L change the World  新作レビュー

見た日/2月某日 ★★★

娯楽映画として面白いんだけど、微妙なのも事実である。

この映画、正直「デスノート」の前編と後編を見ていないと「面白い」とは思えない。

何故ならば、この映画は観客がこれまでの2作品で描かれてきた「L」というキャラクターに魅力を感じている、ということを条件に作られているから。

そうじゃないと、原作のキャラクターはあまり知らないが、本来街を練り歩いたり、格闘するようなキャラではないLだからこそ、この映画はそんなL(=松山ケンイチ)の意外な魅力を発見してほしい、というような作り手の意識が垣間見える。

正直、松山ケンイチの役づくりはもはや「職人芸」であり、こうなったらシリーズ化して「Lはつらいよ〜甘物旅情編」なんて作ってほしいところだが、今回のスピン・オフ企画は松山ケンイチの魅力は伝わるものの、そんな作り手の意識は、正直失敗していると思う。

「映画」「物語」としては、松山ケンイチやLというキャラが好きな人以外はかなりキツイ。いや、Lファンにとっても許せない、という人は多いだろう。

最大の要因は、やはり脚本と監督の交代にあるのでは?と思う。本来のデスノートシリーズから離れるのだから、シリーズの魅力だったLと敵の頭脳戦にならないのは分かるにしても、敵の設定が荒唐無稽すぎるし、キャラが浅すぎる。

バイオテロ、という大風呂敷を広げても、敵キャラの掘り下げが薄いため、それに立ち向かうLも少々キツイ。折角、高嶋政伸や工藤夕貴らがいい演技を見せてくれ、とくに工藤さんは流石ハリウッド仕込みで堂々たる悪役なのに、ちょっと残念。もう少し敵側の物語を掘り下げれば、いくらでも面白い話が作れると思うのだが…。

中田秀夫監督は、これからの日本娯楽映画界を支えていく監督さんだと僕は思うが、今回はちょっと分が悪かった。やはり、これまでのLや「デスノート」映画版の世界観を作り上げてきた金子修介監督が続投した方が、よりファンが納得した作品になったのではないか、と素直に思ってしまった。

ただし、途中でのホラー描写やクライマックスの飛行機のシーンなどは中田監督がなかなかの冴えを見せてくれ、なかなか楽しませてくれる。

日本では珍しいスピン・オフ企画だし、こういう試みは面白いと思うだけに、少々残念ではあったが、これはこれで、と思わせる映画ではあった。

★は本来は2つなんだけど、松山ケンイチの頑張りと工藤夕貴のセクシーな黒いスーツ姿に星を1個追加。
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『黒部の太陽』詳細発表!  映画つれづれ

佐々部監督脚本・演出の舞台「黒部の太陽」について、梅田芸術劇場がHPで詳細をアップしていました!↓

http://www.umegei.com/m2008/kurobe.html

石原裕次郎役は、中村獅堂さん。初の佐々部作品登板ですが、映画ではなく舞台、というのが楽しみです。

ほかに、金井勇太さんや水谷妃里さん、伊嵜充則さんら佐々部組常連に加え、ベンガルさん、大地康雄さん、高杉旦さんらの名前が…。

個性派ばかりですが、どんな「黒部の太陽」を見せてくれるのか、本当に楽しみです。
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あの伝説のコミック&アニメが実写に!  新作レビュー

ギョギョギョの記事が!!

http://www.varietyjapan.com/news/movie/u3eqp30000030v6j.html

今年の夏公開らしい「マッハGO!GO!GO!」、来年公開らしい「ドラゴンボール」に続いて、ついに真打ち登場!てことになるのかな?

が、しかし…「ブレードランナー」と「シティオブゴッド」を融合した世界ってアナタ…あの世界は、あの世界でしかないでしょうに!!!

どうか大友克洋監督、すでに多くの映画作品を監督し、アニメ、実写を問わず「映画」の世界でも一流の監督さんなのだから、ハリウッドまかせにせず、ガンガン注文を出してほしい!!

前記の2作品は原作を自由に料理しても許せる気もするが、この作品だけは、原作、アニメともに物語から設定に至るまで「完璧」であり、その完璧さが魅力でもあった。

最近のハリウッドはちょっぴり信用できないので、不安で仕方ないが、まあどんな実写映像になるのか、お手並み拝見である。

ディカプリオは原作マニアということなので期待したい。
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奈緒子  新作レビュー

見た日/2月某日 ★★★★★

スポーツ物の映画として、出色の出来。

「駅伝」を描いた作品はこれまでもいくつかあったが、「駅伝」というスポーツが持つ魅力をきちんと伝えてくれた映画は恐らくこれが初めてだろう。

上映館が少ないにも関わらず、2/16公開映画では「ぴあ」満足度1位を獲得したのも納得。ちなみに、2/2公開作品では「結婚しようよ」が満足度1位だったのでこれもまた嬉しい。

「まぶだち」以来、「ロボコン」も「さよならみどりちゃん」も、古厩智之監督の作品は、どれも出てくる若者たちの青春群像を描きながら、一人一人の心の揺れを、リアルに、そして鮮明に描いていて秀逸だが、この作品でもその手腕は如何なく発揮されている。

人格的にもまだまだ不完全な高校生が、クラブ活動に取り組めば、真剣になれば真剣になるほど、仲間への妬みや指導者への不満、力が発揮できない自分への焦りなど、いろいろな感情が出てくるのは当然だ。

そんな、中学や高校時代にクラブ活動に熱心だった人なら誰もが持ったリアルな“感じ”が、等身大で表現されているから驚く。

とくに「駅伝」はタスキをつなぐスポーツであり、仲間同士の信頼がないと成り立たない競技でありながらも、実は個人競技でもある。

個人としての頑張りが、仲間意識につながり、それが人生の目的にもオーバーラップしていく…この映画は、そんな「駅伝」の妙を、主人公を中心に、選手一人一人の個性をサラリと、でもしっかりと描きながら、見事に表現している。

そのリアルさを体現しているのが、役者たちの見事な走りっぷり。クライマックスのレースシーンはリアルで、「走り」がきちんとしているからこそ、映画全体も生き生きと「走る」。

欠点があるとすれば、それはこの映画の原作コミックだろう。映画としてリアルに描こうとすればするほど、実は「奈緒子」の存在や監督を巡るエピソードがいささか邪魔臭い。

だが、古厩監督はそれを逆手に取った。物語の中心となる雄介と奈緒子の運命的な関係を冒頭で描きながら、中盤からはひたすら奈緒子をストイックに描き、あまり活躍させない。

その間に陸上部員たちのエピソードを丁寧に描き、雄介へのある想いを観客に印象づけたところで、後半の1シーンで「奈緒子」の存在を決定的に印象付けさせ、ある意味あり得ない原作の設定や奈緒子の存在を、リアルなものにし、物語に繋げたのだ。

古厩監督は、これまでの作品は全て青春映画ながら、登場人物たちの「心の揺れ」を描くことに熱心で、これまでの作風を見ると、正直、青春映画にありがちなカタルシスが感じられる映画は嫌だったのでは、と思う。

あの傑作「ロボコン」に至っても、ロボットコンテストとは言え、「競技」を描き、主人公たちのチームは全国大会を勝ち進んでいくのに、過剰な演出や音楽での盛り上がりは一切なく、実はそこが秀逸なのだが、その辺りを期待していた人からは厳しい意見もあった。

それが、この作品では監督得意の「揺れ」をきちんと表現しながら、スポーツ映画が持つストレートな感動やカタルシスも用意されていて、ちょっと驚いた。後半はベタだが、そこは古厩監督で、決してベタベタにはなっていない。

思うに、どの監督も、自分が撮りたい芸術性と観客に向けた大衆性との間で苦しむものなのだろうが、今回の作品は、古厩監督にとって、これまでにない観客寄りに立った作品づくりをしながらも、自分の持ち味は無くしていないという、ターニングポイント的な作品になったのではないかと思う。

思えば、僕が大人になって、「映画」を見るだけでなく、様々に関わるきっかけになったのは、「ロボコン」だった。僕が住む街でオールロケがされた、あの映画で市民応援団の事務局を担当しなければ、そのあと「映画」に関わる決定打になった「チルソクの夏」も、それを加速させた「ほたるの星」もなかったのだ。

そういう意味では、古厩監督は僕の恩人なのだが、そんな監督さんがまたまた素敵な作品を作ってくれたことに感謝し、また新たな地平に臨んだことに感動し、次回作に期待したい。

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思い出の映画音楽・洋画編  映画つれづれ

えー。思い出の映画音楽、洋画編です。一気に10本行きましょう。

☆ニーノ・ロータon「ロミオとジュリエット」
ニーノ・ロータは名曲がいっぱいあるが、個人的にはこれが忘れがたい。実は、4歳のとき、叔父さんに連れられて映画館で見た。妙に印象に残っているから不思議。

☆ジョン・ウィリアムスon「スター・ウォーズ」
定番中の定番だが、中学1年のとき、映画館でこのテーマがかかったときはそれまでの人生の中で一番興奮した瞬間かもしれない。帰りにサントラ買ったなあ。

☆ハンス・ジマーon「ブラック・レイン」
ドイツ人シンセサイザー使い、ハンス・ジマーは「バックドラフト」も忘れがたいが、東洋的なイメージの中に力強い旋律を描いたこの作品のテーマ曲がいい。健さん、優作アニキの雄姿を見事に浮かびあがって泣かせてくれる。

☆坂本龍一on「ラスト・エンペラー」
このメインテーマも東洋的メロディーに、カンツォーネの要素が入った名曲。カンツォーネ的なのは、監督がイタリア人だからだろう。楽器の使い方も絶妙。

☆エンリオ・モリコーネon「ニューシネマパラダイス」
いい。何度聞いても泣ける。この一連のテーマ曲ほど、聞けば聞くほど映画の場面が鮮やかに浮かぶものも珍しい。買っては摩耗したり無くしたり…結局、サントラを3回も買ってしまった。

☆ヴァンゲリスon「炎のランナー」
「南極物語」もいいけど、やっぱりヴァンゲリスはこれ。導入部の鳴り響くシンセ音と、躍動する肉体の映像が合わさった様は、映画が好きでよかった、と心から思う瞬間。

☆ビル・コンティon「ロッキー」
何の説明も不要。映画と音楽が一体となって、「負けるな!」と叫んでいる。

☆トレヴァー・ジョーンズon「ラスト・オブ・モヒカン」
「亡国のイージス」もこの人。基本的に、メロディーラインの展開はどの作品も同じで、短調で書かれているこの作品のメインテーマを長調にするとそのまんま「クリフハンガー」のメインテーマになるのが可笑しいが、この曲のスケール感は実にいい。

☆ブラッド・フィーデルon「ターミネーター」
リズム、メロディーをよりスケールアップした「ダダッダダンダン!」の2の方がインパクトはあるが、あの単純なメロディーが作品の爽快感をアップさせているパート1の音楽の方が好きかな。

☆マーク・マンシーナon「スピード」
メインテーマがいい。三連譜を多用した、導入部の軽快なリズムから、やや哀愁を帯びたメロディーがリズミカルに繰り返される展開は、正に「スピード」そのもの。
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チーム・バチスタの栄光  新作レビュー

見た日/2月某日 ★★★

この作品、まず観ようと決めたのは、中村義洋監督の新作だから。

中村監督の前作「アヒルと鴨のコインロッカー」は、近くDVD・ビデオレビューでじっくり取り上げたいと思うが、この監督さん、「ルート225」(これも面白い!)もそうだったが、テンポ感やユーモアの描き方、トリッキーな見せ方がなかなか秀逸で、今、注目される監督の一人だと思う。

雑誌などの情報によると、監督には自主映画時代からの盟友の脚本家がいるものの、今回は脚本やキャスティングなど、ある程度出来上がってから、監督の手腕を買われての登板だっらしい。

そういう意味では、これまでの作品に比べると“中村色”は若干薄いものの、会話や物語の中にさりげなく挿入するユーモアの巧さやキャラクターの描き分け方、後半のトリックが明らかになる展開部などは、中村監督の手腕を見せてくれる。

原作は未読だが、かなり膨大な原作なのだろうから、当然映画ではそのエッセンスを凝縮しているだろうし、その点、原作ファンは消化不良な点があるかもしれないが、僕は一本の映画としてとてもよくできているし、面白いと思った。

お話を病院内に統一し、あまり広げないのも物語全体を締めていてよかった。探偵役の阿部寛、竹内結子はこれまでのキャラクターの範囲内ではあるが、2人が持つ魅力が十分に出ていて安心して見られる。

手術シーンもきちんと見せていて、これはテレビではなかなか難しいだろうから、映画ならではの醍醐味も味わえる。犯人探しの見せ方も映画的に工夫していて、興味をそそる。

ナチュラルなものの見方をする竹内結子扮する精神科医が、事件を通してちょっぴり成長する様が物語のいいエッセンスにもなっていて、阿部寛扮する強烈なキャラクターの役人との対比もあって、描かれているテーマは重いものの、見たあとの感じは意外と心地よい。

竹内結子は、本当にいい映画俳優になったと思う。もうテレビドラマなどには出ずに、映画一本で頑張ってほしい。ただし、同じような役柄ではなく、「サイドカーに犬」のように、もっともっと演技の引き出しは多い女優さんだとは思うので、いろいろな竹内結子が観てみたい、と思う。

さて、7人のチームバチスタや病院長などのキャラクターはもう少し説明と掘り下げが欲しいところだが、説明過多になる恐れもあるのだろう、そこはキャスティングの妙で上手く切り抜けている。

7人の専門医や看護師たちはよ〜く吟味してキャスティングされている。中でも天才外科医役の吉川晃司がいい雰囲気を出している。久し振りの映画出演だが、彼はスクリーンがよく似合う。「シャタラー」なんてトンデモ映画もあったが大森一樹監督のセンスが抜群だった「すかんぴんウォーク」が懐かしい。


★4つか3つか悩んだが、後半の展開に性急さを感じてしまい、ちょっと物足りなかったのと、どうしても中村監督の前作に比べてしまうので★3つ。でも、最近の一連のテレビ局が絡んだ大作娯楽日本映画群の中では、抜群に面白かった。
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佐々部監督の舞台演出が決定!  映画つれづれ

佐々部清監督が、御自身のhpでも述べられていますが、監督初の舞台演出となる「黒部の太陽」が、10月に大阪の梅田芸術劇場で上演されることが決まったようです!

http://www.sasabe.net/hidiary/hidiary.cgi

2月18日のスポーツ報知がスクープしたようです。

http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20080218-OHT1T00056.htm

「黒部の太陽」と言えば、先日急逝された熊井啓監督の代表作のひとつであり、故・石原裕次郎氏自ら製作・主演した、1968年の映画です。

製作は石原プロと三船プロで、当時、所属の映画会社以外は出られないという五社協定がありながら、石原裕次郎氏と三船敏郎氏が自ら製作する、という形で当時、不可能だった共演を実現したことでも知られる作品です。

クライマックスの大水が流出するシーンでは、濁流に飲み込まれた裕次郎氏が骨折をしたことでも有名で、その大迫力シーンは日本映画史に残る場面と言われています。

残念ながら、裕次郎さんの遺志らしく、石原プロはこの作品をとっても大切にしていて、ビデオなどの映像ソフト化はしていません。

僕は当時4歳なのでもちろん未見ですが、実は「見た」と思い込んでいて、調べてみたら公開の翌年、同じタイトルで日本テレビでテレビドラマ化されていました。テレビ版も裕次郎氏が同じ役で出演していて、だから「見た」と思っていたようです。

テレビ版は演出が何と、鈴木清順監督。映画版が熊井監督で、テレビドラマ版が鈴木監督とは、日活つながりなのでしょうが、何と贅沢なのでしょう。当時、ドラマ版で映画版の場面がインサートされ、問題になったそうです。

恐らく僕が見たのは再放送なのでしょう。結構、面白かった記憶があります。水のシーンはかすかに記憶があるのですが、それはテレビドラマ用に改めて撮影したのか、それとも映画版を流用したのでしょうか?

とにもかくにも、この「幻の映画」を、舞台として復活させ、それも我らが佐々部監督が舞台初演出に挑戦する…映画ファンにとって、佐々部ファンにとって、夢のような企画です。

記事などから見るに、映画監督である佐々部監督の演出らしく、ただ単に黒部ダム建設に携わった男たちを描くのではなく、映画「黒部の太陽」製作に賭けた男たちも同時に描くとのこと。水のシーンは2万リットルもの水を舞台に放出するというから、映画以上のスケールの大きな舞台になりそうです。

いやあ、10月が本当に楽しみ!今から大阪に行くため、お金を貯めよう!と思うおたっきーでした。
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日本アカデミー賞発表!パート2  映画つれづれ

日本アカデミー賞について書いたら、いつもより反響が大きく、やっぱり同じように考えている方は多いんだな、と実感。

コメントでのご指摘もあったが、授賞式の放送が中継ではなく、日本テレビによって脚色されているのも例年通り。

とくに技術職の方々の受賞を、なぜ放送しないのだろう?これもコメントのご指摘の通りで、本当に映画への「愛」やスタッフへの「敬意」が感じられない。

今年、ちらっと映っただけだったが、最優秀作曲賞の大島ミチル氏が感激で号泣されている様が印象に残った。彼女の受賞の様子、その弁が聞きたい、と思ったのは僕だけではないと思う。

昨年、最優秀主演男優賞を受賞した渡辺謙氏のスピーチには感動した。病気で主演映画を降板し、病床で見たという日本アカデミー賞への想いを涙ながらに切々と語る渡辺氏を見ながら、本家アカデミー賞でもノミネートされた人が、日本アカデミー賞を受賞して本気で喜ぶ、そんな時代がついに来たのだ!

なのに、何をしているんだ!日本アカデミー賞!そんな受賞者の映画への「想い」に賞が全然追いついてないじゃないか!

百歩譲っても、あの「放送」には映画への「想い」や「愛」はあまり感じられなかった。

受賞者があまりうれしそうじゃない今年の放送を見ながら、そんなことを思ってしまった…それが素直な感想である。
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