ホームレス中学生  新作レビュー

見た日/9月某日 ★★★★★

この作品に関しては、仕事として山口県内でのPRをお手伝いさせていただいた。古厩智之監督へのインタビューを地元コミュニティFMラジオで流させてもらったほか、県内の雑誌や新聞にインタビュー記事を配信させてもらった。

ということで映画自体は公開よりかなり早い時期に業務試写で見させて頂いたのだが、早くレビューをアップしようと思いつつ、結局、このブログは趣味で運営しているということもあって、仕事で関わっているという遠慮もあったのか、公開がほとんど終わる時期でのアップになってしまった。

個人的にも、この映画は気に入っている。古厩監督らしい、若者の「一歩」成長する姿が描かれている。「まぶだち」「ロボコン」「奈緒子」と、古厩監督が一貫して描いてきた、等身大の少年少女たちが、この映画でもきちんと躍動している。

いわゆる原作の「ホームレス中学生」とは全く違う世界がこの映画にはある。映画鑑賞後、原作も読んだが、原作はホームレスになってしまう「不幸」はエッセンスであって、主流ではない。確かに泣けて笑えるいいエピソードが並ぶが、正直、小ネタ満載のタレント本の域を出てない感じはした。

ところが、この映画版は、前半こそ原作のテイストを生かしているものの、中盤から後半にかけては全く原作を離れる。原作では描かれていない、主人公の少年の「心」の成長を、じっくりと描き込む。意外にも、「ホームレス」の描写は少なく、前半にしかない。

映画の後半、よくしてくれた民生委員のおばちゃんの死をきっかけに、彼は初めて幼い時に亡くした母親の死を現実に感じ、人生について、自分が直面した問題にして、思い悩む。

この映画の真骨頂は、その母親の「死」を少年が受け入れるかどうか、という部分。本当のホームレスとは、ただ単に家がないということではなく、家族が欠けていることというこの映画の指摘は、実に鋭い。

そう、誰でも肉親の「死」というのは、いつかは越えなくてはならないところであり、そこがあって初めて子どもは一人前となり、大人へと成長するのかもしれない。

古厩監督は、そこの部分は長回しと主人公の一人セリフを上手に活用しながら、的確に表現している。とくに兄と主人公が感情をぶつけ合う牛丼屋のシーンでのワンシーンワンカットの場面は秀逸で、そのあとの牛丼のアップも効果的で、実は「食べること」が生きる源である、というこの映画ももう1つのテーマ性を上手く表現している。

良心的な秀作だが、原作のイメージが先行しすぎていて、ネットのレビューなどで公開前から見てもないのに酷評する人がいたりして、そこは残念だった。是非、見てから感想は言ってほしい。どんなにイメージが固定されていても、実際に見ないとどんな作品かは分からないのだから。

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