追悼・東條正年先生  映画つれづれ

僕にとって、恩人と言える方々のお一人である、脚本家の東條正年さんが亡くなった。

80歳ということだが、まだお若く、つい先日お会いして「ゆっくり映画の話がしたいですね」と言って別れたばかり。信じられない…。

東條先生とは、僕が記者のころに知り合った。東京での脚本家暮らしにピリオドを打って、故郷の下松に帰ってこられたばかりだった。

「これから地域のために自分の経験を役立てたい」と言われ、地域の民話を題材に紙芝居を作られたり、地元の中学校の文化祭の演劇で脚本・演出を担当されたり、周南青年会議所が「徳山藩」の史実を題材に演劇を上演したときも、脚本・演出を担当された。

東條先生の劇場用作品で代表的なものは「兵隊やくざ・火線」「兵隊やくざ・殴り込み」だが、クレジットされているもの以外にも勝新太郎氏の座付き脚本家として、数多くのカツシン作品を手掛けている。

現場でいろいろとストーリーを変えていく勝さんのお話のつじつまを合わせていく役どころが、東條先生だったのだという。とくにテレビの「新・座頭市」シリーズは、東條先生がいなくては現場が機能しなかったらしい。

「伝七取物帳」など、テレビ時代劇の作品も多く、先日、2ちゃんねるの「時代劇脚本家を語ろう」スレで、「東條正年脚本にハズレなし」との書き込みを見つけて「早速、東條先生にお知らせしよう」と思っていたので、本当に残念だ。

あまりに身近で、今までブログで触れてこなかったことに後悔もしているが、東條先生が中学校の演劇を担当されたときは音楽を手伝ったし、周南青年会議所の演劇のときは会議所のメンバーとして、瓦版売りの役で出演もさせてもらった。

そして何より忘れられないのは、下松市音楽連盟が50周年記念で上演したオペラ「星ふるまち下松伝説」を上演したとき、東條先生が脚本・演出を、僕が舞台監督をさせてもらい、がっぷり四つでお仕事をさせて頂いたことだろう。

このオペラは、当初、オーケストラの作曲と指揮を担当された先生と、お話づくりと演劇部分の演出をされた東條先生との想いに違いがあり、その違いを埋めながら、ひとつひとつの場面を作り上げていくことが僕の仕事だった。

正直、大変だったが、「いいものを作ろう」という音楽の先生、東條先生のご協力があって、超満員の観客の前で素晴らしい舞台ができたときの感動は今も忘れられない。「上手に回ったコマのようだったね。色が違う模様が、まわるうちにひとつの違う、いい色になった」と言われた東條先生の言葉が、忘れられない。

このとき、僕はフリーになる直前だった。ずっとやってきた書く仕事はともかく、イベントやテレビ番組の演出には不安もあった。「いろんなプロの演出家とも仕事をしたが、それと比べても遜色ない。大丈夫、あんたなならできる」と言われたことが、どれだけ僕の「支え」になったことか。

思えば、東條先生から聞いた、昔の映画界の話は、本当に面白かった。カツシンさんの話はとくに強烈で、飲んでいても食べていても、カツシンさんは急に映画の構想の話を始めてしまい、自分で演じて見せたり、時には絵コンテを書こうとして紙や鉛筆がないため、色紙を持ってこさせてチョコレートで絵を書き、夏だったため、溶けてしまわないよう、それを冷蔵庫に保存しながら説明した、という。

それで、亡くなられる直前、東條先生が見舞いに行くと、ベッドの上でカツシンさんはお前が脚本を書いてくれ、と言うと、構想中の「最後の座頭市」の市の“ラストシーン”を演じて見せてくれたのだという。

興奮した僕は「先生、どんなラストなんですか、教えてください!!」と聞くと、東條先生は「だめだよ。勝さんはもう亡くなられたんだから、脚本家として、君でも教えられない。僕は墓まで持っていくよ」と言われた。

「いつか、聞き出してやろう」と思っていたのに、東條先生は本当にお墓まで持って行かれた。ご冥福を、心よりお祈り致します。本当にお世話になりました。ありがとうございました。

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三農、まずは一冠!!  映画つれづれ

「三農、馬術部」まずは一冠!!!

「三本木農業高校、馬術部」で主演された、長渕文音さんが、報知映画賞で新人俳優賞を受賞されました!!↓

http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20081127-OHT1T00010.htm

これからの映画賞レース、現状を見ると、恐らくほとんどが「●くり●と」で決まりでしょうから、何だか出来レースのような気もしますが、「三農、馬術部」がどこまで食い込められるか。

「いいものは、いいんだ」と我々の叫びも大切だと思います。キネマ旬報読者のベストテンの投票も、間もなくです。「三農、馬術部」に心動かされた方、是非、みんなで応援していきましょう!!!

未見の方、東北や宮崎など、一部ではまだ上映しているところあるようです。↓

http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20081127-OHT1T00010.htm

是非、ご覧ください!!! そしてまだまだ応援してください!!!
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松田優作出演作マイベストテン  マイベスト

佐々部監督周南応援団の幹事で、我らが映画仲間、MOTOちゃんのブログが、大変なことになっている。

http://m19791217.soreccha.jp/

佐々部監督への敬愛がいっぱい詰まった記事と、故・松田優作氏を撮り続けた写真家、渡邊俊夫さんの深い想いに感動したことを綴った記事に、それぞれ御本人からのコメントが届いていて、味わい深い彼女のブログが、さらに深いイイものになっている。

これも、MOTOちゃんの純粋な映画への愛と、彼女の温かな素晴らしい人格ゆえだと思う。そんな彼女から「松田優作さん主演映画のオススメは何ですか!」と聞かれた。

そこで僕は、下関出身の不二の俳優さんであり、リアルタイムで心底影響を受けた、松田優作氏のことを久々に想い、胸が熱くなった。

思えば、松田優作氏の映画体験は、我が一生の友であり、幼いころから一緒に映画を鑑賞し、映画論議をしながら青春時代を過ごした、このブログにも時折コメントを頂く、T君こと「伊達邦彦」さんを抜きに語れない。

彼と、何度「松田優作」について語り合い、胸を焦がしたか知れない。「優作」アニキにあこがれ、語り合う2人の少年の胸に、映画への「夢」や「希望」が大きくふくらんだ。だからこそ、現在の僕がある。

とくに彼と2人で見た「野獣死すべし」体験は忘れられない。高校生の時、雨が降る中、2人で自転車を飛ばし、古い映画館に駆け込んだ。館内に入ると、もう映画は始まっていて、松田優作演じる「伊達邦彦」が雨の中、刑事を襲い、拳銃を奪うシーンに目と心を奪われた。

役作りのため、歯を抜き、数キロ体重を落としたという、松田優作の凄さ。その「目」は俳優ではなく、もはや本物の「野獣」だ。ベトナムの従軍記者だった伊達邦彦が、自分の中の空虚な「何か」を追い求め、現代のコンクリートジャングルを戦場に見たて、狂気を持って、自らを凶器と化して駆け巡る。

映画を観終わって、2人とも無言で「凄かったね」と言うのがやっと。雨の中、自転車でトボトボ帰る2人の目に、山口の田舎町が戦場に見えたのは束の間、次の日からは退屈な日常が待っていて、数日経ったときは2人でため息をついたものだ。

さてさて、そんな思い出も懐かしいが、数年前、下関で「松田優作展」があったときは、わざわざ駆け付けた。貴重な展示物を前に号泣する僕を、当時3歳の長男は不思議そうに見ていたものだが、このカッコよさを、いつか僕の子どもたちも映像ソフトで追体験するときがきっと来るだろう。

だからこそ、ちょっと前、仕事で「長州ファイブ」のとき、舞台挨拶の企画を担当させていただいたとき、御子息の松田龍平氏と御一緒させて頂いたときは感激した。まるで、優作氏のそばにいるような感じがして、涙が出そうになった。

ということで、久々のマイベスト。松田優作映画極私的ベストテンである。

@「野獣死すべし」
※文句なしのベストワン。アクションスターから演技派に脱皮した記念すべき作品でもある。村川透監督の演出、ショパンの音楽、丸山昇一の脚本も超一級。

A「家族ゲーム」
※鬼才・森田芳光監督の最高傑作。何とも言えないナゾを秘めた松田優作の家庭教師は、アクション映画をこなしてきたからこそ。この「味」は、誰も出せない。生徒役の宮川一朗太氏の姿を、先日佐々部監督の舞台「黒部の太陽」で生で拝見し、感激した。

B「最も危険な遊戯」
※「遊戯」シリーズ第1作。低予算ながら、「野獣死すべし」以前の優作氏の持ち味、つまりユーモアとアクションが融合した優作氏の魅力が味わえる作品としては、これがベストでは。罠と知りつつ、組織の陰謀に挑む一匹狼の殺し屋を演じる優作氏のカッコいいこと!!暗がりの中、長回しでアクションに挑む伝説のシーンは見もの。この伝説の照明を担当した渡辺三雄氏に「出口のない海」のとき、佐々部監督から紹介されたときは、心が震えました。

C「ア・ホーマンス」
※唯一の、優作氏の監督作。「和製ブレードランナー」などとも称されるアクションSFだが、全体に流れる乾いた感じと言うか、仏教の無常観に通じる世界観は、優作氏の感性そのものであり、優作氏の深い感受性が感じられる。個人的に大好きな作品。石橋凌の映画デビュー作。ポール牧の悪役ぶりも強烈で忘れられない。

D「それから」
※夏目漱石の文学の世界を、森田芳光が映画化した、不思議な味わいの作品。優作氏の演技は透明感があって、その世界を深く、味わいのあるものに進化させている。演出も斬新で、ヒロインの藤谷美和子が奇跡的に美しい。

E「ブラックレイン」
※記念すべきハリウッド進出作にして遺作となった作品。「演技者」として開眼した優作氏が、日本映画では捨て去ったはずのハード・アクションを久々に見せてくれた、ファンにとっても記念碑的な作品だっただけに、この作品をもってスクリーンを去ったことは、本当に残念だった。初日に見に行って、訃報を知ってもう一度見に行ったことが忘れられない。リドリー・スコットの作品としても、好きな作品。

F「暴力教室」
※初期作品の中では、これが一番好き。ハリウッド映画の同名作品とは違います。念のため。東映低予算アクションの中の一作で、不良生徒と対決する不良教師の話だが、教師役の優作氏がとってもギラギラしていて、このころの優作氏の魅力がよく出ている。あと、不良生徒役で本物の不良臭プンプンの舘ひろしも今の「石原軍団的良好おじさま」からは考えられないぐらいギラギラしていて、ギラギラ対ギラギラの対決は今見ても胸が躍る。

G「探偵物語」
※テレビの「探偵物語」とは別物で、大学受験のため休業していた薬師丸ひろ子の復帰作として、「サイドカーに犬」「キャバレー日記」「遠雷」の根岸吉太郎監督が作り上げたアイドル映画。優作氏は情けない探偵役を普通に演じているが、こんな自然な役もできるんだ、という意味では貴重で印象深い作品。ラストのキスシーンに、優作氏と薬師丸嬢の演技合戦の一瞬のきらめきが感じられる。

H「蘇る金狼」
※優作氏と遊戯シリーズを作り上げてきた村川透監督が、予算をたっぷりかけた、これまでのアクション映画の集大成とも言うべき作品。このあとの「野獣死すべし」から、優作氏の雰囲気は一変する。という意味では、優作氏にとっても、アクション映画としての「区切り」をつけた作品だろう。ヒロインの風吹ジュンがはかなげで美しく、伝説のベッドシーンは興奮必至。アクション映画としても一級品で、無人島でのしなやかな優作氏のアクションは「美」さえ感じる。

I「華の乱」
※主演作ではないが、優作氏が印象的な作品。優作氏は吉永小百合演じる与謝野晶子と禁断の恋に落ちる文豪・有島武郎を演じている。これもまた、普通と言えば普通の役だが、その中にも優作氏独特の存在感と透明感、そして秘めたギラギラ感を感じる。深作欣二監督とはいくつか企画があり、流れたというが、唯一、深作監督と優作氏が組んだ作品であり、そういう意味でき貴重である。

…ほかにも「ヨコハマBJブルース」「陽炎座」「嵐が丘」などがこぼれてしまった。テレビ作品についても「大都会パート2」「探偵物語」「夢千代日記」など語りたい作品はたくさんあるが、ひとまず今回は、これで筆を置こう。
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レッドクリフ part1  新作レビュー

見た日11月某日 ★★★

「三国志」の映画化作品としては、最も分かりやすく、よくできた映画だろう。有名なエピソードを、独自の視点も入れながら紹介している。

僕は昔、高校生たちに頼まれて、「三国志」の演劇の脚本を書いたことがあるが、それは「桃園の誓い」から「三顧の礼」「赤壁の戦い」を経て、孔明のラストを描いた「五丈原」までを15分で描く、というムチャクチャなもので、何とかまとめた覚えがある。

次元は違うが、今回の「レッドクリフ」はそれに近いものはある。深い感情描写は置いておいて、とりあえず人物紹介をしたら、あとは表面的に進む、紙芝居的なところは、やはりいがめない。

しかし、そこは活劇を作らせれば世界一のジョン・ウー監督。冒頭の趙雲子竜が劉備の赤子を助けながら敵陣を突破するシーンから、アクションは超弩級の迫力で、クライマックスの戦いのシーンも見事。何より関羽らの豪傑たちがイメージ通りなのが嬉しい。金城武の孔明もスマートで聡明さがよく出ている。

ただ、これは「part1」と歌っているように、肝心の「赤壁の戦い」の前段を描いたのに過ぎないので、お楽しみのクライマックスは来年4月公開の「part2」まで待ってね、という、ヘビの生殺し状態だ。

そもそも、配給会社は「part1」なんて、付けてなかった。夏ごろの情報には、確かに前後篇ある、というものはなかったように思う。当初、2部作であることを隠して公開しようとしたのだろうか。恐らく試写会などでの意見で、「part1」と付けたのだろう。

それだけに、「え?続きがあるんだ」とは思ったけれど、実際に見ると「赤壁の戦い」の戦いの主要は、ほとんど次にあるようで、壮大な予告編を見せられた、という向きもないでもない。でも、戦闘シーンの美しさ、迫力は必見だし、大ヒットしているのも頷ける。

あと、多くの方が指摘しているように、「七人の侍」のオマージュは、確かに感じた。戦いを前にして、将軍たちが揃い、その陣を整えていく様は、正に「七人の侍」の前半の様。それなら「七人の侍」のように、休憩時間を挟んでもいいから、二部作一気に見せてほしかったなあ、という感じもある。

ジョン・ウー監督はサム・ペキンパー監督や深作欣二監督に影響を受けたことを公言しているが、その影響を昇華させた、スローモーションの多用とハトの登場は今回も健在で、ハトに至っては、過去のどのジョン・ウー作品より重要な役割を担っていて驚いた。

「三国志」は大好きだし、本来なら★4つをあげたいが、来年まで待ち切れないので、★は3つにしておこう。


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