L change the World  新作レビュー

見た日/2月某日 ★★★

娯楽映画として面白いんだけど、微妙なのも事実である。

この映画、正直「デスノート」の前編と後編を見ていないと「面白い」とは思えない。

何故ならば、この映画は観客がこれまでの2作品で描かれてきた「L」というキャラクターに魅力を感じている、ということを条件に作られているから。

そうじゃないと、原作のキャラクターはあまり知らないが、本来街を練り歩いたり、格闘するようなキャラではないLだからこそ、この映画はそんなL(=松山ケンイチ)の意外な魅力を発見してほしい、というような作り手の意識が垣間見える。

正直、松山ケンイチの役づくりはもはや「職人芸」であり、こうなったらシリーズ化して「Lはつらいよ〜甘物旅情編」なんて作ってほしいところだが、今回のスピン・オフ企画は松山ケンイチの魅力は伝わるものの、そんな作り手の意識は、正直失敗していると思う。

「映画」「物語」としては、松山ケンイチやLというキャラが好きな人以外はかなりキツイ。いや、Lファンにとっても許せない、という人は多いだろう。

最大の要因は、やはり脚本と監督の交代にあるのでは?と思う。本来のデスノートシリーズから離れるのだから、シリーズの魅力だったLと敵の頭脳戦にならないのは分かるにしても、敵の設定が荒唐無稽すぎるし、キャラが浅すぎる。

バイオテロ、という大風呂敷を広げても、敵キャラの掘り下げが薄いため、それに立ち向かうLも少々キツイ。折角、高嶋政伸や工藤夕貴らがいい演技を見せてくれ、とくに工藤さんは流石ハリウッド仕込みで堂々たる悪役なのに、ちょっと残念。もう少し敵側の物語を掘り下げれば、いくらでも面白い話が作れると思うのだが…。

中田秀夫監督は、これからの日本娯楽映画界を支えていく監督さんだと僕は思うが、今回はちょっと分が悪かった。やはり、これまでのLや「デスノート」映画版の世界観を作り上げてきた金子修介監督が続投した方が、よりファンが納得した作品になったのではないか、と素直に思ってしまった。

ただし、途中でのホラー描写やクライマックスの飛行機のシーンなどは中田監督がなかなかの冴えを見せてくれ、なかなか楽しませてくれる。

日本では珍しいスピン・オフ企画だし、こういう試みは面白いと思うだけに、少々残念ではあったが、これはこれで、と思わせる映画ではあった。

★は本来は2つなんだけど、松山ケンイチの頑張りと工藤夕貴のセクシーな黒いスーツ姿に星を1個追加。
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『黒部の太陽』詳細発表!  映画つれづれ

佐々部監督脚本・演出の舞台「黒部の太陽」について、梅田芸術劇場がHPで詳細をアップしていました!↓

http://www.umegei.com/m2008/kurobe.html

石原裕次郎役は、中村獅堂さん。初の佐々部作品登板ですが、映画ではなく舞台、というのが楽しみです。

ほかに、金井勇太さんや水谷妃里さん、伊嵜充則さんら佐々部組常連に加え、ベンガルさん、大地康雄さん、高杉旦さんらの名前が…。

個性派ばかりですが、どんな「黒部の太陽」を見せてくれるのか、本当に楽しみです。
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あの伝説のコミック&アニメが実写に!  新作レビュー

ギョギョギョの記事が!!

http://www.varietyjapan.com/news/movie/u3eqp30000030v6j.html

今年の夏公開らしい「マッハGO!GO!GO!」、来年公開らしい「ドラゴンボール」に続いて、ついに真打ち登場!てことになるのかな?

が、しかし…「ブレードランナー」と「シティオブゴッド」を融合した世界ってアナタ…あの世界は、あの世界でしかないでしょうに!!!

どうか大友克洋監督、すでに多くの映画作品を監督し、アニメ、実写を問わず「映画」の世界でも一流の監督さんなのだから、ハリウッドまかせにせず、ガンガン注文を出してほしい!!

前記の2作品は原作を自由に料理しても許せる気もするが、この作品だけは、原作、アニメともに物語から設定に至るまで「完璧」であり、その完璧さが魅力でもあった。

最近のハリウッドはちょっぴり信用できないので、不安で仕方ないが、まあどんな実写映像になるのか、お手並み拝見である。

ディカプリオは原作マニアということなので期待したい。
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奈緒子  新作レビュー

見た日/2月某日 ★★★★★

スポーツ物の映画として、出色の出来。

「駅伝」を描いた作品はこれまでもいくつかあったが、「駅伝」というスポーツが持つ魅力をきちんと伝えてくれた映画は恐らくこれが初めてだろう。

上映館が少ないにも関わらず、2/16公開映画では「ぴあ」満足度1位を獲得したのも納得。ちなみに、2/2公開作品では「結婚しようよ」が満足度1位だったのでこれもまた嬉しい。

「まぶだち」以来、「ロボコン」も「さよならみどりちゃん」も、古厩智之監督の作品は、どれも出てくる若者たちの青春群像を描きながら、一人一人の心の揺れを、リアルに、そして鮮明に描いていて秀逸だが、この作品でもその手腕は如何なく発揮されている。

人格的にもまだまだ不完全な高校生が、クラブ活動に取り組めば、真剣になれば真剣になるほど、仲間への妬みや指導者への不満、力が発揮できない自分への焦りなど、いろいろな感情が出てくるのは当然だ。

そんな、中学や高校時代にクラブ活動に熱心だった人なら誰もが持ったリアルな“感じ”が、等身大で表現されているから驚く。

とくに「駅伝」はタスキをつなぐスポーツであり、仲間同士の信頼がないと成り立たない競技でありながらも、実は個人競技でもある。

個人としての頑張りが、仲間意識につながり、それが人生の目的にもオーバーラップしていく…この映画は、そんな「駅伝」の妙を、主人公を中心に、選手一人一人の個性をサラリと、でもしっかりと描きながら、見事に表現している。

そのリアルさを体現しているのが、役者たちの見事な走りっぷり。クライマックスのレースシーンはリアルで、「走り」がきちんとしているからこそ、映画全体も生き生きと「走る」。

欠点があるとすれば、それはこの映画の原作コミックだろう。映画としてリアルに描こうとすればするほど、実は「奈緒子」の存在や監督を巡るエピソードがいささか邪魔臭い。

だが、古厩監督はそれを逆手に取った。物語の中心となる雄介と奈緒子の運命的な関係を冒頭で描きながら、中盤からはひたすら奈緒子をストイックに描き、あまり活躍させない。

その間に陸上部員たちのエピソードを丁寧に描き、雄介へのある想いを観客に印象づけたところで、後半の1シーンで「奈緒子」の存在を決定的に印象付けさせ、ある意味あり得ない原作の設定や奈緒子の存在を、リアルなものにし、物語に繋げたのだ。

古厩監督は、これまでの作品は全て青春映画ながら、登場人物たちの「心の揺れ」を描くことに熱心で、これまでの作風を見ると、正直、青春映画にありがちなカタルシスが感じられる映画は嫌だったのでは、と思う。

あの傑作「ロボコン」に至っても、ロボットコンテストとは言え、「競技」を描き、主人公たちのチームは全国大会を勝ち進んでいくのに、過剰な演出や音楽での盛り上がりは一切なく、実はそこが秀逸なのだが、その辺りを期待していた人からは厳しい意見もあった。

それが、この作品では監督得意の「揺れ」をきちんと表現しながら、スポーツ映画が持つストレートな感動やカタルシスも用意されていて、ちょっと驚いた。後半はベタだが、そこは古厩監督で、決してベタベタにはなっていない。

思うに、どの監督も、自分が撮りたい芸術性と観客に向けた大衆性との間で苦しむものなのだろうが、今回の作品は、古厩監督にとって、これまでにない観客寄りに立った作品づくりをしながらも、自分の持ち味は無くしていないという、ターニングポイント的な作品になったのではないかと思う。

思えば、僕が大人になって、「映画」を見るだけでなく、様々に関わるきっかけになったのは、「ロボコン」だった。僕が住む街でオールロケがされた、あの映画で市民応援団の事務局を担当しなければ、そのあと「映画」に関わる決定打になった「チルソクの夏」も、それを加速させた「ほたるの星」もなかったのだ。

そういう意味では、古厩監督は僕の恩人なのだが、そんな監督さんがまたまた素敵な作品を作ってくれたことに感謝し、また新たな地平に臨んだことに感動し、次回作に期待したい。

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思い出の映画音楽・洋画編  映画つれづれ

えー。思い出の映画音楽、洋画編です。一気に10本行きましょう。

☆ニーノ・ロータon「ロミオとジュリエット」
ニーノ・ロータは名曲がいっぱいあるが、個人的にはこれが忘れがたい。実は、4歳のとき、叔父さんに連れられて映画館で見た。妙に印象に残っているから不思議。

☆ジョン・ウィリアムスon「スター・ウォーズ」
定番中の定番だが、中学1年のとき、映画館でこのテーマがかかったときはそれまでの人生の中で一番興奮した瞬間かもしれない。帰りにサントラ買ったなあ。

☆ハンス・ジマーon「ブラック・レイン」
ドイツ人シンセサイザー使い、ハンス・ジマーは「バックドラフト」も忘れがたいが、東洋的なイメージの中に力強い旋律を描いたこの作品のテーマ曲がいい。健さん、優作アニキの雄姿を見事に浮かびあがって泣かせてくれる。

☆坂本龍一on「ラスト・エンペラー」
このメインテーマも東洋的メロディーに、カンツォーネの要素が入った名曲。カンツォーネ的なのは、監督がイタリア人だからだろう。楽器の使い方も絶妙。

☆エンリオ・モリコーネon「ニューシネマパラダイス」
いい。何度聞いても泣ける。この一連のテーマ曲ほど、聞けば聞くほど映画の場面が鮮やかに浮かぶものも珍しい。買っては摩耗したり無くしたり…結局、サントラを3回も買ってしまった。

☆ヴァンゲリスon「炎のランナー」
「南極物語」もいいけど、やっぱりヴァンゲリスはこれ。導入部の鳴り響くシンセ音と、躍動する肉体の映像が合わさった様は、映画が好きでよかった、と心から思う瞬間。

☆ビル・コンティon「ロッキー」
何の説明も不要。映画と音楽が一体となって、「負けるな!」と叫んでいる。

☆トレヴァー・ジョーンズon「ラスト・オブ・モヒカン」
「亡国のイージス」もこの人。基本的に、メロディーラインの展開はどの作品も同じで、短調で書かれているこの作品のメインテーマを長調にするとそのまんま「クリフハンガー」のメインテーマになるのが可笑しいが、この曲のスケール感は実にいい。

☆ブラッド・フィーデルon「ターミネーター」
リズム、メロディーをよりスケールアップした「ダダッダダンダン!」の2の方がインパクトはあるが、あの単純なメロディーが作品の爽快感をアップさせているパート1の音楽の方が好きかな。

☆マーク・マンシーナon「スピード」
メインテーマがいい。三連譜を多用した、導入部の軽快なリズムから、やや哀愁を帯びたメロディーがリズミカルに繰り返される展開は、正に「スピード」そのもの。
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チーム・バチスタの栄光  新作レビュー

見た日/2月某日 ★★★

この作品、まず観ようと決めたのは、中村義洋監督の新作だから。

中村監督の前作「アヒルと鴨のコインロッカー」は、近くDVD・ビデオレビューでじっくり取り上げたいと思うが、この監督さん、「ルート225」(これも面白い!)もそうだったが、テンポ感やユーモアの描き方、トリッキーな見せ方がなかなか秀逸で、今、注目される監督の一人だと思う。

雑誌などの情報によると、監督には自主映画時代からの盟友の脚本家がいるものの、今回は脚本やキャスティングなど、ある程度出来上がってから、監督の手腕を買われての登板だっらしい。

そういう意味では、これまでの作品に比べると“中村色”は若干薄いものの、会話や物語の中にさりげなく挿入するユーモアの巧さやキャラクターの描き分け方、後半のトリックが明らかになる展開部などは、中村監督の手腕を見せてくれる。

原作は未読だが、かなり膨大な原作なのだろうから、当然映画ではそのエッセンスを凝縮しているだろうし、その点、原作ファンは消化不良な点があるかもしれないが、僕は一本の映画としてとてもよくできているし、面白いと思った。

お話を病院内に統一し、あまり広げないのも物語全体を締めていてよかった。探偵役の阿部寛、竹内結子はこれまでのキャラクターの範囲内ではあるが、2人が持つ魅力が十分に出ていて安心して見られる。

手術シーンもきちんと見せていて、これはテレビではなかなか難しいだろうから、映画ならではの醍醐味も味わえる。犯人探しの見せ方も映画的に工夫していて、興味をそそる。

ナチュラルなものの見方をする竹内結子扮する精神科医が、事件を通してちょっぴり成長する様が物語のいいエッセンスにもなっていて、阿部寛扮する強烈なキャラクターの役人との対比もあって、描かれているテーマは重いものの、見たあとの感じは意外と心地よい。

竹内結子は、本当にいい映画俳優になったと思う。もうテレビドラマなどには出ずに、映画一本で頑張ってほしい。ただし、同じような役柄ではなく、「サイドカーに犬」のように、もっともっと演技の引き出しは多い女優さんだとは思うので、いろいろな竹内結子が観てみたい、と思う。

さて、7人のチームバチスタや病院長などのキャラクターはもう少し説明と掘り下げが欲しいところだが、説明過多になる恐れもあるのだろう、そこはキャスティングの妙で上手く切り抜けている。

7人の専門医や看護師たちはよ〜く吟味してキャスティングされている。中でも天才外科医役の吉川晃司がいい雰囲気を出している。久し振りの映画出演だが、彼はスクリーンがよく似合う。「シャタラー」なんてトンデモ映画もあったが大森一樹監督のセンスが抜群だった「すかんぴんウォーク」が懐かしい。


★4つか3つか悩んだが、後半の展開に性急さを感じてしまい、ちょっと物足りなかったのと、どうしても中村監督の前作に比べてしまうので★3つ。でも、最近の一連のテレビ局が絡んだ大作娯楽日本映画群の中では、抜群に面白かった。
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佐々部監督の舞台演出が決定!  映画つれづれ

佐々部清監督が、御自身のhpでも述べられていますが、監督初の舞台演出となる「黒部の太陽」が、10月に大阪の梅田芸術劇場で上演されることが決まったようです!

http://www.sasabe.net/hidiary/hidiary.cgi

2月18日のスポーツ報知がスクープしたようです。

http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20080218-OHT1T00056.htm

「黒部の太陽」と言えば、先日急逝された熊井啓監督の代表作のひとつであり、故・石原裕次郎氏自ら製作・主演した、1968年の映画です。

製作は石原プロと三船プロで、当時、所属の映画会社以外は出られないという五社協定がありながら、石原裕次郎氏と三船敏郎氏が自ら製作する、という形で当時、不可能だった共演を実現したことでも知られる作品です。

クライマックスの大水が流出するシーンでは、濁流に飲み込まれた裕次郎氏が骨折をしたことでも有名で、その大迫力シーンは日本映画史に残る場面と言われています。

残念ながら、裕次郎さんの遺志らしく、石原プロはこの作品をとっても大切にしていて、ビデオなどの映像ソフト化はしていません。

僕は当時4歳なのでもちろん未見ですが、実は「見た」と思い込んでいて、調べてみたら公開の翌年、同じタイトルで日本テレビでテレビドラマ化されていました。テレビ版も裕次郎氏が同じ役で出演していて、だから「見た」と思っていたようです。

テレビ版は演出が何と、鈴木清順監督。映画版が熊井監督で、テレビドラマ版が鈴木監督とは、日活つながりなのでしょうが、何と贅沢なのでしょう。当時、ドラマ版で映画版の場面がインサートされ、問題になったそうです。

恐らく僕が見たのは再放送なのでしょう。結構、面白かった記憶があります。水のシーンはかすかに記憶があるのですが、それはテレビドラマ用に改めて撮影したのか、それとも映画版を流用したのでしょうか?

とにもかくにも、この「幻の映画」を、舞台として復活させ、それも我らが佐々部監督が舞台初演出に挑戦する…映画ファンにとって、佐々部ファンにとって、夢のような企画です。

記事などから見るに、映画監督である佐々部監督の演出らしく、ただ単に黒部ダム建設に携わった男たちを描くのではなく、映画「黒部の太陽」製作に賭けた男たちも同時に描くとのこと。水のシーンは2万リットルもの水を舞台に放出するというから、映画以上のスケールの大きな舞台になりそうです。

いやあ、10月が本当に楽しみ!今から大阪に行くため、お金を貯めよう!と思うおたっきーでした。
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日本アカデミー賞発表!パート2  映画つれづれ

日本アカデミー賞について書いたら、いつもより反響が大きく、やっぱり同じように考えている方は多いんだな、と実感。

コメントでのご指摘もあったが、授賞式の放送が中継ではなく、日本テレビによって脚色されているのも例年通り。

とくに技術職の方々の受賞を、なぜ放送しないのだろう?これもコメントのご指摘の通りで、本当に映画への「愛」やスタッフへの「敬意」が感じられない。

今年、ちらっと映っただけだったが、最優秀作曲賞の大島ミチル氏が感激で号泣されている様が印象に残った。彼女の受賞の様子、その弁が聞きたい、と思ったのは僕だけではないと思う。

昨年、最優秀主演男優賞を受賞した渡辺謙氏のスピーチには感動した。病気で主演映画を降板し、病床で見たという日本アカデミー賞への想いを涙ながらに切々と語る渡辺氏を見ながら、本家アカデミー賞でもノミネートされた人が、日本アカデミー賞を受賞して本気で喜ぶ、そんな時代がついに来たのだ!

なのに、何をしているんだ!日本アカデミー賞!そんな受賞者の映画への「想い」に賞が全然追いついてないじゃないか!

百歩譲っても、あの「放送」には映画への「想い」や「愛」はあまり感じられなかった。

受賞者があまりうれしそうじゃない今年の放送を見ながら、そんなことを思ってしまった…それが素直な感想である。
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日本アカデミー賞発表!  映画つれづれ

日本アカデミー賞が発表された。

昨年は「フラガール」が独占し、いわゆるメジャー製作ではない作品の主要賞受賞に「日本アカデミーもなかなかやるわい」と思ったが、今年は主要賞を「東京タワー」が独占。

ちょっぴり、うーん…という感じだ。

以前も指摘したが、この賞、投票権を持つ人たちの大部分は日本映画製作者連盟加盟社、すなわち東宝や松竹、東映といったメジャー系映画会社の関係者たちで、どうしても受賞作品がメジャー系作品に偏る傾向にあり、とくに日本テレビで全国放送されているせいか、日テレに気を使っているのか、日テレが出資した作品がノミネートされ、それがそこそこの秀作だった場合、それに賞が集中する傾向がある。

それは11年前の「Shallweダンス?」、2年前の「ALWAYS三丁目の夕日」が独占したことでも明らかだ。

今年のノミネートを見ても「?」な作品が混ざっている。本当に面白かった「キサラギ」はよいとしても、「眉山」など、犬堂監督作品とすれば同年公開の「黄色い涙」の方が作品的にはいいと思うし…。

「キサラギ」が選ばれててるのに、どうして「夕凪の街 桜の国」や「天然コケッコー」「サッド・ヴアケイション」「しゃべれどもしゃべれども」などは選ばれないのか?やはり、メジャー系に偏っている。


そして、今回も日テレ出資の「東京タワー」が独占し、主演男優はこれもまた日テレ出資の「ALWAYS続・三丁目の夕日」の吉岡秀隆さんという結果。うーむ、日テレ系大爆発だ。

キネ旬はじめ、他の映画賞で主要賞を独占した「それでもボクはやってない」は今回は助演女優賞のもたいまさこさんのみ。

まあ最近の「それボク」のあまりにもすごい独占ぶりは「?」だっただけに、この結果はある意味では「アリ」なのだが「それボク」は実は日テレのライバルのフジテレビ出資。オダギリジョーも「他の作品と思っていた」と言っていたが、ちょっと日テレ系偏重が露骨な気がした。

でも、感動したのは主演女優賞の樹木希林さんのスピーチ。急逝した市川監督に敬意を表したうえで日本映画の未来を語り、「この賞が名実ともに素晴らしい賞になることを祈念します」旨の発言は、本当に素晴らしかった。

いろいろ書いたが、何だかんだ言っても「日本アカデミー賞」は、日本の映画賞のうち、唯一、ゴールデンタイムにテレビが全国に放送する映画賞なのだ。

だから、映画ファンはともかく、一般の人にとってはこれが一般的な認識としての「映画賞」なのだ。だからこそ、意義も深いし、映画人の方々も受賞すれば素直に嬉しいのだと思うし、僕たち映画ファンも高く評価している。

その辺りが樹木さんの「名実ともに…」のスピーチに凝縮されていたような気がした。

だからこそ、アカデミー協会会員の皆さんには、自社の呪縛にとらわれることなく、作品的な評価で選んでほしいし、その努力をしてほしい。そういう意味では昨年はいい傾向だったのに、今年はちょっぴり残念な気もする。

でも、もちろん「東京タワー」はいい作品であり、作品賞に値する、素晴らしい作品だと思う。ただ、周囲を見ると、どうも偏っている感はぬぐえない、というのが今年の素直な感想だった。





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追悼・市川崑監督  映画つれづれ

市川崑監督が、亡くなられた、との報にただただ、驚愕!

享年92歳とのこと。もちろん御高齢だから、こういう日が来ることはあるとは思っていたが、90歳を超えてなお現場で指揮を取られていたので、にわかにし信じがたい。

市川監督と言えば、もちろん本編も素晴らしいが、僕は「市川崑劇場」と銘打っていたテレビドラマ「木枯らし紋次郎」が大好きだった。

小学高学年のころ、テレビで昼間に再放送をしていて、すっかりはまった僕は何日か親に風邪をひいた、とウソをついて学校を休んでしまい、盗み見るようにして見て、興奮したことが忘れられない。

大人になってビデオを見たが、その興奮は色あせなかった。

印象的なカット割、明朝文字のタイトル…本当にカッコよかった。

映画では、ベストは「細雪」だろうか。映像美に圧倒された。

リメイク版「ビルマの竪琴」は劇場で泣いた。

世評的には今一つだったが、個人的には田中絹代の生涯を描いた「映画女優」やSFに挑戦した「火の鳥」「竹取物語」も大好きだった。

「犬神家の一族」では、本家版もリメイク版も劇場で楽しませて頂いた。

幼いころから親しんできた監督さんがまた一人、亡くなってしまった…。

最愛の奥様にして、作品づくりのパートナー、和田夏十さんのところに、旅立たれたのだろうな、と思う。

ご冥福を、心よりお祈り致します。

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アポカリプト  DVD・ビデオレビュー

見た日/2月某日 ★★★★

メル・ギブソン、やるな、お主、という感じである。

公開時、マヤ文明の徹底した再現ということで話題になったし、その表現が史実と違う、いや違わない、という論争もあったので、真面目な映画と思ったらトンデモナイ!

この映画、とてつもなく凄まじい、グロもアリの、超弩級の肉体酷使アクションの大傑作だった。こんなにも画面に引き込まれ、胃がキリキリしながら見たアクション映画は久し振りである。

「痛み」というのは、実はアクション映画の大切な要素だったりする。

実生活もそうだが、飛んだり跳ねたりすれば、肉体に必ず何らかの負荷はかかる。

その「負荷」を、如何に「映画」として見せるか、そこがアクション映画の妙である。そしてその「負荷」が極まったときの「痛み」、これこそがアクション映画の醍醐味でもある。

華麗な蹴りを食らったときの悪役の「痛み」、そして「リアクション」、凄まじいまでのアクションを繰り出したときの男の「悲しみ」…古くはバート・レイノルズ、スティーブ・マックイーン、そしてブルース・リーからジャッキー・チェンに至るまで、そんな興奮を、何度スクリーンから味わったことか。

ジャッキーのように、ケガも当然、という姿勢で肉体の限界に挑む映画群は究極だが、そこまでは行かないにしても、そんな生身の「負荷」の妙を見せてくれるのがアクションの楽しみなのだが、最近はCGばかりで味気ないのも事実だ。

それが、この映画は、恐らくCGも使ってはいるだろうが、全員裸でジャングルをただただ駆け巡るリアルさ、凄まじさに唖然で、マヤ語をしゃべるこだわりも含め、見応えがあった。

メル・ギブソンの監督作「ブレイブハート」「パッション」はいずれも好きな作品だが、前作で描いた「痛み」のリアルさを、今作ではもっと突き詰めた感がある。

劇場公開時は賛否両論ありで、近くの劇場で上映してなかったこともあって見逃したのだが、これまた劇場で鑑賞できなかったことを後悔させる作品だった。


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ラッシュアワー3  DVD・ビデオレビュー

見た日/2月某日 ★★★

僕は、もし、履歴書(んなものは書くことも今後、終世ないだろうが)に尊敬する人物の欄があれば、迷わず「ジャッキー・チェン」と書くほど、成龍様をお慕い申し上げている。

その、映画に対する情熱、愛情、アクションにかける気持ち、そして技術は世界一だ。

CGなどに頼らず、肉体の動きを駆使し、信じられないようなアクションの妙をスクリーンに叩きつける姿は、正に映画黎明期に「肉体の動き」で勝負したハロルド・キートンやチャーリー・チャップリンとも通じるものがある、と思う。

香港まで行って、「酔拳2」を満員の劇場で鑑賞した思い出は、僕の映画人生の中でも感慨深いものがある。英語と広東語両方の字幕、ゲラゲラ笑い、大声を上げながら映画を楽しむ香港の人たち…あれはエキサイティングな体験だった。

そんな大好きなジャッキーだが、年齢を重ねたせいかアクションを抑え、物語性に新たな地平を見出そうとした「奇蹟(ミラクル)」が観客に不評を買って以来、再びアクション一辺倒になって、ファンとしては少々心配した。

「奇蹟」はフランク・カプラの「ポケット一杯の幸福」のリメイクで、ジャッキーが映画に対してどれだけ愛情が深いか、またクラシックの名作もよく勉強し、深く理解していることも伺える作品で、「プロジェクトA」「ポリス・ストーリー」と並ぶ、ジャッキーの傑作だと思う。

さて、そんな「年齢も重ねてちょっと無理している感」が強かったジャッキーが、「レッド・ブロンクス」のアメリカでのヒットを受け、ハリウッドの映画人に請われて進出したのが、この「ラッシュアワー」の第1作だった。

ただ、これでハリウッド第1作、と聞くと、僕らファンにとってはジャッキーのハリウッド進出作として話題になった「バトル・クリーク・ブロー」や「キャノンボール」シリーズは何だったの?と思うのだが、これらは日本やアジアのファン向けで当時、ハリウッド本流はほとんど相手にしてなかったのね、ということがこのときようやく分かる訳だ。

でも、正直、この「ラッシュアワー」シリーズは、長年のジャッキーファンから見ると、少々物足りない。

これは、ハリウッドの目から見れば、だが、往年のジャッキー映画はアクションは凄まじいものの、物語性は少々弱いと思える作品(あくまでハリウッドの目から見れば。でも前述の「奇蹟」「プロジェクトA」などは物語もスバラシイ!)が多いので、ブレット・ラトナー監督は、恐らく「ジャッキーのアクションとハリウッドのコメディセンス、物語性がプラスすれば面白い映画ができる」と考えたのだ。

この着目点はいい、と思う。僕たちもハリウッドの大作の中で暴れまわるジャッキーの映画が見たい。でも、ユニオンが強く、現場での制約が強いハリウッドでは、ジャッキーの個性を生かすことは、正直、難しかったのだ。

そういう意味ではこのシリーズは、1、2ともコメディ・アクションとしてはそこそこの出来ではあるものの、ジャッキーの魅力を十分に引き出したとは言えないものになってしまった。ジャッキーのアクションも腹8分目、というていどだ。

作品は大ヒットし、ジャッキーはこのあともハリウッド作品に続々と主演するが、どれもジャッキー・アクションの魅力を生かしたとは言えない作品ばかりで、中にはCGを使った作品もあったりして、「おいおい」という感じのものもある。

その不満はジャッキー自身も感じていたのだろう。ハリウッド作品に出演しながら、この間、地元香港に戻り、自身の過激アクションの原点とも言える「ポリス・ストーリー」のセルフ・リメイクとも言え、演技的にも深いものに挑戦した、ある意味ではジャッキー映画の集大成でもある「香港国際警察」を製作した。

これはハリウッドでは絶対できない過激アクションのオンパレードで、ストーリー的にはいい意味でハリウッドでの経験も生きているように思えた。僕たちもこの稀有な大傑作を見ることができたのだから、ジャッキーのハリウッド挑戦も無駄ではなかった、という気がする。

さて、前置きが長くなった。この「3」だが、物語的にはギャグも滑りまくり、物語展開も全くひねりも何にもなく、シリーズで一番出来が悪い。が、しかし、アクション的には相変わらずジャッキーとしては腹8分目だが、敵役の真田広之の好演もあって、シリーズで最もいい出来になっている。

真田広之と言えば、かつて千葉真一の一番弟子であり、日本では最高の若手アクション俳優だったのだ。「柳生一族の陰謀」での「お城屋根裏和風ハードル競走」や香港映画「龍の忍者」でのアクションなど、そりゃあ、ジャッキーもビックリ、というほどのスゴイアクションを見せていた。

それが「麻雀放浪記」「道頓堀川」辺りから実にいい演技派となり、アクションはしばらく封印していたのが、「たそがれ清兵衛」でこりゃまた素晴らしい殺陣を見せ、「ラストサムライ」でハリウッドに進出して、いろいろな作品でも顔を見るようになって「すごいなあ」と思っていたら、この作品で往年の切れのいいアクションを見せてくれたので大満足。

「龍の忍者」のとき、ジャッキーと共演してほしいなあ、と思っていた僕の夢が、思わぬ形で実現して驚いた。

で、映画としては星2つなのだが、ジャッキーと真田さんに敬意を表して星1つおまけ。

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母べえ  新作レビュー

見た日/2月某日 ★★★★

「母べえ」というタイトルから、ほのぼのした母物の人情物かとも思う。でも、この映画は違う。叙情性の中に隠れて、山田洋次監督の怒りと情熱がほとばしった、人間ドラマである。

いわゆる「行間」にメッセージやテーマがたくさん詰まっているので、この映画を観終わったとき「これはいろいろな批判もあるだろうな」と思ったが、僕自身は、深く胸の底を突かれた。

何年か前からか、俗な言い方だが、いわゆる右傾化された言論に社会全体がアレルギーをあまり感じなくなった。

それに対して、僕はいい、悪いなどとは言えず、その議論その議論で色々と思うところはあるが、右寄りの論理も、左寄りの論理も「なるほど」と思う部分がある。

でも時折、戦争擁護につながるような論調を新聞やテレビなどで見て「ドキっ」とすることもある。

そんな時代だからこそ、リベラルな考え方で知られる山田洋次監督は、恐らくこの数年感じていたであろう「怒り」の気持ちを、「映画」という形で表現したのが、この「母べえ」はないだろうか。

「日本が軍事国家を形成した」時代に、ただひたすらに、しかしながら、実はしたたかに生き抜いた、市井の人々を描くことで、山田監督はその「怒り」を、静かに、しかし、深く燃え上がらせているように思えた。

だからこそ、様々な情報が交錯し、あらゆる人たちの思想信条もあいまいになっている今、「現代」というフィルターをかけてこの映画を見ると、表面的に漂う純粋なピュアさが少々浮いている、と感じる向きはあるかもしれない。

「浮いている」と感じると「自分に合わない」と思うもの。全体感で嫌になると、いくら中身で親子の愛情が描かれようとも、乗れなくなってしまう人もいるだろう。

また、かつての戦争を描いた作品の影響からか、観客の側に戦争下の庶民生活にひとつのイメージが定着してしまっていて、この映画で描かれる主人公たちの暮らしのディティールに「違和感」を感じる人もいるようだ。

だが、恐らく山田監督はそんなことは百も承知で、表面は静かで穏やかでいて、その実は物凄く挑戦的な映画を発表してきた、と思った。

ネットなどでこの映画のレビューを見ると、先ほどの「違和感」から、こんな批判がある。

「夫が思想犯で逮捕されているのに妻や家族がなぜ近所から批判されないのか」
「夫の留守中に若い男性が出入りしていて周囲は変に思わないのか」
「郵便受けがローマ字なのは戦下なのに変ではないか」などなど。

これに関しても、恐らく山田監督は百も承知だ。

この作品はそもそも実話が元であり、僕は原作は未読だが、原作者のインタビューなどを読むと、恐らくほとんどが実話のようだ。

山田監督は、かなり巧妙な演出をしている。この映画、ピュアなようでいて実はそうではないのだ。そして、説明過ぎているように見えて、説明過ぎてもいない。

実は、今の僕らの思想信条が曖昧なように、どんなに言論を統制されていても、今も昔も、人々の気持ちはそんなに単純なものではなかったはずで、実は現代とそう変わりなかったりする。

「母べえ」が近隣のつきあいに奔走したり、国民学校の代用教員として真面目に勤務する描写を入れることで、母べえが生きるために本音と建前を使い分けながら努力していることが伺える。

確かに若い男性が出入りしていれば陰口のひとつぐらい叩かれたかもしれないが、それはこの映画の本筋ではなく、この家には様々な人が出入りしていて、若い男性の山ちゃんが気を使っている様子も伺える。

主人公の母べえは、ある面したたかでたくましい。夫を愛しながらも、山ちゃんに素直に頼り、自分に愛情を寄せられいると知ると、照れながらも素直にうれしいとも感じる。

でも、それが人間なのだ。「人間は単純じゃない」のだ。いつの時代も、人は怒り、喜び、悲しみ、様々な複雑な感情を日夜持ちながら暮らすものなのである。

これが他の女優が演じたら、もっとその“人間臭さ”が鼻についたのかもしれないが、吉永小百合という、ある意味生身の人を超絶した“映画女優”が演じるからこそ、重みの中にファンタジー的な要素が加わり、ある意味矛盾のある女性像を納得できる存在感のあるものにしていると思う。

父べえも、実はバリバリの左翼主義者という訳ではないようである。自分の信条に照らし合わせて中国との戦争に疑問を持っているだけなのだが、彼は優しいというか無骨なのか、思想転向の上申書は書けても、どうしても言葉の表現などで自分を偽ることはできない。

山田監督の視線は、そんな、普通の暮らしを営もうとする人々を苦しめようとするものには容赦がない。例えば「ぜいたくは敵だ」と街かどで叫ぶ婦人たちの描写は映画全体を見ればオーバーすぎるぐらいカリカチュアされて描かれている。

権力は、一瞬にして人の命を奪う力を持っている。その恐ろしさは、いつの時代にでも、どこの国にでも起こり得ると思う。その中で、人が自分の身を守るように普通の幸せや人との絆を求め、生きていく様を丁寧に描くことで、山田監督は現代に警鐘を鳴らすつもりもあったのだろう。その辺りはストレートに描いている。

そして、ラスト近い現代の部分。恐らくここが山田監督が最も描きたかったところだろう。いきなりの展開で、戸惑う人も多いかもしれないが、母べえの最後の想いこそが、この映画全体を貫くテーマであると思う。

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思い出に残る映画音楽2  映画つれづれ

「思い出に残る映画音楽」の日本映画編、後編です!

★津島利章on「仁義なき戦い」
津島氏は多くの映画作品を手がけているが、これが代表作だろう。東映のアクション映画の伴奏は、楽器編成などに非常にチープなものが多い。

恐らくほとんどが管楽器とリズムセクションが中心で、津島氏や「仮面ライダー」で知られる菊池俊輔氏など、一連の作品は「金がないならそれなりのもんやったるわい!」(なぜか大阪弁だ)という猥雑なパワーに満ち溢れていて、メロディーも耳に残る強烈なものが多い。

70年代東映アクションでは津島氏と菊池氏は双壁的な存在で「トラック野郎」では共作もしている。

作品を聞き比べると、ロックリズムをベースにしたシンプルなメロディーを得意とする菊池氏に対して、津島氏の作品はどちらかと言うとメロディー重視という印象を受けるが、この作品の音楽に関するインパクトは物凄いものがある。

とくにテーマ曲は強烈で、トランペットのがなるようなファンファーレ、ベースの唸るようなリズム、ホーンセクションのユニゾン攻撃と、映画の内容と同様、音楽にも「仁義」がない。

★宮川泰on「宇宙戦艦ヤマト」
歌謡曲の作曲家というイメージが強かった宮川氏が、あらゆる面で優れた作曲家という印象が強まったのは、恐らくこの作品が貢献している。

主題歌はもとより、数々の劇伴作品が素晴らしかった。川島和子の幻想的なスキャット、乗組員たちが乗り込む時の勇壮なマーチ、ヤマトが出撃するときの高揚感あふれるメロディー、主題歌を壮大にアレンジした楽曲…など、この作品がアニメブームを巻き起こした背景には、間違いなく優れた音楽があった、と言える。

とくに劇場公開されるに当たり、新たにオーケストラアレンジにして録音し、これが「交響組曲宇宙戦艦ヤマト」としてLP(!懐かしい)が発売されたことは当時、画期的だった。それからアニメ音楽の世界では「交響組曲」が大流行するのだ。

このときの「交響組曲」はオーケストラと言っても少々ポップス気味で、リズム楽器も入ったりしているのだが、ヤマトの音楽は、後に羽田健太郎氏のアレンジで本格的なシンフォニーにもなっていて、こちらの出来栄えも素晴らしい。

宮川氏のお葬式のとき、遺言によって息子さんの指揮で「ヤマト」を演奏した、というエピソードを新聞で読んだときは涙が出たが、羽田氏もその後亡くなっており、とっても寂しい。

ヤマトは著作権を巡る争いもあったりして、新劇場版の話が出ては消え、出ては消えの状態なのだが、是非、スクリーンであの素晴らしい音楽とともに宇宙に飛び立つヤマトの雄姿を見たいと思うのは僕だけではないだろう。

★菅野光亮on「砂の器」
映画「砂の器」の音楽監督は芥川也寸志氏だが、この作品を貫くピアノ協奏曲「宿命」は、菅野氏が作曲している。

この作品、今見るとツッコミ所もあるのだが、今だに何とも言えない魅力を放っている要因のひとつは、やはりこの「音楽」だ。

加藤剛扮する若手の新進気鋭の作曲家が、自らの不幸な「宿命」を呪い、断ち切れず、苦脳し、それでもこの曲によってそこから脱却し、のし上がろうとする…。こんな設定の「曲」を、実在のメロディーで表現しなければならなかったのだから、菅野氏のプレッシャーは相当すごかったと思う。

でも、菅野氏はその期待に応えている。抑揚が効いた、ダイナミックかつ物悲しいメロディーは、登場人物の悲哀と矛盾を十分に感じさせてくれる。

楽曲が素晴らしいからこそ、舞台袖で刑事の丹波哲郎と森田健作が話し合う「彼は今、自らの宿命と戦っている」というセリフが生き、日本の厳しい四季の風景の中、巡礼をする哀れな親子の姿が情感あふれるシーンとして表現される。

僕にとっても、日本映画で最初に毎日のように口ずさみ、リコーダーで吹くメロディーとなった。もっとも、小学校でこのメロディーを吹いていても、周囲の友達は「なにそれ?」という感じだったが。

★伊福部昭on「ゴジラVSキングギドラ」
伊福部昭氏って、本当に偉大な作曲家だ、と心から思い、尊敬する。
一般的には「ゴジラ」の作曲家としてのイメージが強いが、間違いなく、日本音楽界、日本クラシック界が世界に誇る作曲家である。

東京音楽大学の学長を務めたことでも知られているが、黛敏郎氏や芥川也寸志氏ら、名だたる作曲家の師匠でもある。

芥川氏の作品、例えばNHK大河ドラマ「赤穂浪士」のテーマ曲などを聞くと、印象的なリズムに「和」を感じさせるメロディーが被さる点など、伊福部氏の影響を色濃く受けているなあ、と思う。

「題名のない音楽会」で、司会をしていた黛氏が伊福部作品が演奏されたあと、感激で言葉を詰まらせたことも忘れられない。

伊福部氏はそれほど偉大な作曲家なのだ。

で、何が偉大かと言うと、作品のオリジナリティ、独創性にあると思う。伊福部氏の作品はメロディーやリズムが西洋音楽に影響されておらず、日本古来のリズムと和声を基調に、全く独自の展開をしていて、その独特感はまさにオンリーワンなのだ。

ドシラ、ドシラと繰り返される有名な「ゴジラ」のテーマ曲も、4分の4拍子と5分の4拍子を繰り返す変拍子で、普通の楽曲ではなかなかあり得ないリズムが平気で使われていて、それが全く不自然でない点に、伊福部作品の凄さがある。

そんな作品の独自性と幻想的な点が、怪獣映画、特撮映画の雰囲気にピッタリきていたのだろう。一般映画の担当も物凄くたくさんあるのだが、怪獣映画の音楽がとくに有名になった。

伊福部氏の場合、他で発表したシンフォニーをアレンジして映画音楽として使っている場合が多く、映画音楽=伊福部世界として楽しめる。

この「ゴジラVSキングギドラ」は平成に入ってからの作品だが、久しぶりに伊福部氏が全面にわたって音楽を担当しており、新録音というクオリティの高さから見ても、伊福部音楽の真髄が楽しめる。

伊福部作品は演奏が難しいのか、昔の作品を見ていると、時折、演奏ミスがあったりする。実際に劇伴では使われてないが、「ゴジラVSメカゴジラ」(ベビーゴジラが出る方ね)の公開時に発売された佐藤勝氏指揮によるライブCDは、せっかく佐藤氏指揮、伊福部氏作曲という夢の競演なのに、演奏したオーケストラが技術的にひどくて、ホーンセクションは高音でミスを連発するし、リズムも戸惑いながら演奏しているのが丸わかりのひどいものだった。そういう意味では平成シリーズの伊福部音楽は安心して聴ける。

一応シリーズの最終作となった「ゴジラVSデストロイア」も伊福部氏が全編を担当していて、レクイエムがたっぷり聴けるあっちもいいが、リズミカルで重厚なキングギドラのテーマ曲がいい「ゴジラVSキングギドラ」がオススメだ。

★たかしまあきひこon「野獣死すべし」
たかしま氏と言えば、「8時だよ!全員集合!」をはじめ、往年のバラエティ番組の作曲担当として知られる。恐らくあのコントの名曲の数々は、たかしま氏によるものだ。

映画音楽も何作か手がけていて、この「野獣死すべし」は最高である。

この映画、音楽がかなり重要なモチーフになっている。普段は狂気を隠し、翻訳家としてクラシックコンサートに現れる元ベトナム戦争の従軍カメラマン・伊達邦彦。彼は現代の平穏な東京に“戦い”を求め、銀行を襲う…。

内に狂気を秘めた松田優作氏の演技は壮絶かつ秀逸で、僕は高校時代、この映画に強烈な影響を受けた。映画全体を貫くモチーフになっている音楽は、ショパンのピアノ協奏曲第1番。このシンフォニーと、たかしま氏オリジナルのトランペットによるテーマ曲が、絶妙なバランスを取りながら映画が展開していく。

テーマ曲はジャズ・トランペッター、岡野等が名演を見せてくれていて、何とも言えない切なさとやるせなさが漂う、オリジナルのジャズ・バラード曲として聞いても名曲と思う。

僕はこのサントラ盤のLPレコードを買い、何度も何度も聞いた記憶がある。

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『結婚しようよ』初日!  映画つれづれ

「結婚しようよ」が初日を迎えました!

僕も、多少でも興行成績に弾みがつけば、と、近所のMOVIX周南の初日第1回を見てきました。

結構お客さんが入っていて、ちょっと安心。皆さん笑って泣いて、お客様の反応は上々でした。

ここの劇場は音響がいいので、拓郎さんの歌がしっかり聴こえていて、以前の試写会のときとは全く鑑賞後の感じが違いました。やはり映画、とくにこういう音楽重視の作品は音響のいい映画で見るべし、だなあ、と実感しました。


東京では、華やかに舞台あいさつもあったようです。↓

http://www.cinematopics.com/cinema/c_report/index3.php?number=3183

で、ヤフーのレビューでは現時点(2/3朝)4・67点でレビューランキング2位と、物凄い高評価です!レビューも味わい深いものが多く、この方のレビューはちょっとジーンと来ました。↓

http://info.movies.yahoo.co.jp/userreview/tyem/id329221/rid26/p1/s0/c4/

好発信した「結婚しようよ」。祈、大ヒット!
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