ハゲタカ  新作レビュー

観た日 6月某日 ★★★

日本を代表する自動車メーカー「アカマ自動車」が、中国系ファンドに狙われる。

赤いハゲタカと呼ばれるファンド・マネージャーと、これを阻止しようとする“ハゲタカ”こと鷲津の攻防を描く、骨太な経済ドラマだ。

NHKで放映されたテレビドラマ版は僕も全話観たが、これはなかなかの面白さで、難しい経済用語が飛び交う中、企業買収をめぐる人間同士の悲哀や怒り、日本社会の矛盾などがテンポよく描かれた、実に秀逸なドラマだった。

何より、ありがちな恋や家族の話などは一切ないのがいい。テレビ記者役でヒロインも一応出てはいるが、そのキャラクターは主人公がなぜ厳しい企業買収の世界に身を置くことになったか、そのきっかけを握る重要な役どころ。恋の対象等では決してなく、一見非情に見える主人公の人間性が垣間見えるための存在として描かれているのが好感が持てた。

で、この映画版だが、“赤いハゲタカ”のキャラクターが少々典型的な敵役なのが気にはなったものの、現代中国の格差社会と、かつて日本の高度経済成長のシンボルでもあった自動車産業への想いをベースにしながら、国をも巻き込んで展開する巨大企業の買収劇は見応えがあった。

ドロップアウトして海外にいた鷲津が日本に帰り、カンバックを決意し、カジュアルな私服からスーツに着替え、トレードマークのメガネをかけて戦闘態勢になるシーンは、サラリーマンを経験した男性なら、誰もが燃えるところだろう。大森南明のカッコいいこと!!

形勢を鷲津が逆転する辺りからは、その方法も含め、今の経済や金融を知りつくしたうえで練られたアイデアが炸裂し、下手なアクション物より興奮できる。是非、日本映画界はこの作品をきっかけにして、こういう大人が楽しめる日本ならではの良質なエンタテインメイント映画をもっともっと送り出してほしいな、と思った。

ただ、これは「キネマ旬報」でもある評論家氏が指摘されていたが、照明を暗目にして画質の荒い画面にしている点は効果的ではあるものの、ドラマでは活きていた余白の多い画面は、映画館のスクリーンサイズでは時折スカスカに見えてしまい、ちょっと辛い、と思ってしまった。

テレビで観るドラマと映画館で観る映画では、画面の作り方は違うと思うのだが、テレビドラマでは効果的な演出であっても、それをそのまま大スクリーンで展開されても、同じ印象を観客が持つとは限らない。

これはモニターで演出するのが主流になっているのも原因があるのかもしれないが、映画を観ながら、もしかしたらモニター上の画面が何十倍にもなって映し出される、ということを考慮して演出しているのだろうか、という疑問が持ち上がったのも事実である。

さて、映画を観たあと、原作「レッド・ゾーン」を読んでビックリ。原作では、“アカマ自動車“の本社は、「山口県赤間市」にある、という設定だったのだ!! 原作小説ではたびたび、その「山口県赤間市」が登場するのだった。

“アカマ自動車”のモデルは当然、ト○タだろうから、原作で山口県の企業と設定されていて驚いた。世界的な会社になって、中枢は東京にあっても山口県に本社を置いたまま企業活動を展開しているのは、ユ○クロを運営している実在の会社があるので、もしかしたら作者はその会社をイメージしたのかもしれない。

もちろん、「赤間市」なんて市は、山口県に存在しない。その名前からして、恐らく下関市をイメージしたのだろうが、もし、下関市に、世界的な自動車会社の本社があれば、山口県の経済は根本的から変わっていただろうなあ、と想像してしまう。

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