アジャストメント  新作レビュー

★★★

「ブレード・ランナー」などのフィリップ・K・ディック原作ということで、ハードなSFサスペンスアクションを期待していたが、ちょっと予想と違った。

ただし、サスペンス絡みの恋愛映画という見方をすれば面白い。

運命を操作する敵の姿の設定がもう少しハードなら、まだまだ抜群に面白くなったのでは、と思ってしまった。

マット・デイモン扮する主人公がオイタもずいぶんした最年少の国会議員、という設定が、定められた運命に挑戦する男、という物語に効いている。

ただし、選挙に落選した理由が下半身露出だったり、運命のバレエダンサーと出会う場所がなぜか男子トイレだったり、真面目な映画なのに、どこか変態チックな香りが漂うのね、これが。

まあ、主人公の過ちというのも、ストーリーの重要なぽいんとなのだけれども。あと、後半の「どこでもドア」チェイスが面白い。

0

ブラック・スワン  新作レビュー

★★★★★

痛い、痛い映画。身体の傷も痛いが、心の傷も痛い。

こういう、人の二面性を“痛く”描いた映画は過去にもあったが、この映画では、不安をあおる手持ちカメラでの映像と、VFXも駆使したホラー映画調の演出が、そんな痛みを執拗に、偏執狂的にこれでもか、これでもか、と描く。

恐らくそれがダーレン・アロノフスキー監督の狙いだろうが、これは好き嫌いが分かれるだろう。後半は完全なるホラー&サスペンスなので、ダメな人は絶対にダメだと思う。ちなみに、僕は『好き』である。これは好みの問題だと思う。

バレエの「白鳥の湖」と現実の物語をマッチさせていて、白鳥と黒鳥の対比を人間に置き換えている。バレエに限らず、「踊り」とは官能的であると僕は思う、クラシック・バレエが持つ清潔さと妖しさもまたこの映画の魅力だろう。

ナタリー・ポートマンが凄い。文字通り体当たりの熱演で、バレエのシーンのみならず、凄まじいまでの女性が持つ狂気と嫉妬を表現している。あと、ウィノナ・ライダーがおばちゃんになっているのにビックリ…でした。

同じ監督の「レスラー」も傑作だったが、肉体を鍛えた人の破滅性という点では共通点もある。

0

プリンセス トヨトミ  新作レビュー

★★★

もの凄い期待値で観たのでこの評価なのだが、面白いのは面白い。

父と子、というテーマもいい。

堤真一氏、綾瀬はるか氏、岡田将生氏のトリオは絶妙で、おかしみもあって、魅力的なキャラクターを創造している。重要な役を演じる、中井貴一氏も抜群の存在感だ。

ただし、せっかくの設定と奇抜な物語なのに、もう少し見せ方と物語展開に工夫をすれば、もっとワクワクしたのに、という感もある。

バリバリのメジャー映画なので仕方ないかもしれないが、感動的な展開に特化しすぎて、割と安易なツッコミ所を作ってしまったのは惜しい。

ただし、綾瀬はるか氏が見せるシーンは男性ならば必見。ちょっと不謹慎だが、これもまた映画の魅力だから仕方ない。ここをある週刊誌が特集していて、映画評論家の秋本鉄次氏が詳しくそこを解説していたのが、おかしくて仕方なかった。

秋本氏、キネマ旬報の連載も大好きだったが、こういう映画のエロ系話になると、必ず真面目に批評しているのがおかしい。

1

八日目の蝉  新作レビュー

★★★★★

「津軽百年食堂」のレビューと矛盾しているようだし、誤解しないでほしいが、「泣ける映画がいい映画」とは限らないものの、「泣けるいい映画」はこの世にたくさんある、のである。そういう意味で言うと、この映画は「泣けるいい映画」である。僕が今年、今の時点で一番スクリーンの前で泣いた映画はこの映画である。

映画を観たあとで原作を読んだが、上手い、と思った。小説は小説で味わいが深いが、この映画版は原作とは違うアプローチで人の破滅と再生を見事に描いている。

愛人の子を誘拐してしまう女性。映画は事件から20年後、成長した、誘拐された女性の目線から終始、物語が語られる。罪は罪、という非情さも描きながら、人の生き様こそが人の気持ちを揺さぶり、生き方を決める、という人生の深さが描かれる。

永作博美氏の評判がいいが、現代パートの井上真央氏がいいから、過去のシーンにぐっと来るのだと思う。ラストの井上氏のセリフが胸を打つ。

0

津軽百年食堂  新作レビュー

★★★★★

最近、泣ける映画がいい映画、という困った風潮がある。とくにアクション映画ではない、家族や恋人同士の人の絆、愛情を描いたような映画で「泣けないのはどうよ、」という風潮は、本当に困ったものだと思う。

この映画、家族の絆や恋を描いているが“泣ける”というタイプの映画では決してないが、人が踏み出す様を、丁寧に描いている。クライマックスのあとのラストカットも、あえてベタな感動を避け、心地よい余韻を追求している。これは作り手も意識している、と思う。

その、成長をしっかりと描いている点に、泣けずとも心が温かくなり、元気が湧いてくる。これこそが映画の醍醐味でもあり、心地よさであり、力でもある。

主人公は津軽の食堂の四代目。東京でバルーン・アーティストをしながら夢を見ているが、同郷の女性とルームシェアをすることになる。故郷の父親が倒れ、帰郷して店を切り盛りすることになるが…。

ただ単に主人公が実家を継ぐことを嫌っているのではなく、就職難から一度店を継ぐことを決意したものの、「店を軽く見るな」と言う父親との確執から家を出た、という点がポイント。この三代目の父親が決して店を継ぎたくて継いだ訳じゃない、という設定も効いていて、大森一樹監督の丁寧な演出が光る。

この物語に、初代の明治の話が絡んできて、このパートが映画全体に深みを出している。観光PRの目的もあるとは思うが、弘前の桜も美しい。大森監督が手がけた傑作「恋する女たち」などの青春映画の香りもあって、オリエンタルラジオの藤森慎吾氏の素直な演技に好感が持てる。

大森監督に直接お話を伺ったのだが、この映画はキャスティング、ロケ日程などが決まった時点でオファーがあったのだという。そこから監督が脚本に手を入れ、創り上げた。

監督を引き受けた理由が「過去と現代を行ったり来たり、大好きな『ゴッド・ファーザーpartU』がやれる、と引き受けた」というから、映画フリークとして有名な大森監督らしいなあ、と思った。

この映画は山口県でのキャンペーンを僕が企画させて頂いたのだが、キャンペーン中、キネマ旬報映画検定一級でもある大森監督と様々な映画の話をさせて頂いたのは、本当に光栄だった。僕は3級なので、「1級凄いですね」と言うと、「一級言うても、テキスト読んで、受験勉強すれば通るんやから。映画に愛を持っているか、これが大事だよ」との言葉に大納得。これからも、映画に愛を持ち続ける、と誓いました。

0

英国王のスピーチ  新作レビュー

★★★★★

堂々として、かつ淡々としているが、じんわりと心に染みる。コリン・ファースとジェフリー・ラッシュの名演が光る。

国民にスピーチをする立場にありながら、吃音がひどく、スピーチが苦手な王。彼の治療に向き合うセラピストと王の友情が軸だが、困難に立ち向かい、克服しようとする“人の様”がユーモアの中にも感動的に描かれ、その真摯な姿に感動する。

上手に喋ることが“上手いスピーチではない”。王が「彼はスピーチは上手い」とつぶやく、ヒトラーのスピーチ映像が印象的。全く違うが、チャップリンの『独裁者』を思いだした。

意外にも僕の周囲には否定的な意見をする方が多いが、アカデミー賞も納得の秀作。

0

奇跡  新作レビュー

★★★★★

ドキュメンタリーのように子どもたちの気持ちや表情を追いながら、大人たちがしっかりとした演技で脇を固める是枝裕和監督の演出が光る。

「誰も知らない」もそうだったが、あの作品と違うのは、映画全体を覆う雰囲気と子どもたちのエネルギーが向かう方向性が負に向かっていたのに対して、この作品はプラスの方向に向いていることだろう。

主演であるまえだまえだの2人は有名な小学生お笑い芸人だが、テレビで時折感じる“大人のような子ども”の感じはまったくなく、兄は繊細な表現を、弟は無邪気で子どもらしい“演技”を見せる。

是枝監督に直接お話を伺ったが、監督ご自身が父親になった、ということが「誰も知らない」のころとはまた違う、子どもたちに寄り添う映画に繋がった、ということだった。

この映画で子どもたちは冒険をする。どこか危なげなカメラワークと、繊細な子どもたちの様を捉えていることもあって、その行方と、タイトルでもある「奇跡」がどのように起こるのか、我々はハラハラしながら見つめている。

これは是非、劇場で観てほしいが、ゴールにある「奇跡」に、僕は号泣した。何気ない日常をきちんと描いた「映画」はやっぱりいい。子どもたちを温かく見守る大人たちの姿は、映画を観ている僕自身なのだ、と思わせてくれる心地よさが、この映画にはある。

1

ガリバー旅行記  新作レビュー

★★

誰もが知っているおとぎ話を最新技術で映画化。劇中、ガリバーが数々の有名映画の物語を“自分の話”として語るのが面白い。

ただし、ジャック・ブラック…好きなんだけど…このノリの悪さはどうだろう。

いや、ジャック・ブラックの“ノリ”はいいのだけれど、映画自体の“ノリ”が今一つの感が…いや、“ノリ”が悪かったのは、僕だけかも…。

「面白い」という方はたくさんいらっしゃるだろうし、僕も退屈はしなかったけれど、少し合わなかったかも。

0




AutoPage最新お知らせ