おっぱいバレー  新作レビュー

観た日 4月某日 ★★★★

お馬鹿な映画ではあるが、なかなかハートウォーミングな作品に仕上げていて、好感が持てる。

風に手をかざすと、「おっぱいの感触が味わえる」と自転車を全力で漕ぎ、時速80キロにならないと無理だと知ると、改造車で坂を思いっ切り転げ落ちる男子中学生たち・・・バカでどうしようもないが、70年代後半のチュウボウは確かに、そうだった。

僕自身、この映画の時代設定である1979年(昭和54年)は中学3年生だから、設定的にはど真ん中ストライクになる。

エロ本を仲間で隠して読み合い、深夜の日テレ系テレビ番組「11PM」を見るため、全力での努力を惜しまない・・・というこの映画での中学生たちは、実に共感できる。

そう言えば、山口県では「11PM」は放送されず、山口放送は日本テレビ系列なのに、なぜかその時間は「プロ野球ニュース」を放送していた。実は、山口県は「教育県」ということで、当時の山口放送の偉い方は教育関係の御出身ということで、どうやら「11PM」をあえて放送しなかったようなのだ。

だから僕は、新聞のテレビ欄で、広島や福岡の日テレ系放送局の「11PM」の放送内容を読み、毎日のように「今日こそ、突然、山口放送が11PMを何かの間違いで放送しないだろうか」と思って両親が寝ているのを見計らい、よからぬ想像を膨らませ、佐々木信也キャスターの顔に向かって「ああっっっっ!やっぱりプロ野球ニュースだっっ」とため息を漏らしていた日々を送っていたのだ。ああ懐かしい・・・(これもアホですな)

そして、美人で若い先生の胸のふくらみに憧れる・・・というのも、「分かるなあ」である。中学時代は、大人と子供の中間でユラユラとうごめく時であり、とくに男子の場合、大人への門を叩きながらも、その行動は妙な幼くて、そこがまた健全でいいところなのだ。

という訳で、この映画は「大会で勝ったらおっぱいを見せてあげる」と無理矢理生徒に約束させられた先生と、それで思わず頑張ってしまう弱小バレーボール部の話である。

原作小説の設定は現代らしいが「先生のおっぱい見たさに頑張る中学生」は現在のネット社会ではかえってリアリティがないだろう、ということで時代設定を1979年にし、舞台を原作の静岡県から、昭和の香りが漂う北九州市にしたらしい。この変更は、成功している。

綾瀬はるかがとっても魅力的で、等身大の若い先生を好演している。前に勤めていた学校での出来事で自身を失くしている先生が、お馬鹿な部員たちとの関わりの中で、自分が教職を志した原点に立ち返り、一歩成長する姿がいい。

生徒たちはどこまで行っても馬鹿なだけなのだが、馬鹿でも一生懸命になれるのが青春の特権である。好きな女の子がいるだけで部活動を頑張っちゃって、いつしかそれが本気になっちゃったことは、誰でも経験があるだろう。

「海猿」シリーズの羽住英一郎監督作品だが、正直、「海猿」で見せたダイナミックな演出やカット割は見られないが、演出にメリハリもあって、この映画が羽住監督のベストムービーではないか、と思う。

何より、綾瀬はるかの魅力を最大限に引き出している。昨年の「ICHI」「僕の彼女のサイボーグ」も魅力的ではあったが、この映画の綾瀬さんこそが、彼女の素の良さを引き出しているように思えた。

僕は、本気で「綾瀬はるかは、21世紀の吉永小百合になれる」と本気で思っている。

4

ウォッチメン  新作レビュー

観た日 4月某日 ★★★★

「仮面ライダー」の場合、いくら怪人が自分の意思を持たないとは言え、ショッカーが拉致して改造した一般人である以上、罪を犯せば、正当な裁判を受ける権利がある。

だから、仮面ライダーが「ライダーキック」で怪人を倒すと、それは立派な殺人罪である。当然、ライダーには殺人容疑がかけられ、法治国家である現代日本ではその罪は問われるべきである。

そうなると、ライダーはあくまで一般市民であり、社会安定を目的に正義のために戦うなら、怪人と戦っても、現行犯逮捕して警察に身柄を引き渡すべきなのだ。

・・・・というような理屈をヒーロー物で主張しても仕方ないのだが、この映画は、そんな「ヒーロー物」のタブーとも言える矛盾を、真っ向から真面目に描いている。

ケネディ大統領暗殺、ニクソンの台頭、大統領就任、ベトナム戦争、米ソの核競争など、世界をリードしながらも、ある意味病んできたアメリカ現代社会に「スーパーマン」や「スパイダーマン」「キャプテンアメリカ」などの「ヒーロー」が実在したらどうなるか、という視点が面白い。

この映画に出てくる「ヒーロー」たちはほとんどが生の肉体を持つ人間だが、1人ほど、核実験による本当の超人パワーを持った「ヒーロー」が出現する。

ニクソンはベトナム戦争で彼らを利用し、そして戦争に“勝利”し、再選を果たしたあと、ヒーロー禁止を法律で打ち出す。

この映画では、人が「力を持つ」とはどういうことか、核戦争の是非論を含め、シリアスにその主張が展開される。ここにも9・11以降、多くのアメリカ映画に見られる「強いアメリカ」への懐疑心が垣間見える。

映画は何者かによって殺されたヒーローの謎解きを軸にしたサスペンスタッチで物語が進んで行くが、決して誰もが親しみやすい作りではないものの、この映画でのヒーローたちの葛藤や悩みは、そのまま現在のアメリカ社会の葛藤や悩みのようにも見える。

庶民を闘いによって守る「ヒーロー」の存在を通して、誰の人の心にある「正義」と「悪」を描いた、という点では昨年の「ダークナイト」に共通する。事件を追うロールシャッハの顔の変化、そして彼が振るう凄まじい暴力描写こそが、実は「正義」と「悪」とは紙一重であることを物語っている。

ちなみに、「仮面ライダー」も「ウルトラマン」のシリーズの中にも、「人間」と「ウルトラマン」の関係性に言及した「ウルトランティガ」や、「変身」を人類の「進化」と捉え、怪人の存在を「進化を防ぐ神々の所業」と位置付けた「仮面ライダーアギト」など、これらの矛盾と立ち向かった、素晴らしい傑作がある。

しかし、アメリカの「ウォッチマン」や「ダークナイト」ほど、一般的な評価にはなってないのが現状である。

これは「ヒーロー」に対する文化の違いと言えばそれまでだが、悪を倒すヒーロー、という単純にして複雑な物語にこそ、現代社会に潜む問題を描けるのでは、と思うし、この「ウォッチメン」や「ダークナイト」がそれを証明している。

日本には素晴らしいヒーロー物のコンテンツがたくさんあるのだから、これらの作品群を凌駕する和製ヒーロー物が、もっともっと作られてもいいと思う。
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今夜が4回目!!  映画つれづれ

先週のシネKINGは、MOVIX周南からお届けしました。

紹介した映画は「レイン・フォール/雨の牙」と「グラン・トリノ」、「今日のうんちく」コーナーは「母べえ」でした。

きょう5月1日深夜は、いよいよ4回目の放送となります。

シネマスクエア7からで、紹介する映画は「旅立ち〜足寄より」と「余命1ケ月の花嫁」です。

「今日のうんちく」が何かは、オンエアをお楽しみに!!ちょっぴり、マニイの自慢話みたいになっている・・・・かも。

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劔岳 点の記  新作レビュー

観た日 3月某日 ★★★★★

「本物を撮る」ことにこだわり、2年間、スタッフ、キャストが劔岳でともに山ごもりをしながら、CGや空撮などは一切使わず、ただひたすらに撮影をした力作。そのベールを脱ぐのは6月20日なのだが、いち早く試写にて鑑賞させて頂いた。

最近のCG一辺倒の映画が、全て馬鹿馬鹿しくなるような、本物の輝きに満ちた映像であり、「映画」であった。

観る前は、素晴らしい景色が羅列しているような、記録映画のような作品かと想像していたのだが、それはいい意味で裏切られた。

確かに映像も素晴らしいが、この映画は、山に登る男たちそれぞれの想いが緻密に描かれていて、難攻不落の「劔岳」をストーリーの中心軸にしっかりと置き、きちっとまとまった、一本筋の通った「物語」を形成している。

そういう意味では、どんなに大変な撮影ではあっても、それを必要以上に強調することもなく、あくまでドラマ=物語に必要なシーンの一つとして、風景が存在している。圧倒的な景観も、まるで俳優の「1人」のように、そこに存在しているのだ。

俳優たちが圧倒的な困難な状態で演技をし、セリフを喋っている点も、スクリーンの中で展開している物語上の困難さと上手くリンクしていて、いい効果になっている。

物凄く苦労をして撮っているのに、そこを変にいばらず、ストーリーの邪魔になるわけでもなく、一本の映画の中にさりげなく織り込んでいる辺りは、さすがに木村大作監督。「八甲田山」「復活の日」「赤い月」など、困難な自然の中の撮影をこなしながら、ドラマ的にも一流の「絵」を創り出してきた名カメラマンならでは。

映画では、地図そのものの作成よりも、日本で最初に劔岳に登頂することにこだわる軍の上層部や、主人公たちよりも早く登頂しようとする日本山岳会のメンバーなどを描きながら、目的のため、黙々と挑み続ける男たちの姿とその想いが綴られていく。

「なぜ、山に登るのか」。それは、その男たちにとって、仕事であるからだ。それ以上でも、それ以下でもないのだ。周囲の過大な期待があろうとなかろうと、誰に評価されようとされまいと、ひたすら「仕事」に励む男たちがいる。

そこには、山に挑む男たちの子や妻の想いも描かれる。ここで描かれる「美しさ」は、景観以上に美しい、日本人がかつて持っていた心の「美しさ」だろう。実は、過酷な自然での撮影も、実はその心の美しさを描くための手段に過ぎないのではないか。素晴らしい景観は、その「心の美しさ」を描くための偉大なる演出である、と感じた。

浅野忠信の自然な佇まい、香川照之の秘めた熱さ、宮崎あおいの凛とした美しさ、松田龍平の人間らしさ、モロ師岡、蛍雪次郎らの自然体な存在感、役所広司の重さ等々、俳優さんたちもある種の「覚悟」を持ってこの映画に臨んでいる感が伺える。

安易な企画の日本映画が多い中、「映画」そのものの存在意義を問う、傑作である。
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