2007年総括T・訂正版  マイベスト

さあ、2007年もいよいよ終わり。今年のマイベストテンです。ごく最近見た「サイドカーに犬」「天然コケッコー」を入れたかったのですが、DVD鑑賞だったので外しました。

日本映画で言うと、やっぱり「夕凪の街 桜の国」に尽きるでしょう。

この映画、もちろんテーマや描いていることの素晴らしさはありますが、いくつかの伏線が複雑に絡みながらもきちんと観客に分かりやすく提示され、やがてひとつの話として結実し、それが最終的には一人の女性の成長物語として描かれている点は、正にかつての日本映画が持っていた物語展開の醍醐味を久々に感じさせてくれた作品でもありました。

詳しい総括は、また来年早々にでもしたいと思います。

それでは皆様、よいお年を!


1,夕凪の街 桜の国
2,包帯クラブ
3,キサラギ
4,しゃべれども しゃべれども
5,それでもボクはやってない
6,スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ
7,自虐の詩
8,ALWAYS続・三丁目の夕日
9,キャプテン
10,XXエクスクロス~魔境伝説

1,ヘアスプレー
2,ロッキー・ザ・ファイナル
3,墨攻
4,プラネットテラーinグラインドハウス
5,ディパーテッド

※お断りとお詫び※
記事をアップしてかなり経つのですが、日本映画は例年と同じぐらいの充実した本数を見ることができたので選出作品に悔いはないものの、外国映画に関しては、2007年は「これは見るべき」と感じた作品を10本以上も見られていません。正直、6位以下に選んだ作品は、自分の評価基準と照らし合わせ、例年のマイベストテン作品の基準に達してない作品もあるため、「ベスト」とは言えないと判断し、5位までの選出とさせていただきます。申し訳ありません。2008年は外国映画もしっかり劇場で見て、年末に邦洋合わせて10本ずつ、きちっと選びたいと思います。
0

茶々-天涯の貴妃  新作レビュー

見た日/★★★

「男たちの大和」「大奥」に続く、東映京都撮影所による、東映が贈る、3年連続のお正月映画。

数々の時代劇映画を生み出し、一時は存続も危ぶまれていた京都撮影所が見事に復活したのはスゴイと思うし、幼少のころから東映△マークで育った身としては本当に嬉しい。

しかし、この作品、スケール感もひときわ大きくて大宣伝をした「大和」、テレビ局と上手にタイアップできた「大奥」とはちょっぴり趣が違い、テレビ局も製作委員会の中におらず、早急に発表して作っちゃった、感がして心配だった。

で、公開されるとやっぱり興行的にはちょっと厳しいようで、主演女優へのミスキャトのようなレビューも色々目にしていたので不安半々に見た。

が、しかし、正直言って、これ、普通に面白い!

なかなかの堂々とした娯楽作品になっている。昨年の「大奥」よりははるかにこちらの方が面白い。

確かに、とくに前半、ヒロインはかなり苦しい。周囲が芸達者ばかりなのせいもあるが、セリフ回しや立ち振る舞いなど、ギクシャクしていなるのが気になる。

しかし、後半、甲冑姿になると、さすがに宝塚の元男役トップスター。今までのヘナチョコぶりが嘘のようなオーラを放つ。そうか、これがやりたかったのか!後半、淀君が覚悟を決める辺りからは安心して見ていられた。

でも、あれだけお姫様姿が似合わないなら、最初から男装の令嬢にして、男格好のまま、秀吉の側室になればいいのに・・・って、それじゃあ、歴史事実を曲げちゃうか。でも後半、甲冑姿になったらそのままラストまで突き進んでほしかったかも。


まあその点のもろもろの問題点はかなりあるものの、「復活の日」「鬼龍院花子の生涯」のベテラン高田宏治氏の脚本がよい。男たちの野望渦巻く戦国絵巻を女性の視点からきちっと捉え、結末は分かっているのにクライマックスに向けてハラハラドキドキさせてくれる、なかなかのエンターテイメントに仕上がっていた。

大阪城崩壊のシーンは特撮がとってもよくできている。ミニチュアと実景、CGの組み合わせが絶妙で、違和感がない。戦隊シリーズから仮面ライダーはもとより、「男たちの大和」でも素晴らしい映像を編み出した佛田洋特撮監督!素晴らしい!

僕は明日の日本の特撮映画界を背負う方は、佛田監督と「ALWAYS」の山崎貴監督、そして樋口真嗣監督だと、僕は思う。

とくに佛田監督は限られた予算、日数の中でイマジネーションを発揮し、工夫した映像を撮ることにかけては世界レベルだと思う。山崎監督、樋口監督はすでに本編を撮っているので、佛田監督も、戦隊シリーズは全体の監督作品はあるものの、ぜひ、SF超大作の本編・特撮兼任の監督をしてほしい。
0

天然コケッコー  DVD・ビデオレビュー

見た日/12月某日 ★★★★

非常に評価が高い作品だったので期待して見た。

「サイドカーに犬」のあとにすぐ見たので、余計そう思ったのかもしれないが、両作品とも同じように普通の人々の日常を淡々と描きながら、非常に対照的だな、と思った。

「サイドカーに犬」は、ドラマとして安心して見られた、という感じだったのだが、この「天然コケッコー」は、上手く表現するのは難しいが・・・何と言うか、作り手が出演者の中学生たちと、同じ皮膚感覚で撮影しているような感じがして、ある意味ドキュメンタリーのようなドキドキ感が最初から最後まで貫かれた感じの作品だった。

でもカメラは冷静で、いつも引き絵が多く、アップが少ない。山下敦弘監督の作品は他もそうだが、どこか冷めていて、映画そのものを客観視している感がある。

それなのに物語で展開されるひとつひとつのエピソードは登場人物たちの感情もきちんと伝わってくるから、これはこの監督さんの大きな特徴であり、真骨頂だろう。

この映画も、ヒロインの夏帆が演技力、存在感とも抜群で、まさに「天然」の世界をグイグイと引っ張っていく。

独特のテンポ感は嫌いではないが、正直、多少自分の生理と合わないな、と思う部分もあった。しかしそれをカバーするだけのヒロイン以外の少年少女たち、その家族たちの自然な存在感と雰囲気は特筆すべきものがある。

あと、この監督さん、季節や自然の描写が上手い。環境が登場人物たちに与える影響もまたこの映画のひとつのポイントだが、その点でも成功していると思う。残念ながら劇場では見れなかったが、是非、映画館で見たい一本だった。

0

サイドカーに犬  DVD・ビデオレビュー

見た日/12月某日 ★★★★

根岸吉太郎監督と聞いて、僕の最初の出会いは、高校生のとき、18歳以上と偽って成人向け映画館に入って見た日活ロマンポルノの「キャバレー日記」だ。

ポルノなのだが、軍隊式キャバレーで働く青年の情けない日常が淡々と綴られる、物悲しくも笑える傑作だった。僕はすっかり興奮するのも忘れ、その映画世界に魅入られ、主演の竹井みどりの大ファンになってしまった。

以来、竹井さんのグラビアが出ている週刊誌は買いまくり、出演映画も細かくチェックしていた。だから「チルソクの夏」で竹井さんが出ていた時は嬉しかった。

さて、この「サイドカーに犬」も、昨年の「雪に願うこと」とはまた違い、根岸監督初期の「キャバレー日記」や「遠雷」の匂いが漂う。全編をユーモアで彩り、普通の人々の日常を淡々と描きながら、その感情を鮮やかに、かつ巧みに表現していく。同じ根岸監督のこれまた傑作「ウホッホ体験隊」とも通じるものがある。

母親が家出し、残された小学生の娘からの視点でドラマは進むが、その娘とひと夏を過ごす父親の愛人を演じる竹内結子が素晴らしい。今までの清純キャラを捨てて、奔放で快活な中にも憂いを秘めた役を自然体で表現していて、いい。

面白かったのは古田新太扮する父親。このお父さんは、子どもと同じくらい、ゲームやおもちゃが好きで、自分の「好き」を子どもに強要する。そのくせ商売が下手で、いい加減なのだが、妙に優しいところもある。

そんなお父さんを、奥さんは許せないが、愛人のヨーコは愛おしいと思っている。無邪気なお父さんと、小四にもなって自転車が乗れない娘。実はこの2人、似てないようでよく似ている。いずれも生きることに不器用なのだ。

そんな2人をヨーコさんが変えていく。とくに娘の方は鮮やかに成長していくのだが、実はその2人によってヨーコさんの気持ちもまた動いてく後半がまたいい。静かで大きな揺り幅はないが、しみじみとした印象を見たあとに与えてくれる。

0

『夕凪の街 桜の国』毎日映画コンクール大賞候補に!  映画つれづれ

第62回毎日映画コンクールの大賞候補5作品が発表され「夕凪の街 桜の国」が選ばれた。

http://www.japan-movie.net/news/article01.html#122501

ちなみに、他の作品は「しゃべれども しゃべれども」「天然コケッコー」「サッド・ヴァケイション」「それでもボクはやってない」である。

嬉しいけど、候補に留まらず、是非、大賞を獲得してほしい。

残念ながら日本アカデミー賞の候補には漏れたようだ。

こちらは以前このブログでも書いたように、ちょっと選考が偏っているので、仕方ないとは思うものの、最もメジャー(と一般の方が思っている)な映画賞なので、きちんと作品本位で選べば必ず「夕凪〜」は入るとは思うだけに、ちょっぴり残念だ。

0

マリと子犬の物語  新作レビュー

見た日/12月某日 ★★★

動物と子供で泣かせる、というのはある意味映画としてはちょっと卑怯だな、と思う。人は誰しも動物や子供を可愛い、という感情はある。

だから、そこを強調されるドラマを作られると、多数の支持は当然得られる訳で、その分、ヒットを狙う作り手のいやらしさのようなものが垣間見える作品も多く、それが作品としての弱さになっている作品は少なくない。

しかし、この映画は、動物と子供に加え、新潟県中越地震という実際の出来事を描いているため、作り手も慎重になっていて、観る前に危惧していた、そんなあざとさのようなものは感じられなかった。

むしろ過剰になりがちな子役の演技や、オーバーになりがちなクライマックスの演出を抑え、全体のバランスを良くしようとしている工夫が感じられた。

その辺りは監督の力量なのだろうが、実際の地震発生の際、多くの方々にとって希望ともなった実話を描くに辺り、シンボルとしてのフィクションと、リアルさの間で苦心した成果が感じられる。

そういう意味では、子供と動物を扱いながら、この映画は素直に泣ける。「大切なものを守る」という一貫したテーマも分かりやすく、しっかり観客に伝わってくる。主演の船越英一郎氏もテレビドラマとは違った自然な演技で好ましい。

物語としては、母親を亡くしている幼い兄妹と父、祖父の家族という設定が生きている。母親の「死」というものに対して、子どもたちが正面から向き合う様が、地震という「苦難」を乗り越える姿と重複する様は感動的だ。

中盤、父親が子どもたちに向かって言うあるセリフがあるのだが、僕も子どもを持つ父親の一人として、ここはグッと来てしまった。

ちょっと残念なのは、主役級が自然体なだけに、他の大人の役者たちの演技が少々あざとく、全体から浮いてしまい、不自然になってしまっているのが惜しい。

それから少し気になったのは音楽。主題歌はいい曲と思うのだが、正直、劇伴(BGM)が鳴りすぎで、映像を邪魔しているのではないか、と思ったところがいくつかあった。


あと、これは僕の映画仲間が指摘したので余計気になったのかもしれないが、自衛隊員の高島政伸の走り方が独特で、ちょっと笑える。

でも、自衛隊の方というのは、ああいう走り方をするのかも。どうなんだろう?

0

仮面ライダー THE NEXT  新作レビュー

見た日/12月某日 ★★★

PG-12、小学生は保護者と一緒じゃないと入場できない、大人向けの「仮面ライダー」。

女性の裸も出てくるし、過激なホラー描写も満載。テレビ版とはまた違う石ノ森章太郎の原作マンガのテイストを生かしながら、初期の怪奇色が強い「仮面ライダー」を現代に蘇らせようと製作されたTHE FIRSTの続編だ。

特撮ファンにとっては、1号、2号に加え、V3が登場していることで話題になっていた。上映しているところも少なく、上京の折、東京の東映大泉撮影所のそばにあるT-JOYでやっと見た。

正直、ホラー色を強くしているのはよいとして、物語自体が弱く、正直、テンポもあまりよくない。リアルで大人向けに作ろうとしているだけに、小さな矛盾点が気になってしまった。

ファンの間ではFIRSTより評判はいいようだが、個人的には本郷猛が恋人をショッカーから守ろうとする余り、ストーカーになってしまったものの、怪人側のエピソードを幼い恋人同士の悲恋として描いた前作の方が好きかも知れない。

だが、アクションは凄い。東映伝統の壮絶アクションの真髄を見せてくれる。これぞ仮面ライダーの伝統、というアクションシーンは必見で、V3が反転キックを見せてくれたり、ダブルライダーキックもあったりと、往年の大人のファン(大きなおともだち)をきちんと楽しませてくれる。

このシリーズ、地味ではあるが、大人が楽しめる特撮ヒーローシリーズとしては貴重な存在である。

「仮面ライダー」は、平成に入って全く新たな観点からのシリーズと、旧作をリメイクする形でのこのシリーズと、同時並行で進み、どちらもなかなかの作品を作り出している。

よく比較される「ウルトラマン」シリーズが、過去のシリーズと新作世界をリンクさせ、昔の出演者をも糾合して進化しているのとはある意味対照的なのだが、この「仮面ライダー」シリーズは是非今後も続けてほしい。この路線でのライダーマン、X、ストロンガーなども見てみたい。

ただ個人的には、かつてのライダーたちが集結するオールスターキャスト的なコミックで、「仮面ライダーZX」を全く新しい形でリメイクした村枝賢一氏の「仮面ライダーsprits」を是非、当時の俳優さん出演で映像化してほしい。でも、故人もいるし、無理だろうなあ。

0

人が人を愛するどうしようもなさ  DVD・ビデオレビュー

見た日/12月某日 ★★★★

石井隆監督という映画作家は、実に鮮烈な映像を追求する人だな、と思う。

そこに描かれるものは通常の日常生活に潜む狂気とエロス、そしてそこから起こりうる様々な事件によって堕落していく「人間」の業や本性のようなものだろう。

「天使のはらわた」シリーズはもちろん、最近では犯罪者たちが次第に破綻し、壊れていく「GONIN」や、良家の婦人がSMの世界に堕ちながら悦びを見出していく「花と蛇」など、石井監督の作品は一貫して色彩と光を使った独特な「映像美」が物語を彩っており、どれも人が本来持つであろう「狂気」をあぶり出していく。

石井監督が愛してやまない「名美」が主人公の作品としては久々となったこの映画も、冒頭から強烈なエロスシーンが登場するが、主演の喜多嶋舞が素晴らしく、夫への疑心から次第に精神のバランスを崩し、街娼として堕ちていく様が悲しくも美しい。そのヒロインが女優、という設定も絶妙で、現実と空想ともつかない、という物語の展開の妙を助けている。

役者で言うと、「カーテンコール」「樹の海」で抜群の存在感を見せ、「ガメラ〜小さき勇者たち」でいいお父さん、「仮面ライダーTHEFIRST」ではショッカーの怪人と、実に変幻自在な津田寛治氏が、この映画でもいい味を出している。

とにもかくにも、かつての日活ロマンポルノのように、エロスを追求し、「性」を映像として見せながらも、きちんと人の内面も描くような映画は、希少価値と言っていいだろう。

その手の作品を量産し、傑作もあったVシネマも最近はヤクザ物や金融物ばかりで、こういうエロス物でいいものは少ないだけに、この作品は貴重だ。

そもそも「性」とは人間は絶対に避けられない欲望であり、実は生きる根源でもある。

だからそんな「性」を扱う優れた文学や文化はあって当然だし、事実、そういった名作の小説や映画はたくさんあるが、ここ最近の日本映画はお子様向けの「泣ける」ものばかりで嫌になっちゃっているだけに、こういう堂々とした「ポルノ映画」が作られているのは、ある意味健全なことだと思う。
0

椿三十郎  新作レビュー

見た日/12月某日 ★★★

最初、「椿三十郎」をリメイクする、と聞いて、「何とバカなことを!」と思い、このブログでも批判めいた記事を書いた。

正直、あれだけ完璧な映画を、リメイクする意味がないと思った。それに、聞くと、オリジナルと同じ脚本を使うという。

当時では成しえなかった、新しい技術を使い、大胆な改変をするならまだしも、同じ脚本となると、そのときは「何のためのリメイクなのか」と思ったのだ。

でも、時がたって、キネマ旬報で連載していた撮影リポートなどを読むうち、正直「観てみたい」とも思うようになった。

あえて偉大なシナリオに挑んでいる森田芳光監督の「椿三十郎」がどんなものなのか、一応、日本映画大好き少年(中年)としては、確認しなきゃなんめえ、と思ったのだ。

で、観た。

正直、頑張っていると思ったし、やはり元の脚本が抜群に面白いので、楽しめる。

森田芳光監督、最近こそ様々な種類の映画を精力的にこなしている、という感があるが、この監督さん、僕にとっては80年代に熱狂した監督の一人だ。

「の・ようなもの」「家族ゲーム」「ときめきに死す」「それから」これらの作品群に僕はかなり参り、精神的な影響も受けた。正直「キッチン」以降、あまり好きになれなかったが、「(ハル)」はよかったし、「阿修羅のごとく」「間宮兄弟」などで森田監督のセンスの良さがまた作品世界で発揮されてきたな、と感じていた。

そして、黒澤明監督。僕は大学時代、フジテレビで一度放映したときにチラっと見たていどで、正直、まともに黒澤作品をきちんと観たこともないくせに、「影響を与えたとは言っても、所詮は昔の映画でしょう」などとうそぶく、エセ日本映画マニアだった。

それがビデオ発売と同時に往年の作品を片っ端から観て、目からウロコどころか、飛び上った。面白い、本当に面白い。と言うか、これほどまでに完璧な映画を作る監督はどういう人なんだろう、と思った。

「七人の侍」など、デジタルニュープリント版が劇場で上映されたとき、もちろん初日の初回に行って、休憩中にトイレで「面白いよおおおお!」と叫んで周りの人から変人扱いされたほどだ。

そんな僕にとっては思い入れもひとしおな2人の監督だが、僕の心の中の映画の家では、黒澤監督と森田監督は住む部屋が全く違う。一階と屋上ぐらい離れている。それが一本の作品でつながったのだ。

そういう意味では「現代」を上手に切り取ってきた森田監督が、25年以上のキャリアを経て初の時代劇を撮る。それも、あの「椿三十郎」を、かつての脚本と同じものでリメイクする。その試みそのものがひとつの実験であり、ある意味、森田監督「らしい」のかもしれないし、多彩な作品を経てきた今だからこそ、の企画でもあろう。

聞くと「椿三十郎」「用心棒」のリメイク権を手にした角川春樹氏からの依頼ということだが、これが「用心棒」ではなく、黒澤作品の中でもユーモア色が強い「椿三十郎」というところが、これもまた森田監督「らしい」のかもしれない。

さて、同じ脚本だからお話そのものは変わらないが、オリジナルとは全く違う印象を受けた。森田監督はあえて同じ脚本を使用しながら、「現代的」なアプローチで演出をし、新たな「椿三十郎」を作り上げている、と思った。

例えば押入れ侍。オリジナルでは小林桂樹氏がサイコーだったが、今作では佐々木蔵之介氏が軽妙な「間」で好演している。この「間」こそが森田演出の妙で、時代劇ながら、妙なポップ感がある。女中のガッツポーズや、どこか今風の若侍たちの振る舞いもそうだ。

脚本は当時の配役をあてがきしているから、違和感を感じるシーンもある。奥方が中村玉緒で太ってないから、どうして三十郎が踏み台にされて苦しいのか分からないし、若侍に対して父親的だった三船三十郎に対して、今作の織田三十郎は「今風の兄貴分」的な感じになっているから、若侍たちが次第に怪しげな三十郎を信頼し、惹かれていく様が弱い。

そして、賛否両論渦巻いているらしい、ラスト。こここそが、おそらくオリジナルに対する森田監督の腕の見せ所だったはずだ。映画史上に残る、オリジナルのあのシーン(未見の方、是非DVD等で御覧下さい!)は現代では難しいだろうから、どうするのだろうと思ったが、「こう来たか!」という感じだった。

このラストシーンで森田監督は、同じ脚本を使いながらも、この「椿三十郎」を、黒澤明監督作品「椿三十郎」とは全く違う方向に導いた。ネタバレになるので詳細は書かないが、セリフは同じなのに、ある三十郎の行動によって、オリジナルとは違う作品の世界観と言うか、精神性と言うか、前作とは全く違うテーマを作り上げた。

これを「見事!」という人もいれば、「許せない!」という人もいるだろう。

正直、僕は違和感の方が強かった。あのシーンで、全く別の映画を見せられたような感覚に陥ってしまった。

それは僕がオリジナルに思い入れがあり、観ながらオリジナルをなぞっていたからかもしれないが、正直、上手いとは思うものの、オリジナルを超えるほどのインパクトはなかったと思う。それほどまでにオリジナルのラストは強烈で鮮烈だった。

でも、この映画製作の目的のひとつ「オリジナルの素晴らしさを若い映画ファンに認識してほしい」ということで言うと、今回の作品は成功していると思うし、「違いを出す」「リメイク版の魅力を出す」という意味ではラストの変更も理解はできる。

とにもかくにも、いろいろな意味で楽しめる作品には違いない。次は樋口真嗣監督が「隠し砦の三悪人」のリメイクに挑むらしい。今度はどんなアプローチをするのだろう。楽しみではあるが、怖い気もする。
0

ミッドナイトイーグル  新作レビュー

見た日/12月某日 ★★★

この映画、映画の見方では信頼できる知人が「面白くなかった」と僕に言った。

「ああ、そうなんだ」と思ってキネ旬を開くと、割と僕が信頼できる評論家氏が最高の星4つを付けて絶賛している。

「うーむ、どっちなんだ」と思いつつ、劇場へ。監督は「T.R.Y」の脚本家で、「フライ、ダディ、フライ」などの成島出監督。娯楽作を作らせたら定評のある監督さんなので、あまり期待はしないながらも、大作ならではのワクワク感を味わいたい、と思って行った。

で、観た。原作は未読だし、どんな物語かもあまり知らないまま鑑賞したので、展開が読めず面白かった。

雪の山中に米軍ステルス機が墜落!中には日本を壊滅させる新型爆弾が搭載されている。日本に侵入している工作員たちは爆弾を起動させようと集結、そこには元戦場カメラマンの西崎、新聞記者の落合が潜入していた・・・。

深い深い雪山なのに、なぜか割と順調に目的地まで辿り着けたり、なぜか雪崩が小規模だったり、なぜか敵の銃弾が当たらなかったり、まあ突っ込みどころは満載なのだが、なぜか憎めない。

西崎らの雪山での攻防と、西崎の義妹が別ルートから事件の真相に迫る様が交互に展開するのもスリリングではあるが、よーく考えると、事件のスケールは大きいいのに、物語のスケールは小さかったりする。

戦う男たちの背景を描くのは、この手の日本映画では欠かせない。そこに欧米のソレとの大きな違いがある。この映画に出てくる人物たちも、戦う理由がそれぞれ描かれる。とくに目の前で少年が爆弾にやられたことをきっかけに、戦場カメラマンを捨てた主人公の苦悩は深く、雪山にもイヤイヤ行くのだが、彼の成長・変化はひとつの見物だろう。

爆弾の爆発が迫る中、絶体絶命の危機を迎える主人公たちの展開はなかなかスリリングだが、映画全体から不思議と緊張感が足りないのもこれまた事実。もう少し脚本を練って、時間をかけたら大傑作になったかもしれないので、ちょっぴり残念ではある。

大沢たかおもいいが、驚いたのは自衛隊員役の吉田栄作。彼の表情や所作はなかなかで、ストイックな自衛隊員役を好演している。ヒロイン役の竹内結子は近年、ますます存在感を上げていて、画一的なヒロインではあったが、彼女の魅力でキャラクターは生き生きとしていた。

パニック大作というジャンルは日本映画にとっても苦手な分野ではあるが、過去を見ると「新幹線大爆破」「復活の日」など、なかなかの面白い作品が並んでいる。これらに負けることなく、この作品をきっかけに、スケールの大きな大作日本映画に取り組んでほしい。

この手の作品はこれまで東宝配給が多かったが、今回の作品は昨年の「亡国のイージス」に続く松竹配給である。この意味も大きい。すでに公開して日数が経ったが、ぜひ松竹にこの勝負作をヒットさせてもらい、この手の作品がさらに続くよう頑張ってもらいたいものだ。
0

XXエクスクロス〜魔境伝説  新作レビュー

見た日/11月某日 ★★★★

うおおお、深作健太監督、やったじゃん!!という感じである。

今までのフラストレーションが、この作品で一気にぶっ飛んだ。

これで二代目「深作欣二」襲名も近いのでは?という感じだ(ジョークですよ!)。

これ、タランティーノが海の向こうで展開している「グラインドハウス」の和製版、という感じの映画なのだ。こんなクレージーでファンキーな和製アクションは久しぶり。いい意味で、深作健太監督はお父様のいいところを継承された。

遊び心満載で、ポップコーンを食べながら、スクリーンに向かって「オイオイ!」「ありえねーだろ!」「そう来るのかよ!」と突っ込んでしまうような、そんな映画なのだ。

なのに、そういう売り方を配給会社がしてないのも、実にもったいない。大体、ポスターが悪い。赤の背景で中央にタイトル、「コワ!足を切り落とされるぞ!」のコピーに、十字架にかけられたミイラがたくさん・・・これじゃあ、おどろおどろしいホラーとしか誰も思わない。

僕だったら、メインビジュアルはチェーンソーを高く掲げる、鈴木亜美の勇姿。そのそばで叫び声をあげる松下奈緒。背景はダブルハサミを構えるゴスロリファッションの小沢真珠で決まり!だ。

いまどき、上映時間が1時間30分というのもいい。展開も速く、観客に考える間を与えない。2人の女子大生が怪しい村に到着し、事件に巻き込まれてからの展開が、まあスピーディーなこと!

お互いの身に起こった事件をそれぞれ描きながら、時勢を逆にしていく展開もわかりやすくていい。村人が白塗りだっり、物語のキイとなる携帯電話の声がジャック・バウアーだったり、もう確信犯的なギャグのつるべ打ちで、最後は大爆笑必死!

それでいて、サスペンスもきちんとしていて、2人のヒロインがお互いを疑い、事件の真相はなかなか明かされない。そのナゾが、小説のように章ごとにお話がテンポよく進むと、解明されていく。この辺りは脚本も演出も優れている。

携帯電話の機能を巧みに使った展開も現代的ではあるが、ここは原作でも重要な点なので、なかなかの興味の引きどころ。

特筆すべきは、小沢真珠扮する殺人ゴスロリ女、レイカと鈴木亜美扮する女子大生、愛子との死闘だろう。鈴木亜美ちゃん、歌手なのに、きちんとアクションができるのにビックリ!

チェーンソーを振り回し、ハイキックで応戦する様は、志穂美悦子以来の東映サンカクマークが似合うアクション女優、ついに出現したり!という感じ。

「デス・プルーフ」や「プラネット・テラー」が好き、という方には是非オススメ!間違いなく、泣けませんが、笑えて興奮します!もう僕の住む地域のシネコンでは公開3週目の来週から1日1回になってしまう!!

見に行くならお早めに〜〜!
0

TANKA−短歌−  DVD・ビデオレビュー

見た日/11月某日 ★★

昔、異業種監督というのが流行って、結構、トンデモナイ映画が作られたが、それを思い出しちゃった。

ちょっと映画そのものが破綻しているのだが、違う意味では結構「面白かった」かもしれない。

黒谷友香って、かなり魅力的な女優さんだ。この映画ではベッドシーンも精力的にこなし、脱ぎまくっている。

残念なのは、女性監督による、女性の感性に訴えかける物語のはずなのに、ベッドシーンは変に男性向け映画のソレだし、2人の男の間に揺れ動く女性の気持ちの「揺れ」が全く感じられない。

おまけに途中でたびたび挿入される短歌と「官能の象徴」というベリーダンスが、この作品のトンデモナサとギャグ化を助長している。「ダンス」の必然性が感じられず、なんだか「真面目なインド映画」のようになっている。

それに物語は、ちょっと昔の女性映画という感じで、現代の話のはずなのに、何だか古さも感じる。

阿木曜子さん、嫌いじゃないんだけどな・・・。トンデモ映画の金字塔「デビルマン」でご主人の宇崎竜童氏と共演してたが、東映つながりでまたまたやってくれた、という感じ。

「ヤリタイ!」しか言わない若い恋人が黄田川将也で、仮面ライダーFIRST&NEXTの本郷猛。で、おじさんの彼氏がスカイライダーこと復活版「仮面ライダー」の村上弘明。新旧東映ライダー役者が、東映の本編(映画)で夢の競演でい!!

短歌そのものは、原作者の俵万智によるものなのだろう。男性の我々から見ると、なかなか怖いものがある。彼氏のおじさんに対する歌は、

「水密桃の 汁吸うごとく愛されて 前世も我は女と思う」

これに対して、若い彼氏に対しては、

「うしろから 抱きしめられて目をつぶる 君は荷物か翼か知らぬ」

である。同じようにHしていながら、扱いは桃と荷物ぐらい違うのだ。怖いのう。
0


見た日/11月某日 ★★

うーむ・・・。全ての映画に愛を、と思うおたっきーだが、この映画はちょっと???である。

<以下、ちょっとネタバレがあります!注意してください!!!>

まあDVDで見たからかもしれないが、この映画、何が描きたいのか、よく分からない。田村正和主演で、ニューヨークを舞台に素敵な若手女優とのピュアなラブストーリーを、という企画は分からないでもないが、設定からしてちょっとリアルじゃない。

物語が綺麗すぎて、登場人物たちの苦しみや生き様が伝わってこない。そういうスタイリッシュな映画と言われても、演出もまったくスタイリッシュじゃない。

NYを舞台に活躍するジャズプレーヤーが演奏する曲が「ビギン・ザ・ビギン」というのも・・・。妻の死後はそれをマイナーしたと言われても・・・。主人公をサックス奏者に設定したのであれば、音楽面でも、きちんと聞かせてほしかった。

田村さんも必死に練習したのだろうし、吹き替えをあえてしないのもプロ根性なのだろうが、残念ながら演奏がこの映画では「ジャズサックスプレーヤー」として体をなしてないのだ。確かに音色もいいし、ちゃんと演奏してはいるが、演奏できる曲を、簡単な部分だけ綺麗に演奏した、というのがアリアリだったりする。

妻を亡くし、楽器を捨てたジャズプレーヤーが若い女性との出会いで再び楽器を持つ意欲を取り戻すも、自らの病を自覚し、命がけでNYの舞台に復帰する、という展開ならば、クライマックスはその命がけの「演奏」をきっちり聞きたいものである。

そこを描いてこそ、2人の「恋」や主人公の思いが結実するのではないだろうか。またまた出だしのところだけで、途中から大島ミチル作曲の感動メロディーが流れ、観客たちの拍手・・・ではあまりにもあまりにも、である。

アドリブ吹けなくても、何とかなったのではないか。比べる次元の映画ではないが「スウイングガールズ」を見習おうよ。必死で演技を超越してサックスを吹く田村さん、ポケットに手を突っ込んでゴタクをボソボソと言う田村さんより素敵だ、と僕は思う。

ちょっといろいろ書いたが、ニューヨークの風景がよかったので★は2つにしておく。でも、ネットのレビューで「よかった」という人も、もちろんいる。映画を見ての感性は人それぞれ。僕の意見が多数でもないだろう。個人的に、ちょっと頂けなかっただけ。
0

監督・ばんざい!  DVD・ビデオレビュー

見た日/11月某日 ★★★

前半、北野武監督が自分の人形とともに各地を巡りながら、いろいろなジャンルの映画を作ろうとして、結局すべてが何らかの理由で頓挫する様が面白い。

出てくる劇中の映画は、実際に北野監督が構想していたものらしいが、ここに北野監督の最近の「日本映画」に対する苛立ちも感じられる。

テレビサイズの「泣ける映画」なんて、クソも食わねえぞ!という思いを、北野監督も持っているのだろうか。今作は自作を積み上げたうえで自分の内面世界を表現し「映画」そのものを解体した前作「TAKESHI‘S」をさらに推し進めたもの、と言っていいと思う。

作品そのものが分裂しているのに、前作よりは見やすいし、はるかに面白い。

後半はまた違う、トンデモナイ展開になるのだが、そこに松本人志監督の「大日本人」と少し似た感性は感じる。

ただ、決定的な違いは、自作や自分への「照れ」がベースになっている北野監督の作品に比べ、松本監督の場合は「照れ」は確信犯で、あくまで「笑い」のための計算である、という点だろうか。

残念ながら、劇中で紹介されるそれぞれの「映画」の弱点や頓挫の理由は、なかなか今の日本映画の質や実情を突いていて、いかにも実際に「ありそうな」ものばかり。「邦画バブルなんて浮かれているけど、こんな作品ばかり作ってちゃ、そのうち、みんな日本映画にソッポを向いちゃうぞ」という北野監督のメッセージとも取れるし、それをまた「日本映画」で描くところが痛快だったりする。


0

さよならみどりちゃん  DVD・ビデオレビュー

見た日/11月某日 ★★★★

公開当時、国際映画祭で賞を取ったり、星野真理がオールヌードになったことでも話題になった作品。今回、DVDできちんと見直した。

古厩智之監督は、等身大の若者を描くのが実に上手い。前作「ロボコン」も、ロボットコンテストに臨む中途半端な高専生をリアルに描いていた。

「ロボコン」という競技を描いているのに、何故か勝ち負けというカタルシスに陥る様子はない映画だった。むしろ「勝った」「負けた」よりも、実際のコンテストの様子をワンカットで描くことの方に重点を置いているように見えた。

出てくる若者たちも、一気に熱くならない。ちょっぴりだけ成長するのだが、その「ちょっぴり」が大切であることを、声高ではないが、確実に受け取れる映画になっていた。

そして、その次の作品が本作なのだが、まず、性愛をテーマにし、頻繁にベッドシーンも出てくるのに全くいやらしさは感じない。これは監督が持つキャラクターかもしれないが、古厩監督は性愛の描写にはあまり興味はないらしく、必要だからそのシーンを淡々と撮った、という感じがする。

この映画もまた、ヒロインの「ちょっぴり成長」を描いた作品だ。身体を合わせる先輩に彼女の「みどりちゃん」がいることを知りながら抱かれるヒロイン。本当は先輩が大好きなのだが、そのだらしなさ、切なさが過剰に爆発しない分、リアルで等身大なキャラクターがひしひしと伝わってくる。

ラストの展開は、まさにヒロインが「ちょっぴり」踏み出す展開で気持ちいい。エンドタイトルでは、流れる主題歌に合わせてカラオケビデオのように歌詞を画面に出し、色違いで歌詞を追っていくが、映画でこんなことをしたのは恐らく世界初、ということだった。

さて、古厩監督の次回作はコミックが原作の「奈緒子」で、2月に全国公開されるらしい。ベタに決してならない古厩監督が、ベタベタの原作をどう料理するのか、なかなか興味は尽きない。

0




AutoPage最新お知らせ