火天の城  新作レビュー

観た日/9月某日
★★★

全く戦闘シーンがない、戦国時代を舞台にした珍しい時代劇。最近、幅広い意味で大人が楽しめる娯楽映画が少ない中で、この映画は貴重だ。

西田敏行さんは、「陽はまた昇る」を彷彿とさせる演技で、織田信長の命で不可能と思われる城の建築に、純粋に生命を賭けて立ち向かう宮大工を、情熱を込めて演じている。

信長役の椎名拮平さんがいい。激しい中にも民衆を想う信長像をよく表現している。夫を支える大竹しのぶさんも良く、西田さん、大竹さんのお芝居は、ベテラン同士の「間」が素晴らしい。2人の演技には息を飲んだ。

美術や撮影など、本当にスタッフがプロで、いい仕事をしている、と感じた。時代劇らしい、堂々とした雰囲気や、全体に凛とした佇まいがある。

築城に繋がる数々のエピソードのひとつひとつも興味深い。今で言うコンペで他の大工たちと競争になった中、主人公が信長の命を無視した形で設計を披露し、あっと驚く工夫で信長らを説得するシーンや、柱となる大木を入手するため、信長と敵対する武将の陣地に主人公が入り、緒形直人さん扮する木守と友情を結ぶシーンなど、胸が熱くなる。

ただ、築城の過程を描く、という意味ではエピソードの羅列になった感もあり、後半のエピソードでは見せ場となるアクションシーンが少々唐突な感じもある。もう少し、プロジェクトX的な、この時代ゆえの築城に関する大工たちの心意気や工夫が見たかった。

僕は、山口県でのこの映画の一般試写会で司会をさせて頂いたのだが、上映終了後、自然と拍手が起きたことに感動した。観客の皆さんからも、「面白かった」「よかった」「ありがとうございました」とたくさん声をかけて頂いた。

肩が凝らない内容で、それでいて年配の方が楽しめる・・・そんな映画に仕上がっている、という証明だろう。こういう映画こそ、気軽に立ち寄れるシネコンには必要だと思う。

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