ロック 〜わんこの島  新作レビュー

★★

三宅島の大噴火によって、島からの退避を余儀なくされた民宿の若夫婦とその息子、そして犬のロックの運命を描く。

噴火によって引き離されたロックと主人公家族との再会をクライマックスにせず、過酷な避難生活を送る家族の日常や想いを丁寧に描いている点は好感が持てる。

民宿経営者を演じる佐藤隆太氏は熱い中にも繊細な表現をしているし、妻役の麻生久美子さんは辛い中にも明るさを失わない“お母ちゃん”をこれまでにない感じで好演している。ロックの母親犬を世話する祖母役の倍賞美津子さんも映画を貫くテーマである「生命の大切さ」を象徴する存在として重みを感じさせる。

ただし、シーンとシーンの繋ぎに少年のナレーションを逐一入れていて、これはもう感性の問題とは思うが、僕は少し苦痛だった。どうして主人公たちの心情や物語の流れを説明するのだろうか?

映画は、大きな画面をゆっくり味わうものなのだから、いちいち細かく説明しなくても、画面の隅々から感じ取ることができる、と僕は思う。説明的なナレーションが必要な映画ももちろんあるとは思うが、今回の場合は、内容を考えても、もう少し作り他の方々は映像の可能性を信じてもいいのでは…と思ってしまった。

それから、映画の中でロックの飼い主である少年は、ある重要な選択と決意をする。ここは感動的で、僕も納得なのだが、映画の後半、この場面からの繋がりを考えると、僕は大いに???となってしまった。

ネタバレになるので詳しくは書かないが、作り手はこういう展開を主人公たちの傲慢に映るとは思わなかったのだろうか。いろいろな感じ方はあっていいし、ここを褒めている方もいるので僕の感性なのだろうが、気になってしまった。

それから音楽。同じモチーフが何度も登場するのはよいとしても、同じ演奏、もしかしたら違う演奏なのかもしれないが、同じような演奏に聞こえるモチーフが繰り返し出てくると、そこは感動の押し売りのように感じてしまう。

何回も放送するテレビドラマの場合、できあがっている曲から曲を選ぶ「選曲」という作業が必要だが、2時間の「映画」の場合は違う。「ファーストシーンからラストカットに至るまで、計算しながらじっくりと作曲ができ、各場面ごとに監督と話し合いながら音楽をつけることができる。これが映画音楽の醍醐味ですね」とは、僕が直接伺った、たくさんの映画音楽を担当されている、ある作曲家の方の言葉だ。

でも、時折、同じモチーフの繰り返しであまり工夫を感じられない作品に出会うこともある。

この作品は、とても丁寧に作られている感じを受けるだけに、こうした印象を持ったのは少し残念だったかもしれない。
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