津軽百年食堂  新作レビュー

★★★★★

最近、泣ける映画がいい映画、という困った風潮がある。とくにアクション映画ではない、家族や恋人同士の人の絆、愛情を描いたような映画で「泣けないのはどうよ、」という風潮は、本当に困ったものだと思う。

この映画、家族の絆や恋を描いているが“泣ける”というタイプの映画では決してないが、人が踏み出す様を、丁寧に描いている。クライマックスのあとのラストカットも、あえてベタな感動を避け、心地よい余韻を追求している。これは作り手も意識している、と思う。

その、成長をしっかりと描いている点に、泣けずとも心が温かくなり、元気が湧いてくる。これこそが映画の醍醐味でもあり、心地よさであり、力でもある。

主人公は津軽の食堂の四代目。東京でバルーン・アーティストをしながら夢を見ているが、同郷の女性とルームシェアをすることになる。故郷の父親が倒れ、帰郷して店を切り盛りすることになるが…。

ただ単に主人公が実家を継ぐことを嫌っているのではなく、就職難から一度店を継ぐことを決意したものの、「店を軽く見るな」と言う父親との確執から家を出た、という点がポイント。この三代目の父親が決して店を継ぎたくて継いだ訳じゃない、という設定も効いていて、大森一樹監督の丁寧な演出が光る。

この物語に、初代の明治の話が絡んできて、このパートが映画全体に深みを出している。観光PRの目的もあるとは思うが、弘前の桜も美しい。大森監督が手がけた傑作「恋する女たち」などの青春映画の香りもあって、オリエンタルラジオの藤森慎吾氏の素直な演技に好感が持てる。

大森監督に直接お話を伺ったのだが、この映画はキャスティング、ロケ日程などが決まった時点でオファーがあったのだという。そこから監督が脚本に手を入れ、創り上げた。

監督を引き受けた理由が「過去と現代を行ったり来たり、大好きな『ゴッド・ファーザーpartU』がやれる、と引き受けた」というから、映画フリークとして有名な大森監督らしいなあ、と思った。

この映画は山口県でのキャンペーンを僕が企画させて頂いたのだが、キャンペーン中、キネマ旬報映画検定一級でもある大森監督と様々な映画の話をさせて頂いたのは、本当に光栄だった。僕は3級なので、「1級凄いですね」と言うと、「一級言うても、テキスト読んで、受験勉強すれば通るんやから。映画に愛を持っているか、これが大事だよ」との言葉に大納得。これからも、映画に愛を持ち続ける、と誓いました。

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