252 〜生存者あり〜  新作レビュー

見た日/1月某日 ★★

うーむ…。正直、困ってしまった…。でも、退屈はしなかった。ディザスター・ムービーとしては、昨今の日本映画の中ではよく出来ている。

前半の特撮シーンは、合格!!これは必見。実写とCGの合成も違和感がなく、後半に大活躍するオープンセットも迫力ある仕上がり。

とくに、巨大なヒョウが降って来るシーンや、新橋駅が陥没するシーンなどは、ハリウッドの一連のディザスター・ムービーと比べても全く遜色ない。

おだやかな天気だったのに、モーレツな台風と津波が突如襲う理由も、まあ大ウソなんだろうが、結構、説得力があった。前半の気象庁でのやり取りなどはかなり面白く興味深かった。

この辺りの理屈をもっと生かし、そのあとのストーリーを練り上げればよかったのだが、そこからがいけない。あり得ない偶然の積み重ねによって家族同士が助け合う、非常にスケールの小さな救出劇に終始してしまい、ガックリもいいとこなのだ。

新橋駅に埋まってしまった主人公が元レスキュー隊員で、助けるのはレスキュー隊長のその兄。おまけに気象庁もレスキューの前線本部もなぜか新橋駅のまん前のホテル。他にも相当な被害が出ているはずだし、そんな描写もあるのに、物語の中ごろから、何故かそこしか焦点にならない。

主人公とともに生き残った中小企業の社長、医者になることに懐疑的になっている研修医、韓国人ホステスなどのキャラクターも、それぞれ背景になっている人生が描かれてはいくものの、ここのエピソードもあまりに特殊でできすぎ。俳優さんたちは皆頑張ってはいるのだが、もう少し、普通の人が巻き込まれていくような展開にすれば、もっと感情移入できるだろうに、と思ってしまう。

台風の目に入ってしまう、わずかの時間にしか救助できない、というサスペンスが後半の盛り上がりになるのだが、ここも、そのあとの展開が、大爆笑のあり得ないものになってしまうので、折角のクライマックス?になってしまう。

あと、レスキュー隊員たちは情に流されまくりで、こんな隊員たちに助けてほしくないな、と思っちゃう。

まあ、ぜいたくにいろいろな要素をぶち込んだ結果なのだろうが、演出も物語もなかなか盛り上がらない。どうも全編を貫く「真面目さ」がくそ真面目になってしまっていて、失敗しているような気もする。

主人公が同じ俳優で、救助物ということで、どうしても「海猿」シリーズと比べてしまうが、あり得ない展開や設定ながらも、ハリウッド的なデフォルメと緊迫感あふれるカット割で「見せてくれた」あちらの方に軍配が上がる。でも、特撮シーンは、何度も言うが、よくできている。

フジテレビが水没するシーンはご愛敬だろう。

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ワールド・オブ・ライズ  新作レビュー

見た日/1月某日 ★★★★

リドリー・スコット監督は、作風が少し変わったように思う。どんな物語も、ビジュアルで「見せること」にこだわっていたのが、前作「アメリカン・ギャングスター」もそうだったが、最近はドキュメンタリー的な見せ方にこだわっているような気がする。

それでも、アクションシーンなどの見せ方は流石で、息をつかせぬような、ピリピリした感じが漂うその場面では、計算され尽くしたカット割で見せてくれる。プロだなあ、と思う。

物語は中東でテロリストを追うCIAのスパイを描いたものだが、9・11を受けたイラク戦争以降、ある面、何でもありになっている中東の現実をしっかりと描きながら、娯楽作としてもいい仕上がりになっている。

最近のアメリカ映画は自国を自虐するというか、イラク戦争の反省を素直にするような映画が増えている。この映画も、CIAの作戦を最終的に肯定しているような感はあるが、アメリカが介入し、中東が混乱している現実を冷静に描いている。

アメリカ本国で子どもの送り迎えや妻との平穏な日々を送り、事務所では安穏と過ごしている上司のラッセル・クロウが非常とも言える指示を現場のレオナルド・ディカプリオ扮する工作員にする。

お互いに上司と部下でありながら信用はしておらず、ディカプリオはクロウに懐疑的ながら、現場で命がけの任務についている。クロウの肥満ぶりと、あまりに現場とかけ離れた次元であれやこれやと一国の根幹に関わるような指示を平気でする様が、非現実的でいて、実にリアルで恐ろしい。

物語は中盤からディカプリオがテロリストの親玉をおびき出すため、信じられないようなハッタリ大作戦を展開するのだが、ここからの物語は最近見たスパイ映画の中でもかなり上質で面白く、そしてスリリング。それでもヒリリと痛いのは、あくまでこの映画が中東の現実に根ざしているからだろう。

見るのにも力が必要だが、リアルと虚構の間をスレスレに描きながら、娯楽作の中にも時代性、社会性、そしてメッセージを取り入れた力作になっている。

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2008年・トホホベストテン発表!  マイベスト

マイベストテンに続いて、おたっきーの2008年トホホベストテンです。

トホホとは、単につまらない作品ということではなく、その中にも愛らしく、決して秀作ではないけれど、どこか心の奥に挟まっている、そんな作品のことです。

★2008年マイ・トホホベストテン
@ 僕の彼女はサイボーグ
※後半の展開に口アングリ。ジェットコースターの如く、時系列を無視して話が凄まじく揺れ動く。でも、その強引さが大好きだったりする。

A 特命係長只野仁〜最後の劇場版〜
※昔の「不良番長」シリーズの後期を思わせる、お色気メチャクチャアクションコメディなのだが、主人公に命令するボスが本物の不良番長なのが笑える。

B ハンコック
※スーパーヒーロー物なのだが、これも後半の展開に口パックリ。前半と後半は雰囲気も展開も、全く別の映画。1粒で2度美味しい、グリコのような映画。

C L〜change the world
※先日、テレビでもやってましたな。「デスノート」本編ではあり得ないLの行動も、突如ホラーになるビジュアル展開も、存在価値も何もないのに、ただ思わせぶりだけで出てくる、なぜこのキャラクターを出したのか全く意味不明のナンちゃん(南原清隆)扮するFBI捜査員の存在と、とてつもなく難しいワクチンの開発を、いつもの高いテンションでいともカンタンにやってのける平泉成氏の博士の前には、全てぶっ飛ぶのであった。

D ドラえもん〜のび太と緑の巨人伝
※後半、環境保護メッセージ色が強くなった瞬間、ドラえもんものび太も、ジャイアンもスネ夫もしずかちゃんも、映画の世界から掻き消えてしまう凄さ。でかい木しか印象になく、ヒロインがただのわがままなお姫様、というのもスゴイ。

E まぼろしの邪馬台国
※映画自体が、まぼろしのようで…。竹中直人氏の強烈なキャラクターと怪演、そしてサユリさま扮する「卑弥呼」に、全ての民はひれ伏すでしょう。三角マークの名の元に…。

F インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカラの王国
※インディ・ジョーンズが、原爆実験に巻き込まれて全然無事、というのは、唯一の被爆国の国民として「これ、娯楽として楽しんでいいのかな」と思ってしまったのは事実。スピルバーグさん、大丈夫?

G スピード・レーサー
※真のオタク魂、海外(USA)に見たり。タツノコプロダクションによるオリジナルアニメまんまの世界を、CGで忠実に再現。こりゃあ、オタク以外は受けないよ。僕は大好きだけど。

H ゲゲゲの鬼太郎〜千年呪い歌
※寺島しのぶが妖怪で夜中、道に出てくる、というだけでインパクト大。

I 地球が静止する日
※映画が静止するかと思いました。

■おたっきー・トホホ・ムービーアワーズ各賞の発表!

★最優秀作品賞 僕の彼女はサイボーグ
※これしかないでしょう。SF映画の常識を覆し、かつ綾瀬はるかが死ぬほどキレイ。

★最優秀主演男優賞 松山ケンイチ「L〜change the world」
※何でもやっちゃう松山氏だが、自転車に乗る「L」に僕はやられました…。

★最優秀助演男優賞 南原清隆「L〜change the world」
※ナンちゃん浮きまくり。キャラクターも浮きまくり。ていうか、物語に不要なキャラクターなんだけど、妙なインパクトあり。

★最優秀主演女優賞 西川史子「特命係長只野仁〜最後の劇場版」
※棒読みセリフにあの脱ぎっぷり。西川先生、全てを達感して演じている様は美しすぎる。

★最優秀助演女優賞 寺島しのぶ「ゲゲゲの鬼太郎〜千年呪い歌」
※豪華コスプレ大会の中、怨念がビシバシ感じられるしのぶ嬢の人魚姫はスクリーンからオーラを感じた。

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2008年の総括2  映画つれづれ

前回、つまらないことをグダグタと書いてしまった。思っていることを書き並べただけで、伝わらない文章だなア、と反省しきり。

でも、前回の記事に頂いたK-SASABEさまのコメントを読ませて頂き、あらためて感じた。要は、作り手に「志」があるかどうか、なんだなと。マーケティングがしっかりしていても、テレビ局が出資しようとしていまいと、「志」のある作品がどれだけあるか。これが大事だと思う。

K-SASABEさまの作品には、いつもその「志」を感じるし、昨年の2作品もまた、それをビシビシ感じた。そして、スクリーンを見つめながら、僕なりに、いろいろなことを思い、観たあともいろいろと考えた。

「三本木農業高校、馬術部」…人が未来を切り開くためには、青春時代に何をするべきなのか。地道であっても、懸命に青春を生きることがいかに大切か。地球上に生きるという意味では、人は他の動物とまったく同等の存在であり、全ての生き物もまた、自然の一部ではないか…。

「結婚しようよ」…家族もまたひとつの社会であり、そこでお互いを思いながら過ごす日常がいかに大切か。広い社会を生き抜くためには、家族の温かさこそがそのエネルギーになるのではないか。過ぎ去った日々は懐かしいけれども、誰にも誇るべきものが過去にあったはずで、そこを省みた時、また人は前に進めるのではないか…。

やっぱり、観ている時にいろいろ湧いてくる感情が、観たあとも心の中を駆け巡っている、そんな映画が、いい映画なんだよなあ、と思うのだ。

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2008年の総括  映画つれづれ

2008年は、興行収入的に、邦高洋低というここ数年の傾向がより進んだようだ。

テレビ局主導による製作委員会形式の映画が増え、そうした作品が数十億円もの興行収入をマークする、という傾向はここ数年、変わってない。

それ以上に、昨年はテレビドラマと映画が連動したり、公開時期になると出演俳優のテレビ露出が増え、全国縦断の舞台あいさつをするなどイベント化が進んだ。テレビ局はそのイベントをワイドショーなど自社番組で話題にし、多角的に宣伝していく。昨年は「テレビ局と映画の関係」がますます進んだといえる。この傾向は、恐らく2009年はますます強くなるだろう。

テレビ局製作の映画が増えたこと自体は、別に悪いことばかりではない。80年代にフジテレビが「南極物語」で大成功して以来、しばらくの間を経て、シネコン時代を迎えてからテレビ局主導の映画が増えた。シネコンの登場で映画は身近な娯楽として再び定着し、映画産業が盛り返し、日本映画がその主流となる中で、テレビ局は新たなビジネスとして映画に着目したのだ。

テレビ局が映画を製作することで、テレビ放映時の放映権が獲得できるだけでなく、多額の興行収入を得れば、それがダイレクトに収入となる。DVDになるときも、テレビ局の系列ソフト会社から販売できれば、そのメリットもある。

最近は系列局や系列新聞社などが製作委員会に入る(つまりは出資する)ケースが多いが、地方のテレビ局などは系列キー局制作映画のスポットCMを流すことで、配給会社等からの広告収入が得られる、というメリットもある。

テレビ局は時代のトレンドを読むのが上手い。今のところ、日本の大手配給会社の現状を見ると、少し松竹、東映が置いてけぼりの感があるものの、マーケティングや宣伝戦略が上手い東宝はフジテレビ、日本テレビ、TBSと組んでヒット作を連発している。

この傾向が強くなることで日本映画は企画が多角化し、より大衆に受ける日本映画が登場した。このこと自体は、映画が娯楽である以上、いいことではある。

ただし、問題点もいろいろある。まずは質の問題。テレビ局製作の映画には、その局の社員ディレクターが監督を務め、そのスタッフがそのまま映画製作のスタッフとなるケースも多い。

この場合、いわゆる物語的には分かりやすいものの、映画の大スクリーンで鑑賞することを考えた、観客が想像したり、行間を読むような良質な作品は少ない。カット割が細かく、セリフも説明的な、いわゆる「テレビドラマ」的な作品が多いのも事実である。

それから、現在の不況がどんな形で映画界に関わってくるかは不明だが、シネコンに客が入らなくなると、ビジネス優先のテレビ局は映画製作から撤退してしまうことも考えられる。そうなると、日本映画界自体の衰退につながってしまう。

まあそんな不安もあるが、昨年の傾向を見ると、そんなテレビ局と映画の関わりの中に、ひとつの希望も見えてきたような気がする。昨年のキネマ旬報ベストテンの一位になった「おくりびと」はTBSの出資で松竹配給だが、作り手は単館系も覚悟していた中、製作の過程で良質な脚本に着目したTBSが出資を決め、松竹が配給を決めたのだという。あと、単館系ではあるが評判になった「アフタースクール」もTBSが出資している。

当たり前のことだが、映画を宣伝・営業する場合、内容が良質かどうかが、最も大切である。最近の傾向を見ると、テレビ局も従来に比べて内容重視、ソフト重視になって、安易な企画は多少減ってきた感もある。そこは望ましい。

今年公開の木村大作監督作品「劒岳−点の記」などは、東映配給ながら、フジテレビの出資が決まった。その理由は、もちろんこの映画の話題性に着目したという部分はあろうが、様々な資料を見るに、CGなどは一切使わず、とてつもない困難な撮影にあえて取り組む木村組の心意気に、フジテレビのプロデューサーが心打たれた、というところが多分にあるようだ。こういう話は実に好ましい。

テレビ局主導の映画が多い一方で、テレビ局が出資しなくても良質な大手配給作品や、単館系の秀作も昨年は多かった。「闇の子供たち」「ぐるりのこと。」「歩いても歩いても」など、キー局が出資してなくても、単館系ながら上映が全国に広がってヒットした作品も多かったことはいい傾向だ。観客側も、良質な映画を受け入れる素地がこの数年、浸透してきた感もある。

そして「チルソクの夏」の山口放送以来、地方のテレビ局が出資し、地方文化発信に寄与するケースも増えている。僕の昨年のナンバーワン作品「三本木農業高校、馬術部」は東北放送が出資している。この作品はキー局は製作委員会に入ってないが、CS放送の「ファミリー劇場」を運営している東北新社が製作に関わっていて、「ファミリー劇場」がCMや特集を展開していて、確かにキー局に比べると弱いものの、これはまたチャンネルの多角化という新たな時代のテレビ宣伝だな、とも感じた。

そんな中、昨年は、独立製作会社の頑張りも目立った。東宝や松竹など製作も配給もする会社はありはするが、製作会社が製作を請け負うことが多い。昨年の佐々部監督の作品「結婚しようよ」「三本木農業高校、馬術部」は、いずれも共同ではあるが、監督と名コンビの臼井プロデューサーが社長を務める「シネムーブ」が製作している。

前者は松竹、後者は東映という大手配給だった。「シネムーブ」は「カーテンコール」「夕凪の街 桜の国」など、佐々部監督による良質な秀作を作り続けている。今年は今のところ完成作はないようだが、是非、今年もいい作品の製作にとりかかってほしい。

いいプロデューサーがいい企画を立て、その企画に資金が集まり、配給会社が配給を決める。これが当たり前なのだ。その「当たり前」が、できてなかったりする映画も実際に多いから問題で、そこにテレビ局の利益が第一であってほしくない。

昨年も様々な映画製作会社の作品が目立ったが、「三丁目の夕日」シリーズや「K−20」などを製作している会社「ロボット」などは、テレビ局や配給会社と上手に組みながら、エンタテインメント性の強い、上質な娯楽作品を作り、きちんとヒットさせている点は高く評価できると思う。

いろいろとゴチャゴチャと書いたが、映画賞総なめの「おくりびと」の監督はベテランの滝田洋二郎監督だし、テレビドラマの映画化ながら、昨年東映最大のヒットとなった「相棒」も数々の映画作品を送り出してきたベテラン・和泉聖治監督久々のスクリーン復帰作である。時代に流されず、自らのイデオロギーに忠実に作品を作り続けてきた若松孝二監督の作品「実録・連合赤軍あさま山荘への道程」も昨年は世に出た。

日本映画を支えてきたカツドウヤたちの活躍も目覚ましい今、いろいろと問題ははらんでいるものの、今年の日本映画も充実したものとなるよう祈りたい。そして、どうしようもないハリウッドの低迷も気になるが、今年のラインナップには面白そうな作品が並んでいるので、ここにも期待したい。最後に、僕の昨年のベストテンを記したい。

★2008年のマイベストテン

[日本映画]
@三本木農業高校、馬術部
A結婚しようよ
B歩いても 歩いても
Cアフタースクール
Dホームレス中学生
Eおくりびと
Fクライマーズ・ハイ
G大決戦!超ウルトラ8兄弟
Hぐるりのこと。
Iハッピーフライト
※「闇の子供たち」「接吻」の未見が悔やまれます。


[外国映画]
@ダークナイト
Aラスト、コーション
Bバンテージ・ポイント
※外国映画は本数をあまり見ておらず、3本に限定しました。

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地球が静止する日  新作レビュー

★★ 見た日/1月某日

これ、「ウエスト・サイド物語」の巨匠・ロバート・ワイズ監督の名作「地球の静止する日」のリメイクなのだが、まったくグダグダのSF映画で、正直ガックリだった。

前半はそれなりに面白い。正体不明の球体が地球に接近する。着陸地点はニューヨークで、時間はもはやない。全米からあらゆる分野の専門家が緊急に招集されるものの、球体は地球に衝突してしまうのか…というオープニングの展開にはワクワクさせられた。

そして、球体がセントラルパークに着陸し、そこから出てきた生物を人類が射撃してしまい、収容すると中身は普通の人間と同じ組織を持った宇宙人で、じつはその宇宙人は、宇宙社会を代表し、地球環境を破壊しようとしている人類を滅ぼすかどうか、判断するために地球にやってきたのだった。米軍はその宇宙人を尋問しようとするが、美貌の博士がその逃亡を助けて…という展開も、面白い。

でも、そこからグダグダになるんだな、これが。宇宙人が地球人とふれあい、そこから結論を判断する、というのは確かオリジナルと同じ展開だったとは思うが、その判断をする理由が、あまりに甘すぎる。

それに、攻撃的な地球人の態度に怒った宇宙人側の攻撃方法が、ちょっとショボい。おいおいゴ●●●かよ、みたいな。もっとスケール感のある攻撃しろよ、とツッコミもしたくなる。オリジナルでは、確か報復で時間を止めて世界中がパニックになるのだが、このリメイク版で「地球が静止する」のは、ちょっと意外な形で、「これじゃあ、静止じゃないじゃん」とまたまたツッコミたくなる。

この映画は、アメリカではホリデーシーズンに家族で楽しめるファミリームービーとして製作されたということだが、それにしても、原作が持つテーマ性を生かせば、もっと深くて面白いSF映画になったろうに、本当に残念。オリジナルでは、米ソの冷戦がベースがあって、そのときはいつ戦争を起こして地球を破壊しかねない人類に宇宙人は警告したのだが、今回はそこら辺を環境問題に転嫁していて、そこも今回は正直、掘り下げてない。

ちょっと意地悪いことばかり書いてきたが、女性博士役のジェニファー・コネリーが美しいのと、ウィル・スミスの息子が好演していたのと、オリジナルに出てきたSFファンには伝説になっているロボット「ゴート」がオリジナルそのままのデザインだったことに敬意を表し、前半は面白かったので、ゆるしてあげましよう。
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K-20 怪人二十面相・伝  新作レビュー

見た日/12月某日 ★★★

この映画が、2008年に鑑賞したラスト。

かつて「鉄人28号」が実写映画化されたとき、昭和レトロの中で展開されるSF活劇に大いに期待したら、昭和を舞台にすると製作費が物凄いことになるとかで、結局現代を舞台にしたユルユルな作品に仕上がってガッカリしたことがあった。

この作品は、娯楽映画の製作会社では、もはや日本の雄である「三丁目の夕日」シリーズの製作会社、ロボットによるものだし、特撮スタッフは同シリーズを手がけているだけあって、「鉄人」のときに期待した、昭和レトロの中の活劇、という意味では初めて成功した作品かもしれない。

とくに冒頭の帝都のシーンは目を見張った。「第二次世界大戦を経験してない昭和20年代の帝都」という、冒険活劇の舞台としてはすこぶる魅力的な設定を、見事にワンシーンで表現していて、この場面だけで、この映画の世界にすんなりと入っていける。

ただし、よくできているし、物語もとっても面白いのだが、映画が進むにつれ、アクションや特撮に、少しずつほころびが見えてくる。金城武が泥棒修行する際のアクションなど、なかなかいいシーンではあるが、同じような生身アクションを展開しているハリウッド作品と比べると、見せ方においては、やはり劣る。後半の特撮などはちょっとグタグタで、同じスタッフが手がけているとは思えないほど、同じ映画の中でクオリティに差がある。

脚本もよく練られているし、クライマックスの展開もよいだけに、正直、邦画の娯楽大作にはどうしてもつきまとう「日本映画にしては…」という範ちゅうに、この映画も留まってしまったのが実に惜しい。

クライマックスでのオートジャイロのシーンや、金城武が助けるお嬢様のキャラクターなど、隋所に「ルパン三世 カリオストロの城」へのオマージュを感じたのは、僕だけではないだろう。何かの本を読んだら、佐藤監督はやっぱり意識していたようだ。

「あれを実写でやりたい」という佐藤監督の夢を体現したところもあるのだろう。あと、お譲様役の松たか子がいい。主人公を支える泥棒長屋の住人でからくり職人役の國村隼とその妻役の高島令子のコンビが、映画を支える潤滑油的な役割を果たしている。このお2人が夫婦というのは、佐々部監督の「半落ち」以来だろう。
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特命係長只野仁〜最後の劇場版〜  新作レビュー

見た日/12月某日 ★★

その昔、東京12チャンネル系でやっていた、低予算のお色気アクションドラマ「プレイガール」のような作品である。(あの、低音の「ぶれいがああああーるうう」という声真似は、誰でもやった記憶があろう)

大手広告代理店の会長が特命を受けた、普段はうだつが上がらない窓際係長が、実はスゴウデの空手の使い手で、おまけに落とせない女はいない、という二枚目。

人気テレビシリーズの映画化で、今回は主人公が社内で開かれたビールの新商品発表会で命を狙われたキャンペーンガールを特命で警備していくうち、巨大な陰謀に巻き込まれる…という話。

まったくもってくだらないのだけれど、僕は嫌いじゃない。その昔の70年代、東映はこういう中途半端なお色気あり、アクションありで、最後はストーリーが破綻してしまうような作品を、プログラム・ピクチャーとしてたくさん作っていた。「トラック野郎」や「不良番長」シリーズなんて、今見てもどうしようもなくくだらないけれども、すこぶる面白い。

この映画はテレビシリーズの映画化ではあるが、そんな猥雑でくだらないパワーを持った、最近では数少ない映画作品だ。何しろ、エロシーンになると、音楽で女性のスキャットが流れ、「アッハーン」と言った声にエコーがかかる。な、何という、70年代テイスト!今だにこんな演出を堂々と劇場映画でできる、やる、というのが物凄い。

それに、西川史子という演技もできないタレントさんを使いながら、その棒読みセリフは恐らく本人も作り手も納得の上で、そのヘタウマさ加減が何とも言えず、西川女史もテレビでは見せない見事な脱ぎっぷりで、さの度胸の良さには全く感心ものである。

お話としては、テレビシリーズにはないスケール感を出そうとはしていて、お話にヒネリと工夫はしてあり、まあ驚くほどではないにしろ、きちんと楽しめる娯楽作にはなっている。まあ、テレビ的な匂いはどうしようないのだが…。

高橋克典の肉体は素晴らしく、クライマックスとなるチェ・ホンマンとの格闘シーンは、カット割に至るまでブルース・リーの「死亡遊戯」まんまで、ちょっと笑ってしまったのだが、これもご愛敬だろう。高橋氏は頑張っている。

★は三つにしたいけど、いい意味で星2つ。映画オリジナルで、こういうくっだらない、プログラムピクチャー的に映画が、どんどん出てほしい。

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歩いても 歩いても  新作レビュー

見た日/11月某日 ★★★★★

「誰も知らない」の是枝裕和監督作品。「誰も知らない」は衝撃的だった。母親に置いてぼりにされ、アパートで誰にも知られることなく、自力で生活していく幼ない兄弟たち。

特定の脚本は用意せず、プロの役者の出演も極力抑えながら、子どもたちにシチュエーションだけ与え、そこから自然に発生するリアクションを繋ぎあわせ、物語を構築していったという。

そこから生まれたリアリティは半端じゃなく、フィクションでありながら、擬似的なドキュメンタリーとも言える映画だった。

物語としての映画って、ある種、「痛み」が感じられるものが僕は傑作だと思う。それはアクションの痛み、恋愛の痛みなど、いろいろあるとは思うが、物語や登場人物に感情移入できるのは、その「痛み」があってこそ、だと思う。そういう意味では「誰も知らない」はよくできた作品だったと思う。

それから、是枝監督は練り上げた脚本による時代劇「花よりもなほ」を経て、この新作になった訳だが、この作品では、誰もが経験するような日常を、ある家族の物語として描きながらも、練り上げた脚本を、プロの役者たちがしっかりとした演技をしながら、その「日常」を表現する、という言わば「誰も知らない」とは逆のアプローチをしているところが興味深い。

開業医だった父親の家に、結婚して間もない次男が帰省してくる。相手の女性には連れ子がいて、次男は実は失業中で、気難しい父親がいる実家に帰るのに乗り気はしない。

帰ると、そこには帰って来る子どもや孫たちに料理を振る舞おうと張り切っている母がいて、隙あらば実家に住もうとしている、口うるさい姉と、気はいいがどこか抜けたその夫がいる…。やがて、その日は跡取りとして将来を嘱望されながら、海におぼれた少年を救おうとして亡くなった兄の命日だった…。

こうストーリーを記していても、何気ない話なのだが、この映画は、どこにでもありそうな、「家族の危うさ」をしっかりと描いている。

家族同士、何気ない生活を送っていても、年月が経ち、子どもが成長し、両親とも年老いていけば、言いたくないことも、秘密にしておきたいことは当然できる。子は親に隠したいこともあるし、親にも子に隠していることはある。

それがあるとき、親の隠れていた部分が、子が成長したとき、突然、垣間見えてしまうことがある。ショックを受ける子ども。そして親もまた、子どもの成長を、自分が快く思えない部分で感じてしまい、戸惑う瞬間がある。

僕も、似たような経験が実体験であるので、この映画はそういう意味ではそんな「痛み」を十分感じた作品だった。でも、この映画がいいのは、その「先」を描いていることだ。どんなにお互いがすれ違っても、感情的になっても、やっぱり家族は家族なのだ。家族だからこそ、分かりあえるし、許しあえる。そこを描いているからこそ、この映画で描かれている「痛み」はやがて「癒し」となる。

次男役の阿部寛がいい。「隠し砦の三悪人」と同じ人とは思えない。振り幅が広い、という意味ではこの役者さんはすスゴイと思う。キャラクターは強いけれども、きちんと「普通」の演技もできる、稀有な存在感だと思う。妻役の夏川結衣も色っぽくて、いい。「誰も知らない」の母親役が印象的だったYOUも、自然体でいい。

母親役の樹木希林も好演で、テキパキと火事をこなしながら、家族への想いや、長年開業医の妻として家族を支えながらも、抱えてきた“闇”の部分を感じさせる演技はさすが。

この“闇”こそ、女性の強さである、と思う。僕自身、母親が亡くなる直前、実は絵を描きたったのに結婚でそれができなかったこと、父が若い頃、荒れて誤って熱湯をかけてしまい、火傷を負ったことが、しばらくは心の傷になったことを聞いて、驚いたことがある。

その火傷の件も、絵のことも、今も時折思うことはあるが、それをひっくるめて父と結婚してよかった、としみじみ言う母親が愛おしかった。

母親が亡くなったとき、父から「お前には黙っていたが…」と言いながら、母親の火傷のことを告白し、「最後にもう一度、謝りたかった」と涙ぐむ年老いた父親もまた、愛おしかった。父に「母ちゃんから、その話は聞いていたよ」とは言えない、自分自身もまた、何だかもどかしかった。

日常の中から見える人間性を描いたホームドラマ、という点で、小津安二郎監督作と比べて評価するレビューも多く、海外の映画祭では「ライティ(軽量級の)小津」と評されたらしい。言われればそうかな、とは思うが、僕はこの作品は現代性も強く、小津監督作品とはあまり共通するものは感じなかった。

いずれにしても、家族の「痛み」と「再生」、そして「絆」を描いた、いい映画である。

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