今度は愛妻家  新作レビュー

★★★★

評判の「パレード」は未見だが、行定勲監督話題の新作2本のうちの一本がこれ。40代になった行定監督が「大人も楽しめる作品を」と作り上げたのがこの作品とか。

確かに、シネコンに行っても、大人やシニア世代が田の止める作品が少ない。僕はよくウイークデイの昼間に映画を観るのだが、結構、シニア世代の方々が多いのに驚く。

実は、ショッピングセンターが主流の日本のシネコンを支えていらっしゃるのは、こういう方たちなのだ。だからこそ、行定監督の心意気は、正しいと思う。

…で、この映画だが、会話主体で、役者さんたちの芝居をフィックスでじっくりと撮っていて、行定監督の原点回帰とも言える作品になっている。

これまでの作品にあったような、不必要に揺れる映像や、不安定な感じの演出は全く見られない。何より、主演の薬師丸ひろ子、豊川悦司がとっても魅力的だ。

赤の他人が一緒に長年暮らしていると、その夫婦には、その夫婦にしか分からないことが出てくる。それは溝であったり、絆であったり…。

その、揺れ動く微妙な空気感をこの2人は、巧く醸し出してくれる。

実はお話自体は、ちょっとトリッキーな仕掛けが用意してあるのだが、それが物語の情緒を邪魔せず、観客への見せ方やタイミングも絶妙で、2人の切なさを盛り上げてくれる。

オカマ役の石橋蓮司、カメラマンである主人公の弟子役の濱田岳、主人公に写真を依頼する女優志望役の水川あさみら、主要なキャストも素晴らしい。

この3人は、それぞれの苦悩を抱えているのだが、その気持ちが、主人公のカメラマン、あるいは妻2人の思いに絡んできて、その伏線が晴れていく様は鮮やかで、人が人に対して優しさを持つ大切さのようなものを、じんわりと感じることができる。

ちょっとしか出ないが、井川遥もいい味を出している。この女優さんは、「樹の海」辺りから、ものすごくいい雰囲気を出すようになったなあ、と思う。

後半、少し長いかな、とは思ったが、舞台の映画化とも聞いて納得。ラストの処理も心地よい。

僕も結婚してちょうど10年。夫婦に「今度」などないのだ、妻を大切にしよう、と素直に思わせてくれた、いい映画だった。

6



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