激突!殺人拳  こんなDVDを見た!

「DVD・ビデオレビュー」は、基本的に劇場で見逃した作品のレビューですが、今回別カテゴリーで「こんなDVDを見た!」を作ってみました。主に昔の作品で改めて見直したもの、珍品・絶品で「名作・傑作を語ろう」とはちょい違うな、という作品などを取り上げていきたいと思います。

★激突!殺人拳

カンフー映画マイベストのコメント欄で、伊達邦彦さんご指摘の千葉真一御大による、カラテ映画の最高傑作。久しぶりにDVDで再見し、その魅力にKOされた。

1974年製作で、明らかに「燃えよドラゴン」のパクリ企画ではあるが、怪鳥音のブルース・リーに対し、カラテのこちらは千葉御大の「表情カラテ」でオリジナリティを出していて、百聞は一見で、未見の方は是非ご覧になってほしいのだが、そりゃあ、モノスゴイことになっている。

正直、殺陣のスピードではあちらに敵わない。でも、千葉御大の「表情カラテ」はある意味、ブルース・リーを越えている。
 
ふぁぁぁぁぁー、ふぉぉぉぉぉー、と気合いが入ったヘンな呼吸をし、猿のように顔の表情がくるくる変われば、例え空中から車に乗ったまま落とされても死なないし、目が見えない仕込杖の刺客(座頭市やがな)の刀さえも折ってしまう。

その表情の面白さは、今見るとギャグなのだが、千葉御大のほれぼれするほどの肉体と、スピードはなくても重厚感ある殺陣によって、唯一無二、独特な千葉御大独特の「カラテ」を築きあげていて、見応えがある。

敵も何でもアリで、日本人が平気で怪しいアジアの空手使いなどを演じていると、もう頭の中がマヒしてくる。冒頭からして、怪しい沖縄空手使いの死刑囚がいきなり独房の中でトレーニングをしているという、訳のわからないシーンから始まる。

主人公はある兄妹から依頼を受け、この空手使いを物凄い荒技で脱獄させるのだが、この兄妹に金がないと知ると、兄をビルの窓から突き落として殺害し、妹(千葉御大の愛弟子、志穂美悦子!)を麻薬漬けにしてヤクザに売り飛ばす。

とんでもないヒーローなのだが、これが途中から悪ということもぶっとび、ストーリーは完全に破綻し、味方が殺されて悲しんだりして、何のために戦っているのか、どんな性格付けをキャラクターにしているのか、その辺りの「物語」としての基本が完全にぶっ壊れてきて、訳がわからなくなってくる。

まあ、つまりは千葉御大のアクションを楽しむだけの映画であり、エンディングも実にあっさり。でもその壊れっぷりがこの映画の魅力にもなっている。

この映画を見て思い出すのは、クエンティン・タランティーノが製作した「デス・プルーフ」だ。あの質感は、正にこの映画の質感にそっくりで、タランティーノは千葉御大のこのシリーズを愛し抜いて影響を受けたというから、これはタランティーノが影響を受けたグラインド・ハウス映画の最たるものなのだろう。

それから、この映画の影響というと、関根勤を忘れてはならないだろう。関根勤がやっている千葉御大のモノマネは、このシリーズの千葉御大のモノマネなのだ。

考えてみれば、普段の千葉御大は「ふぉぉぉぉー、ふぁぁぁー」とは呼吸しない。この映画の「表情カラテ」を真似して受けているのだが、関根さんがテレビでこのネタをやり始めたとき、はたして何人がオリジナルを知っているのかな、と僕は思っていた。

ラストの雨中の戦いなど、なかなか見応えもあり、その後も続くシリーズの第1作にして最高傑作だと思う。それにしても、70年代の東映作品はパワーがあった。「不良番長」シリーズをはじめ、暴力とセックス、アクションに満ち満ちていて、物語が破綻しようがどうしようがお構いなし。

同じパワー全開の映画群にあっても、作品的にも評価が高い深作欣二監督作とは別に、時代劇から戦争物、アクション物まで何でもアリだったこの作品の小沢茂弘監督をはじめ、野田幸男監督、鈴木則文監督ら、バラエティに富んだ作品づくりに応えられる監督が多数いて、正に東映ならではのプログラム・ピクチャーを形成していたのだ。

最近の映画は、ちょっと過激な描写があると、すぐにR指定などになっちゃうため、作る側も自主規制して、かつてのパワーある作品を大手映画会社が作ることなど、無くなってしまった。この数年で言うと、その手の作品は三池崇史監督の「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」ぐらいだが、それでもまだこのころの東映作品に比べると、大人しいと思う。
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