ターミネーター4  新作レビュー

観た日 6月某日 ★★★★

恐らく、ジェームズ・キャメロン監督からすれば、「ターミネーター」という作品は、第1作で終わっていたのだろう。それほどに、このシリーズの第1作は、完璧な構成と面白さを持った、SFパイオレンス・アクションの傑作だった。

しかし、低予算ながら世界中で大ヒットし、当時は人気が出かかっていたものの、筋肉ばかりが話題になって正直、演技も下手だったアーノルド・シュワルツェネッガー現カリフォルニア州知事を一躍スターダムに上げた作品だけに、ハリウッドは当然、パート2を求めてきたことは、僕でも容易に想像できる。

恐らくキャメロン監督も悩んだろう。大ヒットした作品のパート2だが、スターになったシュワちゃんを今更パート1と同じ悪役にはできない。

そこで、キャメロン監督は考えた。未来の救世主となる少年、ジョン・コナーとその母親を殺すため、別の新型ターミネーターをタイムスリップさせ、前作では悪役だった旧式ターミネーターを正義として戦わせる、というアイデアを。これはよかった。

「ターミネーター2」はパート1とは違った意味で、完璧な娯楽作品として傑作だった。パート1で提示された、核戦争が起きるはずの未来を変える、というテーマ性を打ち出し、反戦や核の恐ろしさを描いたことで物語に深みが出た。

ワイヤーを打ち消したり、それまで違和感があったCG合成を、実写の質感に合わせるという、今では主流になっているCG新技術がこの映画によって確立され、それを駆使したことで、これまでは考えられなかった派手なアクションや迫力あるシーンが可能になった。

キャメロン監督は、前作を一度解体し、世界感を繋ぎながらも、アクションと核戦争の脅威、という点から見た新しい世界を構築した。これは、サスペンス・ホラー映画の大傑作「エイリアン」の続編を撮る、という難しいアプローチに対して、母性VS母性のアクション、という新たな機軸で取り組み、前作とは違った意味でまたまた大傑作になった「エイリアン2」で見せたキャメロン監督の体験が生きたのだと思う。

「エイリアン」第1作でギーガーがデザインしたエイリアンはどう見ても、男性器のシンボルなのだが、これを「女性=母親」に変えて、子のエイリアンを守ろうとするエイリアン・クイーンと、同じく生き残った少女を救うため、ヒロインのリプリーがお互いの母性を賭けて戦う、という展開には驚いたし、シビレた。

さて、この「ターミネーター」のパート4だが、パート2で回避できたはずの「審判の日」が起きたあとの物語であり、パート3で出てきたジョン・コナーの恋人も登場していることから、ラスト近くで「審判の日」を迎えてしまった、ジョナサン・モストウ監督による第3作目の設定を踏襲しているようだ。

だが、女ターミネーターというアイデアと、チェイス・シーンなどはなかなかよくできていたパート3だが、正直、1作目と2作目の面白さには全く追いつけてない感があり、イマイチだった。

それは作り手も一緒の思いだったようで、設定は受け継いでいるものの、パート3の世界観や雰囲気はバッサリ切り捨ててある。その代わり、1と2でのエピソードやセリフを巧みに取り入れ、オマージュを捧げながら、とくに1作目に漂っていたダークな終末的な雰囲気を全編に漂わせて成功している。

この映画ではマーカスという半機械の人間が出てくるが、このマーカスの苦悩を描いたことで、このシリーズで描かれてきた「機械文明への警鐘」というシリーズ全体を貫く深いテーマがより明確となった。未来の話ではあるが、現実的な風景描写が戦争映画としての側面も濃く見せる。

また、この映画は主人公ジョン・コナーの成長物語でもあり、自身の父親でもあるまだ10代のカイルとの出会いが描かれるが、この辺りは1と2を観てないとサッパリ何のことか分からないだろう。

お話の展開はツッコミ所も多いのだが、いろんなターミネーターが出てくる楽しみもあるし、アクションのグレードはかなり高い。過去を抹殺するため、未来から刺客が訪れる、というタイムパラドックスの面白さを含めた過去作のシリーズの魅力には正直乏しいものの、これはこれでなかなかの見応えがあり、早く続きが観たい、と思わせてくれる。

映画雑誌によると、完成された作品群の続きを依頼されたマックG監督は、悩んでキャメロン監督に相談したのだそうだ。するとキャメロン監督は、上記の「エイリアン2」を引き受けた話をして、励ましたのだそうだ。

なかなかに深イイ話だが「前作がホラーなら、今度はアクションだ!」と取り組んだキャメロン監督に対して、「過去シリーズがアクションなら、今度は戦争映画だ!」と取り組んだマックG監督の意気込みは、しっかりと伝わる作品になっている。

そして、過去シリーズへのオマージュは、もちろん監督がこれまでの作品を好きなこともあるだろうが、励ましてくれたキャメロン監督への感謝と尊敬の表れなのだろう。

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スター・トレック  新作レビュー

スター・トレック
観た日 5月某日 ★★★★

いやあ…JJエイブラハムさん、やってくれました。

恐らく、日本ではSF物、宇宙物は一部を除いてなかなかヒットしないし、このシリーズも長くやってマンネリ気味だったから、厳しいだろうな、と思いつつも、テレビドラマ「LOST」や「クローバーフィールド/HAKAISHA」のエイブラハム監督が手がけ、本国での評判も上々と聞けば、SF者の僕としては、こりゃあ観に行かなきゃなるまい、と公開初日の初回、早速行ってきた。

どえらく面白い、一本である。スペースオペラ(最近はこういう言い方はしないか…)でこれほど血沸き、肉躍ったのは、久しぶりだ。

「スター・トレック」シリーズは全世界にトレッキーという熱狂的なファンがいるが、僕は正直、このシリーズを一応は観てはいるものの、そんなに熱心なファンではない。

テレビシリーズのオリジナルキャストが出演していた劇場版は全作観ていて、とくにエンタープライズ号のクルーたちが、未来を救うため、絶滅したクジラを求めて現代にタイムスリップする「スター・トレック4/故郷への長い道」は傑作だし、オリジナルキャスト版の最終作となった「スター・トレック6/未知の世界」は面白かった。

しかし、他の作品は、正直、駄作ではないか、と思えるものもあったし、キャストを一新した新シリーズは何作か観たがどうも乗れず、少し斜め見していたのは事実なのだ。

それが、この新作は、実に面白くてエキサイティング。テレビシリーズ、映画で展開してきたお話の以前、カーク船長の若かりし頃を描いたのが今回。いわゆる最近流行りの、昔の作品はそれとして、ひとまず置いて新たに生まれ変わらせる、というパターンだ。

シリーズのツボや約束事をしっかりと押さえながらも、物語展開の妙やスピーディーさ、SFXの凄さという点では、正直、このシリーズのこれまでの映画版を遥かに凌駕している。このパターンで成功したのは、最近では007シリーズの「カジノ・ロワイアル」だろう。あの作品も、ショーン・コネリーの傑作群はそれとして、見事に007が持つ本来の面白さを現代に蘇らせた傑作だった。

カークの父親が艦長を務める宇宙船が突然、謎の宇宙船に襲われ、その最中にカークが誕生する、というプロローグからして観客を引きつける。そこからカークがエンタープライズに乗るまでの話が展開していくが、おなじみのクルーやエピソードを交えながらも、初めてこのシリーズを観る人にも分かるようになっている。

成長物語としても、優れた戦争映画によく見られるひとつのシミュレーション映画としてもよくできていて、先が読めず、ハラハラドキドキさせてくれる。元祖スポックのレナード・ニモイが重要な役で出てくるのも嬉しい。

で、僕はオープニングからあのテーマ曲が出ないことに不満だったのだが、ラストに…。やられました。涙線大爆発。エンドロールで大号泣したのでした。

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お買いもの中毒な私!  新作レビュー

観た日 5月某日 ★★★

※少々、ネタバレ的な要素もあるので、御注意ください。

ライトなコメディなのだが、楽しめる要素がいっぱいで、最後まで飽きさせない。

お買いもの中毒からなかなか抜け出せないヒロインに、マネキンが買いものをするよう誘惑する、というシーンが笑える。

ここのVFXは実に見事で、こういう日常的なお話の中で、こんなところにさり気なく物凄い特撮技術を使うのは、さすがに「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「ナショナル・トレジャー」のジェリー・ブラッカイマーがプロデューサーだけある。

主演のアイラ・フィッシャーは、本当は33歳で落ち着いた感じの女優さんのはずだが、25歳のオキャン(死語ですな)なギャル(これも死語)を好演している。

まあ、予定調和で、観客の予想を裏切らないお話なのだが、ヒロインがカードローン地獄にはまっているのに、どこかとぼけながらも違う焦点で記事を書いていくうちに、経済社会の本質を突いていく金融ジャーナリストに成長していく、という展開はよく練ってあると思う。

そこに恋が絡んで、というのはいかにも、のアメリカンドリームなのだが、あまり目くじらを立てても仕方がないだろう。深くはないが、カード一枚あれば何でも買える、という経済優先の社会への皮肉も、一応は描いている。

ただし、僕も借金には苦労したどころか、かなり究極なところまで追い込まれた経験があるので言わせてもらうが、これほどの借金を背負ったにしては、ヒロインの意識は、余りにも甘すぎる。借金取りの男を、ただの意地悪に描いている点も、少々気になる。

結果的には、自分の弱さを克服していく、という展開ではあるのだが、そこも、ちょっと甘い。ただし、ラストの爽やかさでちょっと救われているかな。

それと、ヒロインの父親役で、ジョン・グッドマンが出ていてビックリ。久しぶり、グッドマンさん、という感じ。僕はこの役者さんが大好きなのだが、なかなかに軽くて笑わせてくれ、ちょっぴり渋さもあって、やっぱりいいなあ、と思ってしまった。


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