塔の上のラプンツェル(3D版)  新作レビュー

★★★★

六歳の娘と鑑賞。

目をキラキラさせて、「うわー」「きれい」を連発する娘。観終わって、「パパありがとう」と言われ、僕も至福の時間を過ごすことができた。

僕は娘の年齢のころ、叔父さんに連れて行ってもらったオリビア・ハッセーの「ロミオとジュリエット」が映画の原体験。子どもたちに映画の魅力を伝えることも大事な親の役割だ、と感じるとともに、娘が感動した最初の映画がこの作品でよかった、と思う。

キャラクターの設定や物語はやや弱いように思えたが、何と言っても、アニメのクオリティの高さは秀逸で、昨今のフルCGアニメの中では群を抜いている。フルCGでありながら、かつてのディズニーのアニメの名作、例えば「白雪姫」「ピーターパン」のようなセルアニメの質感を出すことにも挑戦し、見事に成功させている。

ミュージカル仕立てだが、楽曲のレベルも高く、メロディーは美しく、物語を見事に彩る。何より3Dのクオリティも高く、とっても効果的。無数の灯籠が空に浮かぶシーンは灯籠がすぐそばにまで近づくような質感があって幻想的だった。

正直、3Dの効果に疑問符が付く映画が多いが、3D映画にして観客から普段より高い入場料を取るなら、このぐらいのクオリティは欲しい。
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悲しみのミルク  新作レビュー

★★★★★

映画とは、余白に詰め込まれた、作り手の意図を感じる芸術なのだと実感する作品。

ペルーの若手女性監督が紡ぐ、独特な世界に魅了される。

最近の日本映画に見られるような説明過多は一切、この映画にはない。

ペルーでの内戦を背景にしながらも、直接的な表現はなく、ストーリーも緩やか。だが、その中で繰り返されるヒロインの歌声に込められた悲しさと切なさに慄然とする。

そして、ラストに込められた希望に救われる。登場人物の悲しさとは対照的な美しいペルーの風景と、象徴としての花、そしてジャガイモに深さが感じられる。

周南映画祭「春のシネフェスタ」にて鑑賞。ゲストに来られた白鳥あかねさんはベテランのスクリプター(記録)にして脚本家。川崎市の「しんゆり映画祭」代表でもある。

白鳥さんはこの映画を東京フィルメックスで観て感動し、同じくこの映画上映に情熱を注いだ女性スタッフとともに努力して「しんゆり映画祭」でこの映画を上映。しかし、良質な映画にも関わらず、配給がつかず、日本での上映が困難に。それでも白鳥さんらは奔走し、ついに全国公開にこぎつけた。

また、その直前、最初にこの映画上映に燃えた女性スタッフが急逝。悲しみと困難を乗り越えて、この映画は日本での陽の目を見た。周南では全国公開前の上映であり、東京フィルメックスにこの映画を紹介した同映画祭プログラムディレクターの市山尚三さん(映画プロデューサー)が周南市出身ということもあって実現した。

僕はトークショーの司会をさせてもらった。「悲しみのミルク」上映実現への道のりも感動的だが、映画黄金時代の日活時代から現代に至るまで「日本映画」を支え続けてきた数々のエピソードも興味深かった。

打ち合わせでは根岸吉太郎監督や池田敏春監督、神代辰巳監督らとのエピソードが面白かった。トークでは小林旭氏が日活の大部屋俳優時代、学校でのシーンで生徒役の1人で出演したとき、監督が「誰か歌ってみろ」と言うと、ほれぼれする美声で「会津磐梯山」を歌い、それがきっかけで小林氏は主役に抜擢され、「歌うスター」として売り出して必ず劇中で歌を歌うようになった、というエピソードを披露して下さった。

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