ここ数回は終止形を取り上げてきたので、今回は「連用形」について取り上げる。
「連用形」とは「〜して、〜すれば、〜するので、〜しながら」のような形のことである。テキストによっては「接続形」や「副動詞形」と表現していることもある。
筆者の印象としては、朝鮮標準語より済州方言の方が連用形のバリエーションが少ないように思える。
ここで重要なものをいくつか紹介する。
-ㅎ・곡/ㅎ・고 形 : 用言語幹に 곡か고を付ける。標準語:고。意味:並列・羅列「Aは〜し、Bは〜する」
例 이건 우리 집이곡 저건 삼춘네 집이여 標 이건 우리 집이고 저건 삼춘네 집이야
例 어지게는 짐치 먹곡 오늘은 마농지이 먹엇수다 標 어제는 김치 먹고 오늘은 마늘장아찌 먹었습니다
ただし、「뻐스 타고 제주시로 갔다」は「뻐스 타곡 성내레 갓저」とは言わない。これは後ほど取り上げる。
-ㅎ・민 形 : 用言が母音語幹/ㄹ語幹ならば민を、ㄹ以外の子音語幹ならば으민を付ける。標準語:면/으면
意味:条件「〜すれば・したら」
例 그디 가민 됩네다게 標 거기 가면 된다구요
例 시방 그거 ㅍ・ㄹ민 돈 하영 벌어지커라 標 지금 그거 팔면 돈 많이 벌 수 있을 거야
例 놀래 들으민 막 좋아ㅎ・주게 標 노래 들으면 무척 좋아하지
-ㅎ・멍 形 : 用言が母音語幹/ㄹ語幹ならば멍を、ㄹ以外の子音語幹ならば으멍を付ける。標準語:면서/으면서
意味:同時進行「〜しながら」
例 용시 ㅎ・멍 물질도 햇수게 標 농사 하면서 해녀일도 했지요
例 아지방 일도 아냐고 놀멍 지냄서라 標 아저씨 일도 안하고 놀면서 지내더라
例 웃이멍 말 ㄱ・ㄹ암쩌 標 웃으면서 이야기하고있다
*語幹末のㅅ/ㅈ+으、すなわち[스/즈]が前母音化して[시/지]となるため、웃으멍→웃이멍となる
-ㅎ・난 形 : 用言が母音語幹/ㄹ語幹ならば난を、ㄹ以外の子音語幹ならば으난を付ける。
なお、ㄹ語幹のㄹは脱落する。標準語:니까/으니까
意味:理由「〜するから・するので」、契機「〜すると」
例 할망 가족 엇이난 혼차 살암쩌 標 할머니는 가족이 없으니까 혼자 살지
例 아시가 대판 사난 가보라게 標 동생이 오사카에 사니까 가보라구
*契機用法の場合、ㅎ・난形の後ろには過去形か目撃形が続く
過去形の例 집이 가난 아무도 엇엇수다 標 집에 가니까 아무도 없었습니다
目撃形の例 가이 보난 막 아파햄서라 標 그 아이 보니까 많이 아파하더라
-ㅎ・영形 : 陽母音語幹には앙/안を、ㅎ・다のㅎ・には영/연を、陰母音語幹には엉/언を付ける。
標準語:아서/어서/여서
意味:先に行われた動作・先に現れた状態「〜し、して」。標準語の하고形とも一部重なる
現在・未来のことを述べる場合は앙/영/엉を付ける。後続節の時制は非過去である。
例 느량 일칙이 일어낭 조반 먹엉 ㅎ・ㄱ교 간다 標 늘 일찍이 일어나서 아침 먹고 학교 간다
例 배 탕 일분 강 공부ㅎ・영 무시걸 ㅎ・ㅂ네까 標 배 타고 일본 가서 공부해서 무엇을 합니까
過去のことを述べている場合は안/연/언を付ける。後続節の時制は過去である。目撃形もこれに含まれる。
例 날씨가 좋안 바당 간 괴기 잡앗주게 標 날씨가 좋아서 바다에 가서 고기 잡았지
例 이디 올안 돗괴기 하영 먹언 배 아판 벤소 갑데다 標 여기 와서 돼지고기 먹었다가 배가 아파서 변소 가더군요
*従属節の앙/안、영/연、엉/언と主節の時制の一致は「照応(しょうおう)」という現象である。済州方言でのこの照応は、ソウル標準語をはじめとした朝鮮半島の方言にはない。済州方言にだけこのような照応が発生、発達した点は非常に興味深い。内容は異なるが、英語のI am,you are,he/she/it isは主語と動詞の照応の例である。英、仏、独、露、ラテン、ギリシャ、ペルシャ、ヒンディー語などインド・ヨーロッパ語(印欧語)では言語の色々な側面で照応が見られる。
次回も連用形を取り上げる予定である。

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