チェック、ダブルチェック  映画つれづれ

「チェック、ダブルチェック」とは、映画「クライマーズ・ハイ」で主人公の悠木が口癖のように言う言葉。彼がつかんだスクープを記事にするかどうか。その極限の状態で、この言葉が大きなキイワードとなります。

映画では、主人公がこの「チェック、ダブルチェック」を信条にした理由として、幼いときに親子でカーク・ダグラス主演の映画「地獄の英雄」(1951年)を見たことをあげ、この映画で登場人物が使っていた言葉であるとして、ここから学んだ、というエピソードが出てきます。

この部分は原作にはなく、映画評論家出身の原田眞人監督らしい味付けですが、ダブルチェック、つまり日本語で言えば「ウラを取る」ということです。

「ウラを取る」ということは、新聞記者の基本であり、最も大切にして難しいことなのですが、僕も、記者時代、ちょっと苦い思い出があります。

ある団体の取材をしたときのこと。創始者の名前を聞いたら、現代表の方は「もう、亡くなられましたが…」と言われました。

僕は旧名簿等でその方が確かに代表をしていたことを確認し、聞いた名前と間違ってないかどうか確かめたうえで、「故●●●●さんが創設した」と書きました。

すると、その記事が出た日、一本の電話がかかってきました。「すみません、私、死んでません」。何と、その●●●●さん御本人からの電話でした。

驚いた僕は、現代表に電話をしました。するとその方は「ええ?あの方、亡くなられてないのですか?最近連絡を取ってなかったので、亡くなられたと思っていました」。

もう、ビックリです。痛恨でしたが、やはり、きちんと裏を取らなかった僕の大失敗でした。

もちろん謝罪し、訂正とお詫び記事を出しました。取材をした方に悪意はなく、本当にそう思いこんでいた訳ですから、完全に僕のミスです。それから、小さな記事でも、裏付け取材をするよう心がけました。

あと、事件や事故の取材になると、よく新聞記者は厚顔無恥で土足で踏み込む、と思われがちですが、記者だって人の子です。

被害者や遺族への取材は、本当に辛くて、自分の気持ちを奮い立たせながら、自分がやっていることには「価値がある」と言い聞かせながらやっているのが現状だと思います。

それでも、この映画にもありましたが、大きな事件事故の取材で他社に先駆けると、抑えられない昂揚感が出てくるのも事実だと思います。僕も、今振り返れば、「何てことをしたんだろう」と思うことがあります。

ある事故で卒業を控えた小学生が犠牲になりました。各社、その子供の写真を取ることに躍起になりました。

僕も友達の親などに当たりましたが、なかなかいい写真が取れません。そこで思いついたのが、「卒業前だから、卒業写真があるのではないか」ということでした。

そこでその学校のアルバムを作っている業者を割り出し、できたばかりのアルバムを入手して写真を掲載しました。どの社よりも鮮明な写真が載っているのを見て、僕は「やった!!」と思ったことを今でもはっきり覚えています。

でも、今考えると、読者もそこまでしてその子の顔を知りたかったのか? そんなことまでして、わざわざ写真を載せる必要なんか、あったのか?と思います。

「伝える」という仕事は、難しい。でも、やりがいはあるし、意義も意味もある。昔も今もそう思っていますが、実際は矛盾との戦いでもある。そんなことを、この映画を見ながら、思い出しました。



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