アフタースクール  新作レビュー

見た日/7月某日 ★★★★★

一昨年の「ゆれる」、昨年の「キサラギ」と、最近の日本映画界は驚くような技巧の作品を生み出すが、今年はズバリ、この「アフタースクール」だろう。

全国は5月公開で、山口県内では公開がなく、先日、静岡に出張した折に見ようとしたもののスケジュールが合わず、ずーっと「見たい!」と思っていたが、テアトル徳山が公開してくれたので、ようやく見ることができた。

海外での評価が高いという内田けんじ監督だが、評判の前作「運命じゃない人」は未見。これがまだ三作目で、商業映画としては二作目というから驚く。

1972年生まれというから、今年36歳。「ゆれる」の西川美和監督も1974年生まれ、「キサラギ」の世界観を生み出した脚本化の古沢良太氏も1973年生まれだ。30代の「若手」クリエーターたちがいい仕事をしている。恐るべし、である。

とにかく脚本がよく練られているのだが、この面白い脚本をどう映像にするのか。そこに焦点を当てた演出、役者たちの演技が大いに見物になっている。

映画やドラマや演劇は、小説の活字と違って、映像で「物語」を説明していくものなのだが、この映画では、誰もが思い描くシチュエーションを映像で提示しながら、そのひとつひとつを丁寧に役者の演技とセリフで裏切り続け、思いも寄らない方向に「物語」を導く。

その裏切り方が心地よく、これだけトリッキーな物語にも関わらず、友情の危うさや人と人との信頼関係など、タイトルに象徴される「大人たちの放課後」という形で情緒的なテーマを入れ込んでいるのは見事だ。

成功しているのはキャスティングの妙もある。いかにも「いい人」の大泉洋は彼が持つユーモア性もにじみ出て好演だし、佐々木蔵之助も「間宮兄弟」「椿三十郎」より、こちらの方がいい。何よりも、観客を裏切るため、最も演技の「振り幅」が必要な堺雅人が秀逸。彼は「クライマーズ・ハイ」もよかったが、最近注目の俳優さんだ。

あと、感心したのは、山本圭、伊武雅刀、北見敏之らのベテラン勢。伊武雅刀はいささかステレオタイプ的な使い方だと思ったが、出番は少なくても山本圭は強烈な印象が残るし、とくに名バイプレーヤーとして知られる北見氏が素晴らしく、リアルで生々しい存在感を見せて映画を重層にしている。

こういう作劇手法は過去の映画や演劇にもあったが、内田けんじ監督は独特のリズムを持っているようで、無駄なシーンもなく、難解で手が込んでいる脚本を、すっきりとした演出で分かりやすく表現している。まあ自分の脚本だから、ということはあろうが、映画全体に優れた作家性を想わせる。

もうほとんどの地域で公開が終わっているので、未見の方は是非DVD発売時などに見られることをオススメするが、この作品に限り、物語などを書くのは野暮だろう。是非、ご自分の目で確かめていただきたい。
0



トラックバックURL

トラックバック一覧とは、この記事にリンクしている関連ページの一覧です。あなたの記事をここに掲載したいときは、「記事を投稿してこのページにお知らせする」ボタンを押して記事を投稿するか(AutoPageを持っている方のみ)、記事の投稿のときに上のトラックバックURLを送信して投稿してください。
→トラックバックのより詳しい説明へ




AutoPage最新お知らせ