沈まぬ太陽  新作レビュー

★★★

3時間22分の長尺を感じさせないのは流石、と思った。

御巣鷹山への墜落事故から入る導入部もいい。そこから企業体質に翻弄される主人公の人生が描かれるが、働くという意味や、企業の在り方というテーマが浮かび上がる。

この映画の公開直後、日本航空の事実上の倒産が決定的になったのは何とも皮肉だ。

原作小説は何度も映像化が企画されながらも挫折したらしく、この映画化に際してもモデルになった日本航空からは抗議があり、しかるべく所からは圧力らしきものもあった、という。

最近の大作映画としてはテレビ局が製作委員会に入ってないのもその辺りが原因なのだろうが、それにしてもこの作品が堂々と公開されたのは、ナショナルフラッグである実在の企業が凋落したからだろうし、以前よりある種の力が及ばなくなったのだろうか、といぶかってしまう。その辺は、やはり時代の流れを感じる。

主演の渡辺謙さんは熱が入っている。その熱に導かれ、物語も熱を帯びていく。

面白いし、飽きさせないが、企業と政治の癒着という物語の幹において、何か後ろに大きな“闇”がある、という感じは何故かしなくて、オジサマたちがこそこそと悪事をしている、という印象を受けたのは僕だけだろうか。

大企業が個人を犠牲にする体質が日本の戦後社会で生まれ、それが高度経済成長を生む一方で、国家権力を握る人々の思惑によって、個人の力では到底及ばぬところで、多くの人々が犠牲になっていった。

山崎豊子さんの原作では感じられる、その“闇”のようなものが、この映画では多少不足している。

その“闇”こそが、あの大事故を生む原因になったのでは・・・とも深読みできるが、この映画は、残念ながらそこまで踏み込んでないように思った。

出演者はみな熱演だが、その中で三浦友和さんの存在感は抜群。企業の論理や権力に立ち向かう主人公に憧れながらも嫉妬し、自らのモラルを捨て去り、自分を守るサラリーマンを好演している。単なる悪役に見えないのは、三浦さんの魅力故だろう。

5




AutoPage最新お知らせ