ラスト、コーション  DVD・ビデオレビュー

見た日/10月某日 ★★★★

前作「ブロークバックマウンテン」が素晴らしかった、アン・リー監督。またまたやってくれました、という感じだ。結局劇場では見逃してしまい、DVDでの鑑賞となった。

ハリウッドでも成功しているアジアの監督が、久々に中国圏に帰っての製作、というと、ジョン・ウー監督の「レッドクリフ」を思い出すが、そんなに気負うでもなく、ただ淡々と、自分が作りたいテーマの良作を作り続けているアン・リー監督は好ましい。

戦時下、日本占領下の上海。特務機関のリーダーを、女性ならではの武器で狙う、美貌の抗日運動家を描く。

まず、戦時中の上海のセット、雰囲気がいい。ヒロインのタン・ウェイはオーディションで選ばれたらしいが、美しいだけでなく、目に力がある。命を狙われるイーを演じるトニー・レオンも相変わらずの存在感だ。

生死ギリギリの状況の中で、2人は激しく身体を求め合うのだが、このセックスシーンが物凄い。

時折、ネットなどでこの映画のレビューを見ていると、ヒロインは愛情をイーに感じてしまい、殺すことをためらう、なんてことが書いてあるが、決してヒロインがイーに持つ感情は、「愛」ではないと思う。いや、愛情もあるかもしれないが、そんな単純なものではない。

最初、イーとヒロインがベッドを共にするシーンは、レイプまがいである。しかし、当初はイーが支配していたベッド上の攻防は、やがてヒロインが主導していくものに変化していく。この映画での性愛シーンは、正直、戦いである。

処女だったヒロインは訓練で同志と身体を寄せ合うが、決してそこには生まれなかった欲情が、敵であるはずのイーとの性交で生まれ、ヒロインは敵である存在の男と性愛を繰り返すことで自我に目覚めていく。

お互いに相手を知り得ず、騙し合いながら身体と身体をぶつけ合っていく2人。こんなに複雑な物語を、性交のシーンを中心に表現できる、アン・リー監督の表現力の巧さに驚く。

かつて、優れた性愛映画はあったが、この作品は“性愛シーンそのもの”が雄弁に物語をリードしている、稀有な映画に仕上がっていると思う。

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