※ネタバレが含まれています。未見の方、御注意ください。

1971年製作の、スティーブン・スピルバーグ監督のデビュー作。この作品を撮ったとき、スピルバーグ監督はまだバリバリの20代だ。

もともとアメリカではテレビ映画として製作されたが、日本では出来がいいので劇場公開された。

広大な台地を車で走るビジネスマンが、タンクローリーを追いぬいたところ、追われる羽目となる、という、それだけの、実にシンプルな話なのだが、一気に最後まで見せる。

とにかく恐怖感を盛り上げる演出が上手い。緊迫感あふれるカットを積み重ね、見る者を興奮させてくれる。

恐らく、スピルバーグ監督は自分が面白いと感じた、ありとあらゆる活劇映画の体験をこの一本に込めたのだと思う。主人公を襲うタンクローリーは運転手の姿を一切見せず、サスペンスを盛り上げてくれる。

普通のタンクローリーかと思いきや、その巨大さを強調する細かいカット割りが重なり、次第に不気味さと恐怖感を出して行く。この辺の手法はヒッチコック風である。

ナゾの運転手はクライマックスでギアを切り替える手だけが写るが、そのタイミングがまた見事で、「これだけかい!!」と観客は地団駄を踏むのだ。

またチェイスのシーンなど、活劇の描写は黒澤明監督の「七人の侍」やジョン・フォード監督の西部劇も彷彿とさせる。タンクローリーがモンスター化していく辺りは、日本の怪獣映画の影響もあるように思う。

タンクローリーのホイールが外れ、巨大なタイヤに踏みつぶされていくシーンなど、実に計算されていて、スピード感とスリル、サスペンスが共存した、いい場面だ。

スピルバーグ監督は、最新作「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカラの王国」でも、チェイス・シーンの演出に冴えを見せている。どうカット割りをしたら、観客は面白い、と感じるのか、そのスキルは、この第一作目にして、すでに完成している。

余計なお話があったりして、決して傑作ではない作品も見受けられる昨今のスピルバーグ監督だが、もう一度、低予算のアイデアだけのアクション映画を、円熟味が増したスピルバーグ監督が撮ったらどうなるのだろう?

次元は違うが、クエンティン・タランティーノが「デス・プルーフ」なんて作品を未だに撮っていることを思うと、そんな空想もしてしまう。
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インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国  新作レビュー

見た日/6月某日 ★★★

スティーブン・スピルバーグ監督の「ジョーズ」こそ、僕が小学5年のとき、劇場で見て映画の迫力に魅せられ、映画館通いをすることになった記念碑的な作品である。

この年、日本映画では「砂の器」を映画館で見てすっかり参ってしまい、日本映画ファンになった訳ではあるが、洋画はアクションやSF物中心で、中学生のときは「スター・ウォーズ」に狂ってしまうのだ。

そういう意味では、スピルバーグ監督とジョージ・ルーカス監督は僕の映画の恩人の一人、という訳だ。

両監督とも黒澤監督はじめ、さまざまな活劇映画に影響を受けていて、その元になった映画を見てビックリするのも、ルーカス監督の「アメリカン・グラフテイ」を「水曜ロードショー」か何かで見て感動するのも、ずーっと後の話だが、とにかく僕はルーカス&スピルバーグによって、ハリウッド製アクションのファンになったのは間違いない。

そんなお二人がコンビを組んだ、「インディ・ジョーンズ」シリーズだから、面白いのは当たり前なのだが、なぜか1作目の「レイダース・失われた聖櫃」は劇場で見ても面白かった、という記憶はあまりない、

むしろ、2作目の「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」はメチャクチャ面白くて、インディたちがわざわざ絶体絶命の危機に陥るプロセスやその脱し方が秀逸だった。トロッコのアクションもハラハラドキドキしたものだ。

3作目の「最後の聖戦」も面白くはあったものの、当時は似たような娯楽作品も多く、何となく物足りなさを覚えたことを覚えている。

そんなインディアナ・ジョーンズ博士が19年ぶりに帰って来て、嬉しいばかりなのだが、今回驚いたのは、僕の小学1年になる二男が、テレビで「魔宮の伝説」を見て以来、すっかり「インディ」ファンになってしまったこと。ああ、血は争えない。

さて、そんなこの最新作だが、さすがにスピルバーグで、CGやコケオドシ全盛の時代にあえて正統派のアクションのつるべ打ちは見事、の一言。

前半の倉庫内のアクションから始まって、中盤の三つ巴のチェイス、後半の謎解きのシーンに至るまで、テンポもよく、観客を飽きさせない。

クリスタル・スカラがおもちゃみたいなのはご愛敬で、ラストの展開も壮大なホラ吹きで、なかなか面白い。粗暴な原住民も、足を引っ張るパートナーも、気持ち悪い虫の大群も、このシリーズのお約束はもちろん全て踏襲し、これまでの3作を上回るサービスぶりを見せてくれる。

危機からの脱出ぶりは「魔宮の伝説」の方に軍配が上がると思うが、合成技術が進んだ分、リアリティは新作の方が優れていて、シリーズをずっと見ているファンからすると、ニヤリとしたり感心するシーンも多い。

前作までナチス・ドイツが敵役だったのが、50年代に入ってソ連が敵役になったのがご愛敬だが、こうなったらもう少し歳が行ったジョーンズ博士も見てみたい。

それにしても、どうして日本版タイトルは「インディアナ・ジョーンズ」ではなく「インディ・ジョーンズ」なのだろう。変に短くする必要があるのだろうか?

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水野晴郎さんご逝去!  映画つれづれ

映画評論家・水野晴郎さんが逝去されました!

水野さんと言えば、トンデモ映画の金字塔「シベ超」シリーズの愛すべき監督・主演・製作の御大ではありますが、僕たち40代の映画ファンにとっては、日テレ系の水曜ロードショー(「金曜ロードショー」に非ず)の映画解説者としての馴染みが深い方です。

TBS系「月曜ロードショー」の荻昌弘さん、テレビ朝日系「日曜洋画劇場」の淀川長治さんとともに、この御三人はお茶の間が広く認識した、最初の「映画評論家」の方々ではなかったかと思います。

御三人に共通しているのは、映画の解説が分かりやすく、決して悪口は言わず、お茶の間に映画の良さ、素晴らしさを伝えようと努力していたことでしょう。

特に俳優さんの造詣の深さでは追従を許さなかった荻さんの語り口や、どんな映画でも見るべき所を見つけ、ピンポイントで実に的を得た解説をしていた淀川さん…本当に毎週どんな解説をされるのか、楽しみでした。

そして水野さんは、映画を観終わったあとの「感動」を素直に伝えることでは、群を抜いていました。「皆さん、いかがでした…。あの●●のときのあの場面、本当に感動でした…」この語りかけるような解説は、映画以上に楽しみでもありました。

それに続く「いやあ、映画って、本当に…」の決めセリフも、その映画によって「面白いものですね」「いいものですね」などとパターンを変えていて、その微妙な変化も楽しみでした。

そして、最後に必ず「またご一緒に楽しみましょう」と締めくくる。この「ご一緒に」という、上から目線ではなく、お茶の間の視聴者と一緒の目線で映画を楽しもうという姿勢、これこそ今の映画批評家諸氏が忘れている部分かもしれません。

http://jp.youtube.com/watch?v=XcE8nWywF90

最近のレビューなどを見ると、本当に批評ではなく、感情的な感想が多すぎるように思います。これだけブログなどで一般ユーザーのレビューがちまたにたくさんある中、本当にプロの目から見た紹介記事やレビューが読みたい、と思います。

さてさて、「水曜ロードショー」では時間が余ったときに紹介される「水野晴郎の映画がいっぱい」のコーナーも面白く、ハリウッドを訪問したときのエピソードや、時折取り上げられる、警察マニアである水のさんらしい、警察関係のコレクション自慢や体験談も楽しみでした。「刑事コロンボ」のときの解説などは実にマニアックで、ふーん、と思うこともしばしばでした。

もともと日本映画好きだった僕が、洋画も見るようになったのは「水曜ロードショー」の影響が強く、そういう意味では水野さんは、僕の恩人、とも言えるのです。

最近では、シベ超シリーズの他、「日本には批評家による映画賞がない」と、日本映画批評家大賞を提唱されて設立されるなど、本当に日本映画界には多大な貢献をされた方だった、と思います。

佐々部監督も公式HP「ほろ酔い日記」で書かれていますが、佐々部作品を高く評価されていて、日本映画批評家大賞では「カーテンコール」「夕凪の街 桜の国」を作品賞に選んで頂き、我々佐々部監督ファンにとっても、ありがたい方でした。

東スポが「揺れのないシベ超に乗って」彼方に逝かれた、と書いていたのが最高でしたが、「シベ超」のスゴサは、いつかこのプログでも徹底的に検証、レビューしてみたいと思います。

僕の誇りのひとつは、深作欣二監督が山口に来られた際、深作監督と「シベ超」談義をして盛り上がったことなのですが、お二人とも鬼籍に入られたことを思うと、本当に悲しい気持ちが込み上げます。

聞けば水野さんは若いころはやり手の宣伝マンで、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ! 」「史上最大の作戦」「真夜中のカーボーイ 」「夕陽のガンマン」「007/危機一発」 などの素晴らしい邦題は、水野さんが付けたのだとか。昨今のどうしようもない邦題や原題まんまのタイトルを思うとき、これらのタイトルは本当にスゴイ、と思います。

心からご冥福をお祈り致します。
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僕の彼女はサイボーグ  新作レビュー

見た日/5月某日 ★★★

とてつもなく、衝撃的な、快作・珍品である。僕は大いに楽しめた。

見た目はオシャレだし、最初から最後まで飽きさせないので、デートムービーとしてはかなり楽しめるかもしれない。2人で見たあと、ああだこうだ、と言い合うには最適な作品と思う。

日本人監督だと、どうしてもこの手のSF物は理屈をつけてテンポがなかったりするのだが、そこは「僕の彼女を紹介します」のクァク・ジェヨン監督。

物語に矛盾があろうとなかろうと、グイグイ力技で押していく手法は健在。過剰な演出に音楽、ベタベタなストーリー、そしてラストに迎え撃つ衝撃的な展開は、観客の想像の上を行く。

「なんじゃこりゃああああ!」と引く人も多いとは思うが、この物語自体、いろいろなSF物やアクション、ラブストーリー物へのオマージュに満ちていて、もうゴチャマゼのごった煮なので、ここはあまりクドクド言わず、素直にクァク監督の確信犯的なバラエティ世界を楽しむべき、だ。

僕は藤子・F・不二雄先生の短編物を思い出したが、まあ、いろいろな要素が詰まっていて飽きない。個人的には、こういうファンタジーは大好きなのだが。これを韓国ではなく、日本映画でやったところがスゴイ、と思う。

特撮スタッフも頑張っていて、地震のシーンなどのクオリティは高い。何より綾瀬はるかのアイドル映画として見るとこの映画は100%で、実に彼女が可愛く、魅力的に撮られている。
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