踊る大捜査線3 ヤツらを解放せよ!  新作レビュー

★★★

「踊る」に関して言うと、僕は、最初のテレビシリーズが好きだった。

僕は記者時代、警察担当の経験もあるが、現場で会う刑事さんは本当にあんな感じで、組織同士の対立や事なかれ主義の上司など、リアルに感じたものだ。

とくに、僕が担当していたある警察署の次長さん(映画で言うと、秋山副署長さんの立場)は、机の横に、オモテからは見えないよう本棚を置いてあって、そこにはゴルフの本がぎっしり。いつも、ゴルフの本を読みながらゴルフの話しかせず、どこか適当感もあって、このシリーズで“スリーアミーゴス”を見たとき、この次長さんを思い出して、思わず吹き出してしまった。

犯罪に対して熱く対処すれば対処するほど、ある意味「お役所的」な警察署を壊し、周りを巻き込んでいく青島刑事の姿は毎回楽しみで、コメディタッチから段々シリアスな展開になり、ついに刑事に重傷者が出る中、感動的なフィナーレを迎える最終回までの3話は、スゴイものがあった。

それからスペシャルドラマを経て映画化1作が公開されるが、この1作目はテレビシリーズの基本だった、コメディから組織内の対立を経て、シリアスな犯罪に迫る、という展開を2時間ほどでやるのに、ちょっと無理な感じがあった。

面白かったが、組織内の対立に重きを置きすぎたのと、映画版ということで「天国と地獄」や「羊たちの沈黙」などの名作映画をパロディにするなど張り切り過ぎ、詰め込み過ぎの感もあった。犯人役の小泉今日子の役どころなど、結構ふくらませることができる面白いキャラクターなのに、中途半端だなあ、と思ったものだ。

そして2作目。こちらはシリーズが持つ小ネタを展開しながらも、そこにあまり執着せず、次々と発生する事件に振り回される刑事たちを描くことで、エンターテインメイントとして成功していたように思う。

ただし、このパート2も、所轄と本庁の対立という構図にこだわり過ぎていて、それもシリーズの魅力のひとつではあったけれども、少々荒唐無稽になりすぎた感はあった。「砂の器」のパロディはそのまんまで笑ったけれど。

それで、満を持してのパート3だ。7年ぶりの本編であり、脚本の君塚良一氏をはじめとする、作り手の意気込みは十分に感じられる内容だったと思う。

ある意味の原点回帰であり、警察署の引っ越しを軸として、そのドタバタを、いつもの小ネタを交えて見せながら、事件に挑む青島刑事たちを描く。

係長に昇進した青島刑事にある悩みを持たせていたり、組織内の対立も、若いエリートを出すことで今までと違う展開を見せるなど、「踊る」の世界観も、時代とともに移り変わっていることを示したことは、よかったと思う。

映画の本筋としての犯罪の物語はよくできていて、秀作「誰も守ってくれない」を経て、君塚氏の脚本の力技も感じられる。群像劇としての整理は決してよくできている、とは思えないところはあるものの、本広克行監督の演出もいい意味で変わっていない。

映画のキーとなる犯人については、僕が1作目で感じた思いを、作り手も感じていたのだ、と思って嬉しくなった。

久しぶりの「踊る」本編ということで、ファンが喜びそうな詰め込めるべきネタを全て詰め込み、そのうえで刑事や犯罪を描く「映画」を作ろうとしているので、このシリーズのファンの人、普通に「映画」を楽しみたい人、どちらとも中途半端な感じを受ける人は、多いかもしれない。

作り手は、そこのバランスを取ったと思うが、ネットなどで賛否両論なのは、その辺りが原因かも。


3

孤高のメス  新作レビュー

★★★★★

この作品は、試写会で鑑賞。2日後に「告白」を初日に観たので、今年の日本映画で僕の初の5つ星映画が、連続して出てきてビックリ。

…さて、僕には実は姉がいて、今で言う医療ミスで、9歳で亡くなっている。

聞くと、重症の肺炎を起こしていながら、かかりつけの医者が「ただの風邪だ」と言うので、そのまま亡くなった。

父は、悔しくて、悔しくて、その医者を恨みながら、姉の亡骸を一晩中抱きしめて泣いたという。

子どものころ、今は亡き母からその話を聞き、あの厳格な父親がそんなことをするのだろうか、と驚いたことがあるが、僕も父親になった今、父のその想いは痛いほど分かる。

ちなみに亡き姉の写真を見ると、僕の長女の「正美」にそっくりで、86歳になる父は「いつか、正美に家に泊まってもらい、カレーライスを作ってもらいたい。されまで死ねん」などと言っている。いろいろな想いが、あるのだろう。

で、この映画だが、主人公の外科医は、ブラックジャックのような神業的な手術技術を持ち、性格も素直で、人格も素晴らしい。

だけど、その設定が嘘くさくないのは、堤真一の素直で気負わない演技と、リアルな手術シーンの賜物だろう。そして、何より、彼が誠実な外科医になった背景として、幼いころ、医療ミスで母親を亡くした、という設定が効いている。

悪役の医者がありがちなキャラクターではあるが、主人公との対比、という意味ではあのぐらいはアリ、だと思う。その存在感があったからこそ、主人公の崇高な姿勢が浮き上がった。

この映画は、どんな状況であれ、目の前の命を救う、という医者の本来あるべき姿を、ストレートに、あまり余計なエピソードを描かずに、一本筋の通った物語として描いている。普通、ありがちな「恋愛」方向にも一切、走らないのもいい。

そこに、日本初の脳死肝移植のエピソードが、主人公たちの周りの人間模様とリンクしていく。この辺りは出来すぎのようにも思えるものの、全てのエピソードを「手術」シーンに集約させる手腕が見事で、「人を救う」技術をしっかりと観客に見せ、体感させることで、ゴチャゴチャ言わずとも、その精神性をしっかりと伝えることに成功している。

ここで描かれているのは、職業をきちんと全うすることの大切さ、だ。医者や看護師は、命を救い、病気やケガになった人を治療するのが仕事である。だから、仕事に徹する。

当たり前と言えば当たり前なのだが、僕の姉の例のように、なかなか当たり前になってないのも現状だろう。

観終わったあとに知ったことだが、成島出監督も、肉親を医療ミスで亡くした経験があのだという。その想いがあるからこそ、のこの力作だろう。

ヒロインを演じた夏川結衣の凛とした眼力にも感服。手術シーンにおける、「歌」にまつわる、ユーモラスなエピソードも、映画全体の緊張感を、いい感じで緩和している。

年代設定が20年前で、実在性抜群の市民病院の様子など、美術をはじめとするスタッフの苦心も伝わってくる。日本映画の「力」を感じさせてくれた、秀逸な作品だった。

4

近況です・・・  映画つれづれ

本当は、このプログは、映画だけでなく、僕の仕事やいろいろな活動のことも書くつもりでいるのですが、更新そのものが追いつかない状態なので、申し訳ない限りです。

…それで、久しぶりに近況について書きますね。

まずは、NHKのHPで連載させて頂いています、「ハートネットピープル」のエッセイが更新されました。

タイトルは「今再び、苦手と向き合って」です。是非、読んでみてください。↓

http://www.nhk.or.jp/heart-blog/people/oohashi/post_440.html

それから、7月4日は、2つのイベントに掛け持ちで参加させていただきました。

ひとつは、山口県下松市の文化ホール、スターピアくだまつでお昼に開催された、ベストセラー「五体不満足」で知られる、乙武洋匡さんの講演会。

司会を担当させて頂き、高校生たちと乙武さんとのディスカッションでは、コーディネーターを務めさせて頂きました。

スポーツライターを経て、この春までの3年間、公立小学校の先生を経験された乙武さんのお話は、大変に強く胸を打つもので、僕が上記の「ハートネット」で訴えてきたことと共通するものもあり、大変に感動しました。

ディスカッションでは、高校生たちの質問にひとつひとつ丁寧に、誠実に答える乙武さんの姿が印象的でした。

このときの感想は、またいつかゆっくりと書きたいな、と思います。

…そして、夜はスターピアくだまつと同じ敷地内にある、ザ・モール周南オープンモールで、僕が実行委員会の代表を務めている、トリプルセブンコンサート。

愛隣幼児学園・平田保育園の園児たちと先生方のハンドベル・歌で始まり、大道芸のストークバム様、ダンス&パフォーマンスの馬ザイル様、全体合唱指揮者の松本敏訓様、伴奏の松本紀志江様、司会の原田かおり様、本当にありがとうございました!

そして、特別ゲストに、手話を交えて歌を作詞・作曲し、歌われている、サインシンガーソングライターの渡辺りえこさんをお迎えしました。

その手話を交えた、優しい歌声にうっとり。1日2ステージで帰宅するとぐったりでしたが、いずれも心に響くイベントで、改めて「明日からも、人に優しくなろう」と思いました。
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