アルゴ  新作レビュー

この映画、公開間もない昨年の秋、東京に出張したときに丸の内ピカデリーで観ました。

どうしても観たくて、わざわざ時間を調べて、仕事の合間に時間を作った観に行きました。

その後、アカデミー賞の作品賞を受賞して話題になって、拡大公開もされましたが、何と言っても、我らがテアトル徳山の通常営業最後の作品でもあり、昨年12月28日、最後の営業日の最終回で2度目を鑑賞。

僕にとって、苦楽を共にしてきたテアトル徳山の通常営業(あくまで通常営業の休館であり、決して閉館ではありません!自主上映会は今も盛んに行われています!)のラスト作品なので、個人的にも思い出深い作品となりました。

で、あれですねえ。東京ではデジタル上映で、テアトル徳山ではフィルム上映でしたが、質感の違いに少し驚きました。

デジタルを否定はしないし、時代の情勢で仕方ないけど、フィルムはフィルムの良さがある、と改めて思いました。とくに中東の猥雑さや映画で描かれた事件の混沌さは、フィルムだからこそ、の迫力があったような気がします。同じ作品なんだけれど、違う味わいを感じました。

まあこれは、のちのちブルーレイ買って家で観た時もまた「違うなあ」と感じましたが。このときも、やはり「映画」は「映画館」、と改めて思いました。

さて、ベン・アフレックです。

「パール・ハーバー」や「アルマゲドン」の時の、頭の悪そうなアンちゃん、という印象はもはや遠い過去ですな。もともと、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」で、マット・デイモンとあの優れた脚本を練って創り上げた才覚の持ち主。最近は監督として、才気あふれる活躍ぶりを見せています。

この映画、時代の空気感をリアルに見せる、という、この手の映画で最も大切だけど実は最も難しいことを見事にやってのけていることが凄い、と思います。

この時代のイランの街並み、雰囲気、そして、取り残された大使館員を救うためでっち上げたハリウッドのニセ映画「アルゴ」の雰囲気。全て、そこにただならないリアルな香りが漂うからこそ、奇抜な脱出劇に緊迫感が生まれます。

70年代から80年代初めにかけて、ハリウッドでは「スター・ウォーズ」の影響で様々なSF映画が企画され、作られました。映画内に登場する「アルゴ」の設定や物語、作中にも登場するイメージボードなどは、本当にそのころのハリウッド製B級SF映画の「いかにも」の匂いが漂っていて、当時、その手の映画に狂っていた僕としては、懐かしくも嬉しくなったのでした。

で、ベン・アフレック監督の巧みさは、脱出をめぐるサスペンスフルな演出にありますね。前半、きっかけになる事件をじっくり見せ、CIAの内部と現地の緊迫していく情勢を上手く交互させて見せながら、クライマックスは短いカットの積み重ねで、脱出が成功するかどうかを、チョーハラハラドギドキさせながら盛り上げていきます!

サイコーだぜ、ベイビーっベン・アフレック、いつの間にか立派になられて…て感じです。

「実はこうでした」という、歴史的裏話的な面白さはもちろんありますが、何よりサスペンスとしてよくできている、この一点につきる、と思います。

点数は90点。
3

最強のふたり  新作レビュー

「最強のふたり」を観たのは、昨年、配給のGAGAさんの計らいによる業務試写でした。

そのとき、GAGAの方から伺ったこと。

評判になりながらも、日本での配給先が決まらなかったのが、「この映画を日本で公開したい」という、ある若い女性社員の熱意で実現した、ということでした。

いい映画であっても、劇場公開されない、なんてことは悲しいけれどある。ルワンダの内戦を描いた傑作「ホテル・ルワンダ」なんて、配給先がなかなか決まらず、日本公開を求める署名運動が起きたものなあ。

さて、その女性社員がどうしても公開したかった、という理由が奮っています。それは「この映画を観ると、元気になるから」。

なるほど、確かに、元気になる映画です。

福祉や障がいをテーマにしながら、重い訳でもなく、感動を押しつけるようなあざとさもない。どちらかと言うと、コメディの分野になるかもしれない。だけど、フランス映画らしい品もあります。

お金欲しさに、下半身不随になった大富豪の白人の介護者に応募して、なぜか採用された黒人の若者の物語。周囲の人が大富豪に対して“気遣い”や“遠慮”をするのに対して、彼は正直にまっすぐに、向かっていきます。

下半身に感覚があるかどうか、熱湯をかけるシーンなんてもあってドキリとするけれど、障がいがあるとかないとは関係なく、常に本音で接し、貧富はあっても対等な人間同士であろうとする彼に、大富豪も次第に心を開いていくのです。

この2人のやりとりが軽妙で最高なのだけれど、富は得ても人の心を得ることに不器用な大富豪に、彼が恋のアドバイスをしていく辺りから、この2人は本当の「最強のふたり」になっていったような気がしました。

この映画のポイントは、フランスで実際にあるという、黒人社会の底辺さにあるのだと思います。格差や意識の壁が、歴然とそこにあって、その壁をこの「ふたり」が乗り越えるからこその痛快さであり、そこをサラリと、だけどきちんと描いているからこそ、「元気になれる」のだと思います。

大富豪は身体のハンデを抱えているけれど、実は介護する主人公も、様々な「ハンデ」を抱えて生きています。でも、実は人は、誰しもなにがしかの「ハンデ」を抱えて生きているもの。そんな「ハンデ」を抱えている人同士だからこそ、お互いの足りない部分を補助しあい、超えることができる。

結局、人は人にしか傷つかかないけれど、人にしか癒されないことを、この映画は教えてくれます。

ハリウッドでリメイクされるという噂もありますが、今のハリウッドではこの「味」は到底出せないと思うので、リメイク作は凡庸になるんじゃないの、と思ってます。

点数は90点!
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