「君の名は。」を観て思ったこと  新作レビュー

評判のアニメ映画「君の名は。」を観ました。

これまでもアニメーションで男女の「出会い」「すれ違い」を繊細に描いてきた新海誠監督が、東宝配給の300スクリーン以上拡大公開という、メジャーの中のメジャーとも言える大舞台で、それに相応しいスケールの大きな、それでいて持ち前の繊細さや物語表現力を十分に活かした作品を創ったな、というのが正直な感想です。

「シン・ゴジラ」もそうでしたが、この映画も監督のオリジナルな感性にあふれながらも、様々なこれまでの名作・傑作の香りが漂っていて(実際に監督が影響を受けたかどうかはわかりませんが)様々な「映画的記憶」を呼び覚ましてくれます。

男女の「出会い」「すれ違い」を描いた映画には洋画・邦画問わず傑作が多いのですが、「君の名は。」と同様、そこにファンタジーを融合させた作品としてまず思い出すのは、クリストファー・リーブ主演「ある日どこかで」(1980年公開)です。

脚本家志望の大学生リチャードは自身の脚本が認められたパーティーの席で、見知らぬ老女から「帰って来て」と告げられます。数年後、脚本家となり、仕事に行き詰ったリチャードは立ち寄ったホテルの壁にかけられた美しい女性の写真に目を留めます。彼女は1912年にそのホテルに滞在していた女優ということでした。そのまなざしと美しさに魅せられたリチャードは彼女に会いたいと熱望し、やがて時間の「壁」を超えるのでした…。

これは、僕も学生時代に観て熱狂した一本です。「スーパーマン」とは全然違うクリストファー・リープの繊細な演技が印象的で、切ない展開、そして音楽の美しさも印象的でした。

悲しき浪人生だった時、角川書店の映画雑誌「バラエティ」で、大林宣彦監督が「時をかける少女」(1983年公開)は「ある日どこかで」に「オマージュ」を捧げた作品であり、音楽や雰囲気など、作品づくりで意識したことを発言していて、当時「時かけ」に狂っていた僕は「ある日どこかで」が観たくて観たくて、大学生になってようやくレンタルビデオで観た記憶があります。

その、「時をかける少女」も少年少女の「出会い」「すれ違い」そして「別れ」を切なく描いた傑作でした。筒井康隆氏の原作小説は短編で、どちらかと言うとSF小説の入門編的な感じで、描かれている「出会い」と「別れ」に正直切なさは感じません。

しかし、大林監督はそこに、「出会うはずのない、出会ってはいけない少年少女が出会ってしまう切なさ」の物語に仕上げ、そこに主演の原田知世さんの可憐さ(大林監督は当時、ジュディ・ガーランドをイメージして演出したらしい)とロケ地である広島県尾道市の何とも言えない風情と情緒が加わり、唯一無二の傑作になりました。

そういう意味ではこの作品はその後の「時かけ」映像作品のベースにもなりました(今年制作の連ドラも含む)。この「切なさテイスト」を受け継ぎながらも、続編的な味わいも付け加え、少しポップにして、これはこれで大傑作になっていた細田守監督の「時をかける少女」がアニメーション作品だったことを考えると、「時かけ」と「君の名は。」との接点も無いことも無いな、と思います。、

大林作品で「君の名は。」との共通点で言うと、少年少女の「入れ替わり」を描いた大傑作「転校生」(1982年公開)があることも忘れてはいけないでしょう。

あと、少年少女の「出会い」「すれ違い」ファンタジーの傑作で思い出すのは小中和哉監督作品「星空のむこうの国」(1986年公開)です。残念ながらこの作品のDVDはAmazonでもプレミアが付いていて今ではなかなか観られません。

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平行世界(パラレルワールド)をテーマにした作品でした。主人公の高校生、アキオは交通事故でケガをして以来、毎晩同じ少女の夢を見てしまいます。ある日自宅に帰ると、そこには自分の遺影が!驚愕していると、窓の外にはあの「少女」の姿が。「アキオ君」と呼ぶ少女に声をかけようとしたその時、少女は無理矢理男たちに車に乗せられます。追いかけるも見失ったアキオはその少女に会おうと決心しますが…。

この映画は公開当時「少年ドラマ・ザ・ムービー」という副題が付いていました。NHKの少年ドラマシリーズは昭和40年代から50年代にかけ、毎日夕方に放送していて、主に中高生向けの学園SF小説をよくドラマ化していたシリーズで、「時をかける少女」も大林監督が薬師丸ひろ子主演で映画化した「ねらわれた学園」もこのシリーズで最初に映像化されています。

少年ドラマシリーズは小学生を含む少年少女向けでしたから「切なさ」テイストは少なかったのですが、その中でも突出して「切なかった」ドラマは、「なぞの転校生」でした。平行世界を扱っている点では「星空のろこうの国」の原点は間違いなくこの作品でしょう。

「なぞの転校生」については、2014年、思いもしなかった形で再びテレビドラマ化され、これこそ少年少女の「出会い」「すれ違い」「別れ」を描いた作品では近年ダントツの作品だと思いますし、冒頭の彗星の描き方など、「君の名は。」との共通点を見ることもできます。

3014年版「なぞの転校生」については、また別回で詳しく論じたいと思いますが、「君の名は。」を観られて感動された方は、今回あげた作品群も是非観てほしいと思います。
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「シン・ゴジラ」と山口県  新作レビュー

「シン・ゴジラ」については最早語りつくされている感があるし、ネットに優れたレビューがあふれかえっているので、僕がわざわざレビューする必要もないかな、と思います。

書き出すと、キリが無くなります。恐らく原稿用紙100枚ぐらいでも書けると思いますので、ここでの作品論は他に譲って、私らしく、山口県とシン・ゴジラの関係について記します。

庵野秀明総監督は、山口県宇部市の御出身です。以前、インタビューさせて頂いたこともありますが、山口県への強い「愛」を持っていらっしゃる、という印象を受けました。

庵野総監督は映画「式日」を、故郷である宇部市を舞台に撮影されましたが、他の作品でも「宇部」や「山口」に関するものを登場させています。

エヴァンゲリオンではかのヤシマ作戦で日本中を大停電させるとき「山口県宇部市」が登場するほか、山口でおなじみのお店や牛乳の名前も出てきますし、新劇場版で葛城ミサトが愛飲する日本酒は「獺祭」だし、「獺祭」はキューティーハニーにも市川実日子さん(尾頭ヒロミ課長補佐!)扮する刑事の愛するお酒として登場します。

今回も、主人公である内閣官房副長官・矢口蘭堂の執務室に、山口県内の工芸品がさり気なく置いてあり、その中に、光栄にも私がアドバイザーを務めさせて頂いています、下松フィルム・コミッション提供のものもあります。

私が見る限りでは、執務室には下松FC提供のものの他に、岩国市のものが置いてありました。聞くと、矢口蘭堂は山口県第3区選出の国会議員という設定があり、それで山口県のものが置いてあると推察されます。

3区は庵野さんの出身地である宇部市のほかに、美祢市、萩市、山口市のうちの旧阿東町などがエリアで、庵野さんの宇部愛を感じる設定ですが、実は、岩国と下松は2区でして・・・。まあそこは、保守第一党の他選挙区の支持者から、将来の総理大臣候補である矢口先生のところに、様々な名物工芸品が贈られ、飾ってある・・・と僕は解釈しています(笑)

あと、この映画には複数の映画監督さんが役者さん(なぜか全員生物学者役!)として登場しますが、御用生物学者の1人を演じているのが「ゆきゆきて、神軍」など、強烈なドキュメンタリー映画で一世を風靡した原一男監督!原監督もまた、宇部市の御出身で、主に山口市で育った山口御出身の方なのです!

ちなみに、1999年公開「ゴジラ2000」以降、2001年公開の「ゴジラ モスラ キングギドラ大怪獣総攻撃」を除き、2004年の「ゴジラFINALWARS」までの5作品でゴジラを演じられた喜多川務さんは下松市出身ですので、2000年代製作の和製ゴジラ映画ほとんどに「山口県下松市」は関係しているのです!という、下松市民である僕の独り言なのでした。




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