きっと、うまくいく  新作レビュー

インド映画と言えば、24歳のころ、初めての海外旅行でインドに行ったことを思い出します。

新聞記者仲間の友人と一週間ほどデリーやジャイプール、タージマハールなんかを見て回ったですが、本当に面白くて、エキサイティングで、異文化が刺激的で、しっかりと腹もくだしましたが、物凄く楽しかった記憶があります。

ホテルで映画をたくさんやっていて、結構見ました。確か、ジャック・ニコルソンの「イーストウィックの魔女たち」をやっていて、「こんな映画しらん!」という友人に解説したのをよーく覚えています。

で、インド映画専門のチャンネルもあって、朝から晩までやっていて、どれもみんなひどいのだけどそのメチャクチャ感が楽しくて、友人はそのチャンネルをずーっと観ている僕を不気味がっていました。

どれもみんな基本的にアクション映画なのだけれど、2メートルほどの壁から降りるだけで何度もそのシーンが繰り返され、大げさな音楽がかかって、それでいて字幕がなくても分かるほどストーリーは単純で、ヒロインがやたら美人で、でもキスシーンなどは必ずなくて、途中で意味もなく踊りと歌が延々と出てきて、それはそれは、ビックリしました。

それからずいぶん経って「ムトゥ 踊るマハラジャ」を観て、「相変わらずだなあ」と思ったのだけれど、昨年「ロボット」を観た時は、もうビックリ。

インド映画的な歌や踊りは相変わらずだけど、「人を楽しませる」という点では徹底していて、技術的にハリウッドと同レベルの進化を遂げているのに驚愕。どの国にもない、本当に「ホリウッド」と言うか、インド映画独特の娯楽的エンターテイメントとして進化している、という感を受けました。

でも、インド映画は尺が長いのです。どの作品も3時間ぐらいある!

で、この映画です。

佐々部監督が山口に来られた折、「今年のイチオシ!笑えるんだけど、後半泣いちゃうんだよなあ」と言われて気になり気になり、東京出張時も時間が合わず断念したものの、先週、急な東京出張の折、5月公開なのにまだやっているのを発見し、平日昼間、シネマート六本木にて、ついに鑑賞!

で、この映画も長い。3時間近くあります。

午後1時15分開始で、観終わったのは4時過ぎ。僕は前夜徹夜。雑誌の原稿の締め切りに追われる中で東京出張が決まり、仕事の前日、上京したその足でホテルに行ってずーっと部屋で原稿書きで、午前8時ごろに書き終えると、その足でチェックアウトして仕事に行き、終わったその足で映画館に行ったのでした。

で、映画館から羽田空港に直行し、岩国錦帯橋空港に向かい、電車で下松に帰ったのはもう深夜零時近く。くたびれましたが、そんな疲れをふっ飛ばすほどこの映画は面白く、3時間寝るどころか、僕の眼はギンギンに冴えて笑って笑って泣いて泣いて、3時間、まったく退屈することなく、満腹感いっぱいで映画館を後にしたのでした。

エリート理工大学を舞台にした、3バカ大学生の友情物語なのだけれど、お話自体は現代から始まって、3人のうちの、主人公である1人は消息を絶っていて、その主人公を探そうとする話から、かつての大学時代の話がカットバックしていく・・・が、物語を書いていてもあまり意味はなく、インド版青春グラフティであり、相変わらずインド映画らしいおバカでベタなギャグが続き、歌も踊りもきちんとあって、もちろんヒロインは美しい。

だけど、ベタでおバカなんだけれど、どのギャグも笑えるのです・・・そして、キャラクターもしっかりオーバーでカリカチュアの固まりなんだけれど、ストーリー運び自体は実は緻密で伏線もしっかりしていて、探し当てた主人公は実は別人で・・・なんて意外性もあって、そこからの展開も予想をいい意味で裏切り、ストーリー運びも実に面白い!

背景には、工学系の高学歴を尊重する、実は日本以上の学歴偏重社会であるインド社会の問題点があって、そこから生まれる悲劇もきちんと盛り込まれています。ベタなギャグ映画の様相を見せながら、主人公3人の友情にとことん涙を絞られるのは、やっぱり「人間」がしっかり描けているから。ここはいい「映画」は本当に万国共通だなあ、と実感。

後半の泣ける展開に繋がる前半の伏線も見事で、本当に笑っているうちに泣ける・・・という展開になるのです。何より驚いたのは、平日の昼間にも関わらず、満席!!それも7割は女性!!すごいぞ東京!やっぱり、山口県とは文化度が違います。

で、会場は笑い声と涙、涙のグジュグジュ感で満載。これぞ、映画館の醍醐味。佐々部監督の「カーテンコール」ではないけれど、昭和の映画館はこうだったんだろうなあ。

やはり、この映画も映画館で観てほしい一本だけれど、地方では難しい・・・と思いつつ、広島、福岡ではすでに上映済み。下関スカラ座シアター・ゼロでやっている!と思って調べてみたら、明日(9月20日)が千秋楽のようです・・・再見は12月発売予定のDVDになりそうですが、このレビューを見て興味を持った方、是非、今からでも下関に走るか、DVDでもいいので観てください!

点数は90点。
4

風立ちぬ  新作レビュー

この映画、いろいろ言われてます。

賛否両論・・・でも、物語の説明不足を挙げて批判するのは、「映画」という媒体に対する批判としては、そもそもどうかなあ、という想いがあります。

「映画」は、アニメであろうと実写であろうと、2時間ていどの時間の中で、映像と音を組み合わせて、大きなスクリーンで有料の観客に向けた媒体であります。

有料である以上、そこに表現の規制はなく、作り手(監督)の作家性が発揮されるべき媒体であり、大スクリーンで感じてもらうための感性を観客に向けて問いかける芸術でもあるので、観客もまた、そこに込められた感性を自ら感じていくのが、映画だと僕は思うのです。

ですから、そこに込められた「間」や行間が「映画」にあるのは優れた「映画」であるなら当たり前であり、だけれどもそんな「間」があってもダメダメな映画があるのもまた事実で、そこがまた「映画」の面白いところだと思うのです。

最近、何でもセリフで説明して、やたらカット割が細かい映画(とくに日本映画)が多く、それも監督だけでなく、いろいろな人の意見が入って無難な映画づくりに終始している作品が多いので、観客もそんなのに慣れている感はあります。

もちろん、いつも言っていることですが、そういう「映画」の中にも、面白いものもいいものもありますが、正直、ダメダメなものも多くある、と思います。

で、この映画ですが、はっきり言って、この映画は宮崎監督のプライベートフィルムです。

ものづくりに没頭している人の、純粋さを描いた映画であり、その純粋さを表現するための飛行機であり、恋愛であるので、主人公の姿は、正に宮崎監督そのものだと思います。そのの分、映画自体もこだわりの固まりで、くどいぐらい出てくる飛行シーンをはじめ、絵のクオリティは物凄く、これまでのジプリ作品の中でも最高と言っていいでしょう。

冒頭の飛行シーンと、地震のシーンだけでも観る価値はあります。これは、劇場のスクリーンと音響で是非、あじわってほしいものです。

戦争メカ好きなのに戦争反対者、という宮崎監督そのものの姿、苦悩がこの映画にはちりばめられています。肝心なところが「夢」で語られているのも、アニメづくりに夢をかけてきた宮崎監督の想いが現われているようです。

時代の流れに様々なことは感じていても、その想いを、ものづくりと1人の人を愛することに費やしていく・・・そこに説明がないので、これはその「間」を感じていくしかありません。ただし、その「間」が面白いかどうか、感動できるかどうか、そこは人によって分かれるでしょう。僕は正直、好きです。


そもそも、宮崎駿監督は、「もののけ姫」の成功をもって、物語を映画で「語る」ことを辞めたように思います。もともと、ストーリーテリングには天才的な監督さんなので、最近の映画に対して批判的な声があるのも正直、分かります。「未来少年コナン」や「ルパン三世 カリオストロの城」のストーリーテリングは、正直物凄いものがありますから。

これは、晩年の黒澤監督にも言えます。黒澤監督も、製作環境は正直、大変でしたが、晩年は感性のみで作っていたように思います。いつまでも黒澤監督に「七人の侍」と同じような作品を、というのはファンのわがままのような気がしますが、それも正直な気持ちなのかもしれません。

黒澤監督とは少し違うと思いますが、宮崎監督が「物語」を語らなくなったのは、物語を描かず、自分の感性をそのまま表現しても、興行的な失敗になることはまずあり得ない状況になったこと、が大きいと思います。

宮崎監督は、物語を語らなくても自分の好きな世界を豊富な製作費を使って自由に表現できる、数少ない映像作家のひとりだと思いますが、そういう意味でも今回は文字通り「最後」の長編でもあり、そういう意味で、これまで以上に自らの気持ちを思い切り作品づくりにぶつけたのかもしれません。

そういう意味では、無心で純粋にものづくりに没頭する主人公は、宮崎監督の分身でなければなりませんから、当然、声優は「演じる」プロの俳優さんや声優さんではダメな訳で、庵野監督ということになるのでしょう。これはいろいろな意見があると思いますが、僕はよかったと思います。

観終わったあとの何とも言えない余韻とともに、点数は80点です。
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