60歳のラブレター  新作レビュー

観た日 5月某日 ★★★

僕は、メール、とくに携帯メールが苦手だ。仕事で必要不可欠なので仕方がなく使っているが、メールだとなかなか真意が伝わらないことも多く、とくに仕事となると誤解があってはいけないので、表現に気を使う。

それが手書きの手紙やメモだと、短い、何気ない言葉や文章でも、心に染みいるから不思議だ。

この映画を観ていて、昔、学校から帰ると母親がテーブルに残してくれていたメモを思い出した。母は旅館で仲居をしていたので、僕が帰るとたいてい家にいなかった。

「マンデウ、ミズヤ。ハハ」「オカヘリ。ハハ」昭和3年生まれで小学校しか出てない母だったが、このカタカナだけで意味不明の文からも、母のぬくもりが感じられた。

「マンデウ」がまんじゅうであることを知って、「こんなの、分からないよ」と母に言うと、ちょっぴり悲しそうな顔をして、「母ちゃん、勉強してないからね」と笑った母の姿が、忘れられない。

この映画は、普段はなかなか面と向かって言われない感謝の言葉を、夫または妻に手紙で伝えようという銀行の企画を映画化したものだ。

映画では3組の夫婦、というか、ひと組は未婚のカップルなのだが、みんな還暦前後で、それぞれの人生を歩みながらも、どこか岐路に立たされている。

昔は40で不惑と言い、還暦と聞くとずいぶん老けたおじいちゃん、おばあちゃんを想像したものだが、時代も変わって、時代を感じる感性も若返った今の時代、還暦世代もコンピューターを扱えるし、ロックを愛し、もちろん恋もする。

考えてみると、僕も還暦まであと15年しかない。気持ちはいまだに高校生だが、そう考えると自分でも、ビックリしてしまう。

「三丁目の夕日」や「キサラギ」の古沢良太氏の脚本は相変わらず巧みで、3組の夫婦のすれ違いや感情の行き来をハラハラドキドキしながら見せてくれ、人にとって、周囲の愛する人たちの支えがどれだけ大切か、しっかりドラマで感じさせてくれる。

三つの「ラブレター」の見せ方もそれぞれ工夫がしてあって、とくにイッセー尾形氏と綾戸智恵氏のエピソードは秀逸。綾戸さんの自然体の演技はイッセー尾形氏のリズムと溶け合っていて、実に絶妙。ここの「ラブレター」は、完全にやられた、という感じ。

監督は32歳の若手として驚いたが、若いが故だろうか、演出も瑞々しく、オーソドックスではあるが、安心して見ていられた。

これだけ激賞していて、星三つなの?と言われそうだが、その理由は、僕が個人的に、メインエピソードの展開にちょっと不満があるから。でもこれは、人それぞれだろう。
映画はいろんな観方があるものだから。

詳しい展開は書かないが、僕はどうしても、石黒賢に同情しちゃう。それはまだ僕が大人になり切れてないからかな。
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GOEMON  新作レビュー

観た日 4月某日 ★★★★

本物映像満載の「剱岳 点の記」を観て以来、CG満載の映画が、なんだか馬鹿馬鹿しく思えてきた。

特撮の基本は、現在の技術では表現できないものを表す、ということだと思うのだが、最近、実写や旧来のオプチカル合成などで処理すれば済むのに、わざわざチープなCGを使っているような映画を観ると、なんだか腹が立ってくる。

・・・ということで、全カットをCG処理したというこの映画を観る前は「観終わって腹が立つのかな」と思っていた。

が、しかし、いい意味で期待は裏切られた。

紀里谷監督は、自分の独特なイマジネーションの世界を、多くの人に観てもらい、自分なりのメッセージを伝えようとしている。そのためのCGであり、その志は高い。

「誰も見たことがない世界を創り出し、見せてやるんだ」という野心が、きちんと伝わる。それに見合うだけの独創的なビジュアル世界が広がっている。

物語的にも、誰もが知っている戦国時代を舞台にしながら、それを一度解体して組み直す、という作業は上手く行っている。全てブルーバックでの撮影だろうから、俳優さんの役づくりは大変だったろうが、それが却って効果的で、舞台のようなケレン味たっぷりに仕上がっていて、見応えがあった。

前作「CASSHERN」ではその心意気が独りよがりになっていたのが、見る側のことを考え、整理されていて、随分進歩している、とも感じた。

ツッコミ所はいろいろあるし、観客側が見方を変えれば、荒唐無稽で片づけることはできるだろう。でも、この新しさを、他の誰ができるの?とも言える訳で、この映画で作り手たちがやろうとしたことを否定すると、こういうジャンルの日本製娯楽アクション
映画の未来を閉ざしてしまう、と思う。

江口洋介氏のスマートなヒーロー像、奥田瑛二氏の大芝居たっぷりの豊臣秀吉など、俳優陣の演技も、舞台を見ているようで楽しい。広末涼子のヒロインも可憐で美しい。
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グラン・トリノ  新作レビュー

観た日 4月某日 ★★★★★

クリント・イーストウッドのセリフやその動きひとつひとつに意味があって、様々なものが「読み取れる」。

この「読み取れる」ことこそが、洋画、邦画問わず「いい映画なのだ」と改めて思わせてくれる、文句なしの傑作だと思う。

最近は、何でもセリフと過剰な演出で見せる映画がハリウッドだけでなく、日本映画でもたくさんあるが、そんな作品群とは一線を画している。

この映画の主人公は、かつて朝鮮戦争に従軍して功績を挙げ、高級住宅地だった住宅地に一戸建てを構え、玄関にアメリカ国旗を掲げ、車庫前に磨き上げた70年代のアメリカ製の名車グラン・トリノを飾りをそれを眺めながらビールを飲むのを生きがいにしている、頑固な老人だ。

おまけに白人至上主義で、有色人種をひどく嫌っている。息子や孫にも理解されず、じじい呼ばわりされていて、そんな息子や孫に気に行ってもらおうなんとことは、ちっとも思ってない。戦後はフォード社の整備員としてコツコツ勤めてきたが、息子はあろうことかトヨタのセールスマンで、ただ一人の理解者だった妻も亡くなってしまった。

しかし、彼が年老いている間に、近所はアジア系の移民が多く住むようになり、治安も悪くなって、様子は変わってしまった。やがて彼は、グラン・トリノを盗もうとした隣家のモン族の少年・タオと知り合い、彼と関わることに生きがいを見出す・・・。

この映画は雄弁ではないが、国旗を掲げ、芝を刈り上げ、古い名車を大切にする主人公から、彼が古き良きアメリカそのものの姿であることが分かる。そして、その姿は、クリント・イーストウッドがスクリーンで演じてきた役柄が年老いてしまった姿そのものでもある。

「ダーティーハリー」のハリーのようでもあるし、彼が「ハートブレイク・リッジ」で演じた、アメリカ海兵隊にカンパックする元将校もまた、朝鮮戦争の英雄だった。

そんなヒーローを演じていたイーストウッド翁が、この映画では銃を放つことにためらい、かつて朝鮮戦争で若い少年兵を殺したことに悔み、あれだけ嫌っていたアジア系の家族たちに心を開く。

その、かつての罪を悔み、タオやその家族に心を開いて行く過程が丁寧で、イーストウッドの言動ひとつひとつに裏付けがあり、説得力がある。やがて彼は、少年とその家族を守るために、ある行動に出るが、それは人生の総仕上げに挑む、人としての崇高な姿であり、あらゆることに悩み、傷つきながら生きている同じ人として、深く、深く、心に染みいる。

この過程も、映画は決して雄弁ではない。イーストウッドは物静かだし、他の登場人物たちもいちいち自分の心情をセリフで言ったりはしない。だけど、その気持ちの奥にあるものが、しっかりと伝わる。これこそが、名演出の賜物だろう。

銃による力で悪を倒し、戦争体験を若者に伝え、再び戦場に送り出し、年老いても尚怒りを銃に託した、かつてのイーストウッドは、ここにはいない。イーストウッドも、アメリカも、変わってしまった。でも、その代わりに手にした、手にしようとしている「優しさ」は、人生にとって、最も必要なものなのだ。
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『マイマイ新子と千年の魔法』地元にお披露目!  映画つれづれ

11月に全国公開される、アニメーション映画「マイマイ新子と千年の魔法」の特別先行試写会のため、ワーナーマイカルシネマズ防府に行ってきました。↓

http://yamaguchi.keizai.biz/headline/621/

作品が完成したということで、まず、舞台となった地元の方々に観て頂こう、という催しだったようです。

この映画、昭和30年の山口県防府市を舞台に、小学3年生の新子ちゃんの冒険を描いた日本版「赤毛のアン」とも言える作品で、防府市出身の芥川賞作家・高樹のぶ子さんの自伝的小説が原作です。

この映画は山口放送が出資もしていて、同社のAさんがプロデューサーとして参加もしています。県内の子どもたちも声優で出演もしていて、オーディションもありました。

Aさんも、佐々部監督をずーっと応援していて、Aさんの熱意によって、山口放送は「チルソクの夏」に出資し、以来「カーテンコール」「出口のない海」「夕凪の街 桜の国」と製作に携わっています。

地方のテレビ局が映画製作に関わった先駆的な存在であり、これまでの山口放送の取り組みは、映画の地方発信、映画の製作へのテレビ局の関わりという意味では、もっともっと評価されるべきだと思います。

そういう中、今度はアニメーション映画への製作に関わるということは、また新たなる挑戦であり、地方のテレビ局としての新境地を切り開くものと言えるでしょう。

映画の感想はまたレビューで書きたいと思いますが、試写会は実に盛大で、県の藤井教育長や地元選出の県議会議長さん、市長さんをはじめ、超満員でした。

上映後のパーティーでは、高樹先生にごあいさつさせて頂き、お話することもできました。高樹先生の映画化作品と言えば、「波光きらめく果て」がありますが、そのお話もさせて頂きました。

映画の感想を聞かれて、素直に思ったことをお話したら、高樹先生は、目をキラキラさせながら「嬉しいわあ」とおっしゃって頂きました。・・・嬉しかったなあ。高樹先生は、今も新子ちゃんそのもののようで、ピュアでお美しく、その人柄に、すっかり魅了されてしまいました。

実は、この映画、Aさんの御好意で、僕も声優で出ているはず・・・なのですが、雑踏のシーンだったので、正直、聞き取れなかった・・・。これは何度も何度も見て確かめなければ・・・。

製作会社・マッドハウスの社長さんも山口県出身!でビックリでしたが、ごあいさつさせて頂きました。

ついつい「マッドハウスと言えば、古くは『宝島』新しくは『時かけ』、昔は出崎・杉野コンビに胸を熱くしました」と、一般的には全く意味不明なマニィ的あいさつをしたところ、社長さんは「『あしたのジョー2』(これも出崎・杉野コンビ作品)もウチですね」と返して頂き、マニィは「主題歌は荒木一郎!!」と即座に応え、盛り上がったのでした・・・。これも、嬉しかったなあ。

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シネKINGでミリオネア!!  映画つれづれ

先週のMOVIX周南からお送りした「シネKING」では「消されたヘッドライン」と「60歳のラブレター」を御紹介。「うんちく」は、「レッドクリフ」のキャスティングについて語りました。

今週の22日放送分の回では、シネマスクエア7より「悪夢探偵2」と「スラムドッグ$ミリオネア」を紹介しました。「うんちく」は佐々部清監督作品「四日間の奇蹟」。ついに、佐々部作品を紹介できました。

「スラムドッグ$ミリオネア」にちなんで、番組内で「クイズ・ミリオネア」風のクイズをしてみましたが、如何だったでしょうか?

問題は「次の山口県を舞台にした映画のうち、登場人物が山口弁を話してない作品はどれ?」で、「ほたるの星」「チルソクの夏」「ロボコン」「釣りバカ日誌12」からの4択でした。

答えは・・・・。是非、皆さんも、考えてみて下さい。番組では正解を言っています。

さあ、来週は、ワーナー・マイカルシネマズ防府からです。「シネKING」をよろししくお願いします!!!
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シネKING5回目終了です!  新作レビュー

毎週金曜深夜のお楽しみ「シネKING」ですが、先週はワーナーマイカルシネマズ防府から「セブンティーン・アゲイン」「天使と悪魔」をご紹介しました。

「今日のうんちく」は、徳山オールロケ、長澤まさみさん初主演作「ロボコン」について語らさせて頂きました。

次週はMOVIX周南からお送りします!!お楽しみに!!!
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古厩監督の新作が始動!  新作レビュー

「ロボコン」「ホームレス中学生」の古厩智之監督の、最新作が決まりました!

タイトルは「武士道シックステイーン」! 今が旬のティーン女優、鳴海璃子さん、北乃きいさんW主演の、青春剣道ムービーだそうです。

詳しい情報はコチラ↓

http://www.wowow.co.jp/common/detail_dsp.php?info_id=305&from=0&which=0&genre=98

古厩監督とは、「ホームレス中学生」のときはキャンペーンのお仕事もちょっぴりさせていただき、山口県内の雑誌や新聞向けのインタビューなどもさせて頂きました。

古厩監督は、真摯に「映画」と向き合い、人の「想い」や「行間」を撮ることができる、若手監督さんの中では稀有な監督さんだと思います。

マニィ的には、古厩監督作品では「さよならみどりちゃん」が一番好きです。自分の感情がなかなかつかめず、苦しみながらも、そこから一歩踏み出そうでいて踏み出せない、現代の女性の「感覚」を、心の痛みを添えるように描いた作風には唸りました。

「さよならみどりちゃん」は映画自体がとっても繊細で、性を描きながらも全くいやらしさはなく、中性的な香りがする辺りは、古厩監督の持ち味でもあるのだろうな、と思いました。

それから、持ち前の作家性に、エンターテイメント性を求めて成功した「奈緒子」や、ベタな原作を、観客自身の体験や気持ちに訴えかける少年の成長物語として昇華させた「ホームレス中学生」など、近作は傑作揃いで、ますます今後が期待できます。

今回は、WOWOWが製作するエンターテイメント性と作家性が融合した作品づくりを目指す劇場映画シリーズ「WOWOW FILMS」の新作として製作されるとのこと。

公開は来年のようです。

「WOWOW FILMS」はこれまでも「犯人に告ぐ」などの秀作を生み出しているだけに、期待も大ですが、若者の気持ちを描くことにかけては定評がある古厩監督だけに、駅伝青春映画の傑作「奈緒子」でも見せてくれた、スポーツと若者たちの心情を上手にリンクさせた、さわやかで深みのある作品になりそうで、今から楽しみです。

そして、こちらのサイトでは、古厩監督が撮影の裏話などをブログで公開されています。生後数カ月という、御長男の写真なんかもあって、監督の親馬鹿ぶりも見ることができます!!↓

http://www.hollywood-ch.com/gyoukai/sub_category_id/1121/index.html
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新作3本一気レビュー!  新作レビュー

観た映画がたまっていて、新作レビューがおいつかないので、申し訳ありませんが、何本か、まとめて短めにレビューします。

「旅立ち~足寄より」

観た日 4月某日 ★★★

若き松山千春の青春時代を映画化。

70年代の雰囲気がよく出ていて、自分に正直であるが故に、時折周囲と衝突してしまう彼をデビューさせた、ラジオディレクターとの絆を描く。

若いころ、自分一人で偉くなったように思うことは誰にでもある。でも実は、そんな自分が誰かに支えられている、と気づいたとき、人は一歩大人になれる。

そんな、青春期の出会いと別れを、北海道の素晴らしい自然を交えて描いた、誠実な作品。父親役の泉谷しげるがいい味を出しているが、実は泉谷さん自身が伝説のフォークシンガーなので、この辺りのキャスティングは考え抜いてのことなのだろうな、と思った。

「レッドクリフpartU」

観た日 4月某日 ★★★

ジョン・ウー監督、久しぶりのやりたい放題。彼の独特の美学は香港で完成され、ハリウッドでは今一つ発揮できなかった感があるものの、再び中国の大陸で花開いた感はある。

壮大な予告編だったパート1に比べて、ストーリー展開、スペクタルな戦闘シーン、全て何百倍も面白い。ヒロインの活躍ぶりや、孔明の作戦、泣かせてくれる孫権の妹と敵の兵士との淡いエピソードなど、見どころはいっぱい。

ラスト近くには、ジョン・ウー監督作品を見続けてきた人なら、思わず拍手喝采してしまう、お約束のシーンも登場!「えっ!?時代劇なのに・・・そう来たか!」とビックリ。

ただし、物語展開に甘いところもあるし、情にまかせて「えいや!」という点もあって?なところも少々あるのだが、そこはジョン・ウー監督ならではのファンタジーで、許せてしまうのだ。これだけウー節が炸裂したのは「フェイス/オフ」以来、香港時代からだと大傑作「狼/男たちの挽歌・最終章」以来ではないだろうか。

「ジェネラル・ルージュの凱旋」

観た日 4月某日 ★★★★

製作日数が公開日までギリギリだったせいなのか、それで宣伝が十分じゃなかったのか、大ヒットした前作に比べると、ヒット、というまでは行かなかったようだけれど、僕的には評判だった「チーム・バチスタの栄光」よりこちらの方が出来がいいと思うし、何より中村義洋監督の手腕が発揮されているように思えた。

中村監督と言えば、「アヒルと鴨のコインロッカー」でのトリッキーでいて濃密な物語展開も楽しめる、優れた演出が印象的だったが、この映画も、謎解きの面白さに加え、出てくる登場人物たちがとっても魅力的で、それでいて映画のテーマとなっている救急医療の大切さ、必要性もずっしりと伝わって来る、という拍手喝采の1作だった。

「鴨川ホルモー」

観た日 4月某日 ★★★★

不思議な、それでいて妙な魅力と活力に満ちた、変なんだけれど、愛すべき映画だ。

「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズで、エンタテイメントの手腕を発揮していた本木克英監督だが、本木監督の作品では、恐らくこれがベストムービーではないだろうか。

本木監督は松竹の社員監督だが、メジャー配給・制作会社の社員で監督という、最近では珍しい立場ながら、これだけ安定して娯楽作を作り続けているのは、実は物凄いことでもあるので、これからも是非、頑張って頂きたい。

京都大学、立命館大学、龍谷大学、京都産業大学には、それぞれ秘密のサークルがあって、古来より伝わる、式神を使った「ホルモー」なる伝統競技を、学生たちが守り続けている、という設定がユニークで、実にオリジナリティにあふれている。

映画自体は正当な青春映画の作りになっていて、イマドキの学生気質がダラダラと描かれていくのだが、そこに古来からの神事である摩訶不思議な「ホルモー」が絡み合う様が面白い。京都という独特の世界(結界)を舞台にしているからこそ、日本人にしか感じられない『和』の感性もしっかりと描かれていて、日本映画ならではの、エンタテインメントになっていると思う。

式神たちのデザインはもう少しオドロオドロしくてもいいと思ったが、なかなかにカワイイ。式神を操る独特の言葉とポーズ、そして、「ホルモー」を先輩から受け継ぐときに舞う踊りの歌がケッサク。まさか、小林◎◎の「◎◎◎◎娘」とは。これには笑わせてもらった。

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優作さんに憧れて・・・  映画つれづれ

小学校の高学年から、いつも一緒に映画を観ていた親友のT君がめでたく結婚されました。

結婚式でスピーチをしたのだけど「ともに松田優作にあこがれ・・・」と喋った時点で、思わず詰まって、涙してしまいました。

結婚式は東京だったのですが、思えば優作さんも山口県から東京に出て活躍されていた訳で・・・優作さんに憧れ、食い入るようにスクリーンを見つめていた鼻たれチュウボウ2人がともに家庭を持つようになって、1人は東京、もう1人はまだ山口で頑張っているんだなあ、と思うと、何だか、感無量でした。

最映画仲間のMOTOちゃんやSigewoさんたちに優作さんの話をしていて、急に観たくなり、先日、久し振りに「野獣死すべし」と「ア・ホーマンス」を見直しました。

中学生から高校生、大学生にかけて、一番感性が鋭いときに、優作さんの映画に出会えて、本当によかった、と心から思いました。映画を観終わった直後、身体の奥から何か熱いものが噴き出すような感覚は、もう味わえないのだうな・・・。

そんなことを想いながらyoutubeを見ていたら、「ア・ホーマンス」の主題歌である名曲「Aftwe45」を、この映画で優作さんと共演され、これが映画初出演でもあった石橋凌さんが優作さんに向けて歌い上げる、素晴らしい映像がありました!!↓↓

http://www.youtube.com/watch?v=_agCtxkNBq8&feature=related

1998年ごろの映像でしょうか。バックに優作さんの映像が流れ、ジャズ・アレンジの素晴らしい編曲に乗せて、凌さんが魂を込めて歌い上げています。

歌い終わったあとの凌さんの表情に全てが語られていますが、僕はこの映像を見て、号泣してしまいました。

「After45 俺達は生まれ 狭い街角で出会った」「揺れる1985 過去は過去のもの 手を伸ばしてみる 夜明けに」

この歌詞は、凌さんが優作さんを想って書いたものなのでしょうが、僕自身、僕とT君との関係性にもリンクしてしまうのです。

小学生のころ、ひどいいじめを受けたときも、彼が唯一の友達でした。大好きな映画のことを、唯一語り合えるのも彼でした。「ハートをつなごう」に出演したとき、過去のいじめや勉強ができなかったことがクローズアップされることに躊躇したとき「お前が頑張ったことを俺が証明してやるから」と言ってくれたのも彼でした。

思えば、僕もT君も、優作さんが亡くなった年齢を超えてしまいました。でも、いくつになっても、優作さんは、映画も生きざまも、僕たちのあこがれです。

以前、奥田瑛二さんに取材させて頂いたとき、奥田さんは同じ年齢である優作さんを常に意識してきたし、今も意識している、というお話をされ、感銘を受けたことがあります。

すっかり家庭人ではありますが、僕自身、まだ「映画への夢」を捨てていません。T君もまた、自身のフィールドで頑張ることでしょう。

永遠のヒーロー・優作さんをこれからも見つめながら、これからも頑張っていきます。近く、シネKINGの「今日のうんちく」でも、優作さんの映画を紹介するつもりです!!
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余命一ケ月の花嫁  新作レビュー

観た日 4月某日 ★★★★

業務試写で鑑賞させて頂いた。

同名のテレビドキュメンタリーは偶然見ていたが、映画は正直、期待はしていなかった。

いわゆる典型的な「難病物」になっているのではないか、と心配していたのだ。

正直、最近の日本映画は「病気」や「死」と言った、本来尊厳すべきものに対して、安易な描写で「泣き」を強要する作品が多い。この作品は題材が実話である以上、真摯な映画づくりはしているだろうとは思ったが、最近の安易な傾向の延長線上にある作りならどうしよう、と思っていた。

が、しかし、上映前に何気なくチラシを見て、この作品の監督が廣木隆一監督と知って驚いた。

廣木監督と言えば、「ヴァイブレータ」「M」など、性と生をテーマに人の生きざまを描かせたら、とっても巧い監督さんだ。男子高校生たちの揺らぐ気持ちを描いた傑作「800」も廣木監督だったな・・・なんて思っていたら、俄然、映画が楽しみになってきた。

この映画の元となったドキュメンタリーを見て、僕自身、乳がんの早期健診の大切さを知ったし、何より短い人生を生き抜いた女性とその恋人の存在に感動したが、それらの感動やメッセージを伝えるには、正直、フィクションとして最構築して映画やドラマにしても、元のドキュメンタリーには勝てないものだ。

しかし、実は映画やドラマなどの「物語」にしたからこそ、描けることもあるもので、僕はこれまでの作品群で人間の「本質のようなもの」を描いてきた廣木監督が、どうこの題材と向き合ったのか、確かめたい、と思った。

そして、観終わって思ったのは、流石に廣木監督、安易な「泣ける映画」にはなってなかった、ということだ。

病気と直面したときの女性の迷い、悩み、覚悟、そしてその現実と直面したときの恋人の想い。それらが、生々しくも、切実に描かれていく。

とくに前半、病気を隠しながらも、ひとときの恋を楽しむヒロインの姿が躍動的で美しい。2人が自転車で街を疾走するシーンは、長回しが心地よく、実に映画的な快感にあふれたいいシーンだ。

映画は後半、ヒロインの病気の進行と共に重い展開となっていくが、前半の躍動感があったからこそ、登場人物たちの「生きること」への想いが重層的になって心に迫る。前半の様々な伏線もしっかりと後半に生きてきて、登場人物たちへの感情移入もしやすい。

クライマックスの結婚式の場面も、過剰な演出はない。

観客は、この物語が実話だと知っている。そして、観客がある種の「感動」を求めてくることを、作り手は十分に知っている。だからこそ、廣木監督はあえて過剰な演出はせず、俳優さんたちの生理や感情を考えながら、丁寧にひとつひとつの演技や表情を演出していったのではないか、と思う。

重い病気になる、ということは、大変なことであり、その恋人や家族にとっても、その重さは計り知れないだろう。そのある種の生々しさから逃げてないのが、この映画のいいところだろう。

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映画 ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史  新作レビュー

観た日 4月某日 ★★★

たくさんの親子連れに混じって、1人で鑑賞。一応、「ドラえもん」大ファンの息子、娘がいるのに・・・である。子どもたちには内緒だ。

ベストセラー作家、真保裕一氏が「新・魔界大冒険」に続いて脚本を担当している。

リニューアルして初のオリジナル作品となった前作「緑の巨人伝」は、環境問題へのメッセージ性にこだわり過ぎてしまい、ドラえもんやのび太たちが物語から脱落してしまい、ストーリー展開も破綻するなど、正直、キツイ出来だった。

今回はそれを反省したのか、旧シリーズ最高傑作と謳われた「宇宙開拓史」をリメイクしてきて、ストーリーテリングではプロ中のプロである真保氏を起用するなど、製作陣の意気込みが感じられる。

「ホワイトアウト」などで知られる真保氏だが、かつて「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」を製作しているシンエイ動画の社員だったそうで、ドラえもんの劇場映画の脚本を担当することは彼自身の「恩返し」というから、いい話だ。

ところで、シンエイ動画の前身は「Aプロダクション」というアニメーション製作スタジオで、かの宮崎駿監督や伝説のアニメーター、大塚康生氏なども一時在籍し、「ルパン三世」旧シリーズなどを作っていた。

伝統ある会社だが、「ドラえもん」「しんちゃん」など、子どもに根ざしながら、良質な娯楽作品を作り続けている、という印象がある。

さて、今回のリメイク作品だが、さすがに真保氏を脚本に起用しているだけに、物語の展開はなかなかスリリングで面白い。

前作で出てきたコーヤコーヤ星に対する星、トカイトカイ星を登場させず、コーヤコーヤの中に町がある設定にしたり、オリジナルキャラクターとして、モリーナとその父、バーンズ博士を重要な役で登場させるなど、前作を大胆に変えた部分もある。

それでいて、藤子・F・不二雄先生描いたところの原作にはありながら、恐らく前作では子ども向けという配慮でカットされた、のび太とギラーミンの射撃の一騎打ちのクライマックスが、このリメイク版ではきちんと描かれている。

僕は藤子先生が描いた映画原作の「大長編ドラえもん」が大好きで、全て原作本を買い揃えていたが、傑作揃いの作品群の中でも、この「宇宙開拓史」が最も好きで、一番の傑作だと思っている。

もともとこの作品は、「シェーン」など、藤子先生の西部劇へのオマージュから描かれたものだそうだが、そういう意味では、原作のテイストを生かしながら、楽しめる物語に仕上がっている。

ちょっぴり不満なのは作画で、「のび太の恐竜2006」に比べて作画レベルが下がっているように思ったのは僕だけだろうか。それから、映画版ではあっても、テレビシリーズとあまり絵柄を変えない方がいいのでは、とも思ってしまった。

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おっぱいバレー  新作レビュー

観た日 4月某日 ★★★★

お馬鹿な映画ではあるが、なかなかハートウォーミングな作品に仕上げていて、好感が持てる。

風に手をかざすと、「おっぱいの感触が味わえる」と自転車を全力で漕ぎ、時速80キロにならないと無理だと知ると、改造車で坂を思いっ切り転げ落ちる男子中学生たち・・・バカでどうしようもないが、70年代後半のチュウボウは確かに、そうだった。

僕自身、この映画の時代設定である1979年(昭和54年)は中学3年生だから、設定的にはど真ん中ストライクになる。

エロ本を仲間で隠して読み合い、深夜の日テレ系テレビ番組「11PM」を見るため、全力での努力を惜しまない・・・というこの映画での中学生たちは、実に共感できる。

そう言えば、山口県では「11PM」は放送されず、山口放送は日本テレビ系列なのに、なぜかその時間は「プロ野球ニュース」を放送していた。実は、山口県は「教育県」ということで、当時の山口放送の偉い方は教育関係の御出身ということで、どうやら「11PM」をあえて放送しなかったようなのだ。

だから僕は、新聞のテレビ欄で、広島や福岡の日テレ系放送局の「11PM」の放送内容を読み、毎日のように「今日こそ、突然、山口放送が11PMを何かの間違いで放送しないだろうか」と思って両親が寝ているのを見計らい、よからぬ想像を膨らませ、佐々木信也キャスターの顔に向かって「ああっっっっ!やっぱりプロ野球ニュースだっっ」とため息を漏らしていた日々を送っていたのだ。ああ懐かしい・・・(これもアホですな)

そして、美人で若い先生の胸のふくらみに憧れる・・・というのも、「分かるなあ」である。中学時代は、大人と子供の中間でユラユラとうごめく時であり、とくに男子の場合、大人への門を叩きながらも、その行動は妙な幼くて、そこがまた健全でいいところなのだ。

という訳で、この映画は「大会で勝ったらおっぱいを見せてあげる」と無理矢理生徒に約束させられた先生と、それで思わず頑張ってしまう弱小バレーボール部の話である。

原作小説の設定は現代らしいが「先生のおっぱい見たさに頑張る中学生」は現在のネット社会ではかえってリアリティがないだろう、ということで時代設定を1979年にし、舞台を原作の静岡県から、昭和の香りが漂う北九州市にしたらしい。この変更は、成功している。

綾瀬はるかがとっても魅力的で、等身大の若い先生を好演している。前に勤めていた学校での出来事で自身を失くしている先生が、お馬鹿な部員たちとの関わりの中で、自分が教職を志した原点に立ち返り、一歩成長する姿がいい。

生徒たちはどこまで行っても馬鹿なだけなのだが、馬鹿でも一生懸命になれるのが青春の特権である。好きな女の子がいるだけで部活動を頑張っちゃって、いつしかそれが本気になっちゃったことは、誰でも経験があるだろう。

「海猿」シリーズの羽住英一郎監督作品だが、正直、「海猿」で見せたダイナミックな演出やカット割は見られないが、演出にメリハリもあって、この映画が羽住監督のベストムービーではないか、と思う。

何より、綾瀬はるかの魅力を最大限に引き出している。昨年の「ICHI」「僕の彼女のサイボーグ」も魅力的ではあったが、この映画の綾瀬さんこそが、彼女の素の良さを引き出しているように思えた。

僕は、本気で「綾瀬はるかは、21世紀の吉永小百合になれる」と本気で思っている。

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ウォッチメン  新作レビュー

観た日 4月某日 ★★★★

「仮面ライダー」の場合、いくら怪人が自分の意思を持たないとは言え、ショッカーが拉致して改造した一般人である以上、罪を犯せば、正当な裁判を受ける権利がある。

だから、仮面ライダーが「ライダーキック」で怪人を倒すと、それは立派な殺人罪である。当然、ライダーには殺人容疑がかけられ、法治国家である現代日本ではその罪は問われるべきである。

そうなると、ライダーはあくまで一般市民であり、社会安定を目的に正義のために戦うなら、怪人と戦っても、現行犯逮捕して警察に身柄を引き渡すべきなのだ。

・・・・というような理屈をヒーロー物で主張しても仕方ないのだが、この映画は、そんな「ヒーロー物」のタブーとも言える矛盾を、真っ向から真面目に描いている。

ケネディ大統領暗殺、ニクソンの台頭、大統領就任、ベトナム戦争、米ソの核競争など、世界をリードしながらも、ある意味病んできたアメリカ現代社会に「スーパーマン」や「スパイダーマン」「キャプテンアメリカ」などの「ヒーロー」が実在したらどうなるか、という視点が面白い。

この映画に出てくる「ヒーロー」たちはほとんどが生の肉体を持つ人間だが、1人ほど、核実験による本当の超人パワーを持った「ヒーロー」が出現する。

ニクソンはベトナム戦争で彼らを利用し、そして戦争に“勝利”し、再選を果たしたあと、ヒーロー禁止を法律で打ち出す。

この映画では、人が「力を持つ」とはどういうことか、核戦争の是非論を含め、シリアスにその主張が展開される。ここにも9・11以降、多くのアメリカ映画に見られる「強いアメリカ」への懐疑心が垣間見える。

映画は何者かによって殺されたヒーローの謎解きを軸にしたサスペンスタッチで物語が進んで行くが、決して誰もが親しみやすい作りではないものの、この映画でのヒーローたちの葛藤や悩みは、そのまま現在のアメリカ社会の葛藤や悩みのようにも見える。

庶民を闘いによって守る「ヒーロー」の存在を通して、誰の人の心にある「正義」と「悪」を描いた、という点では昨年の「ダークナイト」に共通する。事件を追うロールシャッハの顔の変化、そして彼が振るう凄まじい暴力描写こそが、実は「正義」と「悪」とは紙一重であることを物語っている。

ちなみに、「仮面ライダー」も「ウルトラマン」のシリーズの中にも、「人間」と「ウルトラマン」の関係性に言及した「ウルトランティガ」や、「変身」を人類の「進化」と捉え、怪人の存在を「進化を防ぐ神々の所業」と位置付けた「仮面ライダーアギト」など、これらの矛盾と立ち向かった、素晴らしい傑作がある。

しかし、アメリカの「ウォッチマン」や「ダークナイト」ほど、一般的な評価にはなってないのが現状である。

これは「ヒーロー」に対する文化の違いと言えばそれまでだが、悪を倒すヒーロー、という単純にして複雑な物語にこそ、現代社会に潜む問題を描けるのでは、と思うし、この「ウォッチメン」や「ダークナイト」がそれを証明している。

日本には素晴らしいヒーロー物のコンテンツがたくさんあるのだから、これらの作品群を凌駕する和製ヒーロー物が、もっともっと作られてもいいと思う。
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今夜が4回目!!  映画つれづれ

先週のシネKINGは、MOVIX周南からお届けしました。

紹介した映画は「レイン・フォール/雨の牙」と「グラン・トリノ」、「今日のうんちく」コーナーは「母べえ」でした。

きょう5月1日深夜は、いよいよ4回目の放送となります。

シネマスクエア7からで、紹介する映画は「旅立ち〜足寄より」と「余命1ケ月の花嫁」です。

「今日のうんちく」が何かは、オンエアをお楽しみに!!ちょっぴり、マニイの自慢話みたいになっている・・・・かも。

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劔岳 点の記  新作レビュー

観た日 3月某日 ★★★★★

「本物を撮る」ことにこだわり、2年間、スタッフ、キャストが劔岳でともに山ごもりをしながら、CGや空撮などは一切使わず、ただひたすらに撮影をした力作。そのベールを脱ぐのは6月20日なのだが、いち早く試写にて鑑賞させて頂いた。

最近のCG一辺倒の映画が、全て馬鹿馬鹿しくなるような、本物の輝きに満ちた映像であり、「映画」であった。

観る前は、素晴らしい景色が羅列しているような、記録映画のような作品かと想像していたのだが、それはいい意味で裏切られた。

確かに映像も素晴らしいが、この映画は、山に登る男たちそれぞれの想いが緻密に描かれていて、難攻不落の「劔岳」をストーリーの中心軸にしっかりと置き、きちっとまとまった、一本筋の通った「物語」を形成している。

そういう意味では、どんなに大変な撮影ではあっても、それを必要以上に強調することもなく、あくまでドラマ=物語に必要なシーンの一つとして、風景が存在している。圧倒的な景観も、まるで俳優の「1人」のように、そこに存在しているのだ。

俳優たちが圧倒的な困難な状態で演技をし、セリフを喋っている点も、スクリーンの中で展開している物語上の困難さと上手くリンクしていて、いい効果になっている。

物凄く苦労をして撮っているのに、そこを変にいばらず、ストーリーの邪魔になるわけでもなく、一本の映画の中にさりげなく織り込んでいる辺りは、さすがに木村大作監督。「八甲田山」「復活の日」「赤い月」など、困難な自然の中の撮影をこなしながら、ドラマ的にも一流の「絵」を創り出してきた名カメラマンならでは。

映画では、地図そのものの作成よりも、日本で最初に劔岳に登頂することにこだわる軍の上層部や、主人公たちよりも早く登頂しようとする日本山岳会のメンバーなどを描きながら、目的のため、黙々と挑み続ける男たちの姿とその想いが綴られていく。

「なぜ、山に登るのか」。それは、その男たちにとって、仕事であるからだ。それ以上でも、それ以下でもないのだ。周囲の過大な期待があろうとなかろうと、誰に評価されようとされまいと、ひたすら「仕事」に励む男たちがいる。

そこには、山に挑む男たちの子や妻の想いも描かれる。ここで描かれる「美しさ」は、景観以上に美しい、日本人がかつて持っていた心の「美しさ」だろう。実は、過酷な自然での撮影も、実はその心の美しさを描くための手段に過ぎないのではないか。素晴らしい景観は、その「心の美しさ」を描くための偉大なる演出である、と感じた。

浅野忠信の自然な佇まい、香川照之の秘めた熱さ、宮崎あおいの凛とした美しさ、松田龍平の人間らしさ、モロ師岡、蛍雪次郎らの自然体な存在感、役所広司の重さ等々、俳優さんたちもある種の「覚悟」を持ってこの映画に臨んでいる感が伺える。

安易な企画の日本映画が多い中、「映画」そのものの存在意義を問う、傑作である。
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