モテキ  新作レビュー

★★★

全然モテナイ主人公がライターになって、魅力的な女性と出会って仲良くなるものの、「彼女は僕が好きかも。いいや、そんなはずない!」と悶え苦しむ様子を、サブカルチャーやJポップなど、斬新な映像センスを駆使して描いた作品。

うーむ、この主人公は20年前の僕だ。似たようなシチュエーションは、何度もあったぞ。

新聞記者になって、「記者」という仕事から得られる情報や立場に勘違いし、ダサいくせに女性にもてたくて、いろいろ努力するものの、結局、失恋を重ね、落ち込んでいた日々…いやあ、リアル「モテキ」でした。

面白いし、我が青春のアイドル、長澤まさみちゃんの正しい演出をしている点(彼女はセクシー、かつコメディ演技は最高!なのだ)は100点満点なのだが、「人」の描き方において、???な点がどうしても気になった。

麻生久美子扮する、OLの描写、主人公への上司、同僚たちの対応など、人格攻撃キワキワ、と感じたのは僕だけ?

人を想う切なさを描いてはいるが、そこに至るまで、人の痛いところや気持の奥底を笑うようなシーンもあって、幼いころから挫折感を繰り返し、青年になっても対女性に対して痛い想いを繰り返してきた僕には、ちょっとキツかったかな。

でも、大根仁監督の映像センスは素晴らしい。さすがに僕が敬愛するアダルトビデオ監督、カンパニー松尾氏の影響を受けた、と言われるだけはある。

この作品も、カンパニー松尾監督の影響力かと思われる、大根監督自ら手がけたという○○撮り的ショットもあり、これがこの映画のヒロインたちを美しく見せている。

大根監督のこれからが楽しみ。「モテキ」以外の長編映画が観てみたい。

森山未来君も好演。可能性がもの凄く広い役者さんだなあ、と感心した。

3

世界侵略:ロサンゼルス決戦  新作レビュー

★★★

宇宙人の侵略物だけど、こりゃあ、完全なリアル戦争映画だね。

宇宙人に占拠されたロサンゼルスの一角を、民間人を救うため、小隊が侵入する。

相手が見えない、力も分からない、という緊張感は、「ダイ・ハード」や「プレデター」などのジョン・マクティアナン監督の得意とするところだが、この映画も緊張感は半端なく、なかなかに魅せてくれる。

宇宙人も、ものすごくハイテクかと思いきや、結構人間臭い戦いぶりを見せてくれるので、アメリカ軍はまともに戦っちゃう。

すんげー面白いんだけど、結果的にアメリカ軍隊万歳!的な映画になっているので、多少ゲンナリ。

退役を決意した軍曽が、経験不足の上司をカバーしながら次第に実力を発揮するところなど、究極状態における組織の在り方、みたいなところがよく描かれていた。

一緒に戦っている気分になる、という感では「プライベート・ライアン」以来の感覚か。いやいや「ブラックホールダウン」なんて傑作もあったなあ。

この間のおバカなところが好きな「スカイライン」とはまた趣が違う侵略映画なのでした。

2

探偵はBARにいる  新作レビュー

★★★★★

「探偵はBARにいる」 いい題名だ。

探偵に連絡するのに、携帯電話なんて不遜なのだ。
やっぱり、黒電話だ。

おお、ハードボイルド。

映画からは、工藤ちゃんの匂いがするぞ。
「最も危険な遊戯」の香りも漂う。
オンボロ車に乗るコンビの丁々発止は、「カリオストロの城」か。
札幌に炊かれるスモークは、「ブレードランナー」の如く、異空間を創り出す。

福澤勝広美術監督のセンスの良さが、随所に光る。
バーのセットやコースターのデザイン等等、この映画、職人さんたちがいい仕事をしている。

キネマ旬報の監督インタビューを読むと、やっぱりそんな作品群を意識していたとか。
いいぞ!橋本一監督。最後の(?)東映社員監督!!

△マークを背負って、こういう「東映」らしい映画を、どんどん作り続けてほしいな。

松田優作アニキにオマージュびんびんながら、その直系ドストライクの龍平氏を、主役ではなく、主人公の相棒にキャスティングするセンス。

龍平氏は映画俳優「松田龍平」として独自の凄さを持っているが、あえてこの企画で彼の持ち味を生かしながら、また新たな魅力を引き出しているところがニクイ。

ミステリアスな美女ヒロイン、小雪に生活感がないのも、東映ハードボイルドの伝統だ。西田敏行は最近出すぎだけど、この映画を締めている。

主役の大泉洋が、持ち味のユーモアセンスに、ちょっとダーティーな雰囲気も漂わせていて、いい。シリーズ化も決まったというから、きっと彼の当たり役になるだろう。

大泉さん、「シネキング」に出演していただいたな。ディレクターが「探偵にBARはいる」とタイトルを間違えたら、「バーはいねえよ、バーは」と突っ込んでいました。

とってもいい人で、ファンになったのでした。

3

佐々部監督ご出演!  映画つれづれ

先週、14日放送の「シネキング」では、佐々部清監督に、ゲストとして御出演いただきました!

視聴率も、すごくよかったそうです!!!

僕が「映画」に再び目覚め、会社をやめて独立したのは監督との出会いがあったから。

そういう意味では、フリーになって初めての本格的な映画関連のお仕事だった「シネキング」に、佐々部監督をゲストにお迎えできたことは、本当に感無量でした…。

だからこそですが…柄にもなく緊張しました…と言うより、何かしゃべると泣きそうになって…品川ヒロシ監督のときも、上地雄輔さんのときも、是枝裕和監督のときも、大泉洋さんのときも緊張しなかったのに…不思議です。

でも、自分の番組で佐々部監督の新作を、ゲストとしてお呼びして紹介することがひとつの夢であり目標だったので、スタートして3年…番組を続けてきてよかったなあ、と思いました。

番組でご紹介したのは、「ツレがうつになりまして。」。監督がこの作品づくりのために、長年苦労して温めていたことをお聞きしていただけに、完成作品を鑑賞した時は、僕もいちファンとして感無量でした。本当にいい映画です。

で、佐々部監督と僕がかけあいをしている番組の一部「今日のうんちく」を、21日の次回放送日まで、番組ホームページで視聴できます。↓

http://www.yab.co.jp/king/

このプログのことも、話題になっています!!

山口県以外の方もご覧になれますので、是非観てください!!
3

第3回周南映画祭!!  映画つれづれ

僕が実行委員会副委員長を務めさせて頂いている、「第3回周南映画祭〜絆〜」の概要が決定しました!

まだ、詳細はこれから発表するところもありますが…。

日にちは11月26日と、27日。場所はテアトル徳山、テアトル徳山T、シネマヌーヴェル。上映作品は「蘇える優作〜『探偵物語』特別篇」「三本木農業高校、馬術部」「アジョシ」「未来を生きる君たちへ」「ショージとタカオ」「英国王のスピーチ」「香港国際警察」「愛染かつら(総集編)」そして、「シークレット作品」(題名は後日発表)です!!

ゲストは佐々部清監督、女優の松田美由紀さん、脚本家の丸山昇一さん、歌手の川嶋あいさん、長澤雅彦監督と、豪華な顔ぶれ!!

「蘇える優作…」はテレビドラマ「探偵物語」を再編集した1998年公開作品で、今回、フィルムは「ない」ということだったのですが、この映画祭のためにセントラルアーツの黒澤満社長を初め、関係各位の皆様方の御尽力で奇跡的にフィルムがみつかりました!!幻とも言うべき、35ミリフィルムでの上映が実現します!!

そして、そのトークゲストが、松田美由紀さん、丸山昇一さん…何と言うことでしょうか。全国の優作ファンの皆様…お待ちしております!

そして、第一回以来の佐々部監督も御来場!!佐々部監督には実行委員会の顧問的な立場に立って頂いていますが、今回も、貴重なトークが聞かれそうです。

川嶋あいさんは、チャリティライブを開いて下さいます。

長澤監督には、ワークショップをお願いしました!現役の映画監督による、貴重な機会になりそうです!!これも、凄いものになりそうです。

これから詳細が決まり次第、どしどし発表していきますが、乞うご期待!!です。
7

『日輪の遺産』レビュー  新作レビュー

映画は何のために観るのか?なんて考えるときがある。

かの偉大なる映画評論家・淀川長治氏が「映画こそは大衆の娯楽なのです。そして私たちはその大衆のなかにこそ生きているのです。自分だけがわかるというようなこうまいな映画でもやっぱり大衆とともにこそ(映画)は見るべきです」と至言を残しているけれど、確かに、大衆の中に生き、大衆が求める娯楽だからこそ、そこに真実があり、そこから生きる勇気や気づきのようなものを得ることがあるのだろう。

今、映画は一般料金1800円で、各種サービスを適用すると1000円前後になるが、1000円ちょっとで日常生活では知り得ない世界を知り、そこから「頑張る」勇気や生きるうえでのヒントのような与えてくれる、こんないい「娯楽」はない、と心から思う。

この「日輪の遺産」は、現代ではなかなかあり得ない人の生き方と言うか、なかなか今の日常では触れることが少なくなった人々の想いに触れられる作品だった。でも、その“想い”は、実は僕たちの人生にとって、一番大切なものだったりする。だから新たな発見に驚き、涙し、心が震えるのだと思う。

僕は「ゴールデンスランバー」などで堺雅人氏は細かい感情表現が自然にできる俳優さんだなあ、とは思っていたが、この作品を観てさらにビックリ。

当然、俳優さんは撮影前に脚本を読み込んでから現場で演技するのだから、物語の展開は分かっているはずなのだが、この映画の堺さんは、と言うか堺さん扮する真柴少佐は、どう見ても映画の中で起こる様々な出来事に出会ったときの様が、とってもナチュナルなのだ。まさに真柴少佐が驚愕し、苦悩し、決断する様子が、映画の中の出来事に初めて接し、揺れ動く我々観客の想いとリンクしていく。

これは俳優さんたちの感情を大切にした佐々部監督の演出の妙だろうが、それに応えた堺さんの表現力は驚嘆に値するものだった。こういう感じは、最近の日本映画ではなかなか出会えるものではない、と思う。

そして、堺さんと福士誠治氏、中村獅童氏のトライアングルの妙。マッカーサーから日本軍が奪ったという莫大な財宝隠匿の命を受け、真柴少佐と行動を共にする小泉中尉、望月曹長もまた自らの感情が激しく揺れ動き、気持ちが変化していく。

どんな題材でも、人の様を丁寧に描いている点は佐々部監督の作品に一貫していることだが、この3人をステレオタイプの軍人として描いていないのがいい。戦時下の軍人でありながら、現代を生きる我々と同じ人間として感情移入できるのに、それでいて“戦時下の帝国陸軍の軍人”に見えるから凄い。

映画を通して成長を見せる小泉中尉を鮮やかに演じた福士さん、武骨な中に細やかな優しさを表わした中村さんの存在感も印象に残る。とくに福士さんは、クライマックスであの!ジョン・サヴェージを相手に、素晴らしいシーンがあるのだが、佐々部監督の作品をずっと観てきた我々としては「あの『チルソクの夏』の宅島先輩が…」と思うと、感慨も深い。

この3人に、ユースケ・サンタマリア氏扮する教師が引率する女子学生たちが絡んでいく。財宝の隠匿作業に関わる少女たちの行動と決意が、本当の意味での「遺産」となり、我々日本人が伝えていくべき大切なものを表現していくのだが、この少女たちの行動を直接「絵」として見せない展開で描き切った演出は見事で鮮やかだ。

この展開、脚本、演出だったからこそ、少女たちの想いを踏みにじらず、残していこうという真柴、小泉、望月の気持ちが鮮明となり、教師の行動が鮮烈に心に残ったのだ。佐々部監督も雑誌のインタビュー等で触れているが、もし、ここを描いていたら確かに「ひめゆりの塔」になっていた。そうなると、恐らく見事にバランスは崩れていた、と思う。

この点ひとつ取っても、説明過多にならず、緊張感と情緒のバランスが取れた、物語や展開の余白を感じさせながら、様々な想いや感情を観客に起こさせる、堂々の「映画」になっていた。

複雑な展開を見せる原作を、当時を孫たちに語る、生き残った少女の久枝の回想に絞ったのは大正解だったと思う。このプロローグから戦時下の真柴の物語となり、さらにマッカーサーの通訳という狂言回しを加えることで、物語が分かりやすくなり、様々な人の想いや顛末が映画を観ていくうちに染みていく作りになった。

そして展開されるエピローグは、異論を挟む人もおろうが、「大切なものを伝えていく」という意味ではこの映画で最も重要なシーンであり、決してファンタジーではない“リアル”として伝わって来る。

だからこそ、実際の戦争体験を持つ八千草薫さんをキャスティングしたのだろう。説得力があるし、その想いを受ける麻生久美子さん、塩谷瞬さんも好演している。

東日本大震災の発生以来、日本全体が勇気を持って立ち上がるべき今だからこそ、この映画が2011年に公開された意義は大きい。

10

今週のシネKING!  映画つれづれ

9月2日放送の「シネKING」では、「探偵はBARにいる」「大鹿村騒動記」「デンデラ」を御紹介!!

今回は、何と、「探偵はBARにいる」主演の大泉洋さんが御出演!!私が、インタビューしております!!かなり濃い収録でしたが、どう編集されているのだろう…。ディレクターは「かなり面白いですよ」と言ってましたが…。

収録のため、事前に「探偵はBARにいる」鑑賞させていただきました!いやあ、面白かった!新しい日本のハードボイルド映画の誕生です!かつての東映プログラムピクチャーの匂いを漂わせながら、サスペンスとしても見応えのある作品でした。是非、シリーズ化してほしいものです。また、しっかりとしたレビューはしたいと思います。

大泉さん、とっても素敵な方でした。山口県の方、是非、ご覧ください!!
5

大鹿村騒動記  新作レビュー

★★★★★

原田芳雄さん主演作にして遺作。出張先の名古屋でようやく鑑賞できた。

よくできた、大人のためのコメディーである。

テンガロンハットがよく似合う、ちょっと武骨だけれど気が良い、長野県の大鹿村で食堂を営む初老の男、風祭善が主人公。彼が営む食堂が「ディアイーター」というのが笑える。看板の文字は、どう見ても「ディアハンター」の日本版ポスターのロゴそのままだ。

彼は300年続く村の伝統文化、大鹿歌舞伎の看板俳優でもあり、心から歌舞伎を愛している。そんな村に、18年前にかけおちした善の妻と、善の幼馴染が帰ってきて、妻は認知症らしく、駆け落ちしたことすらおぼえてなくて…という物語だ。

ほのぼのとした三角関係に、村の人々のエピソードが絡んでいき、そんなドタバタ話が源氏の天下を悲しみ、ある衝撃的な行動を起こす平家の生き残りを描く大鹿歌舞伎の演目とリンクしていく。

性同一性障害や老いの問題などもさりげなく入れながら、短い上映時間ながら人間模様がしっかり描かれる見事な脚本は、「Wの悲劇」などの名脚本家、荒井晴彦氏と坂本順治監督の共作。このお2人、確か「KT」の脚本をめぐって以来、激しく対立していたはず、と認識していたが、原田さんの遺作で再び共闘してこんなに素晴らしい脚本を練ったなんて、ドラマチックで映画ファンとしては嬉しすぎる話である。

この映画に出てくる村人たちは、様々なことに翻弄され、さまざまな問題も抱えながら、時には対立するものの、やがて、芝居によって再生していくのである。その芝居である歌舞伎を、原田さんは「芸能の原点」と感じ、自らこの映画の企画を立てたという。

「演じる」ことによって、その芝居の世界を感じることでそれぞれが成長し、何かを乗り越えていくという物語を、すでにこのとき病気と闘っていた原田さんを中心に、実に芸達者で個性的な俳優たちが集まり、楽しそうに演じた、という事実そのものが、この映画を魅力的にしている。

原田さんがアップになる印象的なシーンがあるのだが、そこに僕は「竜馬暗殺」以来、失わない色気を感じてゾクゾクした。

近く、山口県のシネマスクエア7でも上映予定があるので、未見の方は是非、鑑賞してほしい。
2

ロック 〜わんこの島  新作レビュー

★★

三宅島の大噴火によって、島からの退避を余儀なくされた民宿の若夫婦とその息子、そして犬のロックの運命を描く。

噴火によって引き離されたロックと主人公家族との再会をクライマックスにせず、過酷な避難生活を送る家族の日常や想いを丁寧に描いている点は好感が持てる。

民宿経営者を演じる佐藤隆太氏は熱い中にも繊細な表現をしているし、妻役の麻生久美子さんは辛い中にも明るさを失わない“お母ちゃん”をこれまでにない感じで好演している。ロックの母親犬を世話する祖母役の倍賞美津子さんも映画を貫くテーマである「生命の大切さ」を象徴する存在として重みを感じさせる。

ただし、シーンとシーンの繋ぎに少年のナレーションを逐一入れていて、これはもう感性の問題とは思うが、僕は少し苦痛だった。どうして主人公たちの心情や物語の流れを説明するのだろうか?

映画は、大きな画面をゆっくり味わうものなのだから、いちいち細かく説明しなくても、画面の隅々から感じ取ることができる、と僕は思う。説明的なナレーションが必要な映画ももちろんあるとは思うが、今回の場合は、内容を考えても、もう少し作り他の方々は映像の可能性を信じてもいいのでは…と思ってしまった。

それから、映画の中でロックの飼い主である少年は、ある重要な選択と決意をする。ここは感動的で、僕も納得なのだが、映画の後半、この場面からの繋がりを考えると、僕は大いに???となってしまった。

ネタバレになるので詳しくは書かないが、作り手はこういう展開を主人公たちの傲慢に映るとは思わなかったのだろうか。いろいろな感じ方はあっていいし、ここを褒めている方もいるので僕の感性なのだろうが、気になってしまった。

それから音楽。同じモチーフが何度も登場するのはよいとしても、同じ演奏、もしかしたら違う演奏なのかもしれないが、同じような演奏に聞こえるモチーフが繰り返し出てくると、そこは感動の押し売りのように感じてしまう。

何回も放送するテレビドラマの場合、できあがっている曲から曲を選ぶ「選曲」という作業が必要だが、2時間の「映画」の場合は違う。「ファーストシーンからラストカットに至るまで、計算しながらじっくりと作曲ができ、各場面ごとに監督と話し合いながら音楽をつけることができる。これが映画音楽の醍醐味ですね」とは、僕が直接伺った、たくさんの映画音楽を担当されている、ある作曲家の方の言葉だ。

でも、時折、同じモチーフの繰り返しであまり工夫を感じられない作品に出会うこともある。

この作品は、とても丁寧に作られている感じを受けるだけに、こうした印象を持ったのは少し残念だったかもしれない。
1

日輪の遺産  新作レビュー

★★★★★

初日の本日、ワーナーマイカルシネマズ広島で鑑賞。

観終わって、背中にゾクゾク!とした感触が襲ってきた。

思えば、小学5年のとき「砂の器」を今は無き映画館「金竜館」で観て、良く分からずとも背中に生まれて初めての「ゾクゾク!」とした感触があって、それが忘れられず劇場に通うようになった。

「ゾクゾク」は、感覚ではなく、生理現象としてはっきり感じられるもので、大人になって、なかなかこの感覚が味わえる映画は少なくなった。

「日輪の遺産」で、久々に味わった!!!何年ぶりだろう…。

人が生きていくうえで、どうしようもない状況になったとき、国全体が難に遭ったとき、人は何を判断し、生きるべきか。何を残し、何を伝えていくのか。また次世代の人々は、そこから何を受け取るべきなのか。

その答えが、この映画にある。今の日本にとって大切な一本になったと思う。

詳しいレビューはまたします。まずは最初の感想をアップ。

佐々部監督を勝手に追っかけてきた僕だが、また監督に、「映画」を観る原点を感じさせて頂いた。心から、ありがとうございました。
1

渡邉俊夫さんHP開設!  映画つれづれ

写真嫌いだった松田優作さんが、唯一プライベートを含めて写真撮影を許した、渡邉俊夫さん。

優作さんを撮りたい一心でカメラを手にし、少年時代から夢中でシャッターを切った俊夫さん。

その純粋な「魂」が、優作さんの「魂」と呼応したのだろう。やがて、優作さんの「表現者」として映画と同様に重要な活動であるライブを撮影するようになった。

「俺の魂を撮ってみろ」という優作さんに、必死に食い下がりながら、魂で応えた俊夫さん。その様は、ライオンが最愛のわが子をあえて谷に突き落とすようであり、深い絆で結ばれた師弟間にしか分からない厳しくも温かなるなる修験道を思わせる。

優作さんの死後、一度カメラを手放すものの、石橋凌さんの魂の導きによって、映画のスチールカメラマンとして、多くの「表現者」の「魂」を撮り続けている、俊夫さん。

そんな俊夫さんと、周南映画祭で御縁でき、あらゆる意味で深い交流を頂けるようになった我々は、幸せ者です。これもまた、偶然ではなく、「必然」なのだ。

「必然」の縁をもたらしてくれた、MOTO様に、改めて感謝!!

その渡邉俊夫さんがホームページを開設されました↓

http://slow-nuance.com/

周南映画祭での佐々部監督とのお出会いの御縁で、「日輪の遺産」にも参加されている俊夫さん。

必見のホームページになっています。とくにシークレットのページは…涙なくして見られません。ここに、優作さんや映画を愛する人にとっての、いや、人にとって大切な、魂(ソウル)が込められています。

僕のこの拙プログも、リンクで紹介させて頂いています。是非、ご覧下さい!!!!
7

トランスフォーマー ダークサイド・ムーン  新作レビュー

★★★

どんなに映像が凄くても、脚本が大味と言うかドンブリと言うか、きちんと物語として成立してないと、辛いものがある。

こういうSFやアクション映画は、観客をドキドキさせてなんぼのもんで、この映画にもドキドキさせる要素やスリリングなシーンはあるのだが、いかんせん、大味な物語展開が続くので、どんなに主人公が危険な目に遭ってもそれが“危険”に見えないのは困っちゃう。

僕は「痛み」が伝わる映画こそ傑作だといつも書いているが、それは肉体面でも精神面でも同じで、とくにこの手の映画は「痛み」が必要でしょう。

で、この映画最大のウイークポイントは「間」がないこと。ラストの攻防は確かに見応えはあるが、ずーっと続くとさすがに飽きちゃう。緩急つけてほしい。アトラクションと「映画」は違うのだ。VFXの質量で劣っていても、まだ見せる工夫をしていた「SPACEBATTLESHIPヤマト」の宇宙戦闘シーンの方が「映画」として「面白かった」と思ってしまった。

けなしてばかりじゃだめなのでいいところも書くが、実景をベースにしたVFXの合成技術は凄まじい、の一言に尽きる。ポストプロダクションではなく、製作段階からの3D映画製作において、実景にCGを合成させる方法なんて、恐らく途方もないほどの予算と人手(CDオペレーターの数は半端ないだろう)と労力がいるだろうが、膨大なカット数でそれをやってのけたのは、確かに凄いし、感服する。

トランスフォームするところや、巨大な敵ロボットなど、見どころは盛りだくさんだが、ビルから飛び降りる兵士たちのシーンは、実際に飛んだスタントマン目線の実景なので、3Dだととくに迫力がある。このシーンだけでも3D料金を払う価値はある。

でも、やっぱり脚本とアクションシーンの間なのよね。タランティーノ監督は、その辺りを深作監督作品などから学んだのだろうな。マイケル・ベイ監督、「ザ・ロック」まではよかったのになあ。

ど迫力のアクションはよくても、つるべ撃ちすりゃあいいってもんじゃないよ、と言いたい。
2

『日輪の遺産』いよいよ公開!  佐々部監督の世界

いよいよ、8/27より、佐々部清監督の新作「日輪の遺産」が公開されます!

全国公開まであと6日!公式HPでは予告編も観られます。↓

http://www.nichirin-movie.jp/

残念ながら…山口県では10月以降の公開になりそうです…悔しい…。

でも、山口以外の全国の皆さん、是非、ご覧下さい!!いやいや、山口の方も、是非是非、県外に出かけでもご鑑賞下さい!!監督渾身の、見応えのある作品になっていると思います!!

佐々部監督にとって、「陽はまた昇る」「チルソクの夏」「半落ち」「四日間の奇蹟」「カーテンコール」「出口のない海」「夕凪の街 桜の国」「結婚しようよ」「三本木農業高校、馬術部」に続き、10本目の記念すべき劇場映画です。

「三本木」が、2008年10月公開ですから、3年ぶりの劇場公開で、僕たちファンも嬉しいです!!今年は、10月には「ツレがうつになりまして。」の公開も控え、久々の佐々部監督イアーになりそうです。

僕は、初日、広島か福岡の劇場で鑑賞する予定です。本当に楽しみです。
7


原田芳雄さんが亡くなられた…。

本当に凄い、日本が誇る名優の死去に、残念というしかないが…スクリーンにむせるような野性味と存在感を見せ、それでいて確かな演技と色気を兼ね備えた…稀有な俳優さんだと思う。

同じ“匂い”を感じる俳優さんのほとんどは、もう既に、亡くなっている。勝新太郎さん、松田優作さん…そして、ついに原田さんが逝った…本当に残念でならない。

最近も、独特な存在感を放っていた。色気と“匂い”は健在だった。決して傑作とは言えない映画でも、原田さんが演じると、作品に独特な空気が生まれたように思う。

近作で見せた、寂しげな中に気骨を見せる老人役も良かったが、もう一度、ムンムンとした男気を放つ原田さんもスクリーンで観たかった。

僕が大学生のときに観た「われに撃つ用意あり」(1990・若松孝二監督)での、戦う男の「目」が忘れられない。かつての戦いを引きずる全共闘世代のバーのマスターが、事件に巻き込まれる外国人女性を助けるため、再び戦う物語だった。円熟味を増し、優しさと狂気を併せ持った男を好演していて、強烈な印象が焼き付いた。

余命を感じながら、自ら企画したという遺作「大鹿村騒動記」は未見だが、是非観たい。

さて、原田さんと言えば…この映画だろう。1974年の製作・公開。野性味があふれ、自堕落ながら、革命への狂気と想いを秘めた坂本龍馬役。この役は、原田芳雄さんでしかあり得ない。

ザラついたモノクロの画面が、猥雑でパワーを放つ。

自由な作風なようでいて、実は綿密な時代考証がしてある。革命を目指しながら、対立する龍馬と中岡慎太郎。そこに絡むヒロイン、中川梨絵がクラクラするほど妖艶。龍馬に近づく薩摩藩士の右太を演じるのは我らが松田優作兄貴だ。この優作兄貴も原田龍馬に負けないギラギラ感を見せてくれる。

まだまだ、人々が体制に対して怒りを露わにしながらも、多くの若者たちが行き場のない現実に慟哭を感じていた時代に製作された作品。映画は時代を反映する芸術だと思うが、70年代特有のパワーとエネルギーが込められた鮮烈さは、今観ても色あせていない。

黒木和雄監督の出世作でもあり、原田さんは黒木監督の常連となり、多くの傑作黒木監督作品に出演している。僕がリアルタイムで劇場で観た黒木監督作品で原田さんが出演している作品は時代劇の傑作をリメイクした「浪人街」(1990)ぐらいで、ほとんどの作品はビデオ鑑賞。「竜馬暗殺」は確か学生時代にビデオで観たと思うが、小さなブラウン管にも関わらず、その迫力と魅力に参った覚えがある。

黒木監督も、既にこの世にいない。「映画」は作り手や俳優さんが亡くなっても、永遠に作品は残る。その魅力を、時代を超えて伝えていくことは、その作品の精神性や背景も含めて、本当に大切なことだと思う。

原田芳雄さんのご冥福を、心よりお祈り致します。
4

冷たい熱帯魚  新作レビュー

★★★★★

園子温監督が本当に作りたくて作ったのだろう。

「愛のむきだし」も凄かったし、園監督には「ちゃんと伝える」などの人間ドラマもあるのだが、「自殺サークル」や「奇妙なサーカス」で衝撃を受けた僕には、猟奇的や官能的な表現の中に人間の本能を描く作品こそが、この監督さんの真骨頂のような気がする。

そういう意味では、この作品は園監督の現時点での最高峰であり、一見、悪趣味にも見える強烈な猟奇的、官能的な描写を見せながらも、極限まで追い込まれたときに人間が見せる生々しい“生き様”こそが、この映画の大きな魅力になっている。

生きることは、痛い。本当にその通りだ。僕も、まだまだだとは思うけれど、いくつかの「痛み」に襲われたことはある。肉体の痛みももちろんだが、様々なトラブルに巻き込まれたり、突然の悲しいことに襲われたときに感じる、心の痛み。これは本当に痛い。

この映画に「村田」という、殺人や殺した人間の肉体を切り刻むことに何の疑問も痛みも持たない、モンスターのような男が登場する。(でんでんが怪演!好演!凄演!)

ひょうひょうとしていて、人の良いおじさん風でありながら、実は強欲で残忍な「村田」を映画の中心に置くことで、観客は、主人公の気の小さい社本と一緒に、「村田」の行為に驚き、恐れ、ときにユーモアさえ感じるのである。

金銭欲と性欲のためなら、どこまでも残忍になれる人間は、実は実在したりする。「村田」が残忍であれば残忍であるほど、猟奇描写と官能描写が過激であれば過激であるほど、僕たちは「痛み」を感じることができる。そして、「村田」の言いなりだった社本が豹変し、自らの内面を爆発する様は、いつも世の中の矛盾や何かに翻弄されて生きている現代人なら、必ずどこかで共感できる部分ではないか。

社本を突き動かしたもの、それは「生きることの痛み」であり、その痛みは連鎖してくことを、この映画は示唆している。社本を演じた吹越満には凄みさえ感じ、脱ぐことをいとわない女優陣の気合も凄い。絶対テレビ放映は無理な、そういう意味では堂々のR18の映画らしい映画、である。

この映画は「テアトル徳山」で鑑賞したが、テアトル徳山は最近、良質な映画をチョイスして上映する単館系の映画館として、かなりのレベルと質の高さを誇る。そのラインナップは、実にいいものがある。↓

http://theatoku.com/

さすが、かつてジョン・レノンに抱きしめられ、ビートルズの4人全員と握手し、松田優作氏を駅から親戚の家までワゴン車で送り届け、長年、熱狂的なファンだった石橋凌氏を昨年の周南映画祭で自らが支配人を務める映画館に迎え入れるという、レジェンドを成し遂げたY支配人である。

映画ファンとして、地方でこれだけの取り組みをしていることに、心から敬意を表したい。



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