては、母親を亡くしている幼い兄妹と父、祖父の家族という設定が生きている。母親の「死」というものに対して、子どもたちが正面から向き合う様が、地震という「苦難」を乗り越える姿と重複する様は感動的だ。

中盤、父親が子どもたちに向かって言うあるセリフがあるのだが、僕も子どもを持つ父親の一人として、ここはグッと来てしまった。

ちょっと残念なのは、主役級が自然体なだけに、他の大人の役者たちの演技が少々あざとく、全体から浮いてしまい、不自然になってしまっているのが惜しい。

それから少し気になったのは音楽。主題歌はいい曲と思うのだが、正直、劇伴(BGM)が鳴りすぎで、映像を邪魔しているのではないか、と思ったところがいくつかあった。


あと、これは僕の映画仲間が指摘したので余計気になったのかもしれないが、自衛隊員の高島政伸の走り方が独特で、ちょっと笑える。

でも、自衛隊の方というのは、ああいう走り方をするのかも。どうなんだろう?

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仮面ライダー THE NEXT  新作レビュー

見た日/12月某日 ★★★

PG-12、小学生は保護者と一緒じゃないと入場できない、大人向けの「仮面ライダー」。

女性の裸も出てくるし、過激なホラー描写も満載。テレビ版とはまた違う石ノ森章太郎の原作マンガのテイストを生かしながら、初期の怪奇色が強い「仮面ライダー」を現代に蘇らせようと製作されたTHE FIRSTの続編だ。

特撮ファンにとっては、1号、2号に加え、V3が登場していることで話題になっていた。上映しているところも少なく、上京の折、東京の東映大泉撮影所のそばにあるT-JOYでやっと見た。

正直、ホラー色を強くしているのはよいとして、物語自体が弱く、正直、テンポもあまりよくない。リアルで大人向けに作ろうとしているだけに、小さな矛盾点が気になってしまった。

ファンの間ではFIRSTより評判はいいようだが、個人的には本郷猛が恋人をショッカーから守ろうとする余り、ストーカーになってしまったものの、怪人側のエピソードを幼い恋人同士の悲恋として描いた前作の方が好きかも知れない。

だが、アクションは凄い。東映伝統の壮絶アクションの真髄を見せてくれる。これぞ仮面ライダーの伝統、というアクションシーンは必見で、V3が反転キックを見せてくれたり、ダブルライダーキックもあったりと、往年の大人のファン(大きなおともだち)をきちんと楽しませてくれる。

このシリーズ、地味ではあるが、大人が楽しめる特撮ヒーローシリーズとしては貴重な存在である。

「仮面ライダー」は、平成に入って全く新たな観点からのシリーズと、旧作をリメイクする形でのこのシリーズと、同時並行で進み、どちらもなかなかの作品を作り出している。

よく比較される「ウルトラマン」シリーズが、過去のシリーズと新作世界をリンクさせ、昔の出演者をも糾合して進化しているのとはある意味対照的なのだが、この「仮面ライダー」シリーズは是非今後も続けてほしい。この路線でのライダーマン、X、ストロンガーなども見てみたい。

ただ個人的には、かつてのライダーたちが集結するオールスターキャスト的なコミックで、「仮面ライダーZX」を全く新しい形でリメイクした村枝賢一氏の「仮面ライダーsprits」を是非、当時の俳優さん出演で映像化してほしい。でも、故人もいるし、無理だろうなあ。

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人が人を愛するどうしようもなさ  DVD・ビデオレビュー

見た日/12月某日 ★★★★

石井隆監督という映画作家は、実に鮮烈な映像を追求する人だな、と思う。

そこに描かれるものは通常の日常生活に潜む狂気とエロス、そしてそこから起こりうる様々な事件によって堕落していく「人間」の業や本性のようなものだろう。

「天使のはらわた」シリーズはもちろん、最近では犯罪者たちが次第に破綻し、壊れていく「GONIN」や、良家の婦人がSMの世界に堕ちながら悦びを見出していく「花と蛇」など、石井監督の作品は一貫して色彩と光を使った独特な「映像美」が物語を彩っており、どれも人が本来持つであろう「狂気」をあぶり出していく。

石井監督が愛してやまない「名美」が主人公の作品としては久々となったこの映画も、冒頭から強烈なエロスシーンが登場するが、主演の喜多嶋舞が素晴らしく、夫への疑心から次第に精神のバランスを崩し、街娼として堕ちていく様が悲しくも美しい。そのヒロインが女優、という設定も絶妙で、現実と空想ともつかない、という物語の展開の妙を助けている。

役者で言うと、「カーテンコール」「樹の海」で抜群の存在感を見せ、「ガメラ〜小さき勇者たち」でいいお父さん、「仮面ライダーTHEFIRST」ではショッカーの怪人と、実に変幻自在な津田寛治氏が、この映画でもいい味を出している。

とにもかくにも、かつての日活ロマンポルノのように、エロスを追求し、「性」を映像として見せながらも、きちんと人の内面も描くような映画は、希少価値と言っていいだろう。

その手の作品を量産し、傑作もあったVシネマも最近はヤクザ物や金融物ばかりで、こういうエロス物でいいものは少ないだけに、この作品は貴重だ。

そもそも「性」とは人間は絶対に避けられない欲望であり、実は生きる根源でもある。

だからそんな「性」を扱う優れた文学や文化はあって当然だし、事実、そういった名作の小説や映画はたくさんあるが、ここ最近の日本映画はお子様向けの「泣ける」ものばかりで嫌になっちゃっているだけに、こういう堂々とした「ポルノ映画」が作られているのは、ある意味健全なことだと思う。
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