明日の記憶  新作レビュー

見た日/5月某日 ★★★

 渡辺謙は病気を突然抱えた人の不安や焦りの表現が上手い。重病を克服した経験が演技に反映されていると思う。本来なら映画主演第1作になるはずだった「天と地と」を病気で無念の降板をした彼が、ハリウッドで大成功というキャリアを経て、初主演にして製作までした主演第1作の日本映画にこの「病気」というテーマを選んだ点に、渡辺謙の想いの深さと意気込みを感じる。

 それにしても、この映画の一番の圧巻は、ものすごい存在感で怪演を見せる、大滝秀治!!!うーむ、「砂の器」の加藤嘉を彷彿とさせる、怪演中の怪演!「パダライス」(分からない人は映画を見てネ)には大爆笑!!

 この映画が成功しているのは、やはり人のリアルな感情の揺れ動きをきちんと時勢に沿って描いているからだと思う。

 突然、重い病気になったら自分は、まず何を考えるのか、医者に対してどんな感情を抱くのか、どう悩むのか、家族はどう対処するのか?そのリアクションがとてもリアルで、よく描き込まれている。「認知症」がテーマだが、この辺りはどんな重病にも当てはまるので、この映画を見て身につまされた人は多いだろう。

 妻も「私がずっと支えます」と言いながらも、不安で仕方なく、時には爆発もするし、不満も漏らす。夫婦で家族と言ってももとは他人同士。感情の行き違いはもちろんある。信頼も、愛情も、憎しみも、実は紙一重。だからこそ、長年一緒に暮らせば愛憎を超越した慈しみがお互いに沸き起こる。

  僕も病気で母親を亡くしているし、自分自身も持病を抱えていて、入院経験もあり、結婚もしているので、主人公たちと苦しみのレベルは違うけれども、見ていて胸が苦しくなった。

  登場人物たちが「家族」というつながりの中で苦しみながらも、結局、「家族」という絆の中で癒される姿は切なく、温かい。ラスト近くの夫婦のシーンは秀逸で、風景の美しさとともに渡辺謙、樋口可南子の演技が胸を打つ。

  それともう一つ。糸井重里氏も指摘しているが、この映画で描かれている、広告代理店はとってもリアルだと思う。僕もメディアの仕事はしてはいるものの、こんな大きな代理店と仕事をしたことはないが、この映画に出てくるクリエイターさんや営業の人は「こういう人、いるよなー」という感じでした。
0



トラックバックURL

トラックバック一覧とは、この記事にリンクしている関連ページの一覧です。あなたの記事をここに掲載したいときは、「記事を投稿してこのページにお知らせする」ボタンを押して記事を投稿するか(AutoPageを持っている方のみ)、記事の投稿のときに上のトラックバックURLを送信して投稿してください。
→トラックバックのより詳しい説明へ




AutoPage最新お知らせ