ROOKIES  新作レビュー

観た日 5月某日 ★★

映画って、主人公たちに対する「対比」が必要ではないか、と思う。とくにスポーツ物の場合、そこを吹き飛ばすのはどうだろうか。

野球は、試合の相手があって成り立つ。相手を吹っ飛ばして、チーム内で泣いたり、ケガをしたりしても、何だか独り舞台のようだ・・・と思うのは、僕だけだろうか。

原作コミックでは、相手となった笹崎高校のドラマが、きちんと描かれている。

かつて自分が選手であり、挫折も味わったからこそ、笹崎の監督は管理野球を徹底している。かつて天狗だった川上投手を育てあげ、選手たちの苦悩も十分理解している。

その中で、破天荒だが、ひたすらに熱く、バカのように立ち向かう川藤監督、そしてニコガクナインに心動かされ、やがて熱く、戦っていくのだ。

この「対比」があってこそ、ニコガクのチーム内のドラマも生きると思う。だから、テレビのドラマを見てないと、何故彼らがそこまで「夢」に対してひたむきなのか、今一つ理解できない。

もちろん、この映画だけでもストーリーや背景は分かるように作られてはいるが、どうしてもドラマを見ないと補完できなくなっていのは、テレビドラマの映画化である以上は仕方ないだろう。

クライマックスでボロボロに泣く球児たちは感動的だが、こちらは感情移入して観ている訳で、状況的に、まだ試合は終わってないし、観ている方がハラハラしてしまう。これだと試合は中断してしまうし、もし打たれたらどうするのよ、と。

「映画の中の人物が泣いちゃあ、いけませんよ。見ている人は泣いてもいいけど」とは、降旗康男監督の言葉である。スクリーンの中で展開される感動的な物語や情緒に泣かされるならともかく、登場人物のストレートな「涙」に「泣く」のは、これは「映画に感動する」ということとは、ちょっと違うように思う。

散々いろいろ書いたが、作り手と演じている俳優さんたちの熱さと真摯さは、きちんと伝わる。

僕の息子たちがこのドラマの大ファンで、映画も初日に観に行って大感動していた。

僕も息子たちに付き合ってテレビシリーズは全話観ていて、そういう僕も、最後は、不覚にも涙が止まらなかった。

この映画を小中学生たちが観て感動するのは、いいと思う。スクリーンならではの迫力もある。ただし、こういう映画ばっかり、というのも、ちょっぴり困るような気がするのだ。

5

マイマイ新子と千年の魔法  新作レビュー

観た日 5月某日 ★★★★★

恐らく日本一早いであろう、舞台となった山口県防府市での特別先行試写会で観賞させて頂いた。

アニメとしてのクオリティが、実に高い。

「千と千尋の神隠し」を想起させてくれたが、片淵須直監督は宮崎駿監督作品「魔女の宅急便」「名探偵ホームズ」で監督補をした方だった。

昭和30年の山口県防府市。1000年前の平安時代、このまちは、国衛と呼ばれていた。確かに大昔も人々の暮らしや営みがあったこのまちで、自由に生きる子どもたち。

かつて、僕たちが野や山で遊んだとき、田んぼや神社の境内の裏側に、とてつもない「何か」を感じる瞬間があった。

それは闇なのか、何か神秘的なものなのか、それは分からないけれど、そんなものを感じながら、子どもたちは日々を送っていたものだ。

そして家に帰れば、そんな「何か」を今に伝えてくれる、僕の家で言えば、祖母がいた。

「あの山には●●がおるから、行っちゃいかん」「あそこは昔、●●がおって、おばあちゃも、●●をしたもんじゃ」などなど。

そのおばあちゃんの存在もまた、神秘的だった。いつも着物を着ていて、顔はしわくちゃで、その存在感と怖さは独特で、あのころ、家族という日常の中に、神秘的なものが確かにいたのだ。

この映画は、そんな昔から続く神秘的な「何か」を感じながら、その「何か」が住む自然と一体となりながら、伸び伸びと遊び、友達同士の絆を紡いでいく、「子どもたちの姿」が生き生きと描かれる。

これが現代となり、子どもたちも文明に慣らされ、その「何か」も見えなくなり、いつしか「闇」の住民たちも病んでしまっている・・・そんな世界観をアニメーションとして見させてくれたのが、宮崎監督の「千と千尋の神隠し」だったように思う。

作品の世界観も違うので、比べようもないのだが、この映画は、不思議と「千と…」を連想させる。しかし、「崖の上のポニョ」もそうだったが、「千と…」以降、終末観的な物の見方に救いを求めているような宮崎監督の作品群に対し、この映画は、不思議な明るさに満ちている。

「となりのトトロ」に見られたように、かつての子どもたちは、神秘を力にしていた。恐らく日本中の子どもたちがそうだったであろうと思われる、かつての子どもたちの姿が、この映画にも、存在している。そういう意味では、宮崎監督のお弟子さんとも言える片淵監督が、この映画を作っていることはとっても興味深い。

映画は新子が友達のために、大人の世界、いわゆる「現実」に立ち向かうエピソードがクライマックスとなっていくが、それが「成長」になるのかどうか。そこは観客の想像に委ねるところだろうが、余韻を残すラストがまたいい。
3




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