舟を編む  新作レビュー

良作。

「川の底からこんにちは」の石井裕也監督。

ユーモアとドラマのバランスがいい監督さん。29歳というから驚く。

人情話だけど、丁寧に演出している。コミュニケーションが下手な辞書編集者と、料理人を目指して修行中のヒロイン。

2人を結びつけるのは、2人が得意とする「言葉」と「料理」。それぞれが得意なもの、好きなものを通して、お互いの足りない部分を補っていく様と、足りない「言葉」を埋めていく辞書の編集作業が重なっていく妙味。

さらに印象的なのは、映画が進み、2人に溝が生まれたときもまた、冷えていく雑煮という「料理」を効果的に使っている点。

さらにさらに、「言葉」によって2人が再生していく様がいい。

ちょっと残念なのは、アクションがある、ないということではなく、人物描写が大人しすぎて、辞書の中の小さな言葉の文字のように縮んでしまった感を受けたことだろうか。

松田龍平さんが素晴らしい。85点。

5

ムーンライズ・キングダム  新作レビュー

個性的で作家性は際立つけれど、娯楽作として成立しているから素晴らしい。

エドワード・ノートンと、ブルース・ウィルスなど、ハリウッドの豪華スターたちが、楽しそうに演じている。恐らく、こういう作家性の強い、個性豊かな役が演じられる映画に彼らは出たいのだろうなあ。

日常からエスケイプしていく少年少女の話だけど、かなり独特な寓話的でユーモラスな映像センスとテンポの中にも、独特の世界観を持つ少年と、複雑な家庭で苦しむ少女の心の内側や痛みがきちんと感じる。

こんな映画を見せられると、「映画の持つ可能性」はまだまだあるんだなあ、と素直に思う。

あと、舞台がボーイスカウトで、スカウトというある意味特殊性のある世界がこの映画にいい味を出しているポイントのひとつだろう。90点。

1

渾身  新作レビュー

島根にこだわり、地域発ながら大手配給で次々と作品を発表している、我々地方在住映画発信考え中年男にとっては、お手本のような存在の錦織良成監督作。

実際の出来事をモチーフに、島根を舞台に抒情性を醸し出す、という意味では錦織監督の代表作「白い船」と通じる。あの映画は、個人的に大好き。子役だった濱田岳さんすげえ、とあのとき思ったけど、そのあと、本当にいい味の俳優さんに成長された。

島根県の離島で神事として行われているお相撲を題材に、島で生きていく家族の喪失と再生を描いた映画。

男の妻が亡くなって、その妻の親友だったヒロインと結婚して、前妻が残した娘がいて、その男が島をあげて行われる神事の相撲の選手に選ばれて…と文字にするとなんじゃそりゃ、という感じの物語になんだけれど、錦織監督、島の美しい実景を効果的に使いながら、時系列を崩すという映画ならではの手法、そして何よりヒロイン役の伊藤歩さんの素晴らしい演技によって、ヒロインが感じる罪悪感や苦しみから希望を見出す様を丁寧に紡ぎだしている。

同じ監督さんの「RAILWAYS」では、49歳の仕事男が電車の運転手になることを決意する心変わりする様が僕は今一つ理解できなかったのだけれど、今回は大納得。

そうした人間ドラマが、最後の相撲シーンに流れ込む様は、スポーツ映画の王道であり、この手の映画に重要な要素のカタルシスもきちんと感じられる。80点。

この映画のキャンペーンでは、MOVIX周南で、「シネキング」初の公開収録を敢行し、錦織監督のインタビューをお客様の前で実施しました。錦織監督、とってもいい方でした。
3

96時間/リベンジ  新作レビュー

ハリウッド映画のようなフランス映画だけど、無駄なところは一切省いて、90分そこそこの時間でツボをしっかり押さえてグイグイ引っ張る。

最近、2時間超えの映画が多い中、1時間半という、娯楽映画本来の定番時間を守るあたりがニクイ。

ストーリー展開に無駄な情緒性を挟まないところに、ハリウッドじゃないなあ、という感じ。

60歳のリーアム・ニーソンの魅力だけで引っ張っている感もあり。

元CIAの凄腕工作員だが、今は引退して年頃の娘を溺愛している、ちょっと迷惑なニーソンパパ(語呂がムーミンパパみたいだ)が、前作で娘を誘拐してパパにやっつけられたテロリストグループのメンバーのパパが、今度はニーソンパパ本人と元奥さんを誘拐しちゃう。

残されたど素人の娘をパパが遠隔操作しながら危機をどう乗り切るか、という展開になるここからがなかなかのアイデアで、かなり強引だし、相手もそこそこ強くそこそこ弱いけど、楽しめる。

舞台のイスタカブールは「007/スカイフォール」と一緒じゃん、と思うし、同じようなシーンもあり。60点。
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