2008年の総括  映画つれづれ

2008年は、興行収入的に、邦高洋低というここ数年の傾向がより進んだようだ。

テレビ局主導による製作委員会形式の映画が増え、そうした作品が数十億円もの興行収入をマークする、という傾向はここ数年、変わってない。

それ以上に、昨年はテレビドラマと映画が連動したり、公開時期になると出演俳優のテレビ露出が増え、全国縦断の舞台あいさつをするなどイベント化が進んだ。テレビ局はそのイベントをワイドショーなど自社番組で話題にし、多角的に宣伝していく。昨年は「テレビ局と映画の関係」がますます進んだといえる。この傾向は、恐らく2009年はますます強くなるだろう。

テレビ局製作の映画が増えたこと自体は、別に悪いことばかりではない。80年代にフジテレビが「南極物語」で大成功して以来、しばらくの間を経て、シネコン時代を迎えてからテレビ局主導の映画が増えた。シネコンの登場で映画は身近な娯楽として再び定着し、映画産業が盛り返し、日本映画がその主流となる中で、テレビ局は新たなビジネスとして映画に着目したのだ。

テレビ局が映画を製作することで、テレビ放映時の放映権が獲得できるだけでなく、多額の興行収入を得れば、それがダイレクトに収入となる。DVDになるときも、テレビ局の系列ソフト会社から販売できれば、そのメリットもある。

最近は系列局や系列新聞社などが製作委員会に入る(つまりは出資する)ケースが多いが、地方のテレビ局などは系列キー局制作映画のスポットCMを流すことで、配給会社等からの広告収入が得られる、というメリットもある。

テレビ局は時代のトレンドを読むのが上手い。今のところ、日本の大手配給会社の現状を見ると、少し松竹、東映が置いてけぼりの感があるものの、マーケティングや宣伝戦略が上手い東宝はフジテレビ、日本テレビ、TBSと組んでヒット作を連発している。

この傾向が強くなることで日本映画は企画が多角化し、より大衆に受ける日本映画が登場した。このこと自体は、映画が娯楽である以上、いいことではある。

ただし、問題点もいろいろある。まずは質の問題。テレビ局製作の映画には、その局の社員ディレクターが監督を務め、そのスタッフがそのまま映画製作のスタッフとなるケースも多い。

この場合、いわゆる物語的には分かりやすいものの、映画の大スクリーンで鑑賞することを考えた、観客が想像したり、行間を読むような良質な作品は少ない。カット割が細かく、セリフも説明的な、いわゆる「テレビドラマ」的な作品が多いのも事実である。

それから、現在の不況がどんな形で映画界に関わってくるかは不明だが、シネコンに客が入らなくなると、ビジネス優先のテレビ局は映画製作から撤退してしまうことも考えられる。そうなると、日本映画界自体の衰退につながってしまう。

まあそんな不安もあるが、昨年の傾向を見ると、そんなテレビ局と映画の関わりの中に、ひとつの希望も見えてきたような気がする。昨年のキネマ旬報ベストテンの一位になった「おくりびと」はTBSの出資で松竹配給だが、作り手は単館系も覚悟していた中、製作の過程で良質な脚本に着目したTBSが出資を決め、松竹が配給を決めたのだという。あと、単館系ではあるが評判になった「アフタースクール」もTBSが出資している。

当たり前のことだが、映画を宣伝・営業する場合、内容が良質かどうかが、最も大切である。最近の傾向を見ると、テレビ局も従来に比べて内容重視、ソフト重視になって、安易な企画は多少減ってきた感もある。そこは望ましい。

今年公開の木村大作監督作品「劒岳−点の記」などは、東映配給ながら、フジテレビの出資が決まった。その理由は、もちろんこの映画の話題性に着目したという部分はあろうが、様々な資料を見るに、CGなどは一切使わず、とてつもない困難な撮影にあえて取り組む木村組の心意気に、フジテレビのプロデューサーが心打たれた、というところが多分にあるようだ。こういう話は実に好ましい。

テレビ局主導の映画が多い一方で、テレビ局が出資しなくても良質な大手配給作品や、単館系の秀作も昨年は多かった。「闇の子供たち」「ぐるりのこと。」「歩いても歩いても」など、キー局が出資してなくても、単館系ながら上映が全国に広がってヒットした作品も多かったことはいい傾向だ。観客側も、良質な映画を受け入れる素地がこの数年、浸透してきた感もある。

そして「チルソクの夏」の山口放送以来、地方のテレビ局が出資し、地方文化発信に寄与するケースも増えている。僕の昨年のナンバーワン作品「三本木農業高校、馬術部」は東北放送が出資している。この作品はキー局は製作委員会に入ってないが、CS放送の「ファミリー劇場」を運営している東北新社が製作に関わっていて、「ファミリー劇場」がCMや特集を展開していて、確かにキー局に比べると弱いものの、これはまたチャンネルの多角化という新たな時代のテレビ宣伝だな、とも感じた。

そんな中、昨年は、独立製作会社の頑張りも目立った。東宝や松竹など製作も配給もする会社はありはするが、製作会社が製作を請け負うことが多い。昨年の佐々部監督の作品「結婚しようよ」「三本木農業高校、馬術部」は、いずれも共同ではあるが、監督と名コンビの臼井プロデューサーが社長を務める「シネムーブ」が製作している。

前者は松竹、後者は東映という大手配給だった。「シネムーブ」は「カーテンコール」「夕凪の街 桜の国」など、佐々部監督による良質な秀作を作り続けている。今年は今のところ完成作はないようだが、是非、今年もいい作品の製作にとりかかってほしい。

いいプロデューサーがいい企画を立て、その企画に資金が集まり、配給会社が配給を決める。これが当たり前なのだ。その「当たり前」が、できてなかったりする映画も実際に多いから問題で、そこにテレビ局の利益が第一であってほしくない。

昨年も様々な映画製作会社の作品が目立ったが、「三丁目の夕日」シリーズや「K−20」などを製作している会社「ロボット」などは、テレビ局や配給会社と上手に組みながら、エンタテインメント性の強い、上質な娯楽作品を作り、きちんとヒットさせている点は高く評価できると思う。

いろいろとゴチャゴチャと書いたが、映画賞総なめの「おくりびと」の監督はベテランの滝田洋二郎監督だし、テレビドラマの映画化ながら、昨年東映最大のヒットとなった「相棒」も数々の映画作品を送り出してきたベテラン・和泉聖治監督久々のスクリーン復帰作である。時代に流されず、自らのイデオロギーに忠実に作品を作り続けてきた若松孝二監督の作品「実録・連合赤軍あさま山荘への道程」も昨年は世に出た。

日本映画を支えてきたカツドウヤたちの活躍も目覚ましい今、いろいろと問題ははらんでいるものの、今年の日本映画も充実したものとなるよう祈りたい。そして、どうしようもないハリウッドの低迷も気になるが、今年のラインナップには面白そうな作品が並んでいるので、ここにも期待したい。最後に、僕の昨年のベストテンを記したい。

★2008年のマイベストテン

[日本映画]
@三本木農業高校、馬術部
A結婚しようよ
B歩いても 歩いても
Cアフタースクール
Dホームレス中学生
Eおくりびと
Fクライマーズ・ハイ
G大決戦!超ウルトラ8兄弟
Hぐるりのこと。
Iハッピーフライト
※「闇の子供たち」「接吻」の未見が悔やまれます。


[外国映画]
@ダークナイト
Aラスト、コーション
Bバンテージ・ポイント
※外国映画は本数をあまり見ておらず、3本に限定しました。

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