思い出に残る映画音楽1  映画つれづれ

「思い出に残る」映画音楽について書いてみたい。

とりあえず、日本映画で10本、外国映画で10本選んだが、思うところを書いていたら長くなったので、5本ずつ記したいと思う。

いろいろ書いているが、これはあくまでの個人的な感想だ。優れた映画音楽って、いつまでも心から離れないものが多いが、これもまた僕の人生に大きな影響を与えている。

ということで、まずは日本映画編その1。


★早坂文雄on「七人の侍」
10数年前のリバイバル上映のとき、「古い新しい、邦洋を問わず、やはりいい映画の音楽には印象的なテーマ・メロディーが必ずあるものなんだな」と改めて実感した。

トランペットで奏でるファンファーレ的なテーマ曲は高らかでいて少し物悲しい。手放しで勝利を喜べない百姓や侍たちの心情を見事に歌いあげている。

メロディーはシンプルだが、強い印象に残る。昨年の黒澤映画のリメイク「椿三十郎」の音楽は最近活躍が著しい大島ミチル氏で、何かの雑誌でオリジナル版の佐藤勝氏を意識して曲づくりをした、という記事を読んだが、リメイク版「椿」の音楽はむしろ「七人の侍」に近く、テーマ曲のフレーズもよく似ている。

音楽的には「椿」のリメイクというより、黒澤映画の魅力を現代に蘇らせることそのものからアプローチしたのではないか、と思える。

★久石譲on「ふたり」
久石氏と言えば、この20年の間に映画音楽というジャンルをより親しみのあるものにした功労者と言えるだろう。

雄大かつ繊細で叙情的なメロディー、場面をよりエモーショナルにするアレンジ力、どれを取っても超一流と思う。

ただ、これはあくまで個人的な意見だが、とくに最近作の中には音楽が主張しすぎというか、純粋な音楽としてはよいが映像の伴奏としては「鳴り過ぎ」と感じる作品もあるように思う。

そういう意味ではダイナミックなフレーズ、映像の情感を邪魔しない抒情的なテーマを描いて見せた「男たちの大和/YAMATO」はそんな不満を吹き飛ばしてくれる見事な仕事だったと思う。

映像と音楽の融合という点や好みから言えば、初期の「Wの悲劇」も素晴らしいし、もちろん「風の谷のナウシカ」や「あの夏、いちばん静かな海」もいいが、個人的にはこの「ふたり」が大好きだ。

叙情的なメロディーが切ないファンタジーを見事に盛り上げていて、音楽自体が大林映画の一部として合体している。

とくにメインテーマに歌詞をつけ、久石氏と大林監督がデュエットしている主題歌「草の想い」は出色で、おじさん2人の歌は音程も不安定なのだが、何とも言えない暖かな味と、叙情的で切ないメロディーが醸し出す雰囲気は独特な癒しに満ち溢れている。

★村松崇継on「夕凪の街 桜の国」
何とまだ20代というから驚きだが、今、最も映画音楽やテレビドラマ、舞台音楽の世界で注目されている作曲家の一人が、村松氏だと思う。

もともとピアニストということもあってか、叙情的で豊かな音楽性がベースになっていると思うが、音楽表現は実に多彩で、すごい才能だと思う。

「夕凪の街 桜の国」ではハーモニカ系の音を巧みに使いながら、恐らく8/6拍子の流れるような切ないメロディーが主体だが、後半の「桜の国」でメインとなるメロディーを副旋律にちょこっと使うあたりが上手い。

「桜の国」ではそのメロディーが三拍子のバラードでハープによって奏でられ、何とも言えない情感を出し、映画を至高の極みに高めてくれる。

堺正章扮する父親が徘徊するシーンで使われるユーモラスでリズミカルなメロディーも、重いシーンの中でのオアシス的な場面を生かす効果としていい。

そして、エンドタイトル前、初めて映画の全体タイトル「夕凪の街 桜の国」が表示されてからは、いくつかのメインメロディーが重なり合って、後半のメインバラードが重厚なアレンジで鳴り響く。

映画の構成と巧みに重なり合った音楽構成は、正に映画音楽ならではの醍醐味。佐々部作品は音楽的にも秀逸なものが多いが、致密な計算がしっかりしていながら情感的で親しみにあふれる音楽には舌を巻いた。

★加羽沢美濃on「チルソクの夏」
黒澤明監督と佐藤勝氏、最近なら山田洋次監督と冨田勲氏、洋画ならスピルバーグ監督とジョン・ウィリアムス氏と、監督と作曲家の名コンビは多いが、佐々部監督と名コンビの作曲家と言えば、やはり加羽沢氏に尽きるだろう。

この作品をはじめ「四日間の奇蹟」「出口のない海」と、現8作品のうち3作品を担当している。この作品の音楽の魅力は、何と言っても素朴さに尽きる。

メインテーマは爽やかでいて、どこか切ないのだが、その爽やかさと切なさの融合は、この映画が持つ魅力そのものでもある。

これは映画を見ただけの印象なので本当かどうかわからないが、曲づくりに当たって、加羽沢氏は映像にあまりとらわれることなく、のびのびと作曲したのではないだろうか。

音楽的に計算をきちっとしていると感じた「四日間〜」「出口〜」とは対照的だし、この2本はまた別の意味から素晴らしい出来上がりなのだが、「チルソク」に関しては、変な計算が感じられない分、音楽の自由さが映画の展開にピタリピタリとはまっていく感じがして、その様はちょっと奇蹟的な感動を覚える。

オープニングの陸上シーンは、監督が「炎のランナー」のイメージで発注したという話を聞いたことがあるが、ここのリズムとメロディーが「本物の陸上」を見せてくれる映画に相応しい。

そして、この映画の音楽を語るに欠かせない「なごり雪」を決して邪魔せず、にも関わらず印象深いメロディーを作り上げた加羽沢氏のたぐいまれな音楽センスにも脱帽する。


※日本映画編その2は、津島利章on「仁義なき戦い」、宮川泰on「宇宙戦艦ヤマト」、菅野光亮on「砂の器」、伊福部昭on「ゴジラVSキングギドラ」、たかしまあきひこon「野獣死すべし」です。

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PLAYBOY誌の黒澤監督特集  映画つれづれ

本業の企画業で、近所のショッピングセンター「ザ・モール周南」で映画「結婚しようよ」展を企画した(お近くの方、来てくださいね。2/11までやってます)。

その準備の間、同SC内の本屋で立ち読みをしていたら、月刊PLAYBOY誌3月号で「没後10周年記念企画 クロサワ、世界の映画王」なる特集が!早速購入した。

最近の「月刊PLAYBOY」は硬派な企画が多い。本家があるから仕方ないのだろうが、全体のトーンから見ると、パツキン姉ちゃんのヌードグラビアなんか、載せる必要性はないのでは?とも思える。

さて、今回の「黒澤明」特集だが、実に38ページという力の入れようで、なかなか読み応えがあった。

全体としてはPLABOYらしく、黒澤映画が世界に与えた影響を主にしていて、正直、「世界への影響」という見方では目新しい記事はないものの、上田正治氏や村木与四郎氏らスタッフの貴重な証言があり、中でも息子でプロデューサーの黒澤久雄氏と並んで1ページをさいている脚本家・橋本忍氏へのインタビューは貴重で面白い。

橋本氏が写真入りで登場するのは、最近では珍しいのでは?文芸春秋社から「複眼の映像−私と黒澤明」という本も出ているようだが、これはいつの発刊だろう。未読なので、こちらも読んでみたい。僕の印象としては「幻の湖」以降、あまり表に出られてないし、最近では「私は貝になりたい」リメイクで脚本を改訂した、というニュースはあったものの、御本人の声を読み聞きするのは久しぶりでは、と思う。

そのインタビューでは、名作「七人の侍」は、黒澤監督のものと橋本氏の「侍の1日」という脚本の、2本の脚本が元になっていることや、黒澤映画では脚本の進め方に監督個人で書くものと共同脚本で進める2つのやり方があったことなど、脚本家の視点らしい、興味深いエピソードが綴られている。

黒澤監督が橋本氏に語ったという「脚本を書くのはマラソンのようなものだ。顔を上げずに、目の前を見つめ、走り続けていけば自然とゴールに着く」という言葉は実に深いと思った。

そして、もうひとつの特筆すべき記事は、1981年、「影武者」完成後に掲載されたという黒澤監督へのインタビュー再録。

ここで黒澤監督が語っている、日本映画への憂慮は、正に今の日本映画界が抱えている問題を鋭く指摘している。

邦画バブルと言われながら、若者に媚びた作品ばかりが発表され、受けている現状を、黒澤監督ならどう見ただろうか?このインタビューで黒澤監督は「人を育てる」大切さを訴えているが、本当のその言葉は重いと思う。

ということで、興味のある方は是非、購入して読んでほしい。

昨年は「椿三十郎」、今年は「隠し砦の三悪人」がリメイクされ、噂によると「用心棒」も反町隆史主演でリメイクされるらしいが、ハリウッドでも「生きる」「天国と地獄」などのリメイクの噂が絶えない黒澤作品。今年はこういう特集が多くなるだろうが、そういう意味でもなかなか秀逸な特集記事だった。
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ヤッターマンの悪役キャスト決定!  映画つれづれ

かねてから注目していた映画「ヤッターマン」のキャストですが、ドロンボ−一味のキャストが決まり、ついにメインキャストが出そろったようです。

http://eiga.com/buzz/show/10110

小池栄子有力?などの情報が交錯していたドロンジョ役には、深田恭子が決定したようです。これは、意外でしたが、結構アリかも?と思いました。

ボヤッキーに生瀬勝久、トンズラーはケンドーコバヤシ。お馴染みの3人での自転車漕ぎもあるそうなので、今からそのビジュアルが楽しみ。

生瀬さんは「ワークパラダイス」や「サラリーマンNEO」などで見せたコメディセンスが発揮されれば、新しいボヤッキー像を作ってくれそうで楽しみ。

いずれにしても、原作のテイストを損なわないでほしいものの、三池監督だけに、斬新なアクションムービーとしても期待したいところです。
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麻生さん、三冠達成!  映画つれづれ

ちょっと遅くなりましたが、ブルーリボン賞の発表があり、「夕凪の街 桜の国」の演技により、麻生久美子さんが主演女優賞を獲得しました。

おめでとうございます!

麻生さんは三冠を獲得した訳で、本当に嬉しく、よかったなあ、と思います。

これで2007年度の映画賞はほぼ出そろった訳ですが、個人的には「夕凪〜」の評価が麻生さんへの演技に集中しているのが、嬉しいのですがちょっぴり残念ではあります。

麻生さんを受けた田中麗奈さんの演技は見事だったし、そこを評価する向きがあってもいいと思うし、作品としての賞がもう少しあってもいいかな…と。

キネ旬第9位も見事ではありますが、他の作品の出来を見ると、多少不満があるのは事実。まあ、これから読者選出ベストテンの発表があるので、そこに注目したい、と思います。
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結婚しようよ  新作レビュー

見た日/1月15日下関の試写会場にて ★★★★★

オープニングがいい。

夕方の私鉄の駅。電車を待つ、くたびれたスーツ姿の親父たちの顔、顔、顔。ビジネス街のビルには、真っ赤な夕陽が写り込んでいる…。

そこに、吉田拓郎の歌。名曲「落陽」の切なくもリズミカルなイントロが被さる。

そして、サラリーマンたちの群れの中から三宅裕司扮する主人公のサラリーマンが現れる。

「♪〜土産にもらった サイコロふたつ 手の中で振ればまた振り出しに 戻る旅に陽が沈んでゆく〜♪」

ここで、不覚にも涙が出た。

この映画は、この冒頭の時点で、この映画が親父たちのお話であること、ある種の「親父賛歌」であることを、堂々と宣言する。

深〜い、深い「落陽」の歌詞の世界が、サラリーマンたちの姿と重なるその瞬間に、この映画の成功は約束されたようなもの。

歌の世界と映像、そして物語が絶妙に絡み合うその姿勢はエンドタイトルまでしっかり持続され、歌謡映画としても、またホームドラマとしてもよくできた秀作に仕上がっている。

佐々部監督の作品としては初のコメディタッチではあるものの、「家族の大切さ」というテーマでは一連の作品と繋がっている。これまでの佐々部作品では「家族」は作品を構成する重要な一つだったのだが、今回はそのものズバリ家族を描いている。

監督は「夕凪の街 桜の国」のとき、キネマ旬報のインタビューに答えてこんな発言をしている。

「七波(『桜の国』のヒロイン)が父親がプロポーズする場面を見て、“(私は)この2人を選んで生まれてこようと決めたのだ”と言いますが、これは僕にとって『四日間の奇蹟』で描いたことの先をやったつもりなんです。あの作品のときには、数日間だけこの世に舞い戻った石田ゆり子さんのヒロインが、様々な体験を経て“やっとお父さんやお母さんに、生んでくれてありがとうと言える”と言った。今回は七波が、被爆という十字架を背負わされて結ばれた2人を、自分が親として選んできて生まれてきたんだと。これはどうしても入れたかったんです」(キネマ旬報2007年8月上旬号)

自分を生んでくれた父と母への想い。自分の生命は、父と母の愛によって生まれてきたんだ、という実感。これこそ、人生を生き抜くうえで人が感じる最も大切なものの一つだろう。

監督自身が言うように、佐々部作品の中でも、「四日間の奇蹟」「夕凪の街 桜の国」はその想いをしっかりと描き込んだものだが、この「結婚しようよ」はそのまたさらに「先」を描いているように思う。

「桜の国」の七波は、重い十字架を背負った叔母や母から生まれ、それを愛おしいと思うからこそ、父親は彼女に「幸せにならなきゃな」と言う。

人は人を愛し、やがて父や母とはまた違う、新しい「家族」を形作り、多くの場合、そこでまた尊い生命を繋いでいく。

今回の映画では、父親と母親の思いを知った娘が結婚し、さらに両親に対して感謝の念を捧げる。そういう点では、佐々部映画にとっても、デビュー以来、ずっと描いてきた「家族」というテーマ性では集大成的な作品とも言えるかもしれない。

またそんな「家族」の姿を、一貫して父親の視点から描いている点が、我々親父から見るとグッと来るものがある。

父として、男として、家族を愛すること、そして愛されることの大切さが、この映画では満ち満ちている。

そんな「家族」の在り方を、吉田拓郎の歌の数々が見事に彩る。作品の世界観が物語展開ともマッチしていて、既存の曲を使いながら違和感はない。

二女を演じる中ノ森バンドのAYAKOが何とも素晴らしい感性を見せてくれるが、彼女たちのニューアレンジによる拓郎サウンドも聞き応えがあり、音楽映画、歌謡映画としても秀逸な出来栄えになっている。

佐々部監督はこの映画のキャンペーンで新聞の取材に答えて、こうも語っている。

「親族間の殺人が多いが、家族の中がきちんとできていなくては地域や国がうまくいくはずがない。笑って笑って最後に泣ける作品だが『一番小さな(単位の)家族を見つめ直そうよ』という社会性も取り上げた」(山口新聞2008年1月16日)

この作品、佐々部監督初のコメディ作品だが、監督が込めたメッセージ性は、前作「夕凪の街 桜の国」からまった一歩、進化している、と感じた。

家族を大切にする、その何気ないことがどれほど大事なことか。是非、スクリーンで実感してほしい。
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見た日/1月某日 ★★

これも劇場公開時に見逃し、DVDで見る。

映画のリアリティって何だろう?と思ってしまう。

映画自体は虚構の世界である。

宇宙で爆発して火や煙が出るわけがないし、上下左右もないのにロボットが立っていたりする。ラブストーリーだって、絶対に会える状況ではないのに、男女が出会ったりする。

でも、その「虚構の世界」だからこそ、作り手のこだわりと言うか、妙なリアリティが必要になってくるのだ。例え宇宙で爆発して火や煙が出ても、宇宙船のCGやセットが精巧であれば、我々はそこに「リアル」を感じる。

ありえない出会いを描いたラブストーリーでも、登場人物たちの性格や人物像を深く描いていれば、現実には絶対にない出会いのシュチュエーションも、リアルに感じられる。

実は、映画って、そこが大切だと思う。
佐々部監督は、映画学校時代、名匠・浦山桐郎監督から「大きなウソをついても小さなウソをつくな」と教えられ、それが今の映画づくりの基本になっている、という。

確かにそうだ。映画で大きなウソをつかれると心地よいが、気になる小さなウソがあると、観るに堪えない作品になってしまったり、映画全体が破綻してしまうことはよくある。

例えばこの作品。テレビ版の映画化作品だが、テレビとは違うスケール感を出そうと海外ロケをしていて、広大な砂漠の中を三蔵法師一行が歩くシーンから始まる。

だが、僕はここですっかり萎えてしまった。砂漠の中を長時間歩きながら、水がないと騒いでいる割に、一行は汗をかいている様子もなければ、服装もきれいなまま。ここで「ああ、これは作りごとだ」と思ってしまった。

CG満載のファンタジーだからこそ、小さなリアリティを追求してほしい、と思う。

映画はCGにも力が入っているし、クライマックスで悟空が説教チックになるものの、スピード感もある。ヒロイン役の氷川あさみが存在感があっていい。彼女は最近の要チェックだと思う。

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蒼き狼 地果て海尽きるまで  DVD・ビデオレビュー

見た日/1月某日 ★★★

劇場公開時に見逃し、DVDで鑑賞。

この作品を見ていて、「果たして面白い映画ってどういうことなんだろう?」と思ってしまった。

完成度が高い、よく出来ている、ということが決して=面白い、ということではない。

例えばこの作品、よく出来ているとは思う。

日本人がモンゴル人を演じてセリフは日本語、という点に少々違和感はあるものの、俳優も熱演しているし、草原での戦いのシーンや部族間の争いなど見どころも多く、物語も飽きさせない。父と子、というテーマ性も明確だ。

でも、なかなか面白くならないのは何故なんだろう?澤井信一郎監督は名手だし、「Wの悲劇」をはじめ、傑作がたくさんあるが、この映画に関しては結構、苦闘している。

とくにクライマックスの戴冠式の場面など、現地から数万人のエキストラを用意しているのに、そのスケール感が今一つ伝わらない。

比べちゃ悪いし、比べる次元のものでもないが、僕はこの映画を見ながら、東映の「茶々」を思い出していた。

正直、「映画」としての出来に関しては、「茶々」はあまり良くない。何しろ主役のヒロインに魅力がない、というのは致命的。男装をすると魅力を放つが、それも中盤の一瞬だけ。

よほど準備不足だったのか、各俳優陣の演じ方というか、各俳優への演出がバラバラで統一性がなく、それぞれの俳優が自分なりのスキルで演じている、と言うより勝手に演じているような感じを受ける。

だけど、「茶々」は面白かったのだ。演出のバラバラ感やヒロインの大芝居、時間がない中で「ええい!」と作ったと思われる合戦シーン、特撮シーンなど、完成度は低くても、それなりの猥雑なパワーがあり、僕は非常に面白く見られた。

俳優やスタッフをきちんと制御できていても、折角のスケール感を生かし切れなかった「蒼き〜」を見ていて、そんなことを思ってしまった。

でも、この作品の冒頭で見せる、若村麻由美の姿は実に美しい。「Wの悲劇」で薬師丸ひろ子、「恋人たちの時刻」で河合美智子、「野菊の墓」で松田聖子を美しく撮った澤井監督の真骨頂だな、と思った。

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魍魎の匣  新作レビュー

見た日/1月某日 ★★★★

宣伝チラシを見て、「これは面白そうだ」と見に行った。

最近は心惹かれるチラシやポスターが少ない。「これは見たい!」と思わせてくれるコピーもなかなか見かけない。

例え本編がダメダメでも、ワクワクするようなチラシ、ポスター、コピー、それに予告編は、昔は結構あったものだ。

その辺り、映画の配給会社の方々には是非、頑張ってほしい。

さて、この映画だが、物語は何とも難解で入り組んでいるものの、原田監督は謎解きよりも、「昭和レトロの彩りで語られる奇譚」というくくりのビジュアルの妙と、俳優たちの魅力を引き出したキャラクターの妙で、これまた今までにないミステリーを作り上げた。

恐らく入り組んだお話に加え、時勢を自在に巡る展開やカットの多さは最近の原田監督の真骨頂。「ついていけない」と酷評する人もいるとは思うが、前作「伝染歌」と同様、この独特のリズム感は好きな人にとってはなかなか心地よい。

入り組んだ構成を見せるため、一人一人のキャラクターを際立たせているのも成功している。

ややヒロインの黒木瞳が魅力に欠けるものの、主人公の京極堂を演じる堤真一以下、阿部寛、椎名拮平、宮迫博之、宮藤官九郎、柄本明、田中麗奈らのキャラクターが魅力的。彼らの脇を原田組常連の個性的な俳優たちが固めているのもこの映画の個性になっている。

CGを駆使するなど徹底した再現でノスタルジックな昭和30年代を再現した「ALWAYS」とは違い、同じ昭和30年代が舞台でもこちらは上海のオープンセットでロケをしていて、忠実な再現ではないが、何とも言えないレトロで独特な世界観を醸し出す。

この映画自体が、戦後間もないころの「カストリ雑誌」に連載していた、横溝正史に代表される、おどろおどろしい「探偵小説」そのものの雰囲気なのだ。また映画フリークの原田監督らしい、「映画」へのこだわりもあちこちに散りばめられていて面白い。

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アイ・アム・レジェンド  新作レビュー

見た日/1月某日 ★★★

2008年、劇場で最初に鑑賞した、記念すべき映画になった。

何を見ようか、かなり迷ったが、テレビCMに心惹かれて見た。

前半の廃墟と化したニューヨークの描写は秀逸。2009年に人類が死滅して、その数年後という設定だが、よーく見ると、「バットマンVSスーパーマン」なんて映画の看板があったりする。

生来の明るさが魅力のウィル・スミスだからこそ、人類最後の1人になって、苛立ち、孤独と戦いながらも、人類を救うためのワクチン研究を諦めない姿がなかなか魅力的。

ビデオレンタルのショップにマネキンを配置して話しかけたり、日々違う車を乗り回したり、愛犬に向かって色々話したり、この辺りの日常の描写がいい。廃墟となって動物が徘徊するニューヨークのビジュアルは見事の一言。

<ここからネタバレです!未見の方はご注意を!>

中盤になると、人類は人間が開発したガン撲滅の新薬が暴走したウィルスによって滅びたことが分かって、感染者は怪物となってまだ街にいることが判明してくる。

この辺りから映画はSFホラー色満載となり、クライマックスに突き進むのだが、中盤から後半にかけてもスピード感は落ちず、ドキドキもさせて面白いのだけれども、物語展開は結構想定の範囲内になってきて、折角の傑作が普通の映画になっちゃった、感はある。

主人公が家族との別れを回想するシーンもなかなかいい場面なのだが、少し描き方が淡泊なところもあって、少々おしい。

もっとここを描きこめば、現在の主人公の孤独感を浮かび上がるし、最後半の展開も、疑似家族という感覚になって映画が深いものになったと思うが、どうだろう。

細菌兵器による人類の死滅、というテーマで言うと、日本映画の「復活の日」を思い出したが、物語展開など、結構似ているところも多い。深さ、という点では日本の方に軍配が上がるかな。
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麻生さん、毎日映画コンクールで女優賞!  映画つれづれ

「夕凪の街 桜の国」が再び評価されました。麻生久美子さん、毎日映画コンクールで主演女優賞決定!です。

作品賞は5本の候補に選ばれたものの、惜しくも漏れたようです。作品賞はやっぱり、「それでもボクはやってない」でした。

麻生さんは「報知映画賞」に続く2冠目です。この勢いなら、まだまだ賞が増えそうです。夏の公開時にはスクリーン数も少なかった「夕凪」ですが、こうした高評価で再び注目が集まればいいな、と思います。
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キネ旬ベストテン発表!  映画つれづれ

2007年度キネマ旬報ベストテンの発表がありました。

順位は以下の通りです。

[日本映画]

1、それでもボクはやってない

2、天然コケッコー

3、しゃべれども しゃべれども

4、サッド ヴァケイション

5、河童のクゥと夏休み

6、サイドカーに犬

7、松ヶ根乱射事件

8、魂萌え!

9、夕凪の街 桜の国

10、腑抜けども、悲しみの愛を見せろ


[外国映画]

1、長江哀歌

2、善き人のためのソナタ

3、今宵、フィッツジェラルド劇場で

4、クィーン

5、バベル

6、やわらかい手

7、ドリームガールズ

8、ボルベール〈帰郷〉

9、ゾディアック

10、パンズ・ラビリンス


日本映画は選ばれた作品のほとんどを見ましたが、正直、「夕凪〜」はもっと上位に入っていいと思います。

1位はもう、賞はこれで決まり、のような雰囲気になっているので仕方ないにしても、個人的には「夕凪〜」が「天然コケッコー」「しゃべれども しゃべれども」「サッドヴァケイション」辺りと上位を争うと予想していただけに、9位はちょっと残念、というか、すごく残念!です。

「河童のクゥ」も原恵一監督作品では「クレしん」の方が絶対良いし、「サイドカー」「松ケ根」「魂」も秀作でしたが、各監督のベストではないだけに、重いテーマの中にもユーモアと希望を描き、エンタテイメントとしても秀逸だった「夕凪〜」がもっと評論家諸氏に評価されてもいいのでは?というのが正直な感想です。

ちなみに、佐々部監督の作品では「チルソクの夏」が2004年度の9位で、今回と同じ順位でした。ベストテン選出はそれ以来ですが、同年の読者のベストテンでは「半落ち」が9位、「チルソクの夏」が10位。あと、「カーテンコール」が2005年度で評論家は15位だったものの、読者では8位でした。

まあ、ベストテンや賞はお祭りで、選ぶ人の感性にもよるのでそれが真の作品評価につながらない、とは思うものの、キネ旬のベストテンは他の賞に比べればまだいい方だと思うし、僕たちファンからすれば、応援している作品が選ばれると、それはやっぱり純粋に嬉しい。

これから賞レースはしばらく続くとは思いますが、純粋に目が肥えたファンが選ぶ読者のベストテンは、「夕凪」がもっと上位に食い込むよう、期待したいです。
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