佐々部映画の『自然体』  佐々部監督の世界

 佐々部監督作品の魅力の1つは、「役者さんが持つ魅力を引き出す」演出力にある、と前回書いたが、その最もな代表的なものは、「チルソクの夏」の陸上シーンだろう。

 監督自身、「本物の陸上競技を見せたい」と、主役4人の女子高生たちのキャスティングは、演技より陸上競技ができるかどうかにこだわった、という。それほどに見事な陸上シーンで、少女たちの肉体の躍動美には、とてつもない清々しさが画面からビンビン伝わってくる。

 この陸上シーンがリアルだからこそ、映画全体の高校生たちがうそ臭くないし、青春時代の誰もが持つ、キラキラした輝きがスクリーンを彩るのだろう。主演の水谷妃里は決してセリフ回しは上手くないが、普通の山口県の女子高生の会話になっていて、実に存在そのものが自然体でいい。

 「カーテンコール」に到っては、役者だけでなく、映画館自体が自然体だったが、役者のもならず、あんな昔ながらの映画館を探し出してロケすること自体、佐々部マジックというしかない。

俳優・香川照之さんはエッセイで天空(『映画の神様』)をも見方にする佐々部監督を「美味しい冷奴」に例えていたが、素材のよさを生かし、旨味を出す辺りは、極上のみりんのような監督さん、と言ってもいいだろう。

 

 
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